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コラム

建設業許可の決算変更届が経営事項審査に与える影響

建設業許可業者は、毎事業年度終了後に「決算変更届(事業年度終了報告)」を提出する義務があります(建設業法第11条第2項)。この届出は、単なる許可維持の手続きではなく、経営事項審査(経審)の前提資料として扱われます。決算変更届で届け出た内容は、経審の評点算出に直接用いられるため、提出の遅れや記載内容の不整合があると、審査が保留・遅延することがあります。本記事では、法的根拠に基づき、決算変更届と経審の関係を分かりやすく整理します。


目次

  • 決算変更届が経営事項審査に関係する3つの制度的理由
  • 提出遅延が経営事項審査スケジュールに与える影響
  • 決算変更届で特に管理すべき3つの数値
  • 許可維持と評点管理を両立させる実務の進め方
  • 決算変更届を経審対策に活かせる企業の特徴
  • 今すぐ確認すべき3つの実務チェック

決算変更届が経営事項審査に関係する3つの制度的理由

1. 決算変更届の法的位置づけ

決算変更届は、建設業法第11条第2項および施行規則第3条に基づき、許可行政庁(都道府県または国土交通大臣)へ「毎事業年度経過後4か月以内に」提出することが義務付けられた書類です。この届出内容(財務諸表、工事経歴書など)は、経営事項審査の算定基礎に活用されます。

2. 経審は届出済み決算書を基礎に行われる

経営事項審査(建設業法第27条の23以下)は、公共工事の入札参加資格審査に必要な客観的評価制度です。経審では、完成工事高・利益・自己資本比率等の数値をもとに評点を計算します。これらの数値は、直近の「決算変更届」で行政庁に報告された内容(確定した税務決算書に基づく財務諸表)と一致している必要があります。一致していない場合、審査機関(都道府県または地方整備局)から修正を求められることがあります。

3. 決算変更届未提出では経審が進められない

決算変更届が未提出または不備がある場合、経営事項審査申請が受理されません。行政庁が「最新かつ確定した決算情報」を確認できないためです。法令上、経審は届出済みの財務情報を基礎として実施する仕組みであり、決算変更届の整備が制度上の前提となります。


提出遅延が経営事項審査スケジュールに与える影響

提出期限に関する基本ルール

建設業法により、決算変更届は「事業年度経過後4か月以内」に提出することが定められています。例えば3月決算の場合、7月末までに届出が必要です。

遅延すると発生する主なリスク

決算変更届の提出が遅延すると、以下のような実務的な不利益が生じる可能性があります。

  • 経審申請が遅れ、結果通知が入札参加申請に間に合わない
  • 評価基準年に反映される決算期が1期前倒しになり、最新業績が評点に反映されない
  • 元請企業や発注者からの最新の経審評点提出依頼に応じられず、信用面で不利に働くことがある

なお、提出遅延自体に直接的な「減点項目」は存在しませんが、結果的に入札資格申請や受注計画に遅れを生じることで実務的な不利益を招くことがあります。


決算変更届で特に管理すべき3つの数値

1. 完成工事高と利益

経審の「X1点・X2点等」では、完成工事高および利益額から経営規模・収益性が評価されます。売上規模が大きくても利益率が低い場合、評価が伸びないことがあります。

2. 自己資本比率などの財務体質

経審の「Y点」では、自己資本比率などの財務健全性が評価されます。短期の節税対策や貸付処理により自己資本が減少すると、失点の要因になることがあります。

3. 税務決算と経審評価の相違

税務上の損金処理や役員報酬、減価償却の方針は節税目的で判断されますが、経審では「経営安定性」として客観的に評価されます。税務上適正でも、経審の評価点が下がるケースがあるため、税理士と行政書士の連携が重要です。


許可維持と評点管理を両立させる実務の進め方

1. 決算確定後、速やかに届出準備

決算確定後できるだけ早く決算変更届を作成し、内容の整合性を確認します。

2. 税理士・行政書士・経理担当の情報共有

税務目的と経審目的の数値差の有無を確認し、届出・審査で齟齬がないよう準備します。

3. 届出後に評点結果を分析する

経審結果を確認し、前年との変動要因を分析することで、次回の改善点を明確化できます。

このように、決算変更届を「評点管理の起点」と位置づけることで、許可維持と経審評価の両立が容易になります。


決算変更届を経審対策に活かせる企業の特徴

決算変更届を戦略的に活用できる企業には、以下のような共通点があります。

  • 届出を単なる「義務」ではなく「将来の評価資料」として管理している
  • 経審結果から逆算して決算内容を点検している
  • 許可・経審・入札資格申請を一体的に運用している

これらの点を実践することで、手戻りや再申請のリスクを防ぎ、行政対応コストを大幅に減らせます。


今すぐ確認すべき3つの実務チェック

以下の3点を確認することで、制度上の不利益を未然に防ぐことが可能です。

  1. 直近の決算変更届が法定期限内に提出されているか
  2. 届出内容と税務決算・経審申請書の数値が一致しているか
  3. 入札時期や経審申請スケジュールと連動して管理できているか

これらを点検するだけでも、制度上の不利益を未然に防ぐことが可能です。


まとめ

  • 決算変更届は建設業法上の提出義務であり、経審評価の基礎資料である
  • 遅延や不整合は経審申請の遅延・拒否につながる
  • 管理すべき主要項目は完成工事高・利益構造・自己資本比率である
  • 税務と経審では評価目的が異なるため、専門家連携が不可欠である
  • 許可・経審・入札資格を一体管理することで、安定した事業運営が可能となる

本記事は、建設業法・同施行規則および経営事項審査実施要領(国土交通省)に基づく制度解説です。具体的な手続・数値判断については、必ず税理士、行政書士などの専門家にご相談ください。


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