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コラム

公正証書で養育費を決めていても…支払者が死亡した場合どうなる?未払い・相続・備えを整理

Q1. 公正証書があれば、死亡後も自動で養育費が入る?
A. "未払いの回収"には強い一方、死亡後の状況整理は別途必要になることがあります。

Q2. 未払い養育費は相続と関係ある?
A. 未払いの性質・状況により整理が必要です(一般論として"未払い"と"将来分"で考え方が異なります)。

Q3. これから作るなら何を入れるべき?
A. 死亡・病気・失職など"想定事故"に対する備え(例:保険、保証、条項整理)を検討します。


公正証書があっても、支払者が死亡した場合の整理は別途必要です。未払いと将来分の違い、相続との関係、備えの手順を実務の順番で解説します。


公正証書(強制執行認諾)でできること・できないこと

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • "未払い回収"に強い理由
  • ただし「死亡後のすべて」を自動解決するわけではない
  • 離婚協議書との違い

強制執行認諾付きの公正証書は、未払いが出た局面で強い味方になります。ただし、死亡が絡むと「誰に、どこまで請求できるか」を整理し直す必要があり、未払いと将来分を切り分けた備えが欠かせません。

"未払い回収"に強い理由

公正証書(強制執行認諾付き)の最大の強みは、未払いが出たときに裁判を挟まず強制執行へ進みやすい点にあります。

公証役場で作成した執行証書は、要件を満たせば執行文の付与など所定の手順を経て差押えを検討できます。給与や預金を対象にする場合、まず未払い月と金額を確定させ、次に執行に必要な書類を揃えるという流れです。

公正証書は「回収の入口が最初から整っている」と捉えると分かりやすいでしょう。

ただし「死亡後のすべて」を自動解決するわけではない

公正証書が威力を発揮するのは、主に生前に発生した未払いを請求する場面です。

支払者が死亡した後は、未払いが"相続の場面"に移ります。相続人の確定や相続放棄の有無の確認など、回収の前提作業が増えるのです。また、相続人に請求するには承継を前提とした執行文(承継執行文)が問題になることもあり、状況によっては必要書類の準備に時間がかかります。

公正証書は万能ではありません。「死亡後の実務を進めるための強力な土台」と捉えるのが現実的です。

離婚協議書との違い

離婚協議書(私文書)は合意の記録として有用ですが、未払い時の"実行力"は公正証書に比べて劣ります。

公正証書(強制執行認諾付き)は、未払いが出たときに強制執行へつながるルートを設計しやすい一方、協議書のみでは別途、調停・審判や訴訟を検討する場面が増えます。すでに協議書がある場合でも、公正証書化や内容の整備で「未払い時の動き」を明確にできます。

不安が強い方ほど、書面の種類よりも"運用できる形になっているか"を軸に相談すると整理が早まります。


死亡時に分けて考えるべき2つ

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • ①未払い分(すでに発生した分)
  • ②将来分(これから発生する分)
  • ここで揉める:家族(相続人)側の認識ギャップ

死亡時の混乱は、未払いと将来分をごちゃ混ぜにしてしまうことで起きやすくなります。先に「すでに発生した未払い」と「これからの生活費としての備え」を分けて話すだけで、交渉の難度が下がることが多いです。

①未払い分(すでに発生した分)

死亡時点までに支払期日が到来していた養育費の未払いは、相続の場面で整理対象になり得ます

実務では、まず支払日ベースで未払い月を確定し、通帳履歴などで裏付けを取ります。ここが曖昧だと相続人側も対応しにくく、話し合いが長引きがちです。

注意点として、相続人が相続放棄をすると、その人には原則として請求しにくくなります。未払いがあっても"必ず回収できる"ではなく"請求できる可能性がある"という前提で進めるのが安全です。

②将来分(これから発生する分)

一方、将来の養育費は「死亡後も同じ形で当然に続く」とは限りません

公正証書に期間が書かれていても、死亡によって支払者本人がいなくなるため、将来分は別の設計で確保する発想が重要になります。未払いは相続の整理、将来分は生活設計の立て直しとして考えるほうが現実的です。

将来分に関しては、生命保険や遺言等の手段を組み合わせて備えることで、途切れたときのリスクを下げやすくなります。

ここで揉める:家族(相続人)側の認識ギャップ

揉めやすいのは、相続人側が「養育費は全部承継しない」と捉える一方、受け取る側が「公正証書があるのに止まるのは納得しにくい」と感じる場面です。

ここで有効なのが、最初に未払いを"数字として確定"させ、将来分は"備えの話"として切り離すことです。

さらに、相続関係によっては「支払う立場と受け取る立場が同じ人になる」ため、法律上、債権債務が相殺的に消える(混同)と扱われるケースもあります。専門用語は難しいので、「同じ人が支払う側と受け取る側になると、法律上は消えることがある」と理解しておけば十分です。


具体的な備え(これから作る人向け)

