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コラム

飲食店営業許可で図面審査において見落とされやすい典型箇所

はじめて飲食店を開業する方にとって、保健所による図面審査は大きな関門となります。厨房や手洗い設備などの配置が衛生基準に適合していない場合、許可審査が長期化したり、図面の再提出を求められたりすることがあります。本記事では、初心者の方でも理解しやすい形で、審査において見落とされやすいポイントと、実務で活用できる改善策を具体的に解説します。


目次

  • 図面審査で見落とされがちな3つの基本要件とは
    • 保健所が最初に確認する「動線と区画」の整合性
    • 厨房機器配置のズレが引き起こす許可遅延のリスク
    • 手洗い・洗浄設備の位置で生じる意外な落とし穴
  • 保健所基準を満たす図面に共通する3つの設計視点
    • 作業効率よりも「衛生動線」を優先する理由
    • 「専用・共用設備」の区別を曖昧にしないポイント
    • 給排水・換気・照明を"確認図面レベル"で整備するコツ
  • 開業計画段階で押さえるべき図面チェックの3ステップ
    • 物件選定時に確認すべき「構造・区画」条件
    • 内装業者・設計者との打ち合わせで外せない質問リスト
    • 保健所との事前相談で"承認される図面"を確定する方法
  • 図面審査を通過するために改善すべき5つの典型的ミス
    • 手洗い設備を厨房内に1カ所しか設置していない
    • 客席側との区画が不明確で衛生管理区分が曖昧である
    • 排水溝の勾配不足により清掃性が確保できない
    • 洗浄シンクと調理台が近接しすぎて交差汚染の恐れがある
    • 図面上に給排水・換気・照明の仕様記載が欠落している
  • 審査通過率を高めるための"改善提案型"チェックリスト
    • 図面提出前に実施するセルフチェック10項目
    • 保健所担当者との確認を円滑にする資料作成
    • 変更申請や代表者変更時に再チェックすべきポイント
  • まとめ|図面審査で不承認とならない飲食店が実践している習慣
    • 審査は「通過させる」より「準備で問題を防ぐ」が基本
    • 設計・施工・保健所の"三者連携"が許可取得成功の鍵

図面審査で見落とされがちな3つの基本要件とは

本章では、以下の主要ポイントを扱います。

保健所が最初に確認する「動線と区画」の整合性

厨房機器配置のズレが引き起こす許可遅延のリスク

手洗い・洗浄設備の位置で生じる意外な落とし穴

図面審査において、衛生区画や動線の不整合が最も多く指摘されます。配置のわずかなズレであっても、結果として衛生的な分離が確保できないと判断されると、審査が長期化したり修正を求められたりします。特に、客席・トイレ・厨房が同一動線で接続されている場合は衛生面に関する説明を求められることがあるため、以下の3点を押さえておくことで初回承認の可能性が高まります。

保健所が最初に確認する「動線と区画」の整合性

調理・提供・洗浄の各動線が同一の通路で交差している場合、清潔なものと汚染されたものを分離して管理することができません。例えば、洗浄後の食器と未調理の食材が同じルートを通過する設計は、衛生管理上「許可が認められにくい設計」と判断されることがあります。

動線はできる限り一方向とし、「清潔エリア」と「汚染エリア」をまたがないよう配慮します。図面上で矢印や線により動きを明示しておくと、審査担当者が確認しやすくなります。さらに、トイレの手洗い場から厨房に直接入る動線が存在する場合は、途中に仕切りや扉を設置して衛生区画を分離するとより明確になります。

厨房機器配置のズレが引き起こす許可遅延のリスク

本見出しが示すとおり、厨房機器配置のズレは審査を長期化させる典型的な要因です。シンクと調理台が近接しすぎると水はねにより食材が汚染される恐れがあり、実務では「もう少し距離を取ってほしい」という指導が入ることがあります。

また、給排水やガスの位置が図面に正確に反映されていない場合、施工段階でやり直しが発生し、結果的に許可日程も後ろ倒しになります。図面を作成する際は「実際の配管・ダクト位置を前提としているか」「後から機器を追加しても動線を損なわないか」を確認しておくことが重要です。

