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コラム

建設業許可更新で提出書類に不備が生じやすい箇所

建設業許可の更新申請は、許可の有効期限(満了日)から逆算して準備できるかどうかで、手続きの難易度が大きく変わります。期限・要件・提出先を先に整理し、申請書の突合や添付資料の注意点、変更届の未提出の有無まで、実務でつまずきやすいポイントをまとめて解説します。


目次

  • 更新申請で迷わないための「期限・要件・提出先」の3整理
  • 差し戻しが多い申請書の記載は「3つの突合」で防ぐ
  • 添付資料の不備が生じやすい「7分野」
  • 「変更届の出し忘れ」が更新で露見する3パターン
  • 補正を最短化するための2つの準備
  • 提出前チェックを「10分」で終える最終リスト
  • 決算変更届を「更新と別物」で扱うとズレる3点
  • 経審を使う人が押さえる「更新との連携4つのコツ」
  • まとめ

更新申請で迷わないための「期限・要件・提出先」の3整理

更新申請は、原則として許可の有効期間が満了する日の30日前まで(地方自治体により異なる場合あり)に申請を行う必要があります〔建設業法第8条・第12条〕。この段階で「期限」「要件」「提出先」を明確にしておくと、補正や差し戻しを防ぎやすくなります。

更新の起点は「許可満了日」から逆算する

満了日から手続きを逆算して、社内押印・証明書取得・提出希望日のスケジュールを決めます。補正や証明書の再取得には時間がかかるため、有効期限の短い証明書(役員の登記情報・納税証明書など)は最後に取得するなど、余裕を持った工程設計が大切です。

更新で見られる要件は「維持できているか」

更新では新規申請時と同等の要件を継続的に満たしているかが審査されます。たとえば、営業所の実在性、専任技術者の常勤性、社会保険の加入状況などが確認されます。「変更があったのに変更届を提出していない」と補正対象になることがあるため、直近5年間の変更事項の有無を棚卸ししておきましょう。

窓口ごとの差は「手引・提出方法・部数」に出やすい

提出先(都道府県・政令市)ごとに提出部数や電子申請の可否、原本提示の要否等が異なります。必ず最新の「申請の手引」や行政窓口の案内で確認し、自己判断で様式を省略しないよう注意してください。


差し戻しが多い申請書の記載は「3つの突合」で防ぐ

申請書の不備の多くは、記載ミスではなく他書類との不整合による差し戻しです。登記簿・前回の許可通知書・形式要件の3点を照合しておくと安定します。

商号・所在地・役員は登記事項証明書と一致させる

商号・所在地・代表者・役員は、法務局の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)と一致している必要があります。「株式会社」表記の有無や漢字の異同など、表記ゆれでも補正対象になり得ます。

営業所・許可区分・業種は「前回許可」と整合させる

更新では前回の許可情報との連続性が前提です。業種区分、営業所名、一般・特定区分が異なる場合は、変更届を済ませてから更新書類を作成します。

日付・印・委任関係の形式不備を先に潰す

押印箇所の漏れ、申請日と証明書取得日との前後関係、委任状の範囲(更新まで含むか)を確認しましょう。代理提出の場合は、全書類で委任内容の整合を取っておくことが大切です。


添付資料の不備が生じやすい「7分野」

更新時に添付する書類の不備は、概ね次の7分野に集中します〔国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」参照〕。

  1. 常勤性の疎明
  2. 専任技術者の資格・実務経験
  3. 社会保険の加入状況
  4. 財務・納税関係書類
  5. 使用人数・体制の根拠
  6. 営業所写真・案内図
  7. 原本確認・写し・電子形式の取扱

各自治体によって添付の要否や形式が異なるため、「根拠資料」「名義」「年度」を必ず一致させることが重要です。

常勤性を示す補強資料

雇用契約書だけでは不十分な場合があります。勤務実態を示す補強として、出勤簿・給与台帳・通勤経路の説明メモなどが効果的です。

専任技術者の証明では資格と業種の一致に注意

資格証明の氏名・業種との対応を明確にし、実務経験証明書は内容と期間が追える形で添付します。

社会保険加入の記載と証明書の名義を揃える

法定三保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)の保険者証明は、法人名や事業所単位で一致しているかを確認します。

