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コラム

行政書士の初回相談が進む「ヒアリングシート」とは?【行政書士×開業×AI】

Q:行政書士の初回相談で、ヒアリングシートは必要ですか?何を入れれば相談対応の流れが整いますか?
A
:口頭だけで進めると情報が散らばりやすいため、標準的な項目をベースにしたヒアリングシートがあると相談の流れが安定しやすくなります。完全なテンプレート化は難しくても、ゴールから逆算した「基本形」を用意しておけば、抜け漏れと手戻りを減らしつつ、事案ごとの追加質問で調整できます。


初回相談は、相手の話を丁寧に聞くほど情報量が増えます。一方で「どこまで聞けば足りるのか」「何を根拠に次の一手(受任判断・必要資料・段取り)へ進めるのか」が曖昧だと、相談対応の流れがぶれやすくなります。

私も開業直後はメモ中心で進めてしまい、後から追加確認の連絡が増えたり、同じ話をもう一度伺う場面が出たりしました。追加確認が1回増えるだけで、電話やメール、記録の見直しで往復1時間ほど消えることもあります。これが10件重なると、場合によっては1営業日が丸ごと消える感覚になることもあります。こうした時間は、本来なら新規受任に向けた面談や、既存案件の文書作成に充てられたはずの時間であり、結果として収益機会の損失(機会損失)につながる場合があります。

そこで使いたいのが、ゴールから逆算して必要情報を定義する「ヒアリングシート」です。

ただ、相談者の相談内容も背景も千差万別です。「ヒアリングシートをテンプレート化するのは難しい」という意見が出るのも自然で、私自身も完全なテンプレート化は難しいと考えています。

それでも、基本形(外せない骨組み)を定義しておくことは無駄ではありません。基本形があるだけで「毎回ゼロから迷う」「必須の確認が抜ける」といった困りごとが減ります。さらに、テンプレートでカバーできない範囲(例外・特殊事情・行政庁の運用差・リスク判断)も見えやすくなり、「ここから先は追加質問が必要」「ここは持ち帰って確認が必要」という線引きがしやすくなります。

本記事では、このヒアリングシートをどう位置づけ、どこを押さえると初回相談が前に進むかを、基礎として整理します。


初回相談をぶれさせないヒアリングシートの位置づけ

口頭だけだと情報が散らばり、判断の根拠が薄くなりやすい

初回相談では「経緯」「現状」「希望」「期限」「関係者」「手元資料」など、話題が行ったり来たりします。口頭中心の進行だと、聞いた情報がつながりにくく、どの要件を満たし、どこが未確定かが見えにくくなります。

私も当初は「とにかく丁寧に聞く」ことを優先してメモを散らしてしまい、見積や次の段取りを組む段階で肝心の一点(期限・名義・過去の手続き履歴など)が抜けていることに気づきました。追加確認が必要になると、相手にとっても二度手間になりやすく、こちらも申し訳なさが残ります。

ヒアリングシートは「ゴール→必要情報」をつなぐための文書

ヒアリングシートは、単なる質問集ではありません。相談のゴール(到達点)を先に置き、そこへ到達するための必要情報を、漏れなく集めるための文書です。

たとえば「申請可否を見立てる」「受任するなら必要資料を特定する」「リスクと次の段取りを説明する」といった相談の終点を具体化すると、聞くべきヒアリング項目が自然に絞られていきます。

相談の終点を「次の一手(判断・資料・段取り)」まで揃える役割

初回相談の価値は、話を聞いて終わりではなく、相手が次に動ける状態を作ることにあります。ヒアリングシートがあると、相談の終わりに次の整理がしやすくなります。

  • 今日の時点で分かったこと
  • 未確定で追加確認が必要なこと
  • 依頼する資料(持参・送付)
  • 次回までの段取り

ここで一度、「口頭のみ」vs「ヒアリングシートあり」を、要点3つに絞って比較します。

要点 口頭のみ ヒアリングシートあり
情報の質 話題が往復しやすく、論点が散らばりやすい ゴールに沿って整理され、論点が残りやすい
手戻りリスク 抜けに後で気づき、追加確認が増えやすい 必須確認が残りやすく、追加確認を減らしやすい
相談者の信頼度 「伝わったか」が相談者に残りにくい 整理・確認が見えることで「把握された実感」が残りやすい

結果として、相談対応の流れが整い、次の一手につなげやすくなります。


ゴールから逆算して作る4ステップ

この章は、営業(相談の入口)・管理(手戻り削減)・実務(要件判断)・教育(再現性)の観点を、筆者が咀嚼して行政書士の現場に落とし込んだ「基本形」です。結論は、ゴール→必要情報→質問順→配置を1枚で通すことです。

ステップ1|ゴールを定義する(受任後の到達点・成果物の想定)

