書類チェックAIを作る|行政書士事務所HANAWAくんと学ぶAI活用実践ラボ第1回
HANAWA行政書士事務所の朝。書類の山を前に、HANAWAくんは少し疲れた様子でパソコンを開いていた。
サトウ所長:「HANAWAくん、ChatGPT Plusの新機能『GPTs』は確認したかい? 書類チェックを自動化できる時代になったんだ。」
HANAWAくん:「見ましたけど、どう設定すれば行政書士の文書校正に使えるのか、正直ピンと来てません…。」
サトウ所長:「なら今日は、GPT Builderを使って『書類チェックAI』を自作してもらおう。SaveとTestまで完了させるのが目標だ。」
(自分でAIを作る…ちょっと緊張するけど、うまくできたら仕事がぐっと楽になるはずだ)
目次
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GPTsとは何か:ChatGPT Plus以上の環境で使える自分専用AI
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GPT Builderの使い方と設定手順
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Instructionsで行政書士向けGPTsを設計する
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Save/Testの操作と動作確認
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応用ヒント:次回への準備としてのチューニング視点
GPTsは、ChatGPT Plus以上のプラン(Plus、Team、Enterprise)の利用者が、自分専用のAIを構築できる機能です。コードを使わず、画面操作だけで目的に合わせた業務専用AIを設計できます。本記事の焦点は「ChatGPT Plus環境で行政書士文書を校正できるGPTsを構築し、Save/Testまで完了する」ことです。HANAWAくんと一緒に設定を進め、実際に動作する書類チェックAIを完成させます。
GPTsとは何か:ChatGPT Plus以上の環境で使える自分専用AI
この章の学習目標は、GPTsの位置づけと構造を理解することです。
GPTs(Custom GPTs)は、OpenAIが提供するChatGPTの拡張機能で、ユーザー自身が「目的」「知識」「動作方針」を定義して独自AIを作る仕組みです。ChatGPTの会話能力を特定業務に特化させられる点が特徴です。
GPTsの基本構造
GPTsは大きく3つの設定領域から成ります。
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Instructions:AIの目的・性格・振る舞いを定義する欄
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Knowledge:独自ファイルや資料を登録し、追加知識を付与する欄
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Actions:外部APIと連携するための設定(今回は未使用)
これにより、たとえば「行政書士事務所専用の文書チェックAI」など、特定業務向けのGPTを構築できます。
GPTs利用に必要な環境
ChatGPT Plus、Team、Enterpriseのいずれかのプラン契約が必要です。無料ユーザーにはGPTs機能が表示されません。左側メニューに「Explore GPTs」が見える場合は利用可能な状態です。
GPT Builderの使い方と設定手順
この章の学習目標は、GPT Builderの画面構成と操作手順を理解することです。
GPT BuilderはChatGPTアプリ内で直接起動できるビルダー機能で、プログラミング不要でAI設定を行えます。
Builderの起動手順
1.ChatGPTの左メニューから「Explore GPTs」をクリック
2.右上の「Create a GPT」を選択
3.Builder画面が開く(左が設定入力欄、右がAIプレビュー)
この画面で、AIの性格や目的を入力しながら、右側のプレビューで即時反映を確認できます。
Builder画面の構造
左ペインでは、「名前」「説明」「Instructions」「Knowledge」などの設定を順に入力します。
右ペインでは、設定した内容をもとに、実際のAIがどのように応答するかを試せます。
設定を保存すれば、以降はChatGPT内で自分専用のGPTとして利用可能です。
Instructionsで行政書士向けGPTsを設計する
この章の学習目標は、行政書士業務に適した文書チェックAIを設計することです。
Instructions欄に明確な目的と制約条件を入力することで、AIが正確に校正を行うようになります。
Instructions設定(目的と行動方針)
Instructions欄には、次のように入力します。
あなたは行政書士事務所のスタッフAIです。 行政書士が作成する契約書・申請書・説明文などの日本語文書を校正すること。 表現の正確性、誤字脱字、助詞の使い方、敬体の統一、読みやすさを確認せよ。 専門用語は変更せず、誤記のみを指摘すること。 回答は箇条書きで、修正提案を具体的に示すこと。
これにより、AIは「行政書士文書を対象に誤記修正を行う専門チェックAI」として機能します。
トーン設定(応答スタイルの記述)
トーン設定は独立した欄ではなく、Instructions欄の中に記述します。以下のように、応答スタイルを指定します。
誠実で落ち着いた口調を使用し、事務所内スタッフに報告する文体で書くこと。 感情的表現を避け、指摘内容を明確かつ簡潔に伝えること。
これにより、実務報告調の落ち着いた出力を得ることができます。
Save/Testの操作と動作確認
この章の学習目標は、設定したGPTを保存し、動作をテストすることです。
手順概要
目的は、作成した書類チェックGPTを「Save」し、「Test」で正しく校正結果が出るかを確認することです。
操作ステップ
1.画面右上の「Save」ボタンをクリック
2.公開範囲で「Only Me(自分のみ)」を選択
3.「Test」ボタンを押してプレビューを起動
4.例文「本日付で提出致します。」を入力
5.校正提案が出るかを確認
※「Only Me」を選択した状態では他ユーザーに公開されません。「Publish」まで進めない限り、完全に自分専用のGPTとして動作します。
動作確認ポイント
出力に「『致します』は『いたします』が正しい表現です」などの修正提案が出れば成功です。
これで本回の焦点「行政書士文書を校正できるGPTsを構築し、Save/Testまで完了する」が達成されます。
応用ヒント
次回は、このGPTをチューニングして校正精度を高め、文書種別ごとの出力方針を制御します。
応用ヒント:次回への準備としてのチューニング視点
この章の学習目標は、次回のカスタマイズへの視点を理解することです。
今回作成したGPTは、基本的な校正AIとして動作しますが、Instructionsを追加・改訂することで、より正確に特定文書(契約書、依頼文、申請書)に適応させられます。
手動チューニングの考え方
GPTsには自動学習機能はありません。
ただし、過去のチャット履歴を参照し、出力の過不足を確認して手動でInstructionsを修正することが可能です。
たとえば「丁寧すぎる指摘」や「修正漏れ」がある場合、該当箇所を踏まえて再編集し、再保存すれば反映されます。
Knowledge機能の活用
「Knowledge」欄に法令要約や業務マニュアル(PDFやテキスト)を追加することで、文書校正だけでなく内容面の根拠確認も可能になります。
この機能は、次回以降の「行政書士GPTチューニング」編で扱います。
まとめ
本記事では、ChatGPT Plus以上のプラン環境でGPT Builderを使用し、行政書士文書を校正できるGPTsを構築し、Save/Testまで完了する手順を解説しました。
Instructions欄の記述によってAIの目的と口調を明確にし、保存後にテストで結果を確認することで、実務で使える基礎モデルが完成します。
次回はこのGPTをチューニングし、行政書士業務専用の精密な文書チェックAIへと発展させます。
※ChatGPT Plus:OpenAIが提供する有料プラン(月額制)。GPT-4モデルおよびGPTs機能が利用可能。
※GPT Builder:ChatGPT内でカスタムGPTを作成・編集できる専用インターフェース。
※Knowledge:GPTに独自資料を学習させる補助領域。自動学習ではなく参照型構造。
※Publish設定:「Only Me」で自分専用、「Share Link」で限定共有、「Publish」で一般公開が可能。