コラム
【特定行政書士試験に向けた学習記録】法律の根幹概念・目的
1. まず「入口」で立ち止まって考えましょう
みなさん、勉強を始めるときに「条文の暗記」から入っていませんか?
もちろん条文の知識は大事です。でも、その前にもっと大事なことがあります。
それは―― 「そもそもこの法律はなぜあるのか?」 を考えることです。
例えてみましょう。
建物を建てるとき、いきなり柱や屋根を組み立てませんよね。
まずは土台、つまり基礎工事が必要です。
行政法の学習でも同じです。
基礎をしっかり理解していないと、似たような条文が出てきたときに「あれ?どっちだったっけ」と迷子になってしまいます。
逆に目的を押さえておけば、「この条文はあの理念の具体化だな」と自然につながっていきます。
今日の学習は、この 基礎工事=理念・目的の理解 です。
さあ、一緒に3つの法律を順番に見ていきましょう。
2. 行政手続法 ― 公正性・透明性と権利保護
まず最初は 行政手続法 です。
行政手続法の目的は、条文にしっかり書かれています。
第1条にはこうあります。
「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益を保護すること」
ここで大事なキーワードは 「公正」「透明性」「権利利益の保護」 の3つです。
なぜこんな目的が必要なのでしょうか?
想像してみてください。もし行政庁が、国民からの申請に対して「気分でOK・NGを決める」としたらどうなるでしょう。
国民は行政を信頼できなくなりますよね。
そこで行政手続法は、申請や不利益処分の際に「どう判断するのか、どう説明するのか」をルール化しました。
つまり行政に 説明責任を課す仕組み なのです。
実際にどんな条文で具体化されているかというと……
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第2章「申請に対する処分」
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第3章「不利益処分」
特に 理由提示義務(8条・14条) は、透明性の最たるものです。
👉 行政手続法は、行政と国民の信頼関係を築くための「事前のルールブック」。
「公正で透明な行政」を通じて、国民の権利を守る――これが第一歩です。
3. 行政不服審査法 ― 救済と適正運営
次に 行政不服審査法 に進みましょう。
目的は第1条にこう書かれています。
「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保すること」
つまりキーワードは 「権利救済」と「行政の適正運営」 です。
イメージしてみてください。
行政庁から「あなたの申請は不許可です」と処分を受けた。
でも、それは不当だと思ったとき、いきなり裁判所に行くのは大変ですよね。時間もお金もかかる。
そこでまず、行政庁の内部で処分を見直す仕組みを整えたのが行政不服審査法です。
これは 「行政内部の事後救済」 と言えます。
具体的には――
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不服申立期間:「知った日から3か月」「処分の日から1年」
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効力停止:重大な損害を避けるため、一時的に処分をストップできる制度
これらの細かいルールは、すべて「国民の救済」と「行政の適正化」という目的から導かれています。
👉 だから、条文を覚えるときには「これは救済を実現するためのルールだな」と結びつけると忘れにくいんです。
4. 行政事件訴訟法 ― 司法による最終的なチェック
最後に 行政事件訴訟法 です。
この法律の目的、第1条を見てみましょう。
「国民の正当な権利利益を救済するとともに、行政の適法な運営を確保すること」
ここでも出てきました。「権利救済」と「適法な運営」。
行政不服審査法と似ていますよね。
でも、大きな違いがあります。
それは、ここでは 外部のチェック=裁判所 が登場するという点です。
行政庁の判断を、完全に第三者である裁判所が審査し、違法なら取り消します。
これが行政事件訴訟法の大きな役割です。
具体的な訴訟の種類には――
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取消訴訟:処分を取り消す
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無効確認訴訟:処分が最初から無効だと確認する
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義務付け訴訟:行政に「やりなさい」と命じる
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差止訴訟:違法な処分を未然に防ぐ
👉 ポイントは、「最終的な外部チェックとして司法が働く」ということ。
これが行政不服審査法との最大の違いです。
5. 3法のつながりを整理する
さて、ここまで3つの法律を見てきました。
ここで一度、全体のつながりを整理してみましょう。
流れはこうです。
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行政手続法 → 事前にルールを整えて、公正性・透明性を確保
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行政不服審査法 → 行政内部で救済する「事後救済」
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行政事件訴訟法 → 司法による最終的な救済・適法性の確保
つまり三層構造になっています。
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入口の保障 → 行政手続法
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中間の救済 → 行政不服審査法
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最終チェック → 行政事件訴訟法
👉 この流れを「羅針盤」として頭に入れておくと、学習全体で迷子になりません。
6. 今日のまとめと次のステップ
では、今日のまとめを短く整理しましょう。
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行政手続法:公正性・透明性 と 権利保護
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行政不服審査法:権利救済 と 適正運営
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行政事件訴訟法:権利救済 と 適法運営
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3法の流れは「事前保障 → 内部救済 → 外部救済」
これが今日のゴールです。
次の学習では、今回理解した目的がどの条文に具体化されているのかを確認します。
例えば、行政手続法の「公正性・透明性」は理由提示義務(8条・14条)に直結しますし、行政不服審査法の「救済」は第3条に、不服申立ての仕組みとして現れます。
行政事件訴訟法の「救済・適法運営」は、取消訴訟など各訴訟類型(3条以下)に表れています。
👉 今日学んだ「理念」という羅針盤を手に、次回から条文の森に入っていきましょう。