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コラム

代理行為目録とは?代理権目録(任意後見)との違い・書き方の要点を実務目線で解説

「代理行為目録」と「代理権目録」は言葉が似ており、検索していると混同しがちです。だが使う場面が異なるため、同じ感覚で作成してしまうと「必要な権限が足りない」「逆に広すぎて問題になる」などの不安が残ります。本記事では、保佐・補助で出てくる代理行為目録の位置づけを整理し、任意後見の代理権目録との違いをわかりやすく解説します。

Q1. 代理行為目録とは何のための書類か?
A. 保佐・補助で「どの行為を代理してよいか」を具体的に列挙するための目録です。

Q2. 任意後見の代理権目録と同じか?
A. 似ているが別物である。手続の場面・根拠・使われ方が異なります。

Q3. 間違えるとどうなるか?
A. 申立てがスムーズに進まない、必要な代理権が不足する等の実務リスクがあります。


代理行為目録とは

代理行為目録は「保佐・補助で、代理してよい"法律行為"を特定するための一覧」です。家庭裁判所に提出する書式として用意されており、チェックや記載で範囲を明確にするのが実務の基本となります。

どんな手続で出てくるか(保佐・補助の場面)

代理行為目録が出てくるのは、保佐・補助の申立てで「代理権付与」も求める場面です。つまり、単に保佐人・補助人を付けるだけでなく、特定の契約などを本人に代わって行う必要があるときに使うことになります。実際、裁判所の書式一覧にも「代理行為目録【保佐・補助用】」が明示され、申立書とセットで提出する前提になっています。まずは「代理権が要る案件なのか」を見極めることが、混乱を防ぐ第一歩となります。

目録が求められる理由(権限の範囲を明確化するため)

代理行為目録が求められる理由は、代理できる範囲を"具体的に"確定させる必要があるからです。裁判所の用紙には「必要な代理行為に限りチェック・記載する」旨が書かれており、包括的に広げる発想では作られていません。実務では、預貯金の解約、不動産の売却、施設契約など、困っている行為を絞り込んで記載し、本人の同意を前提に裁判所が判断する流れになります。ここが曖昧だと、後で「その行為は目録にないので動けない」という詰まりが起きやすくなります。

代理・同意・取消との関係(混乱ポイントを整理)

混乱が多いのは「代理」「同意」「取消」が別物なのに、ひとまとめに理解してしまう点であります。

代理は、本人に代わって法律行為を行える権限であるため、どの行為まで代理してよいかを特定しておく必要があります。一方、同意は「本人が行う行為に同意が要る」仕組みで、同意がないまま行った場合には、後から取り消せる(取消)場面が出ます。保佐は民法13条で、補助は民法17条で「同意が必要となる行為(=特定の法律行為)」や取消の枠組みが整理されています。用語が似ているほど、書類作成では"権限の型"を分けて考えるのが安全です。


代理権目録(任意後見)との違い

任意後見の「代理権目録」は"契約で定める代理の範囲"、保佐・補助の「代理行為目録」は"裁判所手続で求める代理の範囲"という位置づけです。似て見えても起点が違うため、同じノリで転用しないほうが確実です。

比較表:手続/作成主体/使われ方/注意点

両者の違いを、実務で迷いやすい観点に絞って整理します。

観点 代理行為目録(保佐・補助) 代理権目録(任意後見)
手続 家庭裁判所の申立て(保佐・補助) 公正証書での任意後見契約
作成主体 申立人が作成し、裁判所が審判で判断 本人(委任者)と任意後見人候補が契約で設計
使われ方 目録記載の範囲で代理が可能(審判の範囲が基準) 目録記載の範囲が契約上の代理権の中核
注意点 必要行為に絞って特定し、本人同意も踏まえて進める 将来の場面を想定し、漏れ・過不足を調整する

家庭裁判所の書式として「代理行為目録【保佐・補助用】」が用意されている一方、任意後見の代理権目録は公証実務で案内される位置づけです。

任意後見は"将来に備える"、保佐・補助は"今困っていることに対応"

