コラム
「記」と「以上」を抜いたらどうなる?|テンプレ依存の限界
はじめに
内容証明郵便の作成方法を調べると、多くのサイトや解説書で「主文の後に『記』を置き、最後は『以上』で締める」と説明されています。
実際に流通しているテンプレートでも、主文を記した後に「記」が続き、最後を「以上」で締める形が定番になっています。
しかし、これは本当に必須なのでしょうか?
実務上、「記」「以上」は必ずしも必要ではなく、ケースによっては省略したほうが適切な場合もあります。
本稿では、単なる形式論ではなく、「記」「以上」がどういう場面で有効なのか、また不要なのかを整理し、実務経験から導かれる最適な判断基準を提示します。
「記」とは何か
「記」書き(読み:きがき)とは、文書や送付状などで主文の後に箇条書きで項目を整理する際に置かれる見出しです。
特徴は以下のとおりです:
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「記」という文字を中央に配置する
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その下に必要な内容を箇条書きで並べる
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内容を整理し、視認性を高める役割を果たす
つまり「記」は、情報を項目立てして整理するための書式上の工夫にすぎません。
「以上」とは何か
「記書き」の最後には「以上」をつけるのが原則とされています。
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「以上」と書くことで、文書の内容がすべて伝わったことを明示する
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相手に「ここで文書が完結した」という安心感を与える
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「以上」のあとに文面を続けることはしない
このように、「以上」は区切りを示す役割を持ちます。
実務で本当に必要か?
ここで重要なのは、「記」や「以上」が法的に義務づけられているわけではないという点です。
内容証明に必要なのは、
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誰が誰に送ったのか(差出人・受取人)
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何を請求・通知しているのか(本文の趣旨)
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その内容が明確で誤解を生まないこと
これらが満たされていれば、形式として「記」「以上」を書かなくても効力は失われません。
具体例(「記」「以上」なし)
令和7年8月18日 東京都〇〇区〇〇町〇番地 佐藤太郎 殿 私は、貴殿に対し令和7年7月分の賃料を請求いたします。 令和7年8月末日までに支払いがない場合、賃貸借契約を解除いたします。 住所 氏名
このように「記」「以上」を省略しても、通知の趣旨は一義的に明確であり、内容証明として有効です。
テンプレ依存のリスク
「記」と「以上」を必須と誤解していると、かえって文書の内容が不十分になる危険があります。
典型例:
記 1.婚姻費用について 2.養育費について 以上
このような「見出し」だけの書き方では、具体的にいくらを、いつまでに、どう支払うのかが抜け落ちています。
形式的に整っているように見えても、実務では「請求の趣旨が不明確」という致命的な欠陥となりかねません。
つまり、「記」と「以上」を書いたから安心」というのは大きな誤解なのです。
実務での判断基準
「記」「以上」を入れた方がよいケース
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複数の請求内容や条項を箇条書きで整理したい場合
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相手が企業・団体などで、フォーマルな体裁を重視する場合
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文書量が多く、区切りがあったほうが読みやすい場合
省略した方がよいケース
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本文がシンプルに一段落で完結する場合
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相手が家族・知人など、堅苦しさを避けたい場合
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「記」を入れることでかえって冗長になる場合
まとめ
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「記」は本来、箇条書きで整理する際の見出しであり、すべての文書に必要なわけではない。
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「以上」は区切りを示す語であり、原則として記書きの後につける。
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ただし、法的効力の観点からは「記」「以上」は必須ではなく、本文の明確さこそが最優先。
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実務では「形式に安心する」のではなく、誰が読んでも誤解のない文案を書くことが肝心。
HANAWA’s Point
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「記」は“箇条書き用の見出し”、万能ではない。
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「以上」は文末を明示する表現、原則として記書きの後に置く。
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実務では、案件に応じて省略・活用を判断することが重要。
HANAWA’s Check
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請求や通知の趣旨が本文で一義的に伝わっているか?
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箇条書きで整理する必要があるか、それともシンプルに伝えた方がいいか?
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形式ではなく「内容の明確さ」で最終確認する。
※行政書士は文書作成の専門家ですが、弁護士と異なり交渉や紛争案件には対応できません。
※HANAWA行政書士事務所では、リモート打合せにより全国で内容証明作成サポートを行っています。