コラム
相続|戸籍は全部そろっているのに「相続人を確定できない」と言われる理由
Q:出生から死亡までの戸籍を集めたのに、相続人を確定できないことはありますか?
A:あります。現時点の戸籍一式だけでは、相続人を確定したと扱えない場合があり、追加の戸籍や資料の確認が必要と判断されることがあります。
役所の案内どおり、「出生から死亡までの戸籍」を集めた。 窓口でも「これで一式ですね」と言われた。
それなのに、
「この戸籍関係だけでは、相続人を確定したとは扱えません」
と言われてしまう。
戸籍が足りないと言われているわけではない。 でも、このままでは"確定した相続人"として扱えない。
この記事では、制度全体の解説はせず、なぜこうした判断がされるのか、その理由だけを整理します。
前提:見られているのは「枚数」ではなく「連続性」
まず前提として、相続人は相続開始時点(被相続人の死亡時)における身分関係によって確定します(民法)。
その確認のために戸籍が使われますが、実務上見られているのは、
- 戸籍が何通そろっているか
ではなく
- 身分関係が連続して確認できるか
という点です。
このため、市区町村の案内で取得できる「戸籍一式」と、相続人確定に必要な「連続した戸籍」が、必ずしも完全に一致しないことがあります。
なぜ「戸籍は全部あるのに」確定できないと言われるのか
相続人確定では、相続開始時点までの身分関係が、途中で切れずにつながっていることが求められます。
そのため、戸籍が一式そろっていても、現時点の資料だけでは相続人を確定したと扱えず、追加の確認が必要と判断される場合があります。
典型パターン① 養子縁組・離縁の履歴が途中にあり、関係が読み取れない
養子縁組や離縁といった身分の変動は、その時点の戸籍にしか記載されません。
戸籍改製をまたいでいる場合、
- どの時点で
- 誰と
- どの身分関係にあったのか
が連続して確認できないと、追加の戸籍確認が必要と判断されることがあります。
典型パターン② 婚姻・離婚により、戸籍関係が枝分かれしている
婚姻や離婚により、
- 戸籍が移動している
- 一部の身分事項が別戸籍に移っている
場合、表面的には「そろっている」ように見えても、相続開始時点の身分関係が一本につながらないことがあります。
特に、再婚や前婚の子が関係するケースでは、この判断がされやすくなります。
典型パターン③ 改製原戸籍・除籍をまたぐ連続性が確認できない
戸籍は制度改正のたびに改製されます。
そのため、
- 現在戸籍
- 除籍
- 改製原戸籍
をまたいで身分関係を確認する必要があります。
この過程で、一時期の戸籍が確認できない場合、相続人関係を確定したとは扱えず、追加取得が必要と判断されることがあります。
なお、広域交付で「出生から死亡まで」と案内されて取得した場合でも、特殊な身分関係(養子縁組・再婚等)があると、追加の戸籍取得が必要になることがあります。
チェックリスト|追加確認が必要になりやすい兆候
次に当てはまる場合は、追加確認が生じやすくなります。
- 養子縁組・離縁の履歴がある
- 再婚・前婚の子がいる
- 戸籍が複数回改製されている
- 広域交付でまとめて取得した
- 「枚数がそろえば足りる」と考えて集めた
よくある誤解
- 「出生から死亡まで集めれば必ず確定できる」わけではありません
- 「役所で一式と言われた=相続人確定」という意味ではありません
- 不足ではなく、"確認が足りない"と判断される場合があります
補足
相続人関係の確認は、提出先や確認目的によって、求められる整理の深さが異なる場合があります。
本記事は、法令および公式資料に基づく一般的な考え方の整理です。
参考
民法(相続人の範囲) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
戸籍法(身分関係の記録・改製) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224
法務省|法定相続情報証明制度の概要 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00045.html
免責
本記事は、法令・公式資料に基づく一般的な情報提供を目的としています。個別の事情により、必要となる確認や対応が異なる場合があります。
