外国人採用前チェック
雇用契約書で先に決めるべき6項目
在留資格の確認だけでは足りない。更新許可と人材定着の両方を左右するのは、採用後の契約設計です。建設業・製造業・産廃業をはじめとする現場を持つ企業の担当者に向け、実務ベースで解説します。
外国人雇用において雇用契約書が重要な理由
- 雇用契約書は入管審査の判断資料として扱われる
- 在留資格との整合性が求められる
- 更新・定着に影響する
以上のポイントを踏まえると、雇用契約書は単なる労務書類ではなく、在留資格の維持にも関わる重要な設計資料です。この後では、実務上押さえるべき観点を整理します。
雇用契約書は入管審査の「判断資料」になる
雇用契約書に法定提出義務があるわけではありませんが、入管審査では、業務内容・給与・雇用期間等が明確に記載された雇用契約書や労働条件明示書などが、判断資料として用いられます。
したがって、契約書の内容が曖昧であったり、実態と乖離していたりすると、審査において疑義が生じる可能性があります。単に形式を整えるのではなく、実際の業務内容や待遇と一致させることが重要です。
在留資格との整合性が強く求められる
外国人雇用では、在留資格の活動範囲および許可要件と、実際の業務内容が一致しているかを確認する必要があります。
例えば「技術・人文知識・国際業務」の場合、学術的素養を必要とする業務が主であることが前提となります。実態として単純作業が中心であるにもかかわらず、契約書上だけ専門業務として記載することは認められません。
契約書と実務に齟齬があると、更新審査で問題視されるため、設計段階から整合性を意識することが不可欠です。
更新・定着に影響する
契約内容に在留資格との不整合や、実態と大きく異なる記載があると、更新審査で疑義が生じ、不許可のリスクが高まります。
また、給与や業務内容の認識ズレは、早期離職の原因にもなります。外国人雇用では、契約段階での認識共有が、日本人以上に重要です。
結果として、契約書の作り込みが、その後の在留資格更新と人材定着の両方に影響します。
雇用契約書で先に決めるべき6項目
- 業務内容|在留資格との適合性を最優先にする
- 賃金|日本人と同等以上を合理的に説明できる水準
- 労働時間・休日|法令遵守と実態の一致
- 契約期間|継続雇用を前提とした設計
- 就業場所|実態に即した明確化
- 言語対応|理解を前提とした契約設計
以上の6項目を事前に設計しておくことで、入管対応と労務トラブルの双方を予防できます。ここでは、それぞれのポイントを具体的に解説します。
業務内容は、在留資格との整合性を判断する最重要項目です。実態として「学術的素養を必要とする業務」が主であることを前提とし、契約書と実務に齟齬を生じさせない設計が求められます。付随的な単純作業があったとしても、それが主業務と評価されないよう注意が必要です。
建設や製造の現場では特に、現場作業の割合や内容を具体的に整理し、在留資格の範囲内に収まっているかを慎重に確認することが重要です。
賃金は、日本人と同等以上であることを合理的な根拠で説明できる形に整えることが重要です。技術・人文知識・国際業務などの在留資格については、入管の審査要領で「日本人と同等額以上の報酬」の支払いが求められています。
自社に比較対象がいない場合は、同業他社の水準や統計データを参考に設計します。不自然に低い賃金設定は、許可基準を満たしていないと判断される可能性があるため注意が必要です。
労働時間や休日については、法令を遵守することに加え、実態との一致が重要です。入管審査では、特に賃金について「日本人と同等以上の水準」が重視されます。また、厚生労働省の指針では、国籍を理由とした差別的取扱いが禁止されています。
そのため、外国人だからといって不利なシフトや過重労働を課すことは認められません。労働時間・休日・残業の実態を正確に契約書へ反映させる必要があります。
契約期間は、将来的に継続雇用が見込まれるよう設計することが重要です。更新審査では継続雇用見込みが重視されるため、実務上は1年以上の契約期間を想定する設計が安心です。短期契約を繰り返す場合は、継続性に疑義を持たれる可能性があります。
企業側としても、長期的な戦力として育成する前提で契約設計を行うことが望ましいです。
就業場所は、実態に即して具体的に定める必要があります。特に、複数拠点での勤務や客先常駐がある場合、その可能性と範囲を契約書に明記しておくことが重要です。記載が曖昧な場合、業務内容の継続性に疑義が生じることがあります。
就業場所の不明確さは、入管審査だけでなく、労務トラブルの原因にもなるため注意が必要です。
契約内容は、外国人本人が十分に理解できる形で提示する必要があります。母国語または英語を併記した契約書、あるいは翻訳文の交付により、内容理解を担保することが重要です。理解が不十分なまま署名された契約は、後に無効を主張されるリスクがあります。
相互理解を前提とした契約設計が、トラブル防止と定着率向上につながります。
トラブルを防ぐための実務上のチェックポイント
- 契約内容と申請書類の整合性
- 控除項目の明確化
- 解雇・退職条件の整理
以上のポイントを押さえることで、契約後に発生しやすいトラブルを大幅に減らすことができます。実務上の注意点を整理します。
契約内容と申請書類の整合性
契約内容と申請書類の内容は一致させる必要があります。例えば、申請時の業務内容と実際の業務が異なる場合、在留資格の適合性に疑義が生じます。在留資格の許可要件と、実際の業務内容・報酬条件が一致しているかを常に確認することが重要です。
書類ごとの記載ブレを防ぐためにも、契約書をベースに統一する運用が有効です。
控除項目の明確化
給与から控除される項目は、事前に明確にしておく必要があります。基本給だけでなく、残業代・各種手当・社会保険の加入有無に加え、寮費や光熱費などの控除項目と金額を明示することが重要です。手取り額の誤解は、早期離職の大きな要因となります。
賃金控除に関する取り決めを明確にし、トラブルを未然に防ぐことが求められます。
解雇・退職条件の整理
解雇や退職に関する条件も、事前に整理しておくことが重要です。労働基準法上の要件を踏まえた解雇事由や手続きの流れを明確にしておくことで、不要なトラブルを防ぐことができます。
外国人雇用では在留資格との関係もあるため、退職後の対応についても一定の配慮が必要です。
- 業務内容が在留資格の活動範囲と一致しているか
- 賃金が日本人と同等以上であることを説明できるか
- 労働時間・休日の記載が実態と一致しているか
- 契約期間が継続雇用を前提とした設計になっているか
- 就業場所(複数拠点・客先常駐)の可能性が明記されているか
- 母国語または英語による内容理解が担保されているか
- 申請書類と契約書の記載内容に齟齬がないか
- 控除項目(寮費・光熱費等)が明示されているか
- 解雇事由・退職手続きが労基法に準拠して整備されているか
- 雇用契約書は入管審査の判断資料として扱われる
- 業務内容は在留資格との整合性が最重要
- 賃金は日本人と同等以上を合理的に説明できる設計が必要
- 契約期間は継続雇用を前提に設計することが重要
- 控除項目や言語対応がトラブル防止の鍵になる
外国人採用では、「採用できるか」だけでなく「どう雇うか」が結果を左右します。契約設計の段階から適切に整備することで、更新リスクと離職リスクを同時に抑えることができます。自社だけでの判断が難しい場合は、専門家に相談しながら契約内容を設計することをおすすめします。
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