コラム
実践編 第7回:毎回貼るだけ:ブログリスク低減テンプレ(前提文書+NGスキャン)【行政書士×開業×AI】
Q:行政書士のブログ文書をAIで速く作ると、断定・誇大・成果保証のような"危ない表現"が混ざりそうで不安です。毎回の安全チェックを仕組みにできますか?
A:多くの場合、冒頭に貼る「固定前提文書」と、本文を対象にした「NG表現スキャン」をセットにすると、運用のばらつきやリスクを減らしやすくなります。さらにGAS(Apps Script)で"貼る→スキャン→チェック項目追記"まで半自動にすると、確認の抜けを減らしやすくなります。ただし最終判断(根拠確認、守秘、対外表現の安全性)は必ず人が行います。この回ではテンプレ一式とコピペ用プロンプト、編集手順まで作れます。
ブログは"速さ"より、事故リスクを減らす運用が先に効きます。開業直後は特に、発信が増えるほど確認が抜けやすくなります。そこで第7回は、毎回コピペで機能する固定前提文書と、危ない表現だけを拾うNGスキャンを「リスクを減らすための工夫」として持つ方法をまとめます。まずは"動く最小構成"から始め、必要に応じて辞書や自動化を育てていきます。速くするほど確認が重要、を前提に進めます。
0 事故らないための前提整理(入力ルール・匿名化・辞書の使い分け)
この回で作る「安全装置」一式(固定前提文書+NGスキャン+チェック表)
この回の成果物は、次の3点セットです(いずれも「絶対に安全にする」ではなく、リスクを減らすための仕組みです)。
- 固定前提文書:ブログ文書の冒頭に毎回貼る「前提の固定」
- NG表現スキャン:断定・誇大・成果保証・誤認リスクの抽出+言い換え案
- 公開前チェック項目:AIを使うほど必要になる、人の最終確認の観点を固定化
AIは便利ですが万能ではありません。特に「言い切りの回避」「結果を保証しているように受け取られるおそれのある表現の回避」は、AI任せだと抜けることがあります。速くするほど確認が重要です。
つまずきポイント: 最初から"全部自動"にすると止まりやすいです。まずは「固定前提文書+スキャン+チェック項目」を回し、あとから自動化を足すのが安全側です。
入力しない情報の線引き(個人情報・案件特定情報・機微情報)と匿名化ルール
AIに貼り付けるのは「公開してよい前提の情報」に限ります。次の情報は入力しない運用にします。
- 依頼者の氏名、住所、連絡先、会社名などの固有名詞
- 相談経緯が特定できる日時・場所・出来事の詳細
- 未公開の契約条件、金額、交渉内容など機微情報
- 画像・PDFのスクリーンショット(特定情報が混ざりやすい)
匿名化ルール(コピペ用)
- 固有名詞→
[依頼者]、[法人]、[地域]、[業務分野]に置換 - 日付→
[時期](例:2026年2月→「2026年初頭」) - 数値→レンジ化(例:3件→「数件」)
- 事例は「実在の個別案件」と分かる情報を落とし、一般化した説明に寄せる
補足(より安全側): 住所・勤務先・家族構成など、単体では弱くても組合せで個人が特定され得る情報も削ります。相談者の同意なく、相談内容を推測できる形で掲載しません。
つまずきポイント: 「一般化したつもりでも、地域+時期+出来事の組合せで特定される」 ことがあります。迷ったら削る、が安全側です。
辞書(Gems/NotebookLM等)に入れるもの・入れないもの(運用の境界線)
辞書化は便利ですが、入れる情報を間違えると事故の近道になります。
入れるもの(おすすめ)
- 事務所の固定方針(対応範囲、対応姿勢、言い回しの好み)
- よく使う注意書き・免責の定型
- NG表現辞書(「必ず」「100%」など)
- 公開済みの自社ブログ文書(自社の言い回し統一に使う)
入れないもの(原則)
- 個別案件の固有情報、未公開の依頼者情報、機微情報
つまずきポイント: 辞書に"良さそうな情報"を何でも入れると、後で消せない負債になります。辞書は「公開済み」「一般化できる」「繰り返し使う」から始めると安定します。
1 ハック① 毎回貼る「固定前提文書」を用意する
コピペ用:冒頭に貼る固定前提文書(テンプレ本体)
まずは「毎回貼るだけ」の固定前提文書を用意します。ここがブレると、スキャンしてもリスクが減りにくくなります。
| 【前提(固定)】 本稿は一般情報として作成しています。個別事情の結論は断定しません。 根拠が必要な箇所、要件判断が絡む箇所は「要確認」と明示します。 誇大表現・成果保証・断定を避け、「一般的には」「場合によっては」等で安全側に寄せます。 最終的な判断(法的判断・要件判断・対外表現の安全性・守秘/個人情報の扱い)は人が行います。 公開前に「公開前チェック項目」を付けます。 |
使いどころ: 制度解説、手続の流れ、報酬の考え方、実績・クチコミ紹介など、ほぼ全てのブログ文書
