コラム
実践編 第6回:NotebookLMで「事務所の独自辞書」を作り、根拠つきの文書下書きを速く作る手順【行政書士×開業×AI】
Q:NotebookLMの使い方は? 行政書士が相談対応や案内の文書を、根拠(ソース)に基づいて作るにはどうすればよいですか?
A:一般的には、NotebookLMに「自事務所テンプレ・一次情報・FAQ素材」などをソースとして入れ、目的・前提・出力条件を添えて質問すると、根拠に寄せた文書下書きを作りやすくなります。便利な反面、要件判断・法的判断、対外表現の安全性、守秘(匿名化)の徹底は人が担います(速くするほど確認が重要です)。また、法令・制度は改正が起こり得るため、ソースには"参照日"と"現行(更新日)"の概念を持たせる運用が安全です。
前回まででAIの基本、GAS/Gemsの基本的な使い方を理解した方が、次に「実務で繰り返し使える状態」を作るなら、NotebookLMが便利です。理由はシンプルで、こちらが入れたソース(根拠)を中心に、相談対応や案内の文書を組み立てる運用に寄せやすいからです。
本回は、最小構成→回す→増やす、の順で「独自辞書(事務所内ナレッジ)」を作り、相談対応・案内の文書作成に落とす手順を実践形式でまとめます。
※画面表示や機能名、利用可否・上限はプランや更新で変わる可能性があります。
※NotebookLMに「ソース候補を探す」機能が表示される場合もありますが、採否は人が決め、更新日や一次情報性を確認してから取り込みます。
目次
- この回でできることを3つで整理する
- 準備は4点:ソース設計と匿名化ルールを固める
- 操作は6ステップ:NotebookLMにソースを入れて回答を作る(PC手順)
- コピペで使うプロンプト3本+追加2本(文書テンプレ化)
- 編集は5分:実務で使える文書に仕上げる
- つまずきポイントを3つ先回りして回避する
- 人が担う最終チェックは4観点(速くするほど確認が重要)
- 実務への落とし込みは3例:そのまま使える文書に展開する
- まとめと次回予告(第7回)
1|この回でできることを3つで整理する
NotebookLMで「独自辞書(ソース)」を作る到達点
到達点は、次の状態です。
- 相談対応や案内で「よく聞かれる論点」を、ソースに寄せた形で下書き化できる
- 回答のたびに「言い回し」や「注意書き」がブレにくい
- 後からソースを足しても、独自辞書として育てられる(運用が続く)
相談対応・業務運営の文書に落とすイメージ
行政書士の実務では、次のような文書が繰り返し発生します。
- 相談前:ヒアリング項目、持参物案内、注意点(守秘・費用の前提など)
- 相談後:次の手続案内、必要資料リスト、期限の注意
- Web導線:FAQ、サービス説明の補助文書、Googleプロフィール投稿の下書き
AIに任せる範囲/人が担う範囲の線引き(最初に明示)
- AIに任せる範囲:文書の下書き、要点整理、言い回し案、構成案、チェックリスト化
- 人が担う範囲:要件判断・法的判断、根拠の最終確認、対外表現の安全性、守秘(匿名化)の徹底
2|準備は4点:ソース設計と匿名化ルールを固める
NotebookLMに入れるソース候補(事務所内・一次情報・自作テンプレ)
最初は"少数精鋭"がおすすめです。例:
- 事務所の標準案内(対応範囲、連絡手段、受付時間、費用の考え方など)
- よく使うヒアリング項目(業務別)
- 一次情報(官公署等の案内ページ、公開資料)
- 自作FAQ(相談で多い質問と、事務所としての回答方針)
匿名化ルール(個人情報・機微情報を入れない入力)
この回のルールは「入れない」が基本です。どうしても例を作る場合は、次で置き換えます。
- 氏名 → 【依頼者A】
- 住所 → 【都道府県レベル】または空欄
- 生年月日 → 【年代】
- 具体的な会社名・学校名 → 【法人X】【学校Y】
- 事情が特定される経緯 → 抽象化(例:「家族関係に配慮が必要」)
- 具体的な日付 → 参照日から±1年などレンジ(範囲)に置換
- 具体的な金額 → ±100万円などレンジ(範囲)に置換(端数が特徴的な金額は特に避ける)
ソースの粒度(1つのPDFにまとめるか/分割するか)
おすすめの考え方:
- 更新が多いもの:分割(例:料金の前提、連絡ルール、業務別の持参物)
- セットで読ませたいもの:まとめる(例:相談前の案内一式)
ソースが多すぎて運用が崩れる → 最小構成から始める
運用の肝は「使うソースが思い出せる状態」を保つことです。まずは中核ソースを5〜10個程度に絞り、足りないと感じた分だけ追加すると、独自辞書として育ちやすいです。
