コラム
【特定行政書士試験に向けた学習記録】行政事件訴訟法内の混同ポイント整理
1. 前回のおさらい:行政不服審査法とのつながり
こんにちは。前回は行政不服審査法を学びましたね。
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審査請求前置主義
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審査請求の種類
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処分効力停止の有無、期間、裁量処分と法定処分
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利害関係人、書面・口頭手続
ポイントは「行政処分後の救済手段」と「手続保障」です。
では今回は、そのさらに先、裁判という形での救済について見ていきます。
つまり、行政事件訴訟法です。
「不服申立で解決できなかった場合、どのように裁判で救済できるのか?」
この視点で整理すると理解が深まります。
2. 訴訟類型(取消・無効確認・不作為・義務付け)
行政事件訴訟法では、主に4種類の訴訟があります。
訴訟類型 | 内容 | 条文例・具体例 |
---|---|---|
取消訴訟 | 処分の取り消しを求める | 営業停止処分の取消し |
無効確認訴訟 | 処分が最初から無効であることを確認 | 無効な建築確認 |
不作為の義務付け訴訟 | 行政庁の怠慢に対して行動を求める | 許認可申請の不当放置 |
義務付け訴訟 | 行政庁に一定の行為を行わせる | 公園の安全措置設置を命じる |
比喩
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取消=「すでに出された判定を取り消して!」
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無効確認=「最初からその決定は無効!」
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不作為・義務付け=「やるべきことをやって!」
3. 期間(知った日6か月/処分日1年)
行政不服審査法の期間(3か月/1年)に比べ、訴訟ではやや長く設定されています。
行政事件訴訟法期間
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知った日 → 6か月
処分日 → 1年
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※短い方が適用
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ポイント:裁判に持ち込むまでの猶予が長め
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例:営業停止処分を受けた会社は、処分を知ってから6か月以内に訴えを提起
4. 訴えの利益・原告適格(判例で確認)
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訴えの利益=裁判で利益を得る見込みがあること
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原告適格=訴訟を提起できる立場であること
具体例
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建築確認の無効確認訴訟:隣地所有者は利害関係があるとして訴えの利益が認められる場合あり
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判例では、抽象的利益は認められず、直接・具体的な権利利益の侵害が必要
「裁量処分の逸脱・濫用は誰が訴えることができるか?」
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原告は処分の対象者や直接利害関係人
5. 仮処分・執行停止の効果
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仮処分=裁判所の暫定的な命令で、処分効力を一時的に止めることが可能
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執行停止=本訴訟の判断が出るまで、処分の効力を停止
例
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営業停止処分に対して仮処分を申請 → 営業継続可能
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目的:国民の不利益を一時的に避けつつ、本訴訟で判断
6. 裁量処分の判断基準(判例で確認)
裁量処分の取消訴訟では、裁量権の逸脱・濫用がポイント。
判例ポイント | 内容 |
---|---|
逸脱 | 法律の範囲外で裁量を行使した |
濫用 | 目的や合理性を欠いた裁量行使 |
比例原則 | 権利侵害が最小限であるかを確認 |
例
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建築確認の条件設定が合理性を欠く → 取消訴訟で違法と判断
7. 利害関係人の参加(共同訴訟・介入)
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共同訴訟:複数人が同一の訴えを提起
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介入:利害関係人が既存訴訟に参加
ポイント
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行政不服審査法よりも柔軟に利害関係人の参加が可能
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例:隣地所有者が建築確認取消訴訟に介入
8. 証拠・書面主義の範囲
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原則:裁判所は書面主義
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口頭弁論もあるが、証拠提出は原則書面で行う
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例:許認可書類、申請書コピー、行政庁の処分理由書など
比喩
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書面=「公式な証拠提出」
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口頭弁論=「現場で説明する補助的手段」
9. 図解で整理
行政事件訴訟法の流れ
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処分(不利益処分)
↓
訴訟類型選択
├─ 取消訴訟
├─ 無効確認訴訟
├─ 不作為の義務付け訴訟
└─ 義務付け訴訟
↓
期間(知った日6か月/処分日1年)
↓
訴えの利益・原告適格確認
↓
仮処分・執行停止(必要時)
↓
裁量処分の判断(逸脱・濫用・比例原則)
↓
利害関係人参加(共同訴訟・介入)
↓
証拠提出・書面主義
↓
判決
10. 今日のまとめ
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訴訟類型を正確に区別:取消・無効確認・不作為・義務付け
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期間は知った日6か月/処分日1年
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訴えの利益・原告適格を確認(判例必須)
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仮処分・執行停止で救済の暫定措置
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裁量処分は逸脱・濫用・比例原則で判断
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利害関係人の参加可能性(共同訴訟・介入)
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証拠は原則書面主義、口頭弁論は補助的
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前回とのつながり
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行政不服審査法は行政庁への救済申立
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行政事件訴訟法は裁判による救済
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「処分前→処分後→裁判」という流れで整理すると理解しやすい
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