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コラム

企業内転勤の在留資格で押さえたい3つの基本要件

2026年8月26日

企業内転勤の申請では、「海外で長く働いているから大丈夫」「大卒ではないから難しい」といった一つの事情だけでは、取得可否を正確に判断できませ…

企業内転勤の申請では、「海外で長く働いているから大丈夫」「大卒ではないから難しい」といった一つの事情だけでは、取得可否を正確に判断できません。勤務期間、転勤元と転勤先との関係、日本で実際に担当する業務など、複数の条件を組み合わせて確認する必要があります。

特に注意したいのが、「企業内転勤」と「技術・人文知識・国際業務」の関係です。企業内転勤では大卒などの学歴が必須とされているわけではありませんが、日本で従事する活動については「技術・人文知識・国際業務」に相当するものでなければなりません。企業内転勤の在留資格で認められる活動は、入管法上もそのように定められています。

したがって、「学歴要件がないので、どのような仕事でも企業内転勤で働ける」と考えるのは適切ではありません。

本記事では、企業内転勤の基本要件から対象となる業務、原則として認められない業務、技術・人文知識・国際業務との違いまで順番に解説します。自社のケースを整理し、申請に向けて何を確認すべきか判断するための参考にしてください。

企業内転勤の在留資格で押さえたい3つの基本要件

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 外国の事業所から日本の事業所への「転勤」であること

  • 転勤前に対象業務へ継続して1年以上従事していること

  • 日本人と同等額以上の報酬を受けること

在留資格「企業内転勤」は、海外拠点で勤務する従業員を日本へ異動させれば当然に取得できる資格ではありません。転勤という形態を満たしていることに加え、転勤前の専門業務への従事実績や報酬など、企業内転勤独自の上陸許可基準を確認する必要があります。

外国の事業所から日本の事業所への「転勤」であること

企業内転勤を利用するためには、外国にある事業所の職員が、日本にある本店、支店その他の事業所へ期間を定めて転勤する形であることが必要です。

典型的には、海外本社から日本支店への異動、外国の親会社から日本子会社への異動などが想定されます。ただし、企業内転勤の対象となる範囲は、単に法人名が同一であるかどうかだけで判断されるものではありません。

大切なのは、外国側と日本側の事業所との関係を客観的に確認できることです。

たとえば、同一法人内の本支店間の異動であれば関係性を把握しやすい一方、親子会社や企業グループ内の異動では、出資関係や組織上のつながりを資料によって説明する必要が生じます。

そのため、「同じ企業グループだから企業内転勤を使える」と先に結論を出すのではなく、転勤元と転勤先が制度上どのような関係にあるのかを確認することが重要です。

申請前には、会社案内、登記事項証明書、組織図、資本関係を示す資料などを整理し、海外側の事業所と日本側の事業所との関係を第三者にもわかる形で説明できるようにしておくとよいでしょう。

転勤前に対象業務へ継続して1年以上従事していること

企業内転勤では、申請に係る転勤の直前まで継続して1年以上、外国にある本店、支店その他の事業所で「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務に従事していることが上陸許可基準として定められています。

ここで注意したいのは、「外国の会社に1年以上在籍していればよい」という意味ではない点です。

たとえば、海外拠点に3年間勤務していても、その大半を専門性のない現場作業に従事し、技術・人文知識・国際業務に相当する職務へ配置転換されたのが半年前であれば、単純に「勤続3年」として要件を満たすとはいえません。

反対に、ITエンジニア、経理・財務、企画、マーケティング、翻訳・通訳など、対象となり得る専門的な業務に継続して1年以上従事しているのであれば、その勤務実績が重要な判断材料となります。

そのため、申請前には入社日だけでなく、所属部署、異動歴、職務内容まで確認しておくことが大切です。

在職証明書に「〇年〇月から勤務」と記載するだけではなく、「いつから、どこで、具体的にどのような専門業務を担当していたのか」を時系列で整理すると、申請時の説明もしやすくなります。

日本人と同等額以上の報酬を受けること

企業内転勤では、日本人が同じ業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが、上陸許可基準として明記されています。これは単なる実務上の運用ではなく、企業内転勤に関する基準省令上の要件です。

