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コラム

社内規程をAI時代に合わせる|HANAWAくんと学ぶAI活用ラボ第25回

はじめに

社内規程の改訂は、AI時代の組織運営を守る最前線です。生成AIや業務AIツールの日常利用が進む中、AI規定やAI倫理規定の整備を怠ると、情報漏えい・権利侵害・誤用による損害のリスクが現実化します。

本稿では「規程改訂の条項案を列挙し社内回付する」ことを目的とし、実務レベルで適用可能な内容に到達します。


AI社内規程改訂の全体像

AI時代の社内規程改訂は、「ルールの明文化」が最初のステップとなります。AIツールの利用には利便性と並行してリスクが存在し、生成AIの出力には誤情報の可能性があります。機密情報の誤入力による漏えいを防ぐため、AI利用規程の制定と定期改訂が不可欠です。

改訂の主要要素は「禁止行為」「申請制度」「記録義務」「教育制度」の4つで構成されます。作業手順は現行規程の分析、不足・曖昧な条項の抽出、条項案のドラフト化、社内回付の3段階で進めます。関連法令(著作権法、不正競争防止法、個人情報保護法)や経産省・IPA・内閣府公表のAI倫理ガイドラインを参照することで、法的整合性を確保します。

社内AI規程の基本構成例:

  • 第1章 目的・適用範囲
  • 第2章 定義(AI、生成AI、入力・出力データ等)
  • 第3章 利用申請・承認手続
  • 第4章 禁止行為・制限行為
  • 第5章 記録義務・報告
  • 第6章 教育・研修・倫理遵守
  • 第7章 違反時の対応

AI社内規程の具体的条項例

利用目的と定義条項

冒頭に規程の目的と用語定義を明確化します。

  • (目的)
    本規程は、当社におけるAIおよび生成AIの利用に関し、情報保護・倫理確立・適正運用を目的とします。
  • (定義)
    AIとは、機械学習・自然言語処理等の技術を用いて自動処理・生成を行うプログラムを指します。

定義の明確化は、「禁止行為」「教育」等の後続条項との論理的接続を可能にします。

申請・承認手続

AIツール業務利用には申請制度を設け、管理責任を明確化します。

  • (利用申請)
    従業員がAIツールを業務目的で利用する場合は、情報システム部門に利用目的・データ種別・利用範囲を申請し、承認を受けることとします。
  • (承認)
    承認者は利用目的と入力データの適法性を確認し、リスクが認められる場合は利用制限・禁止できるものとします。

この条項により、誤用の予防と利用履歴の管理が実現します。


社内回付・教育手順の整理

規程改訂案の社内承認プロセスは以下が標準です。

  • 情報システム部が起案
  • 管理部門による法的確認
  • 経営会議で最終承認
  • 全社回付・周知(ポータル、掲示、研修)

回付時は「変更点サマリー」「禁止行為リスト」を併記することで理解度を向上させます。教育では、ツールの安全利用と倫理的判断の定着を目的とし、規程要約・事例演習・申請と記録義務手順の普及を図ります。年1回の再教育やツール刷新時の臨時研修を組み込むことで、規程の「生きた運用」を実現します。


禁止行為と権利制限

禁止行為例

  • 社内情報・顧客情報の無断AI入力
  • 著作権・肖像権・営業秘密の侵害
  • 虚偽・不正確な生成結果の業務資料への利用
  • 不正アクセスや第三者提供を目的とする行為

禁止行為を具体的に掲げることで、リスクの直感的把握を促進します。

権利制限・倫理遵守

AI生成物の知的財産権と倫理については明示します。

  • (権利帰属)
    AI生成物の知的財産権は、特段の合意がない限り会社に帰属します。
  • (倫理遵守)
    従業員はAI出力を人間の判断で最終確認し、不適切な表現や内容は利用しないこととします。

AI倫理規定の明記は、組織の信頼維持の根幹です。


記録義務と改善サイクル

記録義務例

  • (記録義務)
    AIツール利用者は、利用日・目的・入力データ区分・出力利用先を記録し、情報システム部門が保存・監査します。

記録はトラブル時の証拠となり、社内監査や改善資料として機能します。

改善サイクル

  • 利用記録・申請データの集約
  • トラブル事例・教育効果の評価
  • 改訂案の起案・回付・承認
  • 教育と再配布

年1回の見直しを定例化することで、規程を実務に即した形で運用します。


まとめ

規程改訂の条項案を列挙し社内回付することは、AI社内規程の安全かつ継続的な運用基盤を整備することを意味します。禁止行為・申請・記録義務・教育を明文化し、全員が理解・遵守できる仕組みが、AI時代のリスクマネジメントの核心です。

次回は「教育コンテンツの設計と評価指標」を解説します。AI導入や教育支援についてはHANAWA AIラボ公式フォームまでご連絡ください。


生成AI:大量データを学習して新しい文章や画像を生成するAI技術。
トレーサビリティ:業務データ追跡可能性の仕組み。
AI倫理規定:公正性・透明性・説明責任等を定める行動規範。


【参考文献】

[1] 総務省「AIネットワーク社会推進会議報告書」
[2] 経済産業省「AI・データ利用に関する契約ガイドライン」
[3] IPA「AI倫理ガイドライン」
[4] 個人情報保護委員会「匿名加工情報FAQ」
[5] 公正取引委員会「景品表示法ガイドライン」
[6] 特許庁「著作権・商標法の手引」


免責および準拠

本稿は、2025年10月時点の法令・業界ガイドラインおよび一般的な中小企業運用を前提に執筆しております。各社での導入時には、最新の法令・業界基準や個別システム要件に即した対応、および必要に応じた専門家への確認を行ってください。また、本文中の事例や表現は参考指針であり、必ずしもそのまま適用できるものではありません。


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