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コラム

行政書士の修正・差し戻し対応はAIでどこまで楽になる?原因の見立てと負担軽減の型【行政書士×開業×AI】

Q:行政書士の差し戻し対応は、AIでどこまで楽にできますか?
A:一般的には、差し戻しの指摘を「漏れなく整理」し、優先順位を付け、修正点と再提出時の補足説明文書を整える工程で、AIが負担軽減に役立ちます。一方、要件充足の判断、事実関係の確定、提出可否の最終決定など、法的責任を伴う最終判断は必ず資格者が行うのが無難です。AIを使えばミスがゼロになるという話ではなく、点検・比較・再利用や運用との組み合わせで"手戻りの原因"を減らす発想が現実的です。

開業初期は、修正・差し戻し対応に想像以上の時間を取られがちです。私も最初の頃は、通知・メール・電話メモが分散したまま修正に入り、あとから「この指摘も直す必要があった」「別の版を直していた」と気づいて遠回りしたことがあります。 差し戻しは「経験で慣れる」面もありますが、工程を少し整えるだけで手戻りは減らせます。本記事では、AIは何ができるのか分からない方でも取り入れやすいように、差し戻し対応を"工程"として整理し、AIと運用の組み合わせで負担を軽くする考え方をまとめます。


修正・差し戻しが起きる3つの原因(AIが整理・言語化に強くても残る領域)

差し戻しの原因は、能力不足というより「工程の混線」で起きることが多い印象です。AIが得意な整理・言語化があっても、次の3つが残ると差し戻しは発生しやすくなります。

情報が分断していて「前提・根拠・添付」がズレる

通知はメール、補足は電話、依頼者の資料は別フォルダ――この状態だと、修正の前提が揃わないまま作業が進みます。結果として「根拠は書き換えたが添付が古い」「添付は更新したが文書の数値が旧版」などのズレが出ます。

要件の読み違い・事実関係の取り違えが混ざる

差し戻しには、形式や添付不足だけでなく、要件や事実関係が絡む指摘も混ざります。ここはAIが代替しにくい領域です。AIは補助に留め、最終的な判断は資格者が握る前提で工程を設計すると安定します。

版数・差分・共有ミスで「直したつもり」が起きる

私が一番痛かったのはここです。修正したつもりでも、別版を修正していたり、共有が遅れて依頼者が旧版を見てしまったりします。差し戻し対応を楽にするには、実は「文書そのもの」より「版と共有」の整備が効くことがあります。


原因を減らす補強は3つで足りる(人×AI×運用)

原因にあわせて、補強ポイントは、まず次の3つだけに絞るのが現実的です。

不足資料と確認事項を先に揃える

差し戻し対応で最初にやるべきは修正ではなく、「不足」と「確認」を先に揃えることです。AIは、散らばった指摘をまとめて"不足資料・確認事項・修正箇所"に並べ替える補助として使うと効きます。

要件/添付/形式のチェック観点を先に置く

差し戻しを減らすには、作業の最後に頑張るより、最初に観点を置いた方が手戻りが減ります。

  • 要件(満たすべき条件)
  • 添付(根拠資料)
  • 形式(記載・体裁・整合)

この3分類を先に固定すると、指摘をどこへ戻せばよいか迷いにくくなります。

どの段階で誰が何を確定するか決める

差し戻し対応は「判断」と「作業」が混ざると重くなります。たとえば、修正方針は行政書士が確定、事実確認は依頼者が確定、というように"確定の担当"を置きます。AIは、その確定に必要な論点を見える化する補助に留めると運用が崩れにくいです。


差し戻し対応が楽になる4ステップ(整理→優先順位→修正→再点検)

ここからは、差し戻し対応を「一連の流れ」にして軽くする型です。慣れるまでの間は、この順に当てはめるだけでも負担が下がります。

指摘を1枚化して、論点と不足を見える化する

差し戻し通知・メール・口頭メモを、まず一枚に集約します。ポイントは「何を直すか」だけでなく、「何を確認しないと決められないか」も同じ場所に置くことです。

AIを使う場合、行政書士法の守秘義務の観点から、伏字にすれば常に安全とは限りません。利用するAIサービスの利用規約や設定(入力内容が学習や保存、外部送信の対象になるか等)を確認し、機密情報や依頼者・案件が推測され得る情報は原則入力を控える運用に寄せるのが無難です。必要がある場合でも、入力は抽象化・要約にとどめ、最終的には手元の原資料で突合する前提で扱います。

優先順位は「期限×再差し戻しリスク×確認待ち」で付ける

差し戻し対応が長引くのは、重要度の高い論点が後回しになるときです。優先順位は次の3軸で十分回ります。

  • 期限(手続の締切・審査の都合)
  • 再差し戻しリスク(ここを外すと戻りやすい箇所)
  • 確認待ち(依頼者・官公署への確認が必要な箇所)

AIは、この3軸で並べ替えた"作業順のたたき台"を作る補助として使いやすいです。

修正文書と説明文書を分けて整える(官公署向け/依頼者向け)

