コラム
【連載第7回】スローペースの散歩からの気づき
老犬ロッキーとの散歩は、今や“こちらが合わせる時間”になりました。若いころはリードをぐいぐい引っ張り、こちらが走らされるほどの勢いでしたが、今はゆっくりと歩き、時に立ち止まって風を感じています。その姿を見ていると「一歩一歩を大切に」というメッセージを受け取っているような気がします。老いを受け入れるのは人も犬も同じ。ロッキーのペースに合わせることで、自然と自分の生活や将来の備えについて考える時間が増えました。愛犬と過ごすこのスローペースの時間は、単なる散歩ではなく、法務や生活設計に通じる「備え」の重要性を気づかせてくれます。
高齢犬の医療費と保険契約 ― 行政書士・FPの視点から
1. 高齢犬と医療費の現実
犬の平均寿命は15年前後に伸び、シニア期を迎える犬が増えています。その分、医療費の負担も増大します。動物病院の診療は自由診療であり、人間のような公的医療保険制度は存在しません。心臓病、腎臓病、腫瘍、関節疾患などの慢性病は、長期にわたる治療が必要であり、費用が毎月数万円に及ぶこともあります。手術となれば数十万円単位の支出が発生します。こうした医療費は飼い主にとって想定外の大きな出費となり得ます。
2. ペット保険契約の重要性と留意点(行政書士の視点)
ペット保険は民間契約であり、法的拘束力を持つ「保険契約」です。契約書(約款)には詳細な補償条件や除外条項が定められており、これを理解しないまま加入すると「想定外で補償されなかった」というトラブルにつながります。行政書士として注目すべきポイントは以下です。
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加入年齢制限:新規加入は7~10歳までとする保険が多く、高齢犬では加入自体が難しいケースもあります。
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既往症の扱い:人間の保険同様、発症済みの病気は補償対象外となることが一般的です。
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補償割合・限度額:70%補償や年間100万円までなど契約内容は様々。補償率が高ければ保険料も上がります。
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免責事項・特約:歯科治療や予防接種などは補償対象外が多く、契約前に確認が必須です。
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更新条件:高齢になると更新できない場合や、更新時に条件が変わる場合があります。
契約書を読み解き、理解したうえで署名・押印することは「意思表示の有効性」を確保するうえで極めて重要です。行政書士の立場からは「補償除外事項」と「更新条件」を特に注視することをお勧めします。
3. 家計とライフプランの観点(FPの視点)
FPとしては、医療費を家計全体にどう位置づけるかが課題です。老犬の治療にかける費用は、飼い主の生活費や老後資金にも影響します。そのため、次のような準備が必要です。
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治療費の上限設定:家計を圧迫しない範囲で「月額上限」を決める。
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積立の活用:ペット専用の積立口座を設け、毎月一定額を積み立てて医療費に備える。
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保険と自己負担のバランス:高額な保険料を払い続けるより、一定の自己負担を受け入れ積立と組み合わせる方が合理的な場合もあります。
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将来の選択肢を話し合う:家族で「どこまで医療を施すか」を事前に共有しておくことは、精神的にも重要です。
4. 契約書の読み解きと専門家活用
保険約款は専門用語が多く、一般の飼い主にとって理解が難しい部分があります。行政書士は契約文書の解釈やトラブル回避の視点でアドバイスできますし、FPは家計の長期シミュレーションを提示することが可能です。この二つの専門性を組み合わせることで、より現実的で安心できる備えが整います。
5. ケーススタディ
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ケースA:7歳で心臓病発症後に保険加入を検討 → 既往症扱いで補償されず、積立型の備えが必要。
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ケースB:3歳で保険加入し、15歳まで更新 → 高齢期に保険料は高騰するが、大きな手術費用を補填できる。
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ケースC:保険未加入で毎月積立 → 保険料分を積立に回し、通院費は賄えるが手術費には不足する可能性あり。
このように、どの選択肢にも一長一短があり、飼い主ごとに最適解は異なります。契約を正しく理解し、家計に即した判断を行うことが肝要です。
まとめ
ロッキーとのスローペースな散歩は、老犬と共に生きる現実を受け入れる時間です。同じように、医療費と保険契約も「先を見据える姿勢」が大切になります。犬の老いは避けられませんが、その過程で飼い主ができる備えは数多くあります。
飼い主としてできることは:
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ペット保険の契約内容を読み解き、補償除外事項や更新条件を確認する(行政書士の視点)
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家計のバランスを踏まえて医療費の上限を検討する(FPの視点)
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ペット専用積立を始め、将来の医療費に備える
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家族で「どこまで医療を施すか」を話し合い、意思を共有する
これらを整理しておけば、いざという時の迷いや不安を大幅に減らせます。愛犬にとっても、飼い主にとっても安心して過ごせる環境づくりにつながります。
当事務所では、行政書士として契約書の解釈や法務的なサポート、FPとして資金計画のアドバイスを併せて行っています。愛犬が健やかに老後を過ごせるよう、法務と家計の両面から「安心の備え」を整えていきましょう。