※上限や仕様は更新される可能性があります。
図解:ソース投入前の「匿名化フィルタリング」フロー
3|操作は6ステップ:NotebookLMにソースを入れて回答を作る(PC手順)
ここはPC中心で解説します。スマホは画面・導線・利用可否が変わる可能性があるため、差分は補足に留めます。
ステップ1:ノートを新規作成する
PC手順
- NotebookLMを開く
- トップ画面で「新規ノート(New notebook 等)」を選ぶ(表示名は更新される可能性があります)
- ノート名を「相談対応_共通辞書」など、用途が分かる形にする
スマホ補足
アプリ版は画面構成が異なる場合があります。見つからない場合は、PCで作成してからスマホで閲覧する運用が安全です。
ステップ2:ソースを追加する(PDF/URL/テキスト等)
PC手順
- ノート内の「ソース追加(Add sources 等)」を選ぶ
- 追加方法を選ぶ(ファイル、Web URL、貼り付け等。表示は更新され得ます)
- 中核ソースを5〜10個入れる
- ソース名(タイトル)を分かりやすく整える(後の運用が楽になります)
ステップ3:質問する(意図・前提・出力条件を添える)
PC手順
- 目的(誰に何を伝えるか)を書く
- 前提(事務所方針・対応範囲)を書く
- 出力条件(見出し、分量、注意書き、断定回避)を書く
- 生成されたら「根拠(ソース)に沿っているか」を見る(引用があるか、スコープ外が明示されているか)
ステップ4:引用・根拠の確認をしながら文書化する
- 根拠として示されたソースを開き、該当箇所を確認(表示形式は更新され得ます)
- 短い直接引用(「」)+自分の言葉で解説、の形になっているか確認
- 弱ければ「根拠不足」として扱い、追加質問に切り替える(6章にテンプレがあります)
ステップ5:使い回し用に「よく使う指示」をメモ化する
例:
- 「相談前案内は、①結論→②必要資料→③当日の流れ→④注意点→⑤対象外・注意点(スコープ外)→⑥次のアクション」
- 「断定禁止。一般的には/場合によっては/個別に確認が必要」
- 「根拠は短い直接引用+解説。引用は短く」
- 「守秘:固有名詞は入れない。事情は抽象化。日付・金額はレンジ化」
ステップ6:更新運用(ソース差し替え/版管理の考え方)
- 変更があれば該当ソースだけ更新
- ソース名に"日付の概念"を持たせる(例:
【現行_2026-02-24】○○制度(官公署)
【旧版_2023-xx-xx】内部メモ(参照停止)) - 現行(更新日付き)一次情報を最優先ソースに固定し、古い資料は「旧版」へ退避
- 生成した文書の末尾(または脚注)に参照日(例:2026-02-24)を添える(対外誤認の予防)
4|コピペで使うプロンプト3本+追加2本(文書テンプレ化)
ここからの全プロンプトは、根拠を「短い直接引用(「」)+解説」で出す/スコープ外を独立見出しで明示/参照日を出力に含める、を標準搭載しています。
基本テンプレ:ソースに基づく案内文書を作る
使いどころ:相談前案内、持参物案内、受付の注意点などの「型」を作るときに使います。
入力時の注意(匿名化):個別事例は【依頼者A】【都道府県】【年代】に置換し、日付・金額はレンジ化。
具体例:匿名化した入力例で相談対応用文書を作る
編集用:言い過ぎ回避・前提追記・導線強化の追いプロンプト
追加:短縮/箇条書き整形(読みやすい文書へ)
追加:ファクト確認/安全表現化(断定回避・免責を整える)
⛔ NG例(やりがちな危険入力)
○○市○○町の田中太郎(1978/3/2)が、2025/11/12に兄の△△会社の株式と不動産を相続する予定で、相続財産が1,234万円で揉めていて…
理由:個人情報・機微情報・特定可能性が高く、守秘義務の観点で危険です。入力例は必ず【依頼者A】【地域】【年代】に置換し、日付は±1年、金額は±100万円等のレンジにします。
図解:生成→編集→最終確認の全体像
5|編集は5分:実務で使える文書に仕上げる
編集の観点(読み手・目的・分量・導線)
5分で行う最低限の編集は次のとおりです。
- 読み手(相談者)に不要な専門語を削る(必要なら括弧で補足)
- 結論を先に(最初の60字で"何をすればよいか")
- 箇条書き比率を上げる(スマホで読める文書へ)
- 最後の導線を固定化(次のアクション、連絡方法、共有してほしい情報)
- 「対象外・注意点(スコープ外)」が独立しているか確認
- 根拠が「短い直接引用+解説」になっているか確認