入力時の注意(匿名化): 固定前提文書は"固定"なので、依頼者情報や具体事例は混ぜません。
NG例(やりがちな悪い入力): 「【前提】A社(実名)の案件について一般情報として作成」 → 固定前提文書に固有名詞を混ぜると、守秘・特定のリスクが上がります。
使いどころ:どの種類のブログ文書にも効く"固定"の考え方
固定前提文書が効く理由は、「本文の出来に依存しない前提の固定」になるからです。AIで作る文書は回ごとに揺れますが、固定前提文書が毎回同じであれば、最低限の安全側の姿勢を外しにくくなります。
つまずきポイント: 固定前提文書を"記事ごとに最適化"し始めると、固定でなくなります。固定は固定のままにし、調整は本文側で行うほうが運用が安定します。
つまずきポイント:前提文書が長くなりすぎる問題と短縮のコツ
短縮の目安は「5行前後」です。削る優先順位は次の順がおすすめです。
- 残す: 一般情報/断定しない/要確認明示/最終判断は人/公開前チェック
- 削る: 細かな例外の列挙(例外は本文側、または公開前チェック項目に逃がす)
つまずきポイント: 前提文書が長いほど読まれません。長くなりそうなら「公開前チェック項目」に分離し、固定前提文書は短く保ちます。
2 ハック② 「断定/誇大/成果保証」だけを自動スキャンする
危ない表現のカテゴリ分け(断定・誇大・成果保証・誤認リスク)
スキャン対象をカテゴリで固定すると、迷いが減ります。 ※本稿では便宜上「成果保証」と表現しますが、意図としては「結果を保証しているように受け取られるおそれのある表現」を指します。
- 断定: 必ず、絶対、〜に違いない
- 誇大: 日本一、最強、どこよりも、完全に、地域No.1
- 成果保証: 必ず通る、100%解決、確実に取れる
- 誤認リスク: 条件を省いて一般化、例外を落として断言、格安・最安を根拠なしに示す
つまずきポイント: AIは読みやすさのために強い言い回しを提案しがちです。読みやすさより、まず安全側です。
コピペ用:危ない表現スキャン用プロンプト(抽出+言い換え案)
長いブログ文書では一度に「全文修正」まで要求すると出力が膨らみやすいです。そこで、①スキャン(軽量)→②全文反映(必要なときだけ) の2段階にします。
コピペ用プロンプト①(軽量:スキャン+言い換え案+要確認)
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あなたは行政書士事務所の編集チェック担当です。 # 最重要方針 # 出力形式(最大20件、重要度順) ---【ブログ文書】--- |
コピペ用プロンプト②(必要時:指摘を反映した全文)
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上の指摘(危ない表現と要確認)を反映し、【ブログ文書】を全文で再作成してください。 # 条件 ---【ブログ文書】--- |
使いどころ: 公開前の最終チェック、または公開後のリライト時(過去ブログ文書の棚卸し)
入力時の注意(匿名化): 貼り付け前に、固有名詞や相談経緯が混ざっていないか目視します。
NG例(やりがちな悪い入力): 「A社(実名)の許可が必ず通った手順をそのまま貼ります。担当者名は○○です。」 → 案件特定・個人情報・結果保証に見える表現が混ざり危険です。一般化・匿名化が必要です。
つまずきポイント:言い換えが"弱すぎる/強すぎる"ときの調整方法(追いプロンプト)
AIの言い換えが極端なときは、追いプロンプトで軸を戻します。
上の指摘を踏まえて再編集してください。
| # 条件 - 訴求(読者メリット)は残す。ただし結果保証に見える語は使わない - 条件・前提が必要な箇所は「一般的には」「場合によっては」「要確認」で安全側に寄せる - 修正後の【ブログ文書】を全文で出す(冒頭の固定前提文書と末尾の公開前チェック項目も含める) - 相談導線(問い合わせ等)を入れる場合は、できること/できないことをセットで書く |
つまずきポイント: 追いプロンプトを足しすぎると、指示が衝突してブレます。迷ったら「訴求は残す/結果保証に見える表現は避ける/要確認を付ける」の3点に戻すと整います。
3 仕組み化:GASで「貼る→スキャン→チェック」を半自動にする
構成案:Googleドキュメント/スプレッドシートでの運用フロー(PC前提)
おすすめは次のどちらかです。
A案(軽い):Googleドキュメント1本で完結
- 冒頭に固定前提文書
- スクリプトでNG辞書を走査→末尾に結果とチェック項目を追記
B案(育つ):スプレッドシートでNG辞書を管理+ドキュメントで執筆
- NG表現、カテゴリ、言い換え方針を辞書化
- チェック結果が資産として積み上がる
