コラム
AIによる定型業務の自動化フロー|HANAWAくんと学ぶAI活用ラボ第22回
ワークフロー自動化は、AI活用の中でも効果が定量的に把握しやすい分野です。特に見積依頼から受注処理などの定型業務は、AIによる判断・承認・分岐が可能となる代表例といえます。
本記事ではDifyを事例に、AIワークフローの構築手順を体系的に明示し、最終的にBPMN図と運用手順書を完成させることを目標とします。本記事を通じて、自社の業務自動化設計を具体的な手順で描ける状態を到達点とします。
目次
- ワークフロー自動化の全体像を理解する
- BPMNによる業務設計を行う
- DifyによるAIワークフロー自動化の実装事例
- 運用手順書を完成させる
ワークフロー自動化の全体像を理解する
ワークフロー自動化の意義とAI導入効果は、業務一連の手続きを定義し、AIとシステムが人の判断を代替・補助する体制を構築することにあります。従来型RPAが主に操作自動化だったのに対し、AI自動化は自然言語解析や文書処理により柔軟な判断・分岐を実現します。
これにより、単純処理の自動化から意思決定支援の自動化へと進化しています。
業務例
- メール解析による見積依頼抽出
- 顧客情報との照合
- 見積金額算出ロジックの選定
- 上長承認の自動ルーティング
- PDF見積書生成・送付履歴の保存
AIワークフローは複雑な承認・分岐を含む業務でも自動化可能です。
構成要素
- 入力:メール、フォーム、API、ファイル監視
- 処理:AIモデルによる解析・判断(例:GPT API、Dify Agent)
- 出力:DB登録、ファイル生成、チャット通知
- 監視:ログ記録、異常検知、例外処理
この流れ全体を統合制御するのがAIワークフローの特徴です。
監視・例外処理の重要性
AIワークフローでは、認識誤りや外部APIエラーなどが発生するため、例外処理(手動承認への分岐)や監視機能(Slack通知、再実行機構)を組み込み、安定運用を目指します。したがって、監視体制の整備が自動化の成否を左右するといえます。
BPMNによる業務設計を行う
BPMN(Business Process Model and Notation)は、業務プロセスを標準化・可視化する国際記法規格です。AIワークフローの設計でも、BPMNで事前に分岐・承認構造を整理しておけば、開発者、業務担当、経営者の共通認識が生まれます。
これが仕様変更時やAI導入段階での混乱防止につながります。
BPMN図設計手順
- 開始イベント・終了イベントの定義
- 各工程を「タスク」として配置
- AIによる判断箇所は「ゲートウェイ(分岐)」で表現
- 承認フローや例外処理は「中間イベント」で記載
- 出力物(文書・データ)を「成果物」として明示
BPMN図例(見積依頼〜受注)
[開始] → (見積依頼受付) |
Difyなどの実装にも、このBPMN図が基礎設計図として機能します。業務フローを視覚化することで、関係者全員が同じ理解を共有でき、実装段階でのミスコミュニケーションを防ぐことが可能です。
DifyによるAIワークフロー自動化の実装事例
Difyは、自然言語ベースでワークフロー設計が可能なAI統合プラットフォームです。ノーコードでAIエージェント、API接続、条件分岐を組み合わせることで、多様なシステムとの連携ができます。
中小企業では開発リソースの制約がある場合でも、実務的な自動化設計が可能となります。
Dify事例(見積依頼の自動処理)
- トリガー:メール受信(Gmail連携)
- AI解析:GPTモデルによる依頼文解析
- 分岐:依頼内容の明確さスコア判定
- 承認フロー:社内Slackへの自動通知+承認ボタン
- 出力処理:Googleスプレッドシート登録+PDF生成
擬似コード例
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python
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安全注記
APIや外部連携の仕様変更で動作が不安定になることがあるため、実行ログやリトライ機能の設定は必須です。
監視体制の構築
- 異常検知ログをSlack自動通知
- AI回答精度を月次レポート化(スプレッドシート連携)
- 承認履歴をNotion DB保存
これらにより、自動化品質と説明責任を確保できます。また、定期的な精度検証を実施することで、AIモデルの劣化を早期に発見し、継続的な改善サイクルを回すことが可能です。
運用手順書を完成させる
自動化後は、安定継続運用が効果実現の鍵となります。BPMN図をベースに運用手順書を整備することで、システムの属人化を防ぎ、運用体制を維持できます。
手順書記載要素
- フロー概要:BPMN図の目的・構造
- 担当区分:AI・人・システムの役割
- 承認基準:AIのスコア閾値・ルール条件
- 例外処理:エラー時の手動対応
- 監視方法:通知・ログ確認・メンテナンス頻度
- 更新履歴:ワークフロー改訂管理
実務ポイント
- 承認者交代時はSlack通知先を変数化
- APIキー・接続情報は環境変数で管理し共有禁止
- AIモデル変更時は必ず精度検証の上反映
- 月次レビューで例外件数・精度レポート分析
この手順書によってAI自動化を非属人的な仕組みとして運用できます。特に担当者の異動や組織変更があっても、手順書があれば業務継続性が保たれ、安定した運用が実現します。
まとめ
本記事では「ワークフロー自動化」をテーマに、見積依頼〜受注処理フローを題材とし、Difyを用いたAI自動化の構築手順と安定運用方法を説明しました。BPMN図と運用手順書の完成により、AIワークフローの設計・実装・運用が一貫した形で理解できる体制が整います。
今後は社内で再現性のあるAI自動化プロジェクトの推進に役立つことを目指します。
AI導入や教育支援のご相談はHANAWA AIラボ公式問合せフォームよりお問い合わせください。
※BPMN:Business Process Model and Notation。業務手順を可視化する国際標準記法。
※Dify:自然言語を用いてAIワークフローを設計・管理できる統合プラットフォーム。
※AIワークフロー:AIによる判断・分岐・自動処理を含む業務フロー。
免責および準拠
本稿は、2025年10月時点の法令・業界ガイドラインおよび一般的な中小企業運用を前提に執筆しております。各社での導入時には、最新の法令・業界基準や個別システム要件に即した対応、および必要に応じた専門家への確認を行ってください。また、本文中の事例や表現は参考指針であり、必ずしもそのまま適用できるものではありません。