そのため、「外国人従業員だから日本人より低い給与でも構わない」という考え方は適切ではありません。

もっとも、社内にいる特定の日本人従業員の給与と機械的に同額でなければならない、という意味ではありません。実際には、担当する職務、役職、責任の範囲、経験年数などを踏まえて報酬水準の妥当性を確認することになります。

たとえば、日本人社員とほぼ同様の職務・責任を負うにもかかわらず、外国人転勤者だけ著しく低い給与が設定されている場合には、その報酬設定について説明が必要になる可能性があります。

申請前には、辞令、雇用条件に関する資料、給与規程などを確認し、日本での職務に見合った報酬が設定されているか整理しておくことが大切です。

海外法人から給与の全部または一部が支給されるなど報酬体系が複雑な場合には、単純な月額だけを見るのではなく、誰が、どのような条件で、いくら支払うのかまで明確にしておくとよいでしょう。

企業内転勤で認められる業務を判断する3つのポイント

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 「技術」に該当する専門的な業務とは

  • 「人文知識」に該当する専門的な業務とは

  • 「国際業務」に該当する外国文化を背景とした業務とは

企業内転勤で日本に滞在する場合、担当できる仕事は自由ではありません。入管法上、企業内転勤で行える活動は「技術・人文知識・国際業務」の項に掲げられる活動とされています。したがって、企業内転勤では学歴要件の有無だけでなく、「日本で実際に何をするのか」を確認することが極めて重要です。

「技術」に該当する専門的な業務とは

「技術」に該当するのは、理学、工学その他の自然科学分野に属する技術または知識を必要とする業務です。

たとえば、システム開発、ソフトウェア設計、機械設計、製品開発、生産技術など、自然科学系の専門知識を用いる仕事が対象となり得ます。技術・人文知識・国際業務の制度でも、自然科学分野の技術や知識を必要とする業務が対象として定められています。

ただし、「メーカーに勤務しているから技術に該当する」と一括りにはできません。

同じ工場内で働く場合でも、生産設備の設計や生産工程の改善を専門的に担当する技術者と、製造ラインで定型的な組立作業だけを行う従業員とでは、業務の性質が異なります。

重要なのは肩書きではなく、実際の仕事にどのような専門知識が必要なのかという点です。

「エンジニア」「技術担当」という社内上の職種名だけで説明を終わらせず、何を設計・開発・分析するのか、どのような知識を使って判断するのかまで具体化しておきましょう。

「人文知識」に該当する専門的な業務とは

「人文知識」に該当するのは、法律学、経済学、社会学その他の人文科学分野に属する知識を必要とする業務です。

企業では、経理、財務、法務、人事、経営企画、営業企画、マーケティングなどが対象となり得ます。技術・人文知識・国際業務では、人文科学分野の知識を必要とする業務が制度上の対象とされています。

ただし、「デスクワークだから人文知識に該当する」という判断はできません。

たとえば営業部門であっても、市場分析、販売戦略の立案、法人向けの専門的な提案などを行う仕事と、定型的な電話対応や書類整理を中心とする仕事では、業務の性質が異なります。

企業内転勤を検討するときは、「営業担当」「経理担当」といった抽象的な職種名だけではなく、実際に何を分析し、何を判断し、どのような専門知識を使うのかまで整理することが重要です。

申請書類では、専門的な業務内容を具体的に示せるほど、在留資格との関係を説明しやすくなります。

「国際業務」に該当する外国文化を背景とした業務とは

「国際業務」に該当するのは、外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務です。

基準省令では、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発などが例示されています。

企業内転勤でも、日本で行う仕事がこうした国際業務に相当するのであれば、対象となる可能性があります。

たとえば、海外本社と日本法人との間の通訳・翻訳、外国市場を対象とした広報・宣伝、海外取引に関する業務などが考えられます。

一方、「外国人だから国際業務になる」というわけではありません。

外国籍であることや外国語を話せること自体ではなく、実際の職務に外国文化を背景とした思考・感受性が必要とされるかがポイントです。

申請時には、「英語を使います」といった説明だけではなく、誰との間で、どのような目的のために、どのような業務を担当するのかまで具体的に整理しておく必要があります。

企業内転勤では原則認められない3つの業務例

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 工場のライン作業など専門性を必要としない業務

  • 飲食店での接客や調理など現場中心の業務

  • 小売店での販売や品出しなど一般的な現業

企業内転勤は、海外の従業員を日本へ異動させるための包括的な就労資格ではありません。日本で行う主たる活動が「技術・人文知識・国際業務」に相当しない場合には、企業内転勤の活動範囲から外れる可能性があります。特に現場作業を含む配置では、「実際に何を主業務として行うのか」を慎重に確認する必要があります。