初回相談の冒頭でぶれないために、まず「この相談で何が言えればよいか」を短く置きます。ポイントは、ゴールを「次の一手」まで含めて定義することです。

例:

  • 受任可否の一次判断ができる状態にする
  • 追加確認の論点を特定する
  • 必要資料と段取りを提示できる状態にする

また、行政書士業務ではゴールが複数になることもあるため、「この場で確定させるゴール」と「持ち帰るゴール」を分けて書けると、安全側で進めやすくなります。

ステップ2|必要情報を棚卸しする(要件・事実・資料の3区分)

ヒアリング項目は、いきなり質問の羅列にせず、まず次の3区分で棚卸しします。

  • 要件:判断に必要な条件(期限、資格、所在地など、分野により異なります)
  • 事実:起きたこと・現状(時系列、関係者、既にした対応など)
  • 資料:裏付けに必要なもの(証明書、通知書、契約関係など)

この3区分は、相談者への説明にも使えます。「なぜそれが必要か」を言いやすくなるためです。さらに、各項目を「必須/場合によっては」で分けておくと、相談時間の中で優先順位が付けやすくなります。

ステップ3|質問の順番を整える(入口→深掘り→確認)

順番が崩れると、会話も記録も散らばりやすくなります。おすすめは次の並びです。

  1. 入口:相談の目的、希望するゴール、期限感
  2. 深掘り:判断に必要な事実・要件の確認(必須項目から)
  3. 確認:未確定事項、必要資料、次の段取りの合意

入口で前提が揃うと、深掘り質問の納得感が上がります。確認で締めることで、「この後どうするか」が相談者にもあなたにも残りやすくなります。

ステップ4|記入欄の配置を決める(チェック・自由記述・提出/確認資料欄)

配置は「後から読めること」「当日迷わないこと」を優先します。相談者の行動につながる提出/確認資料欄(必要書類リスト、持参資料チェック)を置いておくと、相談の終点が「次の一手」までつながりやすくなります。

一般的には次の組み合わせが扱いやすいです。

  • チェック欄:必須確認(Yes/No、該当/非該当)
  • 自由記述欄:個別事情(経緯、例外、背景)
  • 提出/確認資料欄:必要資料(持参・送付のチェック)

この配置が良いところは、単に記録が整うからだけではありません。相談者は、先生がヒアリングシートにチェックを入れる動作や、整理された確認の流れを通じて、「正しく把握してもらえた」という安心感を覚えることがあります。これは記録以上に、信頼を積み上げる要素になり得ます。

私も最初は自由記述中心で作り、後から読み返すと要点が拾いにくくなりました。チェック欄を増やすと、相談中の確認が速くなり、抜けも減りました。


初回相談で使う運用ルール

運用は複雑にしない方が続きます。基本は、事前に埋められるところは埋める/当日は確認に集中する/終わりに未確定を切り分けるです。

相談前|事前記入にするか、当日記入にするかを決める

事前記入は情報が揃いやすい一方で、相手の負担が上がります。当日記入は負担が軽い一方で、相談時間を使います。新人のうちは、必須項目だけ事前、詳細は当日というように分けると運用しやすいです。目的はあくまで「相談のゴールに必要な情報が揃うこと」です。

相談中|聞き取りと記録を分けて、抜けを減らす

相談中に「聞く」「書く」「考える」を同時にやると、抜けが出やすくなります。ヒアリングシートがあると順番が固定されるため、記録負担が下がります。

私も最初はメモに集中しすぎて相手の表情を見落とし、説明のタイミングを逃したことがありました。ヒアリングシートを軸にしてからは、手元に視線を落とす時間が減り、相談者と目を合わせながら「本当に困っている点」を掴む余裕が出ました。結果として、必要な深掘り質問も出しやすくなりました。

相談後|不足情報を「追加確認」と「依頼資料」に切り分ける

相談が終わったら、未確定事項をそのままにしないことが重要です。

  • 追加確認:質問で埋まるもの(事実関係、過去対応の有無など)
  • 依頼資料:資料で確定させるもの(証明書、通知書など)

と切り分けて示すと、相談者が動きやすくなり、手戻りも減りやすくなります。


経験に裏打ちされた精度へ近づける見直しポイント

完成形を一気に作るより、実務で起きたズレを文書へ戻す方が、短い距離で精度が上がりやすいです。

そして私の見聞きする範囲では、相談対応が「職人芸(勘)」に寄りすぎていて、ヒアリングの型が文書として整理されていないケースも一部にあります。だからこそ、基本形を持つだけでも、相談者から見た印象は変わりやすいです。