任意後見は、判断能力があるうちに契約で備える制度であるため、「将来どんな支援が必要になるか」を先回りして設計します。公証人側の案内でも、代理権目録で任せたい事項を列挙し、範囲を明確化することが中心となります。

これに対し、保佐・補助は、すでに現時点で契約や管理に支障が出ていることを前提に、必要な行為を"今の困りごと"から絞っていく進め方が基本です。同じ「目録」でも時間軸が逆であるため、設計思想が変わります。

検索で混同しやすい理由(用語・様式・解説記事の混在)

混同が起きる主因は、検索語が「代理権目録」に寄りやすいのに、実際には保佐・補助の「代理行為目録」へ辿り着くケースが多い点です。さらに、任意後見の代理権目録には文例PDFが多く、裁判所書式(チェック形式)と見た目が大きく異なるため「書式が違う=自分が間違えた?」となりがちです。

結局は、①裁判所手続(保佐・補助)なのか、②契約(任意後見)なのか、入口を先に確定すると整理が進みます。


代理行為目録でよくある失敗(実務の詰まり)

代理行為目録の失敗は、手続の遅れだけでなく「必要な支援が届かない」形で表面化することになります。作成時点での詰め不足が、後から追加申立てや家庭内対立につながるため、ありがちな落とし穴を先に押さえておくのが得策です。

必要な行為が書かれておらず、結局動けない

一番多いのは、目録に必要な行為が入っておらず、現場で「その契約は代理できない」と判明するケースです。たとえば施設入所の契約や預金の解約など、やりたいことが明確でも、目録上は別項目だったというズレが起きます。

裁判所のハンドブックでも、審判書に記載のない行為にさらに代理権が必要になった場合は、新たな代理権付与の手続が必要になる旨が示されています。最初に"やる行為"から逆算して書くことが、遠回りを防ぐコツとなります。

広すぎる権限で、本人利益の観点が弱くなる

反対に、広く書きすぎて「本人のために必要な範囲なのか」が薄く見えるのも実務上のつまずきです。実務上は、包括的に"全部お任せ"とする運用はほとんど採られず、困っている行為に絞って記載することが前提となります。

実際、裁判所の案内や用紙には「包括的代理権は認められません」「必要な代理行為に限る」といった注意書きが置かれています。まずは本人の生活・財産上の課題を特定し、その解決に必要な代理行為へ落とし込むと説得力が出ます。

家族の認識が揃わず、申立て後に揉める

家族間の認識ズレも、申立て後に揉める典型です。たとえば「不動産は売らないつもりだった」「預金は管理だけで十分だった」など、権限の想定が一致していないと、候補者選びや目録の範囲で対立が起こりがちです。

裁判所は本人の意向や事情も踏まえて判断するため、家族側の足並みが揃わないと説明が難しくなりがちです。申立て前に、目録の各項目が"何のために必要か"を家族で言語化しておくと、後工程が滑らかになります。


作成・申立て前に決めるべきこと(チェックリスト)

代理行為目録は、書き方のテクニックよりも「何を、どこまで、誰が担うか」を先に決めるほど精度が上がります。ここを飛ばすと、チェックは埋まっていても実務で使いにくい目録になりやすいため、申立て前の棚卸しが重要です。

何に困っているか(財産・医療・施設・契約)を棚卸し

最初にやるべきは「今、何が回らないのか」を具体化することです。棚卸しは、抽象的に"生活全般"ではなく、契約・手続単位で書き出すのがコツとなります。

  • 預貯金:解約、払戻し、口座管理
  • 不動産:売却、賃貸借、修繕契約
  • 施設:入退所契約、利用料支払い
  • 生活:公共料金、福祉サービス契約

この一覧ができると、目録のチェック項目へ落とし込みやすくなります。

※なお、手術等の医療行為そのものへの同意権限は、目録の記載だけで当然に認められるものではなく、実務上は個別判断となります。

代理が必要な範囲と、同意で足りる範囲

次に、「代理でないと進まないもの」と「同意で足りるもの」を分けます。

代理は本人に代わって契約等を成立させるため、本人が署名できない・相手方が代理を求める場面で効果的です。一方、同意は本人が行う前提で、重要行為にブレーキをかける仕組みです。