つまずきポイント: 最初からB案を作り込むと、辞書設計で止まりがちです。まずA案で回し、NG辞書が増えてきたらB案へ移すほうが安全側です。
PC手順:GASの基本配置(スキャン実行・結果の出力先・ログ)
ここではA案(ドキュメント完結)を例にします。UI表示名は更新される可能性があります。
PC手順
- Googleドキュメントで「ブログ文書テンプレ」用の文書を新規作成します
- 冒頭に「固定前提文書」を貼ります(前章のテンプレ)
- メニューから 拡張機能 → Apps Script を開きます(表示名は環境で異なる場合があります)
- 下のコードを貼り付けて保存します
- 文書を再読み込みします
- 上部メニューに追加された 「ブログ安全チェック」→「NGスキャンを実行」 をクリックします
つまずきポイント(回避策): 初回実行時は権限許可が必要です。許可画面が出ない・進まない場合は、文書の再読み込み、別ブラウザ、別Googleアカウントの誤ログイン確認を行うと解消することがあります(環境差があります)。また、GASには実行時間や呼び出し回数などの制限があり、仕様変更・制限値の見直しがあり得ます。動かない場合は、最新の公式情報も確認してください。
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/** function onOpen() { function scanNg() { // 1) 既存レポート削除(冪等) // 2) NG辞書(最小例。運用で増やす) // 3) 例外(除外)ルール:誤検知を減らす(必要に応じて追加) // 4) 本文を段落単位でスキャン for (let idx = 0; idx < paras.length; idx++) { const masked = maskExcluded_(t, excludePatterns); for (let j = 0; j < ngList.length; j++) { // 5) レポート生成(末尾に追記) const lines = []; if (!hits.length) { lines.push(''); body.appendParagraph(lines.join('\n')); function removeOldReport_(body) { for (let i = paras.length - 1; i >= markerIndex; i--) { function maskExcluded_(text, excludePatterns) { function escapeRegExp_(s) { function excerpt_(text, index, len) { function summarize_(hits) { |
スマホ手順(補足):閲覧・軽微修正までに絞った運用(画面差分の注意)
スマホは「実行」より「確認」に寄せると安定します。
- Googleドキュメントアプリで該当文書を開きます
- 冒頭に固定前提文書があるか確認します
- 末尾に「NGスキャン結果」と「公開前チェック項目」が追記されているか確認します
- 誤字や言い過ぎを軽微修正し、最終確認はPCで行います
つまずきポイント: スマホはApps Script編集や実行導線がPCと異なり、できる範囲が限られることがあります。PC主導で設計し、スマホは確認中心にするのが無難です。
4 実績・クチコミ・強みを"安全に"載せる(実績が少ない時期の代替も用意)
実績・クチコミの文書で注意すべき表現(結果保証に見えない前提の添え方)
実績・クチコミは安心材料になり得ます。ただし、次の情報を短く添えると誤認を減らしやすくなります。
- 期間(例:2026年初頭〜)
- 対象(例:同意が得られた範囲)
- 分母(例:全件ではなく一部の紹介)
- 結果保証ではない旨(固定前提文書で担保)
加えて、守秘・個人情報の観点で次も明示すると安全側になります。
- 同意を得た事例のみ掲載する
- ケース紹介は事実の範囲に限定する
- フィクション・加工がある場合は、その旨を明示する
言い回し例(安全側)
- ×「必ず許可が取れます」
- ○「一般的にはこの流れで進みますが、個別事情で変わるため要確認です」
つまずきポイント: 「良い話だけ」だと誤認誘発に寄ることがあります。前提(期間・対象・分母・同意)を添えるだけでも、受け取られ方が変わります。
実績が少ない場合の代替安心材料(経歴・学び・専門テーマ・活動の蓄積)
開業前後で実績が少ない・ないのは珍しくありません。その場合は、実績以外の安心材料を積み上げます。
- 学び: 研修・講座・勉強会(一般化して記載)
- 専門テーマ: 取り扱い予定の分野、調査・整理の蓄積