工場のライン作業など専門性を必要としない業務

工場で行われる仕事のすべてが企業内転勤の対象外になるわけではありません。しかし、製造ラインでの組立、製品の運搬、単純な加工、検品など、専門的な技術・知識を必要としない作業を主な仕事とする場合は、企業内転勤で認められる活動には該当しにくくなります。

重要なのは、勤務場所ではなく実際の業務内容です。

たとえば、工場で勤務する場合でも、生産設備の設計、生産技術の改善、品質に関する専門的な分析などを担当する技術者であれば、対象となり得ます。

これに対し、ほとんどの勤務時間を製造ラインでの反復作業に充てる予定であれば、「エンジニア」「技術者」という社内上の肩書きだけで企業内転勤に該当すると考えるのは適切ではありません。

また、企業内転勤については、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で示されている採用当初の実務研修の取扱いを、そのまま適用できると考えないよう注意が必要です。

出入国在留管理庁が公表している採用当初の実務研修に関する取扱いは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を対象としており、飲食店での接客、小売店での販売、工場のライン業務などを一定の条件下で研修として扱う考え方が示されています。

一方、企業内転勤について同じ実務研修の取扱いを認める公表基準が示されているわけではありません。

そのため、日本の拠点へ赴任してすぐにライン作業を中心とする研修へ長期間従事させる計画については、企業内転勤の活動範囲との整合性を慎重に確認する必要があります。

主たる活動が専門的業務であり、その遂行に伴うごく一時的な現場確認などが含まれる場合と、現場作業そのものを勤務の中心とする場合とでは性質が異なります。実際に予定している活動全体を整理したうえで判断することが重要です。

飲食店での接客や調理など現場中心の業務

飲食店における一般的な接客、配膳、片付け、食器洗浄、通常の調理などを主な業務とする場合も、企業内転勤で求められる専門的活動に該当するとはいいにくくなります。

海外の飲食チェーンが日本に店舗を展開しているからといって、海外店舗で勤務していた従業員を、そのまま企業内転勤で日本の店舗スタッフとして配置できるわけではありません。

企業内転勤では、転勤という形式に加えて、日本で行う活動そのものが「技術・人文知識・国際業務」に相当する必要があるためです。

たとえば、海外事業企画、店舗展開に関するマーケティング、経営分析、通訳・翻訳、海外本社との専門的な調整などを担当する場合には、対象業務に該当する余地があります。

これに対して、接客や配膳、厨房での一般的な調理を日常業務の中心とする場合には、企業内転勤の活動範囲との適合性に問題が生じます。

また、「研修」という名称を付ければ現場業務が当然に認められるわけでもありません。

特に企業内転勤では、技術・人文知識・国際業務について公表されている採用当初の実務研修の取扱いを当然に援用できるものではないため、現場業務を含む配置を予定している場合には慎重な検討が必要です。

小売店での販売や品出しなど一般的な現業

小売店での商品陳列、品出し、レジ対応、一般的な接客などを主な仕事とする場合も、企業内転勤で求められる専門的な活動とは認められにくいと考えられます。

ここでも判断の基準となるのは、「外国ブランドの店舗だから」「海外企業の日本法人だから」といった会社側の属性ではなく、本人が実際にどのような業務を行うかです。

たとえば、海外ブランドの日本市場におけるマーケティング戦略の立案、海外本社との商品企画調整、販売データの分析などを担当する場合であれば、人文知識や国際業務に相当する可能性があります。