手洗い・洗浄設備の位置で生じる意外な落とし穴

厨房内に手洗い器が1カ所のみの場合、調理スタッフが適切なタイミングで手を洗えず、衛生管理上の不備と見なされることがあります。調理・盛付・洗浄など、作業のまとまりごとに手洗い設備を設置することが基本です。

さらに注意すべきは「兼用」の扱いです。手洗い器を洗浄シンクと兼用している場合、「このシンクは何の専用設備なのか」が不明確になり、説明を求められることがあります。図面上に「手洗い専用(石けん・ペーパータオル設置)」と明記し、動線上で利用しやすい位置に配置すると指摘を受けにくくなります。


保健所基準を満たす図面に共通する3つの設計視点

本章では、以下の主要ポイントを扱います。

作業効率よりも「衛生動線」を優先する理由

「専用・共用設備」の区別を曖昧にしないポイント

給排水・換気・照明を"確認図面レベル"で整備するコツ

保健所が確認しているのは「この図面に基づいて実際に営業した場合、衛生的に運用できるか」という点です。図面が美しく描かれているだけでは不十分であり、衛生管理の流れが読み取れるかどうかが評価されます。以下の3つの視点を取り入れておくことで、行政基準に準じた設計に近づきます。

作業効率よりも「衛生動線」を優先する理由

飲食店の現場では「近い方が便利」という理由で機器を隣接させたくなりますが、保健所は利便性よりも衛生面を優先します。食材の搬入→下処理→加熱→盛付→提供→下げ→洗浄という流れが一方向であれば、汚染されたものが清潔なものに接触しにくくなります。

スペースが限られている店舗であっても、調理エリアと洗浄エリアの間に小規模な仕切りや段差を設けたり、床材を変更したりして「ここから先は別の区画である」ことを示すと理解されやすくなります。

「専用・共用設備」の区別を曖昧にしないポイント

保健所の審査で多く見られるのは「これは何用のシンクですか」という確認です。野菜・食器・手洗い・モップ洗いなどが一つにまとめられている場合、どの用途を優先した設計なのか判断できなくなります。

図面の段階で「野菜洗浄専用」「食器洗浄用」「手洗い専用」と注記しておくことで、用途が明確になります。兼用が避けられない場合でも「通常は〇〇用、清掃時のみ使用」などの補足を記載することで審査が進めやすくなります。

給排水・換気・照明を"確認図面レベル"で整備するコツ

排水・換気・照明に関する要求水準は、自治体により詳細度が異なります。ただし、厨房が高温多湿にならない換気量であること、シンクの排水が詰まりにくい配管径であること、調理に必要な照度が確保されていることを図面上に明記しておくと、多くの自治体で説明がしやすくなります。

さらに、厨房の排水口や扉・窓などの開口部には、虫やネズミの侵入を防止するための防虫網・防鼠金物・排水トラップの設置が求められることが多くあります。外部とつながる開口部を図面に描いた場合は、「防虫網付」「トラップ付」などの注記を付けておくことで実務での指摘が減少します。

また、冷蔵・冷凍設備については、扱う食品の量や種類に応じて、所定温度(冷蔵なら通常は10℃以下程度、冷凍なら一般的に−15℃以下を目安とすることが多い)を維持できる容量と性能を確保しておくことが望まれます。図面に台数と設置場所を記載しておけば、保管と衛生動線の整合性が確保されていると判断されやすくなります。


開業計画段階で押さえるべき図面チェックの3ステップ

本章では、以下の主要ポイントを扱います。

物件選定時に確認すべき「構造・区画」条件

内装業者・設計者との打ち合わせで外せない質問リスト

保健所との事前相談で"承認される図面"を確定する方法

開業後に「そこは変更できません」と指摘される部分は、大半が物件の構造に起因します。早期段階で確認しておくことで、後からの工事や申請のやり直しを防止できます。

物件選定時に確認すべき「構造・区画」条件

物件を選定する際は、排水勾配・天井高・ダクトの通し方・電気容量など、後で変更が困難な点を優先的に確認します。ビルイン物件の場合、トイレが共用で1カ所のみであり、厨房と同一動線になっている場合、衛生区画に関する説明が必要になることがあります。

