コラム
【特定行政書士試験に向けた学習記録】行政手続法 ― 審査基準・処分基準と努力義務・法的義務
1. 前回のおさらい:条文構造と処分の違い
こんにちは。前回は「条文構造と申請・不利益処分」の整理を学びました。
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申請に対する処分(第2章) → 拒否時に理由提示(第8条)
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不利益処分(第3章) → 聴聞・弁明、理由提示(第14条)
処分の流れや条文番号を意識することが大事でしたね。
今回はその次のステップとして、**「審査基準・処分基準」と「努力義務・法的義務」**の理解に進みます。
2. 「基準」と「義務」を整理する
まず、ここで問いかけです。
「行政が処分を出すとき、何を基準に決めるか知っていますか?」
ここが行政手続法の学習で意外と混乱しやすい部分です。
ポイントは、申請処分と不利益処分で基準や義務の性質が違うということです。
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審査基準(申請処分)
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国民の申請を受けて行政が判断する際の基準
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「どの条件を満たせば承認するか」というルール
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基準は法律や条例で明確化されていることが多い
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処分基準(不利益処分)
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国民に不利益を与える場合の基準
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「どんな場合に処分を出すか」という判断の指針
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裁量を伴う場合があり、裁量権の逸脱・濫用に注意
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ここで比喩を入れます。
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審査基準 → 道路標識のように「ここを通れば進めますよ」という決まり
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処分基準 → 信号機の赤・黄・青の判断みたいに、状況次第で判断が変わる柔軟性がある
3. 努力義務と法的義務
次に、「義務」の違いを整理しましょう。
義務の種類 | 内容 | 対象 | 具体例 |
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努力義務 | 行政ができる限り努力すべきこと | 任意協力型 | 行政指導、アドバイス、助言 |
法的義務 | 法律に基づき必ず履行すべきこと | 強制力あり | 申請拒否時の理由提示(第8条)、不利益処分の聴聞・弁明(第14条) |
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問いかけ
「行政指導を無視しても処分される?」
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努力義務は強制力がないので、直接処分には結びつきません。
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しかし、行政指導に従うことで後々の不利益処分を避けやすくなります。
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具体例
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飲食店営業の許可を申請した場合
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努力義務:行政が衛生指導を行う
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法的義務:不備があれば拒否理由を提示する
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4. 条文・条項で根拠を整理
条文を意識しながら、基準・義務を整理すると理解が定着します。
処分の種類 | 条文 | 義務 | 備考 |
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申請処分 | 第8条 | 理由提示(法的義務) | 承認or拒否の判断基準に基づく |
不利益処分 | 第14条 | 聴聞・弁明+理由提示(法的義務) | 処分基準に従って行政が判断 |
行政指導 | 第4条 | 努力義務 | 任意協力型、法的強制力なし |
この表を見ながら、「基準」と「義務」をセットで理解しましょう。
5. 図解:処分と義務の関係
[申請処分] → 判断基準に従って承認/拒否
↳ 拒否時:理由提示(法的義務)
[不利益処分] → 処分基準に従って決定
↳ 聴聞・弁明 → 処分決定(法的義務)
[行政指導] → 努力義務(任意協力型)
図にすると、どの義務が強制力ありか、どの義務が努力義務かが一目でわかります。
6. 審査基準と処分基準の見分け方
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審査基準
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国民からの申請に対して「合格/不合格」を決める
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基準は比較的明確で、法律・条例に記載
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処分基準
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国民に不利益を与える場合に「出す/出さない」を判断
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裁量を伴い、裁量権の逸脱・濫用に注意
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具体例クイズ
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建築確認申請 → 申請処分?不利益処分?
→ 申請処分 -
無許可営業での営業停止 → 申請処分?不利益処分?
→ 不利益処分
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7. 努力義務と法的義務を実務で意識する
ここで問いかけです。
「行政書士として相談を受けるとき、どちらを重視するべきか?」
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法的義務 → クライアントにとって権利の直接的根拠
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努力義務 → 予防的・助言的な意味合いで活用
つまり、条文に基づく権利救済は法的義務を軸に考え、行政指導や助言は努力義務として理解します。
8. 今日のまとめ
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審査基準 vs 処分基準
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申請処分は明確な基準、承認/拒否
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不利益処分は裁量を伴う基準
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努力義務 vs 法的義務
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努力義務:任意協力型、法的強制力なし
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法的義務:条文で必須、権利保護に直結
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条文・条項を意識
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第8条(申請処分)、第14条(不利益処分)、第4条(行政指導)
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図解・表で整理
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流れと義務の種類を頭の中で体系化
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次回への橋渡し
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基準・義務の理解をもとに、「行政手続法内の混同ポイント整理」に進みます。
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意見聴取・弁明、公示・通知、行政指導の法的性質などをさらに具体的に理解していきます。
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