コラム
動物取扱業登録とは?対象業種と基準をわかりやすく解説
ペット関連事業を始める際、動物取扱業の登録は必ず確認が必要な制度です。動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護法」)では、営利目的で動物を扱う事業者に対し、登録義務を定めています。本記事では、登録の目的、対象業種、基準、責任者要件、手続きの流れまでを順を追って説明します。
目次
- 動物取扱業登録制度の基本
- 動物取扱業登録の基準
- 動物取扱責任者の要件
- 動物取扱業登録の手続き
- 登録後の継続義務と対策
- まとめ
動物取扱業登録制度の基本
押さえるべき3つの基本ポイント
主な要点
- 動物取扱業制度の目的と法的背景
- 登録が必要な業種と判断基準
- 登録を怠った場合の罰則
動物取扱業登録制度は、事業者が動物を適正に扱い、利用者が安全かつ安心してサービスを受けられる環境を整えるために設けられました。動物の福祉と事業の健全性を両立させるしくみとして全国で実施されています。
法律の背景
動物愛護法(昭和48年法律第105号)は、「命ある動物の愛護及び管理を図ること」を目的に定められています。過去の不適切な飼養管理や不当販売を踏まえ、登録制による事業管理が導入されました(第10条)。
登録が必要な業種
登録対象となるのは、以下の5業種です(動愛法第10条第1項)。
- 販売
- 保管
- 貸出し
- 訓練
- 展示
これらを営利目的で反復継続して行う場合は登録が必要です。ペットシッター、トリミングなどでも、報酬を得て継続的に行えば対象となります。判断に迷う場合は、事業地の都道府県等に事前相談すると確実です。
登録を怠った場合の罰則
登録を受けずに業を行った者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(動愛法第47条第1項)。違反に対しては、行政指導・業務停止・登録取消しの措置がとられる場合もあります。
動物取扱業登録の基準
確認すべき4つの条件
主な要点
- 施設構造および衛生の基準
- 動物の管理方法
- 利用者への情報提供
- 記録・苦情対応の体制
登録の可否は、施設と管理体制が基準を満たすかどうかで判断されます。
施設基準
飼養・保管施設は、動物の種類や大きさに合わせ、十分な広さ・明るさ・換気を確保することが求められます(省令第4条)。脱走防止や温湿度管理も要件に含まれます。自治体により構造詳細基準(壁材・排水施設など)が定められているため、設計段階から確認が必要です。
動物の管理体制
清掃・消毒など衛生管理計画を定め、給餌・給水・健康観察を定期的に実施する必要があります(省令第5条)。ストレスを軽減する工夫や、運動・休息の確保も基準に含まれます。
利用者への情報提供
販売時などには、動物の健康状態・予防接種履歴・年齢・性別などを正確に説明しなければなりません(動愛法第21条)。料金や契約条件も明記し、誤認を防ぐ取り扱いが重要です。
記録・苦情対応の義務
販売・譲渡・死亡などに関する記録を作成・保存し、苦情が発生した場合は再発防止策を講じます。記録保存期間は原則5年間です(省令第7条)。
動物取扱責任者の要件
満たすべき3条件
主な要点
- 資格・課程修了等の必須要件
- 実務経験による充足可能性
- 責任者としての業務義務
動物取扱責任者は各事業所に1名以上の選任が必要です(動愛法第11条)。
資格・課程修了
指定された動物関連資格(例:愛玩動物飼養管理士、動物看護師、動物関連専門学校卒業など)を有することが要件です。認定範囲は都道府県によって異なります。
実務経験
資格がない場合でも、動物取扱業等の実務経験6か月以上が要件を満たす場合があります(省令第6条)。内容に応じて認められないケースもあるため、勤務先による証明書を準備し、自治体確認を行ってください。
責任者の義務
定期的な研修を受講し(動愛法第11条第2項)、最新の基準・衛生管理法を職員に周知する義務があります。現場監督と記録整備も日常管理の一環です。
動物取扱業登録の手続き
準備すべき5ステップ
主な要点
- 自治体相談
- 書類準備
- 施設確認
- 申請・審査
- 登録・更新・変更届
1. 事前相談
まず事業地を管轄する自治体に相談し、業種区分や施設基準を確認します。
2. 書類準備
必要書類は次のとおりです。
- 登録申請書
- 施設平面図・構造図
- 管理マニュアル
- 動物取扱責任者要件証明
書類不備は審査が止まるため、提出前に一覧で照合してください。
3. 施設確認
自治体担当者が現地を確認し、基準を満たすか検査します。不備があると補正や再検査が必要です。
4. 登録と掲示
登録証交付後、証の写しを事業所内の見やすい場所に掲示する義務があります(動愛法第12条第6項)。
5. 更新・届出
登録の有効期間は5年間です。期間満了前に更新手続きを行います。責任者変更や所在地移転も届出が必要です(動愛法第12条第5項)。
登録後の継続義務と対策
守るべき3つの継続義務
- 動物の適正管理(給餌・休息・衛生保持)
- 記録類の整備と保存
- 法改正・基準変更への対応
動物愛護法は改正が続いており、2020年・2022年の改正では罰則強化や飼養基準の明確化が行われました。自治体研修や環境省通知を確認し、常に最新情報を反映しましょう。
初めての登録でも不安を減らす3つの対策
- 自治体相談で制度理解を深める
- 条文の目的から全体構造を把握する
- 行政書士など専門家にサポートを依頼する
複数の情報源を活用することで、誤りのない準備と安定した運営が可能になります。
まとめ
- 動物取扱業登録は動物福祉と利用者保護のための制度
- 対象業種は販売・保管・貸出し・訓練・展示の5つ
- 施設基準・管理体制・責任者資格を整えることが登録条件
- 登録は5年ごとに更新が必要
- 登録後も法改正や記録義務に継続対応が求められる
制度理解を深め、適正な手続きで安全かつ信頼される運営を目指しましょう。
本記事は環境省「動物の愛護及び管理に関する法律」関連省令・指針および地方自治体(東京都・大阪府・北海道)の公表資料に基づき構成しています。詳細は必ず事業地の自治体窓口で確認してください。