また、冷蔵・冷凍庫を設置するスペースや、将来的に容量を増やす余地があるかも確認しておきましょう。取り扱う食品の種類によっては「冷凍庫をもう1台設置してください」と指導されることがあり、設置場所が確保できない場合は図面を作成し直すことになります。

内装業者・設計者との打ち合わせで外せない質問リスト

打ち合わせの段階で以下のような質問をしておくことで、図面の精度が向上します。

  • 厨房区画の床・壁は防水・耐水仕様にできるか
  • 手洗い・洗浄シンクを専用配管で設置できるか
  • 換気フードの排気ルートと給気の位置は干渉しないか
  • トイレ手洗いから厨房に入る人の動線を分離できるか
  • 窓や勝手口に防虫網を常設できるか

これらを事前に確認しておけば、後から「そのルートは設置できません」と指摘されるリスクを減らすことができます。

保健所との事前相談で"承認される図面"を確定する方法

多くの自治体では、正式な申請の前に図面を確認してもらえる事前相談の機会が設けられています。ここでレイアウト図・設備表・動線図を持参し、厨房とトイレがどのように分離されているか、冷蔵・冷凍設備が何台設置されるかまで説明しておくことで、その後の審査が円滑に進みます。

事前相談で指摘された点は、必ず図面に反映したうえで提出します。メモ書きでも「指摘済み・修正済み」と明記しておくことで、担当者にとっても確認がしやすくなります。


図面審査を通過するために改善すべき5つの典型的ミス

本章では、以下の主要ポイントを扱います。

手洗い設備を厨房内に1カ所しか設置していない

客席側との区画が不明確で衛生管理区分が曖昧である

排水溝の勾配不足により清掃性が確保できない

洗浄シンクと調理台が近接しすぎて交差汚染の恐れがある

図面上に給排水・換気・照明の仕様記載が欠落している

ここで紹介する内容は、実際の審査で頻繁に指摘されるものばかりです。すでに図面が作成されている場合でも、本章を参考に一度チェックしておくことをお勧めします。

手洗い設備を厨房内に1カ所しか設置していない

作業区画が複数あるにもかかわらず手洗い設備が1台のみの場合、必要なタイミングで手洗いができません。調理・盛付・洗浄・配膳など、手が汚れやすい場所の近くに手洗い器を配置します。トイレの手洗いを厨房用と兼用にすることは基本的に避け、やむを得ず同一動線になる場合は区画を明示しておきます。

客席側との区画が不明確で衛生管理区分が曖昧である

厨房と客席を明確に区分せずカウンターのみで接続すると、調理の清潔エリアが判別しにくくなります。パーティションや腰壁など、図面に描ける範囲で「ここまでが厨房」と明示できるようにしましょう。

特に、客席側に手を伸ばして配膳するスタイルの場合は、食品に対する飛沫防止策や、客席から厨房への進入防止策も記載しておくとより丁寧です。

排水溝の勾配不足により清掃性が確保できない

床に水が残留すると、害虫・カビ・悪臭の原因となります。1/100前後の床勾配を確保し、清掃しやすい方向に排水を流すようにします。図面に「床勾配1/100(厨房側からホール側へ)」などと明記しておくことで、審査担当者が判断しやすくなります。

洗浄シンクと調理台が近接しすぎて交差汚染の恐れがある

洗浄エリアは水はねが発生しやすく、調理済みの料理や盛付スペースの近くに配置されている場合、汚染リスクが高まります。60cm以上の距離を確保し、困難な場合は立ち上がりやパーティションを設けて飛沫を防止します。

これは「必ずこの距離でなければ不許可」という意味ではなく、「衛生上の分離が図られているか」を確認されていると理解するとわかりやすいでしょう。

図面上に給排水・換気・照明の仕様記載が欠落している

図面のみで設備の性能が読み取れない場合、保健所は「仕様が確認できる資料も提出してください」と求めます。最初から、配管径・排気量・照度に関するメモを図面または別紙に添付しておけば、審査が進めやすくなります。