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 生命保険の活用(一般論としての考え方)
  • 保証・支払方法の設計(現実的な落とし所)
  • 条項に落とすときの注意(曖昧さを残さない)

将来分が止まり得る以上、公正証書だけで不安をゼロにするのは難しいです。保険・支払設計・条項の明確化を組み合わせ、トラブルが起きたときに"動ける形"へ整えるのが現実的な答えになります。

生命保険の活用(一般論としての考え方)

将来分の備えとして現実的なのが生命保険です。

支払者が亡くなった場合に、受取人(子ども、または監護親など)へまとまった資金が入る設計にしておくと、養育費が止まった後の生活再建がしやすくなります。

公正証書には、以下のような内容を盛り込む方法があります。

  • 保険加入の合意
  • 受取人の維持
  • 証券写しの提示
  • 変更時の通知義務

なお、保険はあくまで一般的な手段の一つです。家計や事情に応じて無理のない範囲で検討すると継続しやすいでしょう。

保証・支払方法の設計(現実的な落とし所)

保証人は現実には組みにくいことも多いため、まずは「未払いを起こしにくい仕組み」を優先すると安定します。

たとえば口座振替・自動送金で支払忘れを減らし、遅延時の対応(遅延損害金、期限の利益喪失など)を明確にします。

自治体によっては、公正証書作成費や保証契約等への補助が用意されている場合もあります。費用面が不安な方は確認しておいて損はありません。

条項に落とすときの注意(曖昧さを残さない)

条項は"気持ち"ではなく"運用できる形"が大切です。

支払日、振込先、手数料負担、住所・勤務先変更時の通知などは、曖昧さがあると未払い時に動けません。

さらに、保険加入義務などを入れる場合は、条項ごとに「強制執行の対象として特定できるか(特定性)」が問題になります。金銭給付は設計しやすい一方、義務の内容が抽象的だと執行が難しくなります。

条項は具体的に落とし込み、実務に強い専門家のチェックを受けると安心です。


すでに公正証書がある人向け:見直しチェック

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 支払方法・支払日・遅延時の取り決めは十分か
  • 事故時(死亡・病気等)の取り扱いが抜けていないか
  • 不安がある場合の相談の進め方(必要情報)

既に公正証書がある場合でも、「作った当時の想定」のままだと不安が残ることがあります。見直しは、条項を増やすことより、未払い時・事故時に"迷わず動けるか"を点検する作業だと考えると進めやすいです。

支払方法・支払日・遅延時の取り決めは十分か

まず確認したいのは、支払日・振込先・支払方法が明確で、入金の証拠が残りやすい設計になっているかです。

遅延時のルール(遅延損害金、連絡期限、猶予の扱い)が曖昧だと、未払いが起きたときに「どこからが滞納か」が争点になりやすくなります。

強制執行認諾があっても、未払い月の特定と証拠が弱いと動きにくいため、運用面の穴を先に塞ぐのが有効です。

事故時(死亡・病気等)の取り扱いが抜けていないか

死亡時の不安は、条項が平時前提だと強くなります。

以下のような内容が書かれているかを点検してください。

  • 生命保険の加入・受取人・変更通知
  • 病気や失職で支払いが難しい場合の協議手順

将来分は死亡で同じ形では続かない可能性があるため、備えがない場合は"別ルート(保険等)で確保する"方向に寄せたほうが不安が減りやすいです。

不安がある場合の相談の進め方(必要情報)

相談を早めるコツは、「結論」より先に「材料」を揃えることです。

たとえば以下があると、未払いの確定や手続の見通しが立ちやすくなります。

  • 公正証書の写し(条項が読めるもの)
  • 入金履歴(通帳・アプリ明細)と未払い月のメモ
  • 相手方の最新情報(住所・勤務先など分かる範囲で)
  • 相続関係が分かる情報(死亡の事実、相続人が誰かの手がかり等)

死亡後に相続人へ請求する局面では、承継を示す資料が必要になることがあり、執行文(承継執行文)に関する手続が論点になります。早い段階で公証役場や専門家に確認すると、遠回りを避けやすくなります。


まとめ

  • 強制執行認諾付きの公正証書は、未払い時に「動きやすい土台」になります
  • 死亡時は「未払い(過去分)」と「将来分」を必ず切り分けて整理します
  • 未払いは相続の場面で請求できる可能性がある一方、相続放棄などで難しくなることもあります
  • 将来分は"別設計"が要点で、生命保険など一般的手段の組み合わせが有効です
  • 条項は特定性を意識して具体化し、運用できる形に整えると不安が減ります

不安を小さくする第一歩は、「未払いがあるか(いくらか)」と「将来分の備えがあるか」を分けて書き出すことです。材料が揃えば、相談先でも判断が早くなります。


脚注

  • 公正証書の効力・運用は条項内容や個別事情により差が出ます。
  • 相続や給付制度など周辺論点は制度変更の影響を受けます。

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な条項設計・方針は個別事情により結論が異なるため、専門家へご相談ください。


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