コラム
就労系在留資格の申請実務 - 1. 技術・人文知識・国際業務(1)要件と対象職種
「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」は、専門性や技術性が求められる職務に従事する外国人に与えられますが、その要件は多岐にわたり、単に書類を提出すれば良いというものではありません。
本稿は、「技人国」の要件と対象職種について、法的な枠組みから実務上の判断基準、不許可時の対応までを解説します。
なお、本記事では、専門的な内容を初めての方にもご理解いただくため、本記事ではあえて専門用語を避け、平易な表現を用いています。厳密な法令解釈とは異なる部分がある点、あらかじめご了承ください。
1. 在留資格「技人国」の基本要件と判断基準
「技人国」の審査で最も重要となるのは、**「申請人の専門性と、従事しようとする職務内容の間に、密接な関連性があるか」**という点です。この関連性は、主に以下の3つの観点から総合的に判断されます。
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学歴・職歴要件:申請人が大学で専攻した分野や、過去の職務経験が業務と一致するか。
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専門性・技術性の要件:業務内容が単純労働ではなく、高度な知識や技術を要するか。
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職務内容の適格性要件:会社との雇用契約が、専門的業務に従事することを明確にしているか。
この3つの要件は、申請書類を通して入国管理局(以下、入管)の審査官に論理的かつ説得的に示す必要があります。
2. 学歴・職歴要件の具体的な考え方
在留資格申請の実務において、まず確認すべきは申請人が以下のいずれかの要件を満たしているかです。
区分 | 要件 | 実務上のポイント |
技術・人文知識 |
①従事する業務に必要な技術・知識を専攻した大学を卒業した者 ②10年以上の関連実務経験を有する者 |
短大・専門学校卒の場合も、専攻分野と業務内容が一致し、専門士・高度専門士の称号があれば申請可能です。 |
国際業務 |
①従事する業務に必要な知識・経験を専攻した大学を卒業した者 ②3年以上の関連実務経験を有する者 (注)通訳・語学指導等、外国の文化に基づく思考・感受性を要する業務 |
「国際業務」は、単なる外国語対応ではなく、通訳・翻訳、海外取引業務など、外国の文化に特有な思考・感受性を必要とする業務に限られます。 |
【実務メモ】
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職歴の証明:単に期間を満たしているだけでなく、職務の一貫性が重要です。複数の会社での経験を合算する場合、各社から「在職証明書」を取得し、それぞれの職務内容を具体的に記載してもらう必要があります。
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学歴の証明:卒業証明書だけでなく、履修科目や専攻内容を説明するシラバスを添付することで、業務との関連性をより強く主張できます。
3. 対象となる職務例とグレーゾーンの見極め方
「技人国」が認められる職務は専門性を要するものであり、単純労働との線引きが厳しく審査されます。
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認められる職務の例:
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技術: プログラマー、システムエンジニア、建築士、機械設計など
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人文知識: 経理、人事、マーケティング、商品企画、営業(海外取引を含む)など
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国際業務: 通訳、翻訳、語学指導、海外広報など
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実務上のグレーゾーンと判断のポイント:
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単純労働との見極め:
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OK: 顧客対応を主とする「営業職」でも、海外顧客との商談や国際的なマーケティング戦略の策定が主業務であれば「国際業務」として認められる可能性があります。
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NG: 「営業職」でも商品の陳列や倉庫整理が主業務になる場合は、単純労働と見なされ不許可となります。
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「翻訳」と「通訳」:
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OK: 専門分野(法律、医療、ITなど)の高度な知識を必要とする通訳・翻訳業務。
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NG: 単純な日常会話の通訳や、誰でもできるような簡単な文書の翻訳。
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「ヘルプデスク」業務:
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OK: システムの設計や改善提案、技術分析が主業務の場合。
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NG: 顧客からの問い合わせにテンプレート通りに回答するだけの単純対応が主業務の場合。
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【実務上の打ち手】 不許可を避けるためには、**「職務記述書(Job Description)」**を詳細に作成し、なぜその業務が専門的な知識を要するのか、そして申請人がその業務にふさわしいのかを定性的・定量的に示すことが不可欠です。
4. 審査で不許可になった時の対応
万が一、申請が不許可になった場合、まず**「不許可理由」**を詳細に確認することが最初のステップです。不許可理由の多くは、専門性の証明不足、職務内容の不一致、あるいは報酬の不適格性などにあります。
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対応策:
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不許可理由に対応する追加の証拠書類(技術的成果物、顧客との契約書、昇給履歴など)を準備する。
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職務内容を見直し、より専門性の高い業務にシフトできないか検討する。
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再申請前に、入管の窓口へ事前相談を行う。
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「なぜこの仕事に、この外国人材が必要なのか?」という問いに説得力をもって答えられるかが、審査の成否を分けます。
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