そして重要なのは、同意と取消の関係である。民法上は「同意を要する行為を、本人が同意なく行った場合に、後から取り消して守れる」という位置づけになります(保佐は13条、補助は17条)。本人の"うっかりミス"を後から是正できる枠組みだと捉えると、設計が整理しやすくなります。

※取消しの行使には、期間制限や効果(原状回復)、第三者との関係などが問題となる場合があります(例:取消権の期間制限)。

誰を候補者にするか(適任性・利害関係)

最後に、候補者の選定です。目録が整っていても、候補者に利害関係が強いと運用が難しくなることがあります。実務では、以下の観点で検討すると良いでしょう。

  • ①本人の意思を尊重できるか
  • ②財産管理を継続できるか
  • ③親族間の調整役になれるか
  • ④利益相反のおそれが低いか

裁判所は本人の意向も聴きつつ判断するため、本人との関係性や、なぜその人が適任かを説明できる材料を用意しておくと安心です。

迷ったときの相談先と、依頼すると何が変わるか

迷いが出やすいのは「制度の違い」よりも「自分の案件ではどこまで必要か」の線引きです。自力で進める場合の最低限を押さえたうえで、詰まりやすい点だけ相談・依頼するのが現実的です。

自分で進める場合に最低限やること

自分で進めるなら、最低限「書式の最新版確認」と「目録の根拠づけ」が必要です。裁判所サイトから申立書式一式を入手し、代理行為目録は"困りごと→必要な契約→該当項目"の順でチェックを行います。

あわせて、本人の意向確認(同意の見通し)と、家族の合意形成も先に行うと手戻りが減ります。書式や運用は変更されることがあるため、古いテンプレの流用は避けるのが無難です。

専門家に依頼すると減るリスク(やり直し・不足権限)

専門家に依頼すると、最大のメリットは「不足権限」と「過剰な権限」の両方を避けやすくなる点です。必要行為の洗い出しを手続用語へ翻訳し、裁判所書式に落とす作業は慣れが要るため、経験があるほど漏れが減ります。

また、本人利益の説明(なぜ必要か)を整えることで、申立て後の補正対応や追加申立てのリスクも抑えられます。全部丸投げではなく、目録の部分だけレビューしてもらう形も現実的な選択肢となります。


まとめ

  • 代理行為目録は、保佐・補助で「代理してよい法律行為」を特定するための書類である。
  • 任意後見の代理権目録とは、手続の場面(裁判所/公正証書)と役割が異なる。
  • 代理・同意・取消は別概念で、特に同意と取消は民法13条・17条の枠組みで整理できる。
  • 実務上は、包括的に"全部お任せ"とする運用はほとんど採られず、必要な行為に絞るのが前提である。
  • 迷ったら、困りごとの棚卸し→代理が要る範囲の特定→候補者の適任性確認、の順で整えると進めやすくなる。

総括として、書類名の似ている部分に引っ張られず「裁判所手続(保佐・補助)か、契約(任意後見)か」を先に確定すると、目録の作り方が一気に整理できます。まずは困りごとの棚卸しから始め、必要な権限を"過不足なく"設計していきましょう。


脚注

  • 代理・同意・取消の概念は手続により扱いが異なるため、最終判断は個別事情により変わります。
  • 家庭裁判所提出書類の様式・運用は変更されることがあります。
  • 取消権の行使には期間制限等が関わる場合があります。

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件への法的助言ではありません。具体的な手続・書類作成は状況により結論が異なるため、専門家へ相談してください。

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