コラム
就労系在留資格の申請実務 - 第7回 経営・管理(1)要件と事業計画の立て方
取得要件(安定性・継続性/事務所/投資額)、事業計画の作り方、「資本金500万円」の正しい理解
1. 全体像(条文→省令→運用)
経営・管理は「事業を経営・管理する活動」に該当すること(在留資格該当性)と、上陸基準省令の基準を満たすこと(いわゆる「基準省令」)の二階建てです。実務では、①活動該当性(事業の実在・適法性)②省令基準(事務所・規模)③立証(書面・証拠)を同時並行で固めます。
2. 要件①:安定性・継続性
審査が見ているのは「事業が安定的かつ継続的に営まれる蓋然性」。売上見込や資金繰り表だけでなく、顧客獲得の具体策・提携予定・許認可の取得計画・代表者の実務経験まで、数字と証拠で接続します。管理業務に従事する者は3年以上の管理経験と日本人同等以上の報酬が要件( “管理”のみを行うケース)。
実務Tip
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KPIは「問い合わせ件数→成約率→LTV→粗利率」の推移を月次で置く。
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許認可が必要な業種(例:古物・飲食・旅館等)は取得時期と所轄を明記。
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既存実績が薄い業態はLOI(意向表明)・見積書・予約申込書などで需要を補強。
3. 要件②:事務所(物理的・独立・占有)
バーチャルオフィスは不可が原則。独立区画・標識・通信回線・什器・賃貸借の使用目的(事務所可)など、実体ある拠点を写真・間取り図・契約書で立証します。自宅兼用は用途地域・契約条項・動産区分の整理が不可欠。標識は外から視認可能な恒久物で。
実務Tip
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立証セット例:外観・館内掲示・ポスト名札・室内全景・机/PC/通信機器・賃貸借契約(事務所可)・電気/通信の開通証明。
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コワーキングは専用区画+専用鍵+24H可など独立性の根拠が必要。共用席は弱い。
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倉庫業態は倉庫契約・在庫管理体制まで示す。
4. 要件③:**事業規模(500万円 or 常勤2名 等)**と「500万円」の本質
現行運用では、(a) 日本居住の常勤職員2名以上の雇用または**(b) 資本金/出資の総額が500万円以上等で、一定規模を満たすことが目安です。個人事業の場合は「資本金」という概念がないため、設備・初期費用・運転資金等への実支出が合計500万円超で“同等規模”と評価されます。数字は“十分条件ではなく有力指標”**と理解してください。
資金の出所立証
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送金記録(海外→日本)/預金通帳/株式払込金保管証明/請求書・領収書(設備・内装・什器)
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名義貸し疑念を排すため、資金の経路を途切れさせない(本人→会社口座→支払い)。
雇用ルートの注意
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「2名常勤」は社会保険加入・就業実態・給与振込が伴う“実雇用”。家族名義・短時間は却下リスク。
⚠️ 今後の制度変更の観測
政府は資本金要件を3,000万円以上に引き上げ、常勤職員1名以上を義務化する方向で最終調整との報道があります(2025年8月時点、年内の省令改正を目指す旨)。現時点の公式改正は未施行のため、申請時は最新の公式発表を必ず確認してください。
5. 事業計画書の作り方(“数字×証拠”で説得力を出す)
骨格(最低限12項目)
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事業目的・提供価値(何の課題を誰に)
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市場規模・競合・優位性(一次情報の出典明記)
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具体的サービス/商品ラインと価格
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マーケ戦略(チャネル・広告費・CVR仮説)
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売上計画(月次)と根拠(見積/LOI/契約予定書)
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原価・販管費(採用・家賃・広告・ライセンス)
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キャッシュフロー(最低12か月・運転資金確保)
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組織図・役割・雇用2名ルートなら職務記述書
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事務所の実体(写真・契約・標識)
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許認可の要否と取得スケジュール
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リスク管理(資金ショート/主要顧客喪失/在庫滞留)
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マイルストーン(開業~6/12/24か月)
実務Tip
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「達成不能な直線上昇」ではなく立上げ特有のS字で描く。
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エビデンス添付は本文にハイパーリファレンス=資料番号を振る。
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在外申請(COE)と国内の在留資格変更で、準備と時間軸を変える。審査目安は事案で変動。
6. 典型的不許可リスクと回避策(現場対応)
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名義貸し疑念:代表者の関与薄い/出資者と実権者の乖離 → 職務・意思決定フローを明示、取締役会議事録原案や職務権限規程を添付。
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事務所の実体不足:共用席・短期貸し → 専用区画+鍵+標識+設備の写真群で補強。
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500万円の形式充足:払込後に即引出し→実体なし → **支出証憑(内装・什器・広告)**で“事業投下”を示す。
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雇用の形式化:親族アルバイト → 社保・雇用契約・勤怠・職務で実雇用を証明。
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許認可抜け:古物・飲食等 → 取得完了後に申請するか、申請受理書+審査見込で補強。
7. 5分チェックリスト(提出前の最終確認)
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〔活動該当性〕事業の実在性を図解で説明できるか
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〔省令基準〕事務所は独立・占有・恒久の3条件を満たすか
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〔規模〕500万円の“実事業投下” or 常勤2名のどちらで立証するか(根拠資料は?)
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〔管理者要件〕“管理のみ”なら3年経験+日本人同等報酬の証拠は十分か
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〔将来変更〕3,000万円案の動向を申請直前に再確認したか(省令改正の有無)
まとめ:数字より「実体」を、主張より「証拠」を
経営・管理は、事業の実体をどれだけ可視化できるかの勝負です。500万円はゴールではなくスタート。**計画(ストーリー)→資金(数字)→拠点(写真・契約)→人(履歴・雇用)**を一気通貫で仕上げれば、審査官にとって“許可しやすい”ファイルになります。最新運用(とくに資本要件の見直し報道)には敏感でいてください。
重要なご案内(毎回共通の注意書き)
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本記事は分かりやすさを優先した一般的解説です。実際の申請では、最新の条文・基準省令・出入管庁資料・各局運用を必ず確認し、個別事案は専門家にご相談ください。
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行政書士は文書作成のプロですが、弁護士と異なり交渉・紛争対応は業務範囲外です。必要に応じて弁護士と連携します。
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