行政書士業務向けの安全表現(断定しない/一般論の書き方)
- 「必ずできます」 → 「一般的には可能な場合があります(個別に確認が必要です)」
- 「この方法が最適」 → 「状況により選択肢が変わります」
- 「費用は○円」 → 「費用は内容により異なります(詳細は個別確認)」
事務所の用語・言い回しを揃えて「独自辞書」に寄せる
- 呼称(相談者/ご依頼者等)を統一
- 連絡方法(メール、LINE等)の案内文言を統一
- 注意書き(守秘・期限・免責・参照日)を固定化
6|つまずきポイントを3つ先回りして回避する
ソースが拾われない/関係ない回答が混ざる場合の対策
対策は「質問の書き方」を固定するのが近道です。
- 目的(誰向けか)と出力構成(見出し順)を固定する
- 根拠の出し方(短い直接引用+解説)を必須にする
- 不明は不明(要追加確認)として扱う
- スコープ外(対象外・注意点)を独立見出しで出す
引用がズレる・根拠が弱い場合の再質問テンプレ
情報過多で長文になる場合の短縮テンプレ(構造化で解決)
7|人が担う最終チェックは4観点(速くするほど確認が重要)
根拠(一次情報・ソース整合)
- ソースに書いていない断定が混ざっていないか
- 根拠として示されたソースが意図した箇所か(短い直接引用で確認)
- 一次情報が優先できているか
守秘(特定可能性・同意・匿名化)
- 個人情報・機微情報が残っていないか
- 組み合わせで特定されないか(特に日付・金額)
- 守秘義務に照らし、安全な匿名化になっているか
対外表現の安全性(誤認誘発・結果保証に見えない)
- 結果保証、断定、過度な安心表現がないか
- 条件・例外・前提が落ちていないか
- 「対象外・注意点(スコープ外)」が独立して明示されているか
最終判断(要件判断・法的判断は人が行う)
AIは作業を速くしますが、判断は代替しません。要件判断・法的判断、対外表現の最終確定は人が行います。
8|実務への落とし込みは3例:そのまま使える文書に展開する
相談前ヒアリング用文書(質問項目・注意書き・持参物)
作りたい文書:
- 質問項目(箇条書き)
- 持参物(一般論+業務別)
- 守秘・個別確認・免責・参照日(固定文)
- 対象外・注意点(スコープ外)
運用:4章の基本テンプレを使い、【対象業務】だけ差し替えるのが最短です。
初回相談後フォロー文書(次の手続・期限・必要資料)
作りたい文書:
- 今日の整理(次に何をするかが分かる)
- 次に決めること(3〜5点)
- 必要資料(不足は要追加確認)
- 期限の注意(一般論)
- 対象外・注意点(スコープ外)
- 次の連絡(導線)
運用:具体例→編集用→ファクト確認、の順で安全な内容に整えます。
ホームページ/Googleプロフィール投稿用の案内文書(FAQ化まで)
作りたい文書:
- よくある質問(3〜5問)
- 回答(一般論+事務所方針の範囲)
- 対象外・注意点(スコープ外)
- 相談導線(問い合わせ、必要情報)
- 参照日
運用:独自辞書(標準案内+FAQ)に寄せて作ると、投稿ごとのブレが減ります。
9|まとめと次回予告(第7回)
まとめ(独自辞書化の要点)
- 最初は中核ソースを少数で開始し、運用しながら増やす
- 質問は「目的・前提・出力条件」をテンプレ化する
- 根拠は「短い直接引用+解説」で確認速度を上げる
- スコープ外を独立して明示し、誤認誘発を避ける
- 速くするほど、人が根拠・守秘・表現を最終確認する
- 改正頻度が高い領域では、現行一次情報(更新日付き)を最優先し、参照日を明記する
脚注
※ "NotebookLM"は正式表記です。"NoteBookLM"は表記揺れであり、本記事では"NotebookLM"に統一しています。
行政書士の守秘義務(秘密を守る義務)は法令に定めがあります。匿名化は万能ではないため、特定可能性が残る情報は入力しない運用が安全です。
相続登記義務化や入管法改正のように、施行日・経過措置・運用が更新され得る領域では、「現行一次情報の最優先」「参照日明記」「旧版退避」をソース運用ルールとして固定するのが安全です。
NotebookLMにソース候補提示機能が表示される場合でも、採否は人が決め、更新日・一次情報性を確認してから取り込みます。
免責
本稿は一般情報であり、個別具体の事案に対する法的助言ではありません。制度の要件判断や適用可否、対外表現の最終確定は、一次情報の確認を含めて行政書士が個別に判断してください。
HANAWA行政書士事務所
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