コラム
【財産評価 第6回】借金・連帯保証債務の把握|相続時に後悔しないための負債調査
はじめに
相続というと「財産分け」「不動産の名義変更」といったプラスの財産を中心に考える方が多いでしょう。
しかし、実際に行政書士としてご相談を受けていると、相続で一番後悔が残るのは“負債を調べなかった”ケースです。
被相続人に借金があった場合、あるいは連帯保証人になっていた場合、その負担はそのまま相続人に引き継がれます。
「親に借金なんてあるはずがない」と思っていたら、後から金融機関や保証会社から請求書が届いた──そんな相談は珍しくありません。
この記事では、相続時に最初に知っておくべき負債調査の基本と実務手順を詳しくご紹介します。
相続で承継される負債とは
相続の対象は、プラスの財産だけではありません。
民法第896条により、相続人は被相続人の権利義務を一括して承継するため、以下のような債務も引き継がれます。
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金融機関からの借入金(住宅ローン、カードローンなど)
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クレジットカードの利用残高
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未払いの医療費・介護費
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税金や公共料金の滞納
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個人間の借金(親族・友人からの借入)
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連帯保証債務
特に注意が必要なのは「連帯保証債務」と「親族間の借金」です。
連帯保証債務のリスク
被相続人が生前、知人や親族の借入の連帯保証人になっていた場合、相続人はその債務を引き継ぎます。
実務でよくあるケース:
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親が友人の会社の借入金を保証していた
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地元の信用金庫で子の事業資金の保証人になっていた
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不動産の賃貸契約で連帯保証人になっていた
連帯保証は「主債務者が払えない場合の肩代わり」ではなく、金融機関にとっては「主債務者と同等に取り立て可能」なものです。
つまり、相続した時点で多額の債務が降りかかるリスクがあるのです。
親族間の借金
「親族間の貸し借り」は記録が不十分なことが多く、相続の現場でトラブルになりやすい項目です。
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借用書が残っていない
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返済が口約束で進んでいた
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途中まで返済したが残高が不明
このような場合でも、銀行振込の履歴やメモなどから債務が認定されることがあります。
「親族だから大丈夫」と思わず、客観的な資料を基に確認することが大切です。
負債調査の実務手順
ここからは、実際にどのように負債調査を進めるべきか、実務手順を詳しく解説します。
1. 通帳・郵便物を確認する
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銀行通帳の入出金に「ローン返済」「カード引落」といった記載がないか確認
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見慣れない金融機関や保証会社からの郵便物が届いていないかチェック
※実務では、郵便物が最も確実な手がかりになるケースが多いです。
2. 信用情報を開示請求する
日本には3つの主要な信用情報機関があります。
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CIC(株式会社シー・アイ・シー)
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JICC(日本信用情報機構)
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全国銀行個人信用情報センター(KSC)
これらに「本人死亡後の相続人による開示請求」を行うと、被相続人が生前に利用していた借入や保証の履歴が判明する場合があります。
開示の流れ:
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各信用情報機関のHPから「相続人用開示申請書」を入手
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被相続人の死亡を証明する戸籍謄本・除籍謄本を用意
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相続人であることを示す戸籍謄本や遺産分割協議書を添付
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郵送で申請すると数週間で開示結果が届く
この調査で「見えていなかった借入」が判明することは少なくありません。
3. 役所での確認(税金・公共料金)
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市区町村役場に問い合わせると、固定資産税や住民税の未納の有無が分かります。
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また、国民健康保険料・介護保険料の滞納がないかも確認が可能です。
公共料金(電気・ガス・水道)の未払いについては、請求書や口座引落の履歴を確認します。
4. 不動産登記からの調査
法務局で不動産登記事項証明書を取得すると、抵当権や根抵当権の設定があるかを確認できます。
これにより、住宅ローンや事業用融資の存在が浮かび上がることがあります。
5. 親族・知人への聞き取り
書面で把握できない債務は、親族や知人への聞き取りで見えてくることもあります。
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「お父さん、○○さんの保証人になっていたらしいよ」
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「昔、事業が厳しかったときに親戚からお金を借りていた」
こうした証言は、相続放棄や限定承認を検討する際の判断材料になります。
相続放棄・限定承認という選択肢
調査の結果、負債が大きいと分かった場合、相続人は以下の制度を選べます。
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相続放棄:最初から相続人ではなかったことにできる(家庭裁判所に3か月以内に申述)。
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限定承認:プラスの財産の範囲でのみ負債を引き継ぐ。
特に相続放棄は、借金を背負い込まないための重要な制度です。
実務で感じること
多くのご家族は「借金なんてないだろう」と思い込み、調査をおろそかにしてしまいます。
しかし、相続の現場では「隠れた保証人」や「親族間の貸し借り」が後から発覚するケースが本当に多いのです。
負債調査は、プラスの財産調査以上に慎重に進める必要があります。
“見えないマイナス”をいかに早く発見できるかが、相続で後悔しない最大のポイントです。
まとめ
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相続ではプラスの財産だけでなく負債も引き継ぐ
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特に連帯保証債務と親族間の借金は要注意
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信用情報開示、役所照会、登記事項証明、郵便物・通帳確認を組み合わせて調査する
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調査結果によっては相続放棄・限定承認を検討する
※本記事は分かりやすさを優先し簡略化しています。詳細は条文を確認するか、専門家にご相談ください。
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