これに対して、店舗に常駐して一般顧客への販売、レジ対応、商品補充などを中心に行う予定であれば、企業内転勤の対象活動との整合性を説明することは難しくなります。

また、申請書では本社の専門業務を担当すると説明していたにもかかわらず、実際には店舗スタッフとして一般的な販売業務を中心に行っている場合には、申請内容と就労実態の不一致という別の問題も生じます。

人事異動を決定する前に、予定している仕事を具体的に分解し、「実際の主業務が何であるか」を確認しておくことが重要です。

企業内転勤なら大卒でなくても申請できる2つの理由

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 「技術・人文知識・国際業務」と異なり学歴そのものは要件ではない

  • 学歴の代わりに海外事業所での勤務実績が重要になる

企業内転勤を理解するうえで、特に混同しやすいのが学歴・職歴の要件です。日本で行う業務は「技術・人文知識・国際業務」に相当する必要がありますが、企業内転勤では、その在留資格と同じ学歴・実務経験要件がそのまま課されるわけではありません。

「技術・人文知識・国際業務」と異なり学歴そのものは要件ではない

企業内転勤では、大卒であること自体が上陸許可の必須要件として定められているわけではありません。

ここが、「技術・人文知識・国際業務」と比較した際の重要な違いです。

技術・人文知識・国際業務のうち、自然科学または人文科学の知識を必要とする業務については、関連科目を専攻して大学を卒業していること、一定の専門教育を受けていること、または原則として10年以上の実務経験を有していることなどが基準として定められています。国際業務の場合も、原則として3年以上の関連実務経験が必要です。

これに対し、企業内転勤では、転勤直前まで外国の事業所で対象業務に継続して1年以上従事していることなどが独自の基準となっています。

したがって、高校卒業などで大学を卒業していない従業員でも、企業内転勤の要件を満たしていれば申請を検討することが可能です。

ただし、「大卒でなくてもよい」という点と、「専門性のない業務でもよい」という点はまったく別です。

日本で担当する仕事については、あくまで技術・人文知識・国際業務に相当する活動である必要があります。この二つを混同しないことが重要です。

学歴の代わりに海外事業所での勤務実績が重要になる

企業内転勤では学歴自体を必須としない一方で、転勤直前まで外国の事業所で対象となる業務に継続して1年以上従事していることが重要な基準となります。

たとえば、大卒ではないものの、海外本社で数年間システムエンジニアとして勤務し、その経験を生かして日本拠点へ期間を定めて転勤するケースであれば、企業内転勤を検討できる可能性があります。

反対に、有名大学を卒業している従業員であっても、外国の事業所で対象業務に継続して1年以上従事していなければ、企業内転勤の基準を満たさない可能性があります。

つまり、企業内転勤では、「学歴が高いかどうか」ではなく、海外拠点でどのような仕事を、どの程度の期間継続して行ってきたのかが重要です。

申請前には卒業証明書の有無だけに目を向けず、海外での在籍期間、所属部署、役職、実際の担当業務などを確認しましょう。

大卒ではない従業員だからという理由だけで最初から選択肢を外す必要はありませんが、日本で行う予定の業務と、海外で積んだ専門業務の実績をセットで確認することが欠かせません。

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務の違いがわかる4つの比較ポイント

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 日本で行える業務の範囲は基本的に共通する

  • 企業内転勤では転勤という企業間・事業所間の関係が必要になる

  • 企業内転勤には転勤前1年以上の勤務要件がある

  • 学歴・職歴に関する許可基準が異なる

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務には、日本で行う活動の範囲に共通点がある一方、取得要件には明確な違いがあります。「海外から日本へ異動するから企業内転勤」と機械的に決めるのではなく、本人の経歴や転勤形態を含めて、どの在留資格が適しているか検討することが大切です。

日本で行える業務の範囲は基本的に共通する

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務を比較する際、まず押さえておきたいのは、日本で行う活動の範囲が基本的に共通していることです。

