コラム
【特定行政書士試験に向けた学習記録】個別論点の深掘り
1. 前回のおさらい
前回は、法律間の横断比較を行いました。
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期間・期限の違い(不服審査法3か月、訴訟6か月など)
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効力停止の有無
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裁量処分の判断基準
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手続保障(事前手続 vs 事後救済)
今日は、より実務的で混同しやすい個別論点を深掘りして整理していきます。
ここを押さえると、条文だけでは見えにくい「判断のコツ」が分かります。
2. 執行停止と仮の救済の違い
まず、「執行停止」と「仮の救済」を整理しましょう。
項目 | 執行停止 | 仮の救済 |
---|---|---|
法律 | 行政不服審査法 | 行政事件訴訟法 |
目的 | 処分の効力を一時的に止める | 訴訟中に損害回避 |
誰が決定 | 行政庁 | 裁判所 |
例 | 建築停止命令に対して審査請求中の一時停止 | 訴訟中の営業停止命令の一時停止 |
ポイントは、「どの段階で誰が権利保護を行うか」が異なること。
比喩で言えば、執行停止は「役所がブレーキをかける」、仮の救済は「裁判所がブレーキをかける」というイメージです。
3. 行政指導の法的性質
行政指導は「任意協力型」と「実質的強制型」に分けられます。
種類 | 法的効果 | ポイント |
---|---|---|
任意協力型 | 法的拘束力なし | 基本的に従う義務はない |
実質的強制型 | 従わないと不利益処分に繋がる | 実質的には強制力あり |
例:環境改善のお願い(任意) vs 違反者への指導に従わなければ許可取消の恐れ(実質強制)
行政手続法では、指導そのものは義務ではないが、理由提示・聴聞が必要な場合には法的義務になる点に注意。
4. 聴聞・弁明・意見提出の適用区分
ここは混同しやすいポイントです。
手続 | 適用対象 | 目的 | 法的効果 |
---|---|---|---|
聴聞 | 不利益処分(処分前) | 自己弁明・意見表明 | 処分理由決定に反映 |
弁明 | 不利益処分(申請処分含む) | 弁明の機会付与 | 適正な処分判断の補助 |
意見提出 | 任意手続や行政指導 | 行政への意思表示 | 法的義務は限定的 |
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ポイント:処分の種類によって手続の適用範囲が変わる
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比喩:聴聞は「法廷での説明」、意見提出は「手紙でのお願い」、弁明は「事前に一言弁解するイメージ」
5. 特別法優先や例外規定の整理
行政手続法・不服審査法・訴訟法の原則は重要ですが、例外規定や特別法優先ルールも必ず押さえます。
観点 | 内容 | 例 |
---|---|---|
特別法優先 | 特定分野では一般法より特別法を適用 | 建築基準法・薬事法に基づく行政手続 |
例外規定 | 法律上の一般ルールの適用除外 | 緊急避難・国家安全保障関係の処分 |
ポイント:特別法がある場合は原則を横に置き、条文に沿った適用を意識する
6. 図解で整理
┌─────────────┐
│ 事前手続保障 │
│ 聴聞・弁明 │
└─────────────┘
│
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│ │ │
┌─────────────┐ ┌─────────────┐ ┌─────────────┐
│ 行政指導 │ │ 特別法優先 │ │ 事後救済 │
│ 任意/実質強制 │ │ 例外規定 │ │ 執行停止・仮の救済 │
└─────────────┘ └─────────────┘ └─────────────┘
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手続保障と救済の流れ、特別法・行政指導を同時に理解すると、実務感覚と条文知識がつながります。
7. 今日のまとめ
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執行停止 vs 仮の救済:どの段階で誰が権利保護を行うか
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行政指導:任意協力型と実質的強制型の区別
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聴聞・弁明・意見提出:適用範囲を処分種類とセットで整理
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特別法優先・例外規定:原則を押さえつつ、特例の対応を忘れない
今日の学習ポイント:混同しやすい個別論点を「表・図・比喩」で整理することで、特定行政書士試験でも応用が効きやすくなります。