「手戻り」が出た箇所をヒアリングシートに戻す

追加連絡が発生したとき、「どのヒアリング項目が足りなかったか」をヒアリングシートに反映します。私も「毎回違う追加確認」が続いた時期があり、原因をたどると、必須確認がヒアリングシートに入っていないだけでした。手戻りを「次の改善点」として回収すると、ヒアリングシートは育ちます。

分岐を増やしすぎず、基本形+例外で運用する

作り込みすぎると、分岐が増えて読みにくくなり、結果として使われなくなりがちです。まずは基本形を1枚にして、例外は「追加質問メモ」程度に留めます。テンプレートでカバーできる範囲(基本の漏れ防止)と、できない範囲(個別判断・例外対応)を分ける意識が、運用を続けるコツです。

イレギュラーの見抜き方(追加質問の基準)を文書に添える

例外対応は「全部を先回りする」より、「気づける基準」を置く方が現実的です。

たとえば、期限が極端に近い、関係者が多い、過去に不許可・不受理がある、などの「追加確認フラグ」を小さく添えておくと、初回相談でも見落としが減ります。


AIを使って楽にする2つの場面と、任せない1つの線引き

場面1|項目の候補出しを「整理・言語化」の補助に使う

ヒアリング項目は、経験が浅いほど「何を聞けばいいか」が見えづらいものです。AIは、この段階での候補出しや整理・言語化の補助として役立つ場合があります。

ただし、候補をそのまま採用すると、分野・地域・運用に合わない項目が混ざることもあります。最終的に採用するかは人が決める、という前提が必要です。

場面2|ヒアリングシートのドラフト(たたき台)を整える

ゼロからヒアリングシートを作るのが負担なとき、AIでドラフトを整える発想は現実的です。特に「構成」「言い回しの統一」「チェック欄の形」など、骨格のたたき台に向いています。

ここでも大切なのは、あなたの業務で使える形に直すことです。経験に裏打ちされた知識で精査するほど、相談対応の流れに合ったヒアリングシートになっていきます。

線引き|要件判断・リスク説明・最終確認は人が担う

AIは便利でも、要件判断やリスクの説明、最終確認まで任せるのはおすすめしません。相談者の個別事情を踏まえた判断、誤解の芽を摘む言い方、記録の残し方は、実務者の役割です。AIはあくまで補助線として置くのが安全です。


トラブルを避ける4つの注意点:守秘・誤認・過不足・記録

個人情報・守秘の観点で、保管と共有の範囲を決める

ヒアリングシートは個人情報の塊になりやすい文書です。紙・データの保管場所、持ち出し、共有範囲を先に決めておくと安心です。AIを補助で使う場合も、取り扱う情報の範囲や、誰が最終確認するかといった線引きが重要になります。

誤認を防ぐための確認(言い回し・確認欄)の持ち方

人は言い間違い・聞き違いをします。だからこそ、重要事項には確認欄が効きます。

例としては、日付・名義・所在地・期限・相手方の特定など、後から覆ると手戻りが大きい項目です。

聞きすぎ/聞かなさすぎを避ける「目的別」整理

ヒアリング項目が多すぎると相手が疲れ、少なすぎると判断できません。ステップ2の3区分(要件・事実・資料)に戻り、「今日のゴールに必要な範囲」に絞ると過不足が整います。

相談記録としての扱い(いつ・誰が・何を確認したか)

ヒアリングシートは、相談記録にもなります。「いつ・誰が・何を確認したか」が後から追える形にしておくと、引き継ぎや追加対応が楽になります。記録の粒度は、あなたの業務設計に合わせて調整するとよいでしょう。


まとめ:次にやる1つのことと、実践編で扱う範囲

まずは「ゴール→必要情報→質問順→配置」の1枚を作る

初回相談で悩むときほど、やることを増やすより、基礎を1枚にまとめる方が進みます。

  1. ゴールを定義する
  2. 必要情報を棚卸しする(要件・事実・資料)
  3. 質問順を整える(入口→深掘り→確認)
  4. 配置を決める(チェック・自由記述・提出/確認資料欄)

この1枚があるだけで、相談対応の流れは安定しやすくなります。結果として、追加確認や手戻りに消える時間を減らし、相談者への説明にも余裕が出やすくなります。


実践編について

実践編では、AIを「候補出し」「ドラフト整理」に使う具体的な進め方と、守秘・品質を保ちながらヒアリングシートを更新していく型づくりを扱います。本記事で作った1枚を、実務で育てていくイメージです。ぜひ続編もご覧ください。


脚注

※本記事では、初回相談で必要情報を整理するための確認票・受付票・チェック表などを総称して「ヒアリングシート」と呼びます。

※分野(許認可、相続、法人関連など)により必須のヒアリング項目は変わるため、ゴールから逆算して調整してください。


免責

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別事案への法的助言を行うものではありません。具体の手続きや判断は、関係法令・行政庁の運用・事案の事情により異なる場合があります。

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