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コラム

問合せメールの自動仕分け|HANAWAくんと学ぶAI活用ラボ第37回

問合せの自動仕分けは、サポート業務の効率化に直接寄与する重要な仕組みです。

特に、カテゴリ分類や優先度の自動判定は、顧客対応の速度と品質を左右します。本稿では、AI活用およびルール学習の考え方を基盤とし、問合せ分類ルールセット策定の手順を体系的にまとめます。

読了後には、自社のサポートDX推進に資する「運用監査」までを意識した分類基盤の構築方法が理解できるでしょう。


目次

  1. 問合せ自動仕分けの目的と構成要素を理解する
  2. 問合せ分類ルールセットを策定する手順
  3. 自動仕分け運用の監査と継続改善
  4. 応用:AIによるルール学習と自動最適化
  5. まとめ:分類ルールの定着と次のステップ

問合せ自動仕分けの目的と構成要素を理解する

学習目標:問合せ自動仕分けの基本構造と分類基準の理解

問合せの自動仕分けは、顧客からのメールやフォーム入力内容を、あらかじめ定めたルールやAIモデルにより自動分類し、適切な部署や優先度へ付与する仕組みです。

主な目的は「応答遅延の防止」と「対応漏れの抑止」にあります。これにより、サポート部門全体のDXを促進できます。

問合せ分類の3軸構成

問合せ分類は主に次の3軸で構成されます。

  • カテゴリ分類:製品別・サービス別・問合せ種別
  • 優先度設定:緊急/通常/低優先度
  • 担当振分け:専門担当・地域担当

これらは「分類ルールセット」により支えられ、ルール品質が分類精度を左右します。

導入効果の具体例

自動仕分け導入例として、1日100件の問合せに分類自動化を導入し平均30秒の確認削減が実現できれば、1日50分、月に20時間以上の業務効率化となります。

この効率化は単なる省力化にとどまりません。顧客満足度や標準化された対応履歴の管理など、経営指標の改善にもつながります。


問合せ分類ルールセットを策定する手順

学習目標:問合せ分類ルールセットを策定し、運用可能な形に整える

手順1:既存問合せデータの抽出と分析

過去3〜6カ月分の問合せメールを抽出し、件名・本文・タグ・対応履歴を一覧化します。

表計算ソフト等で、ID、件名、本文抜粋、対応部署、対応内容、優先度を整理しましょう。

例:

ID 件名 本文抜粋 対応部署 対応内容 優先度
001 アカウント再発行 ログインできません システム管理 再発行処理
002 請求書の送付先変更 宛先を修正したい 経理部 住所変更

このデータをもとに、カテゴリ分類候補を抽出します。

手順2:ルール基準の定義

分類ルールは管理容易性の観点から三階層で設計します。

階層 目的
第1層 カテゴリ分類 製品・請求・技術・その他
第2層 優先度分類 高(障害)・中(操作)・低(一般)
第3層 キーワード条件 「エラー」「支払い」「再発行」など

条件分岐の例:

if "エラー" in 件名 or 本文:
    カテゴリ="システム", 優先度="高"
elif "請求" in 件名:
    カテゴリ="経理", 優先度="中"
else:
    カテゴリ="その他", 優先度="低"

安全注意:
条件分岐は単純なテキスト一致で設計可能ですが、「不具合」「バグ」「できない」などの曖昧語では誤分類のリスクがあります。必ず実運用前にサンプルデータでのテストを実施してください。

手順3:分類ルールの検証

過去データ100件を対象にルール適用し、担当部署と一致した件数で正答率を算出します。

精度=(正解件数/全件数)×100

70%未満の場合には、条件式やキーワードの見直しを推奨します。


自動仕分け運用の監査と継続改善

学習目標:運用監査体制の整備

自動仕分けの運用は一度構築して終わりではありません。製品やFAQの更新に伴い、ルールの陳腐化が起こり得ます。そのため、定期的な監査が不可欠です。

監査は「誤分類率の検証」と「ルール更新履歴の記録」が主眼となります。

監査の実施項目

  • 月次/四半期単位で分類精度レポートを出力
  • 誤分類の傾向(特定キーワード・部署等)を特定
  • 修正案をルールセットに反映し、修正経過を「更新ログ」として保存

Excel記録例:

更新日 修正箇所 理由 検証結果
2025/10/01 "確認"キーワード追加 問合せ増加 精度+5%

この運用監査は、AI活用による「継続的学習」(ルール学習)への基盤となります。


応用:AIによるルール学習と自動最適化

学習目標:AIモデルでの分類ルール自動学習の理解

AIによる自動仕分けは「教師データ※」を活用します。BERTやGPT API等の学習済みモデルでは、明示的な条件分岐なしに高精度な分類が可能です。

Python例:

from transformers import pipeline

classifier = pipeline("text-classification", model="cl-tohoku/bert-base-japanese") result = classifier("請求書を再発行したいです")

print(result)

出力例:

[{'label': '経理', 'score': 0.93}]

安全注意:
モデル精度は教師データの品質に依存します。誤分類や偏り防止のため、初期導入時はAIとルールベース併用の上、監査体制内で検証を継続してください。

AIによる利点

AIによる利点として、新語や表現揺れ対応、人的メンテナンス削減、優先度判定の自動調整が挙げられます。

ただし、判断根拠の可視化が難しいため、監査ログによる説明責任設計の併用が重要です。


まとめ:分類ルールの定着と次のステップ

本稿では問合せ自動仕分けについて、構成要素・ルール策定・運用監査までを体系的に整理しました。

問合せ分類ルールセットを策定することで、自社サポートDX基盤の構築が可能となります。今後はAIによるルール学習への移行や、ナレッジ共有の自動化も次なる課題となるでしょう。

HANAWA AIラボでは、AI実装・運用設計・教育支援に関するご相談も受け付けています。自社へのAI導入や教育支援等のご用命は、HANAWA AIラボ公式問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。


教師データ:AIモデルが分類・予測学習で利用する正解付きデータ。
BERT:自然言語処理(NLP)で普及する事前学習型モデル※。
運用監査:運用中の仕組みが設計通りに動作しているかを評価・改善するプロセス。


免責および準拠

本稿は、2025年11月時点の法令・業界ガイドラインおよび一般的な中小企業運用を前提に執筆しております。各社での導入時には、最新の法令・業界基準や個別システム要件に即した対応、および必要に応じた専門家への確認を行ってください。また、本文中の事例や表現は参考指針であり、必ずしもそのまま適用できるものではありません。


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