コラム
【特定行政書士試験に向けた学習記録】行政手続法 ― 条文構造と申請・不利益処分の整理
1. 前回のおさらい:法律の目的を確認
こんにちは。前回は「法律の根幹概念・目的」を学びましたね。ここで押さえたポイントを簡単におさらいしましょう。
-
行政手続法:行政運営の公正性・透明性と国民の権利利益保護
-
行政不服審査法:国民の権利利益救済と行政の適正運営
-
行政事件訴訟法:国民の正当な権利利益救済と行政の適法運営
この3法は、事前保障 → 行政内部救済 → 司法による最終チェックという流れでつながっています。今回学ぶ行政手続法の条文構造を理解すると、処分のルールや手続保障がどの位置にあるのかが見えてきます。
2. 条文構造の全体像
行政手続法は、ざっくり言えば次の流れで構成されています。
-
申請に対する処分(第2章)
-
国民が行政に何かをお願いする場合の手続
-
例:建築確認申請、営業許可の申請
-
-
不利益処分(第3章)
-
行政が国民に対して不利益を与える処分
-
例:営業停止処分、免許取消処分
-
条文番号にも意味があります。例えば:
-
第8条:申請拒否の理由提示
-
第14条:不利益処分の理由提示
この番号を意識して学習すると、条文ごとの役割や論点が整理しやすくなります。
3. 申請に対する処分とは何か?
「申請に対する処分」は、簡単に言うと国民からのお願いを行政が承認するかどうか決める手続です。
ここでポイントとなるのは、行政は承認だけでなく、拒否する場合の理由を必ず示さなければならないという点です。
-
具体例
-
あなたが飲食店営業の許可を申請したとします。
-
行政が「安全基準を満たしていないから拒否します」と理由を明示する。
-
これが第8条の「申請拒否の理由提示」に対応します。
-
このルールがあることで、国民は行政の判断を納得できる形で知ることができるのです。
4. 不利益処分とは何か?
一方、不利益処分は、行政が国民に対して不利益を与える場合の手続です。
-
例
-
建築違反で営業停止
-
違法駐車での免許取消
-
ポイントは、処分前に聴聞や弁明の機会を与えることが原則である点です(第14条)。
-
聴聞と弁明の違い
-
聴聞:行政側が意見を直接聞く手続
-
弁明:文書で意見を提出する手続
-
この違いを条文とセットで理解することが、混同を防ぐ第一歩です。
5. 申請処分と不利益処分の比較
ここで、簡単な表で整理してみましょう。
事項 | 申請に対する処分 | 不利益処分 |
---|---|---|
対象 | 国民の申請 | 国民に不利益を与える処分 |
条文 | 第2章、第8条 | 第3章、第14条 |
行政の義務 | 拒否理由の提示 | 聴聞・弁明の機会、理由提示 |
目的 | 公正な承認手続 | 国民の権利保護と手続保障 |
こうして並べると、処分の性質や条文の役割が一目で理解できます。
6. 聴聞・弁明の適用範囲
行政手続法では、誰に、どのような手続を適用するかが重要です。
-
適用対象
-
申請処分:基本的に全申請に適用(拒否の場合のみ)
-
不利益処分:処分の内容や法律上の規定に応じて聴聞・弁明の必要性が決まる
-
-
具体例
-
軽微な違反で改善命令のみ → 弁明だけで十分
-
営業停止など重大処分 → 聴聞が必要
-
ここで意識してほしいのは、処分の重大性に応じて手続の厚みが変わるということです。条文での根拠と実務感覚をリンクさせて理解すると、記憶にも定着しやすいです。
7. 図解で整理:処分の流れ
[申請] → [行政審査] → [承認/拒否]
↳ 拒否の場合:理由提示(第8条)
[不利益処分] → [聴聞・弁明] → [処分決定]
↳ 理由提示(第14条)
この流れを頭の中で描けるようになると、次に学ぶ「基準・義務の理解」や「混同ポイント整理」への橋渡しになります。
8. 学習のコツ
-
条文番号を意識する:第2章・第3章、第8条・第14条
-
具体例を頭の中で描く:自分が行政書士として相談を受けた場合を想像
-
比較表で整理:申請処分と不利益処分の違いを可視化
-
聴聞・弁明の区別を明確にする:処分の重大性と手続の厚みをリンク
9. 今日のまとめ
-
行政手続法の目的
-
公正性・透明性の確保
-
国民の権利保護
-
-
条文構造の理解
-
第2章:申請に対する処分
-
第3章:不利益処分
-
-
手続保障の理解
-
申請処分:拒否理由提示(第8条)
-
不利益処分:聴聞・弁明・理由提示(第14条)
-
-
比較表と図解で可視化
-
流れや対象・義務・目的を整理
-
-
次回への橋渡し
-
条文構造を理解した上で、次は「審査基準・処分基準」「努力義務・法的義務」を掘り下げます。
-