コラム
【財産評価 第4回】不動産の財産調査
不動産の財産調査|遺言書作成と相続手続きで必要な登記簿・評価額の調べ方
相続の準備において、最も複雑で確認が必要な財産のひとつが不動産です。土地や建物は現金や預貯金のように動かすことができないため、正確な情報を把握することが、その後の相続手続きのスムーズさに直結します。
特に、遺言書で不動産を特定する際の**「所在・地番」の正確性**は、後のトラブルを回避するために非常に重要なポイントです。
本記事では、行政書士の実務経験に基づき、不動産調査の具体的な方法と、遺言書作成時の注意点を深く掘り下げて解説します。
なぜ不動産の財産調査が重要なのか?
相続時に不動産の所在や権利状況を正確に把握していないと、次のようなトラブルが生じやすくなります。
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遺言書と登記情報が異なり、遺言執行が滞る
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遺言書に記載した地番が古く、現在の登記情報と一致しない場合など、遺言の内容が不明確となり、相続人同士の話し合いが難航することがあります。
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遺産分割協議が難航する
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不動産の正確な価値が分からず、複数の相続人間の間で価値の認識にずれが生じ、協議がまとまらないことがあります。
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余計な時間と費用が発生する
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固定資産税や登記費用の計算が誤ったり、名義変更手続きで追加調査が必要になったりすることで、予想外の時間と費用がかかることになります。
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不動産調査の具体的な方法
不動産調査は、主に以下のステップで行います。すべての情報が正確に記載された「相続財産目録」を作成するために、一つずつ丁寧に確認することが重要です。
1. 故人の不動産を洗い出す
まずは、故人が所有していた不動産の全体像を把握します。
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固定資産税の納税通知書
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毎年届くこの書類には、故人名義のすべての不動産がリスト化されています。ここに記載された**「所在地」や「地番」**が、その後の調査の出発点となります。
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※注意点:この書類は不動産が所在する市区町村から届きます。故人が複数の市区町村に不動産を所有していた場合、それぞれの市区町村から納税通知書が届いているはずですので、すべて確認してください。
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登記済権利証(登記識別情報通知)
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その不動産の所有者であることを証明する書類です。ここに記載された**「所在」「地番」「地目」「地積」**といった情報も、調査の強力な手がかりになります。
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これらの書類が見つからない場合でも、ご安心ください。以下で解説する公的な方法で調査を進めることができます。
2. 不動産調査の「最後の砦」:名寄せ帳の活用
納税通知書や権利証が見つからない場合、故人の不動産を網羅的に調べるには、「名寄せ帳(なよせちょう)」を活用します。
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名寄せ帳とは?
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特定の市区町村内で、故人(納税義務者)が所有するすべての不動産を一覧にした帳簿です。
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ここに記載された情報をもとに、個別の不動産の詳細を調べていきます。
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取得方法
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故人の最後の住所地や、心当たりのある市区町村役場の税務課で取得できます。
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※注意点:名寄せ帳は、その市区町村内の不動産しか記載されていません。もし故人が複数の場所に不動産を所有していた可能性があれば、その所在地(例:別荘地、貸地など)を管轄するすべての市区町村役場に問い合わせて取得する必要があります。
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必要な書類:相続人であることがわかる戸籍謄本、本人確認書類など。
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3. 不動産の情報を正確に確認する
不動産の特定ができたら、その詳細な情報を公的な書面で確認します。
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登記事項証明書(登記簿謄本)の取得
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目的:法務局が管理する不動産の公的な記録を確認します。
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確認できる情報:所有者の氏名と住所、土地や建物の所在、地番、面積、抵当権や地上権といった権利関係など。
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実務上のポイント:
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全国どこの法務局でも取得可能です。最寄りの法務局に出向くか、オンラインでも申請できます。
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申請書には不動産の「地番」を正確に記載する必要があります。地番は住所(住居表示)とは異なることが多いため、名寄せ帳などで事前に確認しておきましょう。
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固定資産評価証明書の取得
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目的:不動産の「固定資産税評価額」を確認するため。この評価額は、相続税申告の際の基準の一つになります。
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取得場所:不動産が所在する市区町村役場の税務課。
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実務上のポイント:
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固定資産評価額はあくまで評価額であり、市場価格とは異なるため、遺産分割の際は相続人全員で価値を認識し、協議することが重要です。
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遺言書作成時の「所在・地番」の正確性
遺言書で不動産を特定の相続人に「遺贈する」または「相続させる」場合、不動産の特定が不正確だと、せっかくの遺言書が無効になってしまうリスクがあります。
遺言書に記載すべきは、**登記事項証明書に記載されている「所在」と「地番」**です。
【正しい記載例】
「私は、次の不動産を、長男である花輪太郎(生年月日:〇〇年〇月〇日)に相続させる。 所在:神奈川県川崎市高津区梶ケ谷 地番:123番45」
このように、法務局の登記簿に記載された通りに正確に記載することが、遺言書を有効なものにするための鉄則です。
不動産調査でよくあるトラブルと解決策
トラブル1:登記簿上の情報と現況が異なる
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よくあるケース:登記簿上の地積(面積)が、実際の測量結果と違う。または、登記簿上の建物がすでに解体されている。
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解決策:書面調査だけでなく、現地確認を行うことが重要です。書面だけでは把握できない境界の状況や建物の状態を確認し、必要であれば測量や滅失登記を検討します。
トラブル2:名義変更(相続登記)が何代も未了になっている
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よくあるケース:故人の祖父や曽祖父名義のままになっている土地がある。
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解決策:過去の相続から現在に至るまでの相続人をすべて特定し、順を追って名義変更手続きを行う必要があります。これは非常に複雑なため、専門家に依頼するのが賢明です。
まとめ:不動産調査は「正確性」が命
不動産は相続財産の中でも特に複雑で重要な資産です。正確な登記簿情報、評価額、そして現地状況の確認を行うことが、遺言書作成や相続手続きのスムーズ化に直結します。特に、**「所在・地番」**の正確性は遺言執行や相続税申告に直結するため、軽視できません。
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初めての相続や複雑な財産をお持ちの方も、安心してご相談ください。
※本記事は、分かりやすくするために内容を簡略化しています。具体的な法的手続きについては、必ず条文を確認するか、専門家にご相談ください。なお、行政書士は交渉や紛争に関する代理業務を行うことはできません。紛争性のある案件は弁護士にご相談ください。