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コラム

AI-OCRで紙業務を終わらせる|HANAWAくんと学ぶAI活用ラボ第10回

AI-OCRの導入は、紙帳票を自動的にデータ化し文書DXを推進する重要な出発点です。ただし、実際の現場では「帳票種別」「認識精度の差異」「例外処理体制」が大きな課題となります。本稿では、AI-OCR導入のための帳票定義と例外処理設計の全体像を解説し、自社に適した対象帳票と例外処理の手順書を策定できる状態を目指します。


目次

  1. AI-OCR導入の全体像と帳票選定の考え方
  2. 帳票パターンの整理と精度向上の手順
  3. 例外処理設計と運用保守の仕組み
  4. RPA連携による自動化と拡張の実務
  5. 対象帳票と例外処理の手順書を完成させる

1. AI-OCR導入の全体像と帳票選定の考え方

学習目標:AI-OCR導入の全体構造を理解し、優先的な対象帳票選定基準を明確化する。

AI-OCR※(Optical Character Recognition)の目的は、紙やPDF帳票から文字情報を自動抽出し、従来の手入力業務を大幅に削減することです。これにより、バックオフィスの業務効率化、省力化、入力ミス防止およびスピード均一化が図れ、文書DX推進の第一歩となります。

帳票選定手順

まず現状の紙帳票をすべてリストアップします。次に、発生頻度・入力負荷・業務影響度の3要素で評価を行います。そして、高頻度×高負荷×標準レイアウトを優先対象として選定します。請求書・納品書・注文書などフォーマットが一定の帳票が特に効果的です。

選定時の注意事項

レイアウト統一がされていない場合は「標準化」作業を優先することが必要です。手書き・押印・FAX複製は認識精度低下の要因となるため、スキャン条件を統一する必要があります。初期導入は「80点運用」とし、例外対応体制の整備が重要となります。

2. 帳票パターンの整理と精度向上の手順

学習目標:現場の帳票種別を整理し、AI-OCRの認識精度を安定化させる方法を理解する。

帳票は「定型」「準定型」「非定型」の3種に分類して管理します。

定型帳票は同一フォーマットのもので、支払依頼書などが該当します。準定型帳票は企業ごとにやや異なりますが構造は共通しており、取引先請求書などが代表例です。非定型帳票は自由形式で、FAXメモなどがこれに該当します。

AI-OCRの初期導入は、定型・準定型から始め、精度を検証しながら徐々に範囲を拡張していきます。

精度安定化のサイクル

まずスキャン条件を統一します。解像度300dpi以上を推奨し、白黒運用が基本です。

次にフィールド単位の正答率を評価し、数値化を行います。そして学習用データの定期的な再登録によりOCRエンジンの再訓練を実施します。加えて、例外帳票の分析・再分類を継続的に行うことが求められます。

これを月次で繰り返すと、初期80%前後の精度が95%超へと向上します。

精度管理の注意点

AI-OCRエンジンはバージョンやAPI仕様変更で出力が変わることがあります。運用保守部門が出力差異検証を継続し、「精度維持ログ」を記録する仕組みが安定運用の要となります。

3. 例外処理設計と運用保守の仕組み

学習目標:AI-OCRの例外発生時に人的確認と再処理を組み合わせた運用保守設計を理解する。

AI-OCR導入では誤読・欠損・多重読み込みなど例外発生は不可避です。重要なのは、例外をなくすのではなく即時対応できる体制づくりといえます。

基本フロー

まずOCR結果を自動検証します。書式・桁数・重複チェックを実施します。

異常値検出時には担当者へアラートを送信し、修正後データを再投入して履歴を保存します。そして再発防止策として、分類・スキャン条件の調整などを反映することが必要です。

例外処理の手順書には、「検出条件」「担当者」「再処理手順」「記録フォーマット」を明記することが重要となります。

保守体制の整備

品質を維持するには、システムと業務両部門による連携体制の確立が不可欠です。週次で発生件数・内容・再発率をレビューし、対策記録を継続することでOCR導入が持続的な改善サイクルへと進化します。

4. RPA連携による自動化と拡張の実務

学習目標:AI-OCRとRPAを連携し、帳票処理からシステム登録まで自動化する仕組みを理解する。

RPA※(Robotic Process Automation)連携により、AI-OCR抽出データを「入力→検証→登録」の一連業務へ自動化が可能です。例外帳票以外は人手不要で完結します。

RPA連携実装手順

まずOCR出力データをCSVファイルやAPIでRPAへ連携します。次にRPAが会計・販売等の基幹システムへ自動入力を実行します。エラー発生時は例外キューに自動通知し、人手で確認・修正を行います。そして完了ログを保存することで業務監査にも対応できる体制を整えます。

注意点

RPA連携ではOCRデータ構造や列名の変更で処理が止まるリスクがあるため、項目定義書の照合やRPA開発者との更新ルール策定が必要不可欠です。

5. 対象帳票と例外処理の手順書を完成させる

学習目標:記事内容をもとに自社AI-OCR導入のための手順書を確立する。

手順書の構成要素

手順書には以下の要素を含めることが求められます。

対象帳票一覧として、帳票名・件数・発生頻度を記載します。スキャンルールでは、解像度・保存形式・命名規則を定義します。OCR処理フローでは、抽出・検証・登録の流れを明示します。

例外処理手順として、通知・修正・再投入の方法を記載します。精度維持ルールでは、検証周期・記録の方法を規定します。保守体制として、担当部署・連絡経路を明確化します。

これを社内で共有し、業務担当・システム担当・管理職の三層でレビューを実施することでAI-OCR導入が実装済みの運用体制として定着します。今後は他帳票への展開やAI再学習、RPA拡張の足掛かりとなるものです。

まとめ

本稿ではAI-OCR導入に伴う帳票整理と例外処理設計を解説し、完成手順書策定の到達点に至りました。帳票定義・精度向上手順・例外処理保守・RPA拡張の体系的理解により、文書DXは現実的な工程管理レベルへ前進します。

AI導入や教育支援のご相談はHANAWA AIラボ公式問合せフォームよりご連絡ください。


※AI-OCR:AIを活用した文字認識技術。従来型OCRより非定型帳票や手書き文字へも対応。

※RPA:事務作業の自動実行ソフトウェア。システム間連携や業務の自動化に利用されます。


免責および準拠

本稿は、2025年10月時点の法令・業界ガイドラインおよび一般的な中小企業運用を前提に執筆しております。各社での導入時には、最新の法令・業界基準や個別システム要件に即した対応、および必要に応じた専門家への確認を行ってください。また、本文中の事例や表現は参考指針であり、必ずしもそのまま適用できるものではありません。


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