財務・納税関係の年度と名義

納税証明書や決算書類は「直近の確定決算」分であることが原則です。課税年度と決算期が混在しやすいため、決算期基準で統一しましょう。

使用人数・体制は数値根拠と基準日を明確に

常勤役員数や使用人数は、基準日(通常は申請日時点)を明示し、給与台帳・社会保険資料等で裏づけられるように整えます。

営業所写真・案内図の作成ポイント

外観・標識・執務スペースを順に撮影し、標識・住所表示が明確に分かるようにします。案内図は主要道路や目標物を描き、申請書住所と一致させます。

原本・写し・電子申請の扱い

電子申請では、カラー・解像度・ファイルサイズなどの指定があります。自治体手引の指示に従い、原本提示や還付の要否、書類の形式を明確に整理してください。


「変更届の出し忘れ」が更新で露見する3パターン

更新時にトラブルになるのは、書類の不備よりも変更届の未提出です。

  1. 登記変更(役員・所在地・商号等)
  2. 営業所・専任技術者など体制変更
  3. 軽微変更(ビル名・役職名など表記差)

建設業法では、上記変更を変更後30日以内に届け出る義務があります〔建設業法第11条〕。提出漏れがあると、更新で補正を要するか、場合によっては「要件不充足」と判断されることもあります。


補正を最短化するための2つの準備

  1. 差し替え可能なデータ化
  2. 電話確認に備えた説明メモ作成

補正通知が来たときに即応できるよう、修正可能なデータ版を保存しておきましょう。書面のみで運用していると修正が遅れがちです。また、常勤性・人数・名義の説明メモを一枚添付しておくと、行政側との確認電話にも迅速に対応できます。


提出前チェックを「10分」で終える最終リスト

提出直前は、以下3区分で確認すると効率的です。

  1. 必須一式チェック:申請書、別紙、証明書、部数、返信用封筒(郵送時)など
  2. 突合一式チェック:登記簿・前回許可・社会保険・財務資料の整合
  3. リカバリーチェック:補正時のデータ保管場所、即日取得可能な証明書、連絡担当者

提出手引に沿ってチェックリストを自作しておくと、申請精度が一気に上がります。


決算変更届を「更新と別物」で扱うとズレる3点

決算変更届は更新許可とは別手続ですが、同じ財務資料を用いるため連携が不可欠です。

  1. 決算変更届は、事業年度ごとの業績を届け出て許可情報を更新する法定手続(建設業法第11条第2項)
  2. 決算期と会計年度・課税年度の混同防止
  3. 財務諸表・納税証明の整合性の確認

更新書類でも同じ財務数値を用いるため、決算変更届→更新申請の順で準備すると補正が減ります。


経審を使う人が押さえる「更新との連携4つのコツ」

経審(経営事項審査)は決算情報を前提とするため、決算変更届・更新申請との時系列整合が極めて重要です。

  1. 年度スケジュールで順序を固定(決算確定→決算変更届→経審→更新)
  2. 元資料から数字の一貫性を確保(特に完成工事高・自己資本比率)
  3. 入札日から逆算して手続スケジュールを設計
  4. 同時進行の場合は版管理と提出先ルールを徹底

これにより、経審の点数計算・入札参加資格更新と建設業許可更新を矛盾なく進められます。


まとめ

  • 更新は満了日からの逆算が基本。余裕を持つことで補正にも対応可能
  • 申請書は「登記」「前回許可」「形式」の三点突合で整合を確保
  • 添付資料は7分野の整合と根拠一致を重視
  • 変更届の漏れが更新で発覚しやすいため、事前確認が必須
  • 経審や決算変更届と数字・年度を揃え、同時進行リスクを防ぐ

本記事は、建設業法および国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」「各自治体建設業許可申請の手引」等の一次情報を基に構成しています。実際の取扱いや提出様式等は都道府県により異なるため、最新の自治体公式手引書または窓口で必ず確認し、必要に応じて行政書士等専門家に相談してください。


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