あわせて、冷蔵庫・冷凍庫の台数や容量、そして防虫・防鼠のための開口部対策も記載しておくと、衛生環境の維持まで考慮した図面として評価される場合があります。


審査通過率を高めるための"改善提案型"チェックリスト

本章では、以下の主要ポイントを扱います。

図面提出前に実施するセルフチェック10項目

保健所担当者との確認を円滑にする資料作成

変更申請や代表者変更時に再チェックすべきポイント

「提出してから指摘される」のではなく、「提出前に自己点検で発見する」ことにより審査回数を減らすことができます。

図面提出前に実施するセルフチェック10項目

  1. 厨房区画の壁・床が防水仕様になっている
  2. 手洗い器の位置と数が作業に見合っている
  3. 給排水・換気・照明の仕様がいずれかの箇所に明記されている
  4. 調理・洗浄・提供の動線が交差していない
  5. 食品保管庫が清潔な区画内に配置されている
  6. 専用設備の用途が図面上で判別できるように記載されている
  7. ゴミ置場や汚物置場の位置が明示されている
  8. トイレと厨房が直接接続しておらず、手洗い設備も区別されている
  9. 客席と厨房の区切りが物理的・視覚的に表現されている
  10. 自治体の指導基準に照らして不明点が残存していない

加えて、外部開口部や排水に防虫・防鼠の対策が図面上で明示されているか、冷蔵・冷凍設備の容量が取扱食品に対して十分かも併せて確認します。

保健所担当者との確認を円滑にする資料作成

図面のみを提出するよりも、設備表・メーカー仕様書・写真を併せて提出した方が「この機器はこのように使用するのだな」と理解してもらいやすくなります。

また、修正が発生した際は、修正前後の図面を並べておくことで担当者が確認しやすくなり、結果的にやり取りの回数が減少します。

変更申請や代表者変更時に再チェックすべきポイント

店舗の代表者変更やレイアウト変更を行う際は、以前に提出した図面と現状が一致しているかを確認します。

一致していない場合は、変更した部分のみでも記載した図面を再提出しておくことで、後からの指導が少なくなります。


まとめ|図面審査で不承認とならない飲食店が実践している習慣

本章では、以下の主要ポイントを扱います。

審査は「通過させる」より「準備で問題を防ぐ」が基本

設計・施工・保健所の"三者連携"が許可取得成功の鍵

図面審査を円滑に通過している店舗は、申請の直前だけでなく、物件選定・内装設計・設備計画の段階から保健所基準を前提に検討しています。厨房・トイレ・客席の動線を分離し、専用設備の用途を明確にし、冷蔵・冷凍設備と防虫・防鼠まで含めて「この図面であれば衛生的に運用できる」と説明できるよう準備していることが共通点です。

  • 設計段階で自治体の最新基準をすべて確認しておく
  • 衛生動線を最優先にしてレイアウトを決定する
  • 内装業者と保健所担当者を早期に連携させる
  • 給排水・換気・照明・冷蔵冷凍機器・防虫防鼠の仕様まで書面で明示する
  • 図面と現況を定期的に照合し、変更があれば記録しておく

審査は行政に「お願いする」場ではなく、衛生管理の考え方を共有する場です。準備を適切に行っておけば、開業スケジュールを遵守しながら、安心して営業を開始できます。


まとめ

  • 保健所が重視するのは、動線の分離・区画の明示・専用設備の有無という3つの柱です。
  • 排水・換気・照明に加えて、防虫・防鼠対策と冷蔵・冷凍の温度管理を図面に記載しておくことで、実務での指摘が大幅に減少します。
  • 事前相談で「ここはこの仕様でよいか」を確認し、指摘内容を図面に反映する流れを徹底します。
  • 提出前のセルフチェックを標準化することで、開業時の許可取得が円滑になります。
  • 最終判断は自治体ごとに異なるため、必ず管轄保健所の最新要領を参照してください。

本記事は、食品衛生法および主要自治体が公表している飲食店営業許可・図面審査の一般的な運用をもとに編集しています。実際の審査項目・必要図面・要求水準は自治体や施設形態(キッチンカー、自宅開業、特殊調理等)の違いにより変わることがあります。最終的な申請内容・設備仕様については、管轄保健所または許認可実務に精通した専門家に確認してください。


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