コラム
行政書士の初回相談は「任せても前に進む」を設計する(第2部まとめ)【行政書士×開業×AI】
Q:行政書士として初回相談の申し込みは入ったのに、当日の進め方や準備が不安です。相談者が「依頼するかどうか」を判断しやすい状態を作るには、何から整えるのが現実的でしょうか?
A: 一般的には、初回相談は「全部答える」より先に、相談者が安心して前へ進めるように"運び"を設計するほうが安定しやすいです。具体的には「ゴール・進行・確認」を先に決め、ヒアリングと説明を文書で支える準備を整えます。その準備は、精査(見直し)をルーティン化すると育ちます。AIを下書き・整理の補助として使い、法令判断や受任判断は人が握る前提にすると効率と安全を確保して進めることが可能です。
初回相談で一番つらいのは、「相談自体は丁寧にやったのに、最後に沈黙が流れて終わる」ことかもしれません。相談者が"依頼するかどうか"を決めきれず、次の動きが見えないまま時間だけが過ぎる。あるいは、相談が終わってから後出しの事情が出て、要件を満たさない可能性が見えてきて、まとめ直しや再確認に追われる。開業直後ほど、こうした手戻りが積み重なると、体力が削られます。
第1部が「比較検討の場で選ばれる文書」を整える話だったとすると、第2部はその次、申し込み後の初回相談で「任せても前に進む」と感じてもらうための話です。入口の見せ方が整っていても、初回相談の運びが曖昧だと、相談者は判断を保留しやすくなります。
私自身、開業当初は"その場で頑張る"寄りになり、前日に思い出したことをメモに足して準備が散らかる、口頭で丁寧に説明するほど話が広がって「結局、何をすればいいですか?」に戻る、という遠回りをしました。そこで第2部では、知識量の勝負にしないために「準備文書」と「精査(見直し)のルーティン」を軸に、初回相談を設計し直しています。
(参考)従来型と改善型の違い(イメージ)
| 項目 | その場で頑張る相談(従来型) | 準備文書×精査ルーティンの相談(改善型) |
|---|---|---|
| 準備時間 | 直前に増えやすく、散らかりやすい | 事前に型があり、更新は小さく回しやすい |
| 当日の心理 | 「抜けが怖い」「全部答えなきゃ」になりやすい | 「ゴールと流れがある」ため落ち着きやすい |
| 相談者の判断 | 次の動きが見えず、保留になりやすい | 次アクションが見えるため、判断しやすくなりやすい |
| 相談後の連絡回数 | 追加確認が増えやすい | 前提・宿題が文書で残るため減りやすい |
※上記は一般的な傾向の整理であり、事案や分野、相談者の状況によって変わります。
第1部の「比較される文書」が、「任せても前に進む」に変わる
選ばれる理由は"見せ方"だけでなく、相談で"運び"として再現される
第1部で整えたのは、比較検討で止まりやすい不安(費用の見通し、手続きの見通し、信頼性)を先回りして示す「比較しやすい文書」でした。
第2部で大事になるのは、その安心材料を初回相談でも同じ温度感で再現し、「この人に任せれば前に進む」と体感してもらうことです。相談の場でこの状態を作れれば、相談者の迷いは減りやすくなります。
初回相談は「全部答える場」より「話し合うポイントの"アタリ"をつけて次へ進める場」になりやすい
新人期ほど「正解を出し切らなければ」と思いがちですが、実務では申し込み時点の情報が不足していることも多いです。
そこで、最初から完璧に結論を出すより、まずは話し合うポイントの"アタリ"をつけて確認し、次の打ち手を示すほうが現実的です。
初回相談は「4つの設計」を先に置くと運びやすい
設計1:ゴールを言語化して共有する
最初に「今日整理できればよいこと/今日決めたいこと/持ち帰ること」を分けるだけで、ゴールのイメージを共有しやすくなります。無理に即答し続ける展開を避けやすくなります。
設計2:進行を区切って、相談が拡散しないようにする
慣れないうちは特に、話題が広がるほど記録も判断も散りやすいです。
ここは、レストランのコース料理に似ています。メニューも流れも決まっていない店より、「前菜→メイン→デザート(最後に次の一手が出る)」と決まっているほうが、お客さんは安心して座っていられます。初回相談も同じで、「論点整理→方向性提示→次アクション」のように区切りを置くと、相談者は安心しやすく、こちらも運びやすくなります。
設計3:確認の言い回しを固定して、誤解を減らす
確認の言い回しが毎回バラつくと、重要事項ほど聞き漏れや誤認が出やすくなります。日付・名義・所在地・期限などは、確認欄や定型フレーズで支える発想が安全側です。
設計4:慣れないうちは設計そのものを短い文書にして残す
頭の回転だけで回すと抜けやすいため、ゴール共有の一文、進行メモ、確認フレーズを短い文書として用意します。
相談後は「前提・決定事項・未確定点・宿題」を文書で残すと、連絡がスムーズになり、手戻りを抑えやすくなります。
ヒアリングは「基本形+追加質問」の2層で回す
ゴールから逆算して、まず"基本形"を作る
ヒアリングシートは、完璧なテンプレートにするより「基本形」を持つことを優先した方がいいと思います。ゴール→必要情報→質問順→配置を1枚で通す考え方です。
口頭メモ中心だと手戻りが増えやすく、時間が溶けやすい
