コラム
【建設業許可シリーズ 第8回】財産的基礎要件500万円の確認方法を徹底解説
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※本記事は分かりやすくするために簡略化しています。詳細は条文を確認するか、専門家に相談してください。
はじめに
建設業許可を取得するためには、さまざまな要件を満たす必要があります。その中でも「財産的基礎要件」は、申請における重要な条件の一つです。特に「500万円以上の自己資本が必要」と認識されがちですが、実際にはもう少し柔軟な判断基準があります。
本記事では、財産的基礎要件の意味や確認方法、必要書類、実務上の注意点まで、事例を交えてわかりやすく解説します。
1. 財産的基礎要件とは何か
財産的基礎要件とは、建設業を安全・安定的に営むために必要な財務的基盤を指します。行政はこれをもとに「請負契約を履行できるか」を判断します。
1-1. 法的根拠
建設業法第7条第4号において、申請者は**「請負契約を履行するに足りる財産的基礎」**を有することが求められています。
一方、第8条では許可の欠格要件が定められています。
つまり、財産的基礎要件は単なる数字の話ではなく、建設業を継続的に運営できる能力を証明するための規定です。
1-2. 財産的基礎要件の要件例
財産的基礎要件を満たすには、原則として次のいずれかをクリアする必要があります。
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自己資本額が500万円以上ある
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500万円以上の資金調達能力がある
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過去5年間継続して建設業を営業した実績がある
つまり、自己資本が500万円に満たなくても、資金調達能力や営業実績で要件を満たすことが可能です。
2. 財産的基礎要件の計算方法
財産的基礎要件は、主に**自己資本(法人の場合は純資産合計額)**で確認されます。
2-1. 計算式のイメージ
自己資本(純資産合計額)=総資産−総負債自己資本(純資産合計額) = 総資産 - 総負債自己資本(純資産合計額)=総資産−総負債
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総資産:現金・預金・売掛金・在庫・有価証券・設備など
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総負債:借入金・買掛金・未払費用など
例:総資産 1,200万円、総負債 600万円の場合
自己資本=1,200−600=600万円>500万円自己資本 = 1,200 - 600 = 600 \text{万円} > 500万円自己資本=1,200−600=600万円>500万円
→ 財産的基礎要件をクリア
2-2. 個人事業主の場合
個人事業主は「純資産」を基準に計算します。事業用預金や設備、在庫を総資産に含め、負債を差し引いた金額が500万円以上であればOKです。
2-3. 法人の場合
法人の場合は貸借対照表の純資産合計額で判断します。
ポイントは以下です。
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繰越利益剰余金がマイナスの場合は控除
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資本金や利益剰余金などを合計して自己資本を算定
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固定資産は原則簿価で計算
最新会計用語に合わせて「繰越欠損金」ではなく「繰越利益剰余金(マイナスの場合)」として記載する方が正確です。
3. 財産的基礎要件を確認する書類
主に以下の書類を用意します。
書類 | 用途 |
---|---|
決算書(貸借対照表・損益計算書) | 自己資本の計算 |
預金通帳のコピー | 現金・預金の証明 |
固定資産台帳 | 設備や土地の評価確認 |
借入金明細 | 負債額の確認 |
3-1. 個人事業主の場合
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青色申告決算書を提出
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預金残高証明書で現金・預金の存在を証明
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借入金明細を添付するとスムーズ
3-2. 法人の場合
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新規許可申請は原則直近1期分の決算書で判断
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過去3期分が必要になるのは、経営業務管理責任者の経験など他の要件証明の場合
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公認会計士・税理士による証明書があると信頼性アップ
4. 財産的基礎要件を満たす工夫
自己資本が500万円に満たない場合、次の対応策があります。
4-1. 資本金の増資(法人)
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増資により自己資本額を増加
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定款変更や登記手続きが必要
4-2. 個人事業主の事業用預金増加
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事業用預金を増やすことで自己資本の目安をクリア
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生活用預金と区分して管理することが重要
4-3. 債務の整理
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不要な借入金や未払金を整理して負債を減少
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結果として自己資本が増加
4-4. 財産証明書の活用
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個人所有の土地・建物を資産に含める
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公的評価証明書を添付すると信頼性アップ
5. 財産的基礎要件の確認手順(実務)
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決算書・貸借対照表を確認
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自己資本(純資産合計額)を算出
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必要書類(預金通帳、固定資産台帳、借入明細)を整理
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自己資本が不足の場合は増資・負債整理・資産証明で対応
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許可申請書類に反映
6. よくある質問
Q1. 現金500万円がないと申請できない?
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現金だけでなく売掛金や設備も資産に含まれるため、総資産−総負債=500万円以上であれば可。
Q2. 借入金が多い場合は?
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自己資本が減少するため注意。短期借入金や未払金の整理が重要。
Q3. 銀行保証や親会社の支援は使える?
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原則、自己資本として認められるのは申請者本人の資産。
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保証や支援は添付資料として考慮される場合あり。
7. 許可後の運営での注意点
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許可取得後も財務状況の維持が重要
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自己資本が500万円未満になった場合、行政から報告を求められることがある
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定期的に決算書を確認し、大型工事受注時の資金繰りを検討
8. HANAWA行政書士事務所からのアドバイス
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財産的基礎要件は数字の問題だけでなく、書類整理や評価方法の理解も必要
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当事務所では全国対応のリモート打合せで、決算書・通帳・固定資産確認までサポート可能
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「自己資本500万円に満たないかも」「書類整理が不安」という場合も安心
9. まとめ
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財産的基礎要件は建設業許可に不可欠
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計算は「総資産−総負債=自己資本(純資産合計額)」
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必要書類は決算書・通帳・固定資産台帳・借入明細
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不足時は増資・負債整理・資産証明で対応
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許可後も財務状況の維持が重要
数字と書類を整理することで、建設業許可申請はスムーズに進められます。