企業内転勤について、入管法は、日本の事業所で行う活動を「技術・人文知識・国際業務」の項の下欄に掲げる活動と定めています。

そのため、企業内転勤だから専門性を必要としない仕事まで幅広く担当できるというわけではありません。

たとえば、ITエンジニア、マーケティング、経理、翻訳・通訳などは、具体的な職務内容によって対象となり得ます。

一方、製造ラインでの単純作業、一般的な店舗販売、清掃などを主な活動とする場合には、企業内転勤という転勤形態であっても対象活動との整合性が問題になります。

つまり、両者の大きな違いは「企業内転勤なら別種類の仕事ができる」という点ではなく、専門的な活動をどのような要件のもとで行うのかという点にあります。

在留資格を検討するときは、まず日本で行う予定の業務が対象となる専門的活動かを確認し、そのうえで転勤形態や経歴を整理すると判断しやすくなります。

企業内転勤では転勤という企業間・事業所間の関係が必要になる

企業内転勤には、その名称のとおり「転勤」という関係が必要です。

外国にある事業所で勤務している職員が、日本にある事業所へ期間を定めて異動することが制度上の前提となります。

これに対して、技術・人文知識・国際業務では、日本の公私の機関との契約に基づき、専門的な業務に従事することが基本です。海外拠点からの転勤であること自体は要件とされていません。

たとえば、海外企業で勤務している外国人を日本企業が新たに採用する場合には、企業内転勤ではなく技術・人文知識・国際業務を検討するケースがあります。

反対に、海外本社から日本支店へ期間を定めて配置するなど、既存の企業内関係を前提とする場合には、企業内転勤を検討しやすくなります。

したがって、在留資格を選択する際は、本人の仕事内容だけでなく、転勤元と転勤先の関係や雇用関係も整理しなければなりません。

「専門職だから技人国」「海外勤務者だから企業内転勤」と単純に分類せず、実際の異動形態から判断することが重要です。

企業内転勤には転勤前1年以上の勤務要件がある

企業内転勤では、転勤の直前まで外国の事業所で対象業務に継続して1年以上従事していることが上陸許可基準として定められています。

そのため、海外拠点へ入社したばかりの従業員をすぐに日本へ企業内転勤させたい場合には、この1年以上という要件が問題になることがあります。

ただし、企業内転勤の1年以上の勤務要件を満たしていないことが、そのまま「日本で働くことができない」という意味になるわけではありません。

本人の学歴、職歴、日本で担当する業務、契約関係などが技術・人文知識・国際業務の要件を満たしているのであれば、別の在留資格による受入れを検討できる場合があります。

そのため、赴任時期が決まっている場合には、「企業内転勤の要件を満たすか」という視点だけでなく、「他の在留資格を含めてどの方法が適切か」という視点を持つことが重要です。

特に海外拠点への入社から日が浅い従業員については、人事異動を確定する前に勤務期間を確認しておくと、後からスケジュールを組み直すリスクを減らせます。

学歴・職歴に関する許可基準が異なる

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務では、学歴・職歴に関する上陸許可基準が異なります。

技術・人文知識・国際業務では、自然科学・人文科学分野の業務について、関連する大学教育等を受けていることや、原則10年以上の実務経験があることなどが基準として定められています。また、国際業務については原則3年以上の関連実務経験が必要です。

これに対して企業内転勤では、同じ学歴・実務経験要件が設けられているわけではありません。

企業内転勤の基準では、転勤直前まで外国の事業所で対象業務に継続して1年以上従事していることと、日本人が同じ業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが定められています。

そのため、大卒ではなく、技術・人文知識・国際業務の実務経験年数にも達していない従業員であっても、企業内転勤の基準を満たしていれば検討できるケースがあります。

ただし、どちらの資格でも日本で行う仕事の専門性は必要です。

「学歴要件がないから企業内転勤を選ぶ」という一点だけで判断せず、勤務実績、企業間関係、日本での実際の業務まで総合的に確認しましょう。

企業内転勤の申請前に確認したい3つのチェックポイント

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 日本で実際に担当する業務に専門性があるか確認する

  • 海外事業所での勤務期間と業務内容を確認する

  • 雇用条件や転勤期間を説明できる資料を整える

企業内転勤の申請では、要件を知っているだけでなく、自社の事実関係を資料によって説明できる状態にしておくことが重要です。「おそらく要件を満たしている」と考えて進めるのではなく、日本での業務、海外での勤務実績、転勤条件を順番に整理すると、不足している論点を把握しやすくなります。