差し戻し対応が辛くなる原因の一つは、同じ内容を「官公署向け」と「依頼者向け」で混ぜてしまうことです。目的が違うため、文書は分けた方が短く、誤解も減りやすくなります。

最後に不整合の再点検を入れて、やり直しを減らす

最終局面では、個別修正より「整合」が重要になります。AIは、不整合を"見つけ切る"道具というより、違和感を抽出するスクリーニングとして使うと現実的です。 AIの指摘は見落としや誤指摘も起こり得るため、数値・固有名詞・日付・添付の対応は、必ず人が原資料と目視で突合してから提出します。


「整理・言語化」以外の強みで、負荷がさらに下がる3つの切り口

AIを"整理役"だけに置いても十分効きます。ただ、差し戻し対応は工程が長いため、別の強みも組み合わせると、さらに軽くなります。

一貫性の点検:矛盾・抜け・表記ゆれを拾う補助

差し戻し対応の最後は「全体が一貫しているか」が効きます。AIは、複数の文書間で数値・日付・名称が揃っているか、説明と添付が対応しているか、といった点検観点を広げる補助に向きます。

比較の補助:複数の修正方針を並べて判断材料にする

差し戻しには「Aを直すか、Bを足すか」のような分岐が出ます。AIは、分岐ごとのメリット・注意点を並べて判断材料を整理する役として使えます。ただし、採否の決定は必ず資格者が行う前提で置きます。

再利用の補助:対応を"型"として抽出し、次回の負担を減らす

差し戻し対応が終わった後が重要です。対応内容を「次回のチェック観点」や「補足説明文書の型」に戻せると、次の案件で負担が減ります。AIは、この"型への変換"に向きます。


AI以外との組み合わせで差し戻しが減る2つの仕組み

AIだけで押し切るより、運用を2つ整える方が効く場面があります。

版数・更新日・原本の置き場を決めて、差分管理を簡単にする

差し戻し対応は「正しい版はどれか」が曖昧だと崩れます。版数、更新日、原本の置き場(フォルダや管理方法)を決めるだけで、修正の迷子が減ります。AIの出番は、その上で"差分の説明"や"修正履歴の整え"を助ける形になります。

タスクと期限を可視化し、チェック観点を運用に組み込む

差し戻し対応は短距離走に見えて、実際は段取り勝負です。期限、確認待ち、再提出の予定を見える化し、チェック観点を工程に埋め込みます。ここまで整うと、「マニュアル作業をAI化する」議論に自然につながります。


差し戻し時こそ信頼を落とさないために、文書で押さえる2点

差し戻しは、依頼者から見ると不安材料になり得ます。だからこそ、対応そのもの以上に"伝え方の文書"が効きます。

官公署向けは「修正点が追える」最短の補足説明文書にする

官公署向けは、気持ちよりも事実です。どこを、どう直し、何を添付し、どの指摘に対応したのかが追えることが大切です。事情説明を長くするより、修正点が追える形に寄せると、やり取りが減りやすいです。

依頼者向けは「追加確認・期限・次アクション」が一読で分かる文書にする

依頼者向けは、次に何をすればよいかが重要です。追加確認が必要な点、提出までの期限感、依頼者側の作業(資料提出など)を一読で分かる形にします。差し戻しを"トラブル"に見せない工夫になります。


差し戻し対応でつまずきやすい3点と、楽にする整え方

最後に、差し戻し対応が重くなる典型パターンを、運用の観点で3つに絞ります。注意喚起というより「楽にする整え方」として見てください。

判断と作業が混ざって迷う→先に「未確定」を分けて扱う

迷いの正体は「確定していない情報が混ざっていること」です。未確定(依頼者確認が必要、官公署確認が必要)を先に分けるだけで、作業が進みやすくなります。AIは"未確定の洗い出し"の補助として使えます。

差分が追えない→修正履歴が残る形に寄せる

差分が追えないと、確認に時間がかかります。修正履歴が残る形(版数・更新日・修正箇所のメモ)に寄せると、点検が楽になります。AIは、そのメモを読みやすい形に整える補助として働きます。

共有が遅れて手戻り→共有タイミングを工程に組み込む

共有は気合いでやると漏れます。「この段階で依頼者に確認」「この段階で最終版を共有」と工程に入れるだけで、手戻りが減ります。次回は、こうした工程を"作業として定着"させる話(マニュアル作業のAI化)に進めます。


脚注

※「差し戻し」は手続や窓口によって「補正」「訂正」「追加提出(追加説明)」など別の言い回しが使われることがあります。本記事では便宜上「差し戻し」で統一しています。
※行政書士には、業務上知り得た秘密を守る義務が定められています。
※本記事は導入(基礎編)として、修正・差し戻し対応の全論点を網羅せず、負担軽減に直結しやすいポイントに絞っています。


免責

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別事案への法的助言を行うものではありません。手続の要件や運用は変更される場合があるため、必ず一次情報や関係機関の案内で確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。


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