丁寧に聞くほど情報量は増えますが、記録が散ると追加確認が増えやすくなります。同じ話をもう一度伺う展開も起きます。結果として、相談対応以外の時間(文書作成や次の相談)を圧迫しやすくなります。
完全テンプレートではなく「基本形を基準にして調整する」が現実的
分岐を増やしすぎると使われなくなりがちです。基本形を固定し、例外は追加質問メモで調整し、手戻りが出た箇所を次回に向けて文書へ戻す。この循環で精度が上がりやすくなります。
説明(提案)は「情報の整理+判断の提示」の2段階に分ける
口頭だけに寄せるほど論点が散りやすく、結局"次が分からない"が起きる
口頭で丁寧に説明するほど論点が散り、「結局、何をすればいいですか?」に戻ることがあります。原因は話し方より、判断の根拠と次の一手が文書・資料として見えていない点にあります。
難語を日常語に置き換え、比較の枠を作り、認識をそろえる
相談者が迷うのは「全部ほしいけど決められない」状態のときです。優先順位を確認し、比較の枠を提示すると、相談者は選べる状態になりやすく、認識もそろえやすくなります。
最後は「次の一手」を文書・資料で見える化して終える
「次に何をすればよいか」が文書で明確になっていると、相談者は判断しやすくなります。次の行動が曖昧だと検討が止まりやすいため、最後に合意点として残します。
受任につながる相談準備は「段取り提示」を強くする3点に集約できる
「知識量」より、安心できる段取りと方針提示が弱いと止まりやすい
知識量そのものより、「どう進むか」「何が未確定か」「何を確認するか」が見えないと不安が残りやすいです。段取りと方針提示を先に強くするほうが、相談が前へ進みやすくなります。
全部を即答できなくても「確認が必要な点」と「次の打ち手」を示す
理想は全部答えることですが、新人期に毎回やり切るのは難しい場面があります。そこで「確認が必要な点」を先に言語化し、「次の打ち手」を示すと、隠さず進めてくれる印象につながりやすいです。
そのために、準備を"精査(見直し)のルーティン"として回す発想を持つ
準備は一発で完成させるより、実務で起きたズレを回収して文書へ戻すほうが短い距離で育ちます。第2部の芯は、ここを見直しの習慣として回す発想です。
精査をルーティン化するなら「週1回の3工程」から始める
工程1:手戻りの原因を「相談メモ」から拾う(推測で増やさない)
迷いどころは、想像で補うと改善がズレやすいので、相談直後に事実として残します(どこで止まったか/どこで迷ったか等)。
工程2:原因を"準備文書"へ戻して、基本形を1点だけ更新する
改善を一気に増やすと続きません。ヒアリングシート、想定問答、想定ロードマップ等のうち、更新は1つずつ、基本形に戻して反映します。
工程3:次の相談で使い、効いたかを確認して積み上げる
更新したものを次回相談で使い、使い勝手をメモして再更新します。この反復で、当日の迷いが減りやすくなります。
AIは「下書き・整理」で8割の作業を支え、人は「判断と責任」を握る
AIは相談シート骨子/想定質問への回答案/進行メモ/フォロー文書の下書きに向く
ここでいう「8割」は、下書き・整理などの作業部分の目安です。事案の複雑さや情報量、分野によって変わります。
AIの役割は「決める」ではなく「整える」です。相談シート骨子、想定質問への回答案、進行メモ、相談後フォロー文書など、下書き・構造化の作業は補助として相性がよい場面があります。
人が担う:法令判断・受任判断・守秘と責任(AIの出力は誤解や不整合の可能性)
要件判断、受任可否、リスク説明、最終文書の確定は人が責任を持って行う前提が安全です。AIの出力には誤解や不整合が混ざる可能性があるため、根拠確認と状況に合わせた調整が必要です。
個人情報・守秘情報の扱いは入力前提から安全側に寄せる
AIを補助で使う場合でも、個人が特定され得る情報や守秘性の高い情報は、匿名化・伏せ字・そもそも入力しない等、事務所方針に沿って取り扱うのが安全です。
脚注
※本稿は「受任を保証する」趣旨ではなく、初回相談の運びを整えるための一般的な考え方をまとめたものです。
※本稿の「初回相談」は一般的な相談対応を想定し、分野・事案により確認事項や運用は変わります。
※「精査」は、相談後に出た手戻り・迷いどころを事実として回収し、準備文書へ反映して更新する行為を指します。
免責
本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別事案への法的助言ではありません。具体的な判断(要件該当性、受任可否、期限対応、リスク説明等)は、最新の法令・公的情報および個別事情に基づき、行政書士が責任をもって行ってください。AIを補助として利用する場合も、最終判断・表現の責任・守秘の確保は人が担う前提で運用してください。
HANAWA行政書士事務所へのリンク
第2部の記事(参考)
行政書士の初回相談の進め方:申込後に慌てないために
行政書士の初回相談が進む「ヒアリングシート」とは?
行政書士の相談対応で説明が苦手な人へ
行政書士の受任率が上がりやすくなった相談準備ルーティン
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