コラム
ペットと防災|災害時に備えておきたいこと
川崎市内で災害が発生した場合、「ペットを一緒に避難できるのか」「避難所ではどこまで同伴が認められるのか」を事前に把握しておくことが、迅速な初動につながります。
川崎市では、市内すべての指定避難所でペットとの同行避難が原則として可能です。ただし、人と同じ避難室で過ごす「同室避難」ではなく、屋外または指定された動物専用スペースでの管理となる点に注意が必要です。
災害時に迷わず安全に動けるよう、平時からルール・避難ルート・持ち物・しつけの4要素を整えておきましょう。
目次
- 川崎市の避難ルールを理解する
- 避難ルートを二重化する
- 風水害期の早期行動計画
- 犬の基本トレーニング4項目
- 同行避難バッグの標準チェックリスト
- 在宅避難を成立させる7日分備蓄
- 身元確認と登録の維持
- 家族での役割と連絡体制
- 継続的な点検運用(年2回)
第1章 川崎市の避難ルールを理解する
要点
- 川崎市は「同行避難」可能だが「同室」は不可
- ケージ(クレート)は必携
- ペット用品・物資は各自持参
川崎市では、避難時にペットを同行することを認めていますが、避難所建物内の人の生活スペースに同伴させることはできません。動物は屋外の専用エリアやテント内など、指定区画で管理する運用です。
したがって、「同行避難=同じ空間で一緒に過ごす」ではないことを理解しておく必要があります。
ケージ(クレート)は入場の必須条件
避難所ではケージに入っていない動物は受け入れ不可とされています。川崎市は「ケージの持参を必ず」と明示しており、避難所に備蓄はありません。
犬が立って向きを変えられる程度のサイズを選び、平時から慣れさせておくことが推奨されています。代用として洗濯ネット等の使用は推奨されません(安全確保の観点)。
身元明示(鑑札・済票・リード)
犬の飼い主は、首輪に鑑札と狂犬病予防注射済票を装着し、リードを付けて管理します。2023年6月以降、マイクロチップ登録が義務化され、登録内容により鑑札の代替とみなされる場合があります。
受け入れが難しいケースと代替策
噛みつき癖、過度な攻撃性、管理困難な場合は受け入れを制限されることがあります。その際は、親族宅・友人宅・ペットホテル等の代替避難先を事前に検討しておくことが重要です。
第2章 避難ルートを二重化する
要点
- 避難所ルートを3か所設定
- 代替ルート(親戚・ホテル等)も確保
- 通行リスク(浸水・橋・高台)を調査
避難所ルートの設定
川崎市防災ポータルで、自宅周辺の避難所を3か所選び、車と徒歩の両ルートを確認しておきます。開設状況はポータルや防災アプリでリアルタイムに確認可能です。
避難所以外ルートの確保
川崎市は「ペットの一時預かり先の確保」を推奨しています。親戚・友人・ペットホテルの3類型から少なくとも2か所を事前登録し、連絡先や受け入れ条件(ワクチン証明等)を確認しておきましょう。
事前調査(地形とリスク)
かわさき防災アプリでは、洪水・土砂災害・高潮のリスクを地図上で確認できます。自宅から避難候補地までの「通れない道」「橋」など、移動制約を把握しておくと有効です。
第3章 風水害期の早期行動計画
風水害は予測情報が多く、早期行動が被害回避の鍵です。ペット連れ避難は時間を要するため、あらかじめ「避難開始の基準」を家庭内で決めておきましょう。
- タイミング: 夜間・本降り前の移動を優先
- 移動手段: 冠水エリアは徒歩へ切替、強風時は安全を最優先
- 待機判断: 在宅(安全圏)→預け先→車中の順で検討
- 情報取得: 川崎市公式アプリ・LINE・メールニュースを併用
第4章 犬の基本トレーニング4項目
しつけは「避難行動を成立させる防災訓練」と捉えましょう。
- クレート練習: 入る→落ち着くまでを段階的に
- トイレ切替: 屋外派の犬も室内シーツに慣らしておく
- 吠えの制御: 「指示で止まる」が最低ライン
- ボディタッチ練習: 診療・移動時の安全確保に有効
第5章 同行避難バッグの標準チェックリスト
川崎市は「ペット用品の持参を原則」としています。物資は支給されません。
必携セット(避難所入場に必要)
- クレート(折りたたみ可)
- 首輪・リード・鑑札・注射済票
- 飼料・飲料水・器
- ペットシーツ・消臭袋・雑巾
- 常備薬と処方記録・持病メモ
第6章 在宅避難を成立させる7日分備蓄
自宅が安全であれば、「在宅避難」も有効です。
- 量の目安: 1日分×7〜9日(フード・水)
- 停電対策: 夏は冷感マット、冬は毛布を季節替え
- 備蓄方法: ローリングストック方式で更新日を固定
- 保管場所: 玄関・寝室・車など複数に分散
第7章 身元確認と登録の維持
避難・逸走時の対策は平時に済ませておきます。
- 鑑札・注射済票・迷子札・連絡先を常時装着
- 写真(全身・顔・特徴)と健康メモを紙とスマホ両方に保存
- マイクロチップ登録情報は住所変更時にオンラインで更新
- 行方不明時は区役所衛生課・動物愛護センターへ届け出
第8章 家族での役割と連絡体制
- 役割分担: 犬担当/人用備蓄担当/情報担当を固定
- 通信断時: 集合場所と置き手紙場所を指定
- 合流地点: 近距離と広域の2か所設定
- 近隣共有: 「犬がいる家庭」であることを事前に伝える
第9章 継続的な点検運用(年2回)
- 点検日を春・秋など季節の変わり目に固定
- フード・薬・トイレ用品の期限を一括確認
- クレートや避難経路の簡易訓練を実施
- 避難所・預け先・身元情報を年2回更新
まとめ
川崎市におけるペット同行避難の基本は次の通りです。
- 原則「同行避難」可能だが同室不可・ケージ必須
- 避難先を2系統(避難所・預け先)で事前確保
- 防災情報取得と家族連携を固定化
- クレート慣らし・迷子防止・持ち出し品の整備を日常化
今日できる第一歩は、①クレート準備、②首輪の身元明示、③持ち出し袋の最低限セット。この3点を決めることが、災害時の「守れる備え」につながります。