日本で実際に担当する業務に専門性があるか確認する

最初に確認したいのは、日本で実際に担当する仕事が「技術・人文知識・国際業務」に相当するかどうかです。

企業内転勤では大卒等の学歴が必須ではないため、学歴要件に意識が向きやすいものの、日本での活動内容が対象から外れていれば、企業内転勤として認められる活動には該当しません。

まずは予定している業務を、「営業」「技術」「管理」といった大まかな職種名だけで整理せず、日常業務まで具体化しましょう。

たとえば、次のような事項を確認すると整理しやすくなります。

  • 主として担当する業務

  • 具体的な日常業務

  • 専門知識を使用する場面

  • 現場作業を行う場合の内容と割合

  • 日本人従業員との役割分担

  • 海外での経験を日本勤務でどのように生かすか

特に現場業務を含む予定がある場合、「研修だから問題ない」と安易に考えないことが重要です。

企業内転勤について、技術・人文知識・国際業務で示されている採用当初の実務研修の取扱いが当然に適用されるわけではありません。企業内転勤として予定する主たる活動が専門的業務であるかを中心に確認する必要があります。

海外事業所での勤務期間と業務内容を確認する

次に、転勤前の海外勤務について、「1年以上在籍しているか」と「対象業務へ1年以上継続して従事しているか」を分けて確認します。

企業内転勤の基準では、単なる勤続年数ではなく、転勤直前まで対象となる専門業務に継続して1年以上従事していることが必要です。

確認するときは、入社日だけでなく、人事異動の履歴、所属部署、過去の職務内容まで把握しましょう。

たとえば海外法人に2年間在籍していても、最初の1年半は専門性を必要としない製造作業に従事し、専門技術職へ配置転換されたのが6か月前であれば、「勤続2年だから企業内転勤の基準を満たす」とは判断できません。

一方、同一または関連する専門職に長期間従事している場合には、その期間と仕事内容を在職証明書などの資料によって明確にすることが重要です。

海外側の人事管理が簡略化されている会社では、在籍期間は証明できても、具体的な担当業務の証明が難しいケースがあります。

申請直前になって不足に気付かないよう、転勤を計画する段階で職務履歴を確認しておくと安心です。

雇用条件や転勤期間を説明できる資料を整える

企業内転勤では、日本での職務内容だけでなく、転勤期間、報酬、転勤元と転勤先との関係なども整理する必要があります。

企業内転勤は、外国の事業所の職員が、日本の事業所へ期間を定めて転勤して専門的な活動を行うための在留資格です。さらに、上陸許可基準では転勤前1年以上の対象業務への従事と、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬が求められています。

申請準備では、少なくとも次の事項を社内で確認しておくとよいでしょう。

  • 転勤開始予定日

  • 転勤予定期間

  • 日本での役職

  • 日本での具体的な職務内容

  • 報酬額と支払方法

  • 転勤元と転勤先の関係

  • 海外事業所での在籍期間

  • 海外事業所での職務内容

特にグループ会社間の転勤では、社内では明らかな資本関係であっても、審査する側には資料で説明しなければわかりません。

人事辞令、在職証明書、組織図、会社案内、資本関係を示す資料などについて、「どの資料で、どの要件を説明するのか」を対応させて準備すると、申請内容の整合性を確認しやすくなります。

企業内転勤の取得可否で迷ったときに整理すべき3つのこと

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 「外資系企業だから取得できる」とは限らない

  • 「大卒ではないから取得できない」とも限らない

  • 肩書きではなく実際の業務内容を基準に判断する

企業内転勤の判断を難しくするのは、一つの条件だけを見ると結論を出せそうに感じられる点です。しかし実際には、会社間の関係、海外での勤務実績、日本で行う業務、報酬などを組み合わせて確認する必要があります。判断に迷ったときほど、「会社」「本人の経歴」「日本での職務」を分けて整理することが重要です。

「外資系企業だから取得できる」とは限らない

日本に子会社や支店を持つ外資系企業であっても、海外から転勤する従業員全員が企業内転勤を取得できるわけではありません。

企業内転勤では、外国の事業所から日本の事業所へ期間を定めて転勤するという関係だけでなく、転勤直前の対象業務への1年以上の継続従事、日本で行う専門的な活動、報酬などの要件を確認する必要があるからです。