- 地域性: 地域の制度・窓口・実務の導線理解
- 活動: ブログ更新の継続、FAQの整備、用語集の作成
つまずきポイント: 安心材料を増やそうとして誇大表現に寄りがちです。NGスキャンの対象に含め、強い語が出たら条件・前提を足して安全側に寄せます。
強みが分からない場合:AI壁打ちで整理・言語化する手順(最終決定は人)
「強みが分からない」はよく起こります。AIは整理と候補出しには役立ちますが、採否は人が握ります。
手順(PC)
- 経歴・経験・得意を箇条書きで出します(特定情報は入れない)
- AIに「強み候補」と「読者メリット」を出させます
- 違和感があるものを落とし、言い回しを自分の言葉に寄せます
- 固定前提文書+NGスキャンを通します
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次のメモから、行政書士事務所としての「強み候補」を3〜5個に整理してください。 ---メモ--- |
つまずきポイント: AIが「刺さる表現」を優先して強めに言いがちです。強みは盛ることではなく、継続できる説明に寄せます。
5 公開前チェック:速くするほど確認が重要(人が担う最終判断)
公開前チェック項目(事実・根拠・守秘・対外表現の安全性)
固定前提文書とセットで、毎回これを確認します(10項目例)。
- 個人情報・案件特定情報・機微情報が入っていない(組合せで特定され得る情報も含む)
- 結論の断定になっていない(条件がある箇所は明示)
- 根拠が必要な箇所に「要確認」または根拠メモがある
- 誇大表現・結果保証に見える語がない(スキャン結果も確認)
- 例外や注意点を落として一般化していない
- 手続・要件・期間などは古くなる可能性がある旨に配慮している
- 実績・クチコミは前提(期間・対象・分母・同意)を添えている(加工・創作がある場合は明示)
- 読者が誤解しやすい箇所に補足がある
- 事務所の対応範囲と矛盾がない
- 免責があり、対外表現として安全側に寄っている
つまずきポイント: チェック項目を"読まずにOKにする"と形骸化します。毎回、最低でも「1・2・3・4」だけは指差し確認する運用にすると効きます。
NGが出たときの編集ルール(短縮・整形・言い過ぎ回避・導線強化)
NGが見つかったら、次の順で直すと迷いません。
- 言い切りを外す: 「〜に違いない」→「一般的には〜」「場合によっては〜」
- 条件を足す: 誰にでも当てはまるように見える箇所→条件・前提を一文追加
- 要確認を付ける: 根拠が揃わない箇所→「要確認」明示
- 短縮する: 長文で誤認を生みやすい→要点だけ残す
- 導線を整える: 相談導線は「できること/できないこと」をセットで書く
つまずきポイント: 修正で訴求が消えたら、追いプロンプトで「訴求は残す/結果保証に見える表現は避ける/要確認を付ける」に戻して再編集すると整います。
つまずきポイント:AIの指摘が過剰/不足なときの"確認観点"
過剰(何でもNG扱い)なとき:
- 「一般情報としての説明」と「個別案件の結論」を分けて見直します
- "禁止"ではなく"条件を足す"で解決できないか確認します
不足(見落とす)なとき:
- 「必ず」「確実」「100%」「最短」「完全」「最強」など強い語を目視でも拾います
- 実績・クチコミ周りは前提不足がないか、人の目で再確認します
6 まとめ(運用を止めずに安全を積み上げる)
まとめ:固定前提文書+NGスキャンでブログ運用が安定する理由
ブログ運用は、速さより「リスクを減らす仕組み」が先に効きます。毎回貼る固定前提文書で土台を揃え、NGスキャンで危ない表現だけを拾い、公開前チェック項目で人の最終確認を固定化すると、運用のばらつきやリスクを減らしやすくなります。自動化(GAS)は"最後のひと押し"として、止まらない範囲から始めるのが現実的です。
なお、今回の固定前提文書・スキャン用プロンプト・GASコード自体もAIに作成してもらうことは可能です。ただし本番運用では要件定義・テスト・改修の品質管理が重要になるため、"AIに作成してもらい、それを安全に動かす手順"は実践編(応用)で扱います。
免責
本記事は一般情報であり、個別案件の法的判断・要件判断・対外表現の安全性を保証するものではありません。AI活用は便利ですが、速くするほど確認が重要です。公開可否の最終判断(根拠確認、守秘、個人情報の扱い等)は必ず人が行ってください。また、本稿は行政書士事務所の運用例であり、他業種の広告規制等にそのまま適用できるとは限りません。所属する行政書士会の広告に関する規程・指針等がある場合は、それも確認してください。
HANAWA行政書士事務所
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