コラム
【特定行政書士試験に向けた学習記録】行政不服審査法内の混同ポイント整理
1. 前回のおさらい:行政手続法とのつながり
こんにちは。前回は「行政手続法の混同ポイント」を学びましたね。
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意見聴取・弁明の範囲
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公示・通知義務
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行政指導の法的性質
ポイントは「行政処分に関わる国民の権利保護」と「手続義務の区分」でした。
さて、今回は行政不服審査法に焦点を移します。
「行政手続法が処分の前提手続」とすれば、行政不服審査法は処分後の救済手続です。
ですから、混同しやすいポイントは手続の順序・種類・効力・期間・対象者です。
2. 審査請求前置主義(原則・例外)
(1) 原則:前置主義とは?
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不服申立を裁判に持ち込む前に、まず行政庁に対して審査請求を行う必要がある制度
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例:道路使用許可の拒否 → まず都道府県に審査請求
問いかけ
「裁判に直接行けないのは不便じゃない?」
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理由:裁判前に行政が自ら判断を見直すことで、紛争の早期解決・行政運営の安定化を図る
(2) 例外
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法律で審査請求前置を不要とする場合あり(特別法の規定)
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例:独立行政法人の一部決定、緊急時処分など
3. 審査請求の種類
種類 | 内容 | 条文例 |
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再調査請求 | 処分の瑕疵や不備の是正 | 第3条 |
異議申立 | 法定の異議申し立て手続 | 第4条 |
審査請求 | 通常の不服申立 | 第5条 |
比喩
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再調査請求=先生にもう一度採点してもらう
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異議申立=担当部署に直接抗議
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審査請求=正式な手続で再評価を求める
4. 処分の効力停止の有無
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原則:審査請求しても処分効力はそのまま継続
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例外:効力停止の決定を行政庁が行った場合、処分の効果を一時停止可能
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目的:国民の不利益を最小化しつつ、行政の権限も維持
5. 期間の整理
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審査請求は、知った日から3か月/処分日から1年が原則
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注意:行政手続法の聴聞・弁明義務とは期間が異なる
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図で整理
不服審査法期間
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知った日 → 3か月
処分日 → 1年
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※短い方の期間が適用される場合あり
6. 裁量処分 vs 法定処分
種類 | 意味 | ポイント | 判例例 |
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裁量処分 | 行政庁に判断余地あり | 逸脱・濫用がないか | 行政裁量権の逸脱・濫用(最高裁昭和50年判決) |
法定処分 | 条文で内容・要件が決まっている | 条件を満たせば必ず処分 | 建築確認の承認拒否 |
問いかけ
「裁量の幅がある場合、何を基準にチェックする?」
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答え:合理性・公平性・比例原則。判例が参考になります。
7. 利害関係人の範囲
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審査請求の対象者は、処分によって直接利益・不利益を受ける者
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例:建築物の建築確認 → 建築主や隣地所有者
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注意:第三者は原則参加不可(例外あり)
8. 書面主義 vs 口頭手続
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原則:審査請求は書面で提出
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例外:口頭での手続も認められる場合あり(状況・行政庁の裁量)
比喩
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書面=公式書類で正式に申請
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口頭=窓口での相談・簡易申立
9. 図解で整理
行政不服審査法の流れ
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処分(不利益処分)
↓
審査請求前置(原則)
├─ 再調査請求
├─ 異議申立
└─ 審査請求
↓
効力停止の決定(必要時)
↓
裁量処分 or 法定処分の審理
↓
利害関係人確認
↓
書面主義・口頭手続
↓
裁決
10. 今日のまとめ
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前置主義 → 裁判前に行政に救済申立
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審査請求の種類 → 再調査・異議・通常審査請求
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効力停止 → 原則そのまま、例外あり
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期間 → 知った日3か月/処分日1年
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裁量 vs 法定処分 → 逸脱・濫用チェック
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利害関係人 → 処分で直接利益・不利益を受ける者
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書面主義 vs 口頭手続 → 原則書面、例外口頭
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前回とのつながり
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行政手続法の手続保障(聴聞・弁明)と対応
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不利益処分後の救済手段を理解することで、処分前後の流れを体系的に整理可能
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