たとえば、海外拠点で長期間勤務している従業員であっても、日本で一般的な店舗業務や製造ラインの作業だけを担当する予定であれば、企業内転勤の活動範囲との整合性が問題になります。

反対に、会社規模がそれほど大きくなくても、転勤元と転勤先との関係、海外での勤務実績、日本での専門業務などの要件を満たせば検討できる場合があります。

「世界的な企業だから」「日本法人があるから」といった会社の属性だけで判断するのではなく、一人ひとりの転勤について要件を当てはめることが大切です。

海外本社が他国への赴任手続に慣れている場合でも、日本の在留資格制度とは基準が異なります。日本側でも個別に確認しておく必要があります。

「大卒ではないから取得できない」とも限らない

大卒ではないという理由だけで、企業内転勤の可能性を除外する必要はありません。

企業内転勤では、「技術・人文知識・国際業務」に相当する活動を行う必要がある一方、その在留資格に定められた大学卒業等の学歴・職歴要件がそのまま企業内転勤の基準になるわけではないためです。

企業内転勤では、転勤直前まで外国の事業所で対象業務に継続して1年以上従事していることなど、別の基準が設けられています。

したがって、大学を卒業していない従業員でも、海外拠点で専門業務に継続して従事しており、日本でも対象となる専門業務を担当するのであれば、企業内転勤を検討できる可能性があります。

この点は、人材配置を検討する企業にとって重要です。

「技術・人文知識・国際業務では学歴や実務経験の要件が問題になるため、日本への配置は難しい」と考えていた従業員についても、企業内転勤の要件を満たすのであれば、別の選択肢が生まれる場合があります。

ただし、学歴要件がないことと、審査が簡単であることは同じではありません。

海外での勤務実績、日本での業務内容、企業関係、報酬などをそれぞれ確認することが必要です。

肩書きではなく実際の業務内容を基準に判断する

企業内転勤の取得可否を判断するときは、「マネージャー」「エンジニア」「海外営業」といった肩書きだけを基準にしないことが重要です。

同じ肩書きでも、会社によって実際の仕事内容は大きく異なります。

たとえば「マネージャー」という肩書きでも、店舗での接客や商品補充を中心に行う人と、販売戦略の分析、人員計画、海外本社との専門的な調整を担当する人では、在留資格上の評価が同じとは限りません。

「エンジニア」についても、専門的な設計や開発を担当する場合と、定型的な機械操作を行う場合では業務の性質が異なります。

企業内転勤で認められる活動は、「技術・人文知識・国際業務」に掲げられる活動です。そのため、職種名よりも実際の活動内容が重要になります。

申請前には、本人だけでなく配属予定部署にも仕事内容を確認し、申請書類に記載する内容と実際の勤務予定が一致しているか確認しておきましょう。

在留資格の要件に合わせて肩書きだけを整えるのではなく、実態を整理したうえで適切な在留資格を選択することが重要です。

まとめ

企業内転勤について、特に押さえておきたいポイントは次の5つです。

  • 企業内転勤では、外国の事業所から日本の事業所へ期間を定めて転勤することが前提です。

  • 転勤直前まで、外国の事業所で対象となる専門業務に継続して1年以上従事している必要があります。

  • 日本で行う業務は「技術・人文知識・国際業務」に相当する必要があり、工場のライン作業、一般的な接客・販売などを主業務とする場合には注意が必要です。

  • 大卒などの学歴自体は企業内転勤の必須要件ではありませんが、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬を受けることなど、企業内転勤独自の基準があります。

  • 「技術・人文知識・国際業務」で認められている採用当初の実務研修の取扱いを、企業内転勤にも当然に適用できると考えるべきではありません。

企業内転勤は、要件を一つずつ見ると該当しそうでも、実際の申請では「海外でどのような専門業務をしてきたのか」「日本で具体的に何をするのか」「転勤元と転勤先はどのような関係なのか」を一貫して説明することが重要です。

特に、大卒ではない従業員の転勤、店舗や工場などで一部の現場対応を予定しているケース、グループ会社間の異動、海外と日本の双方から給与が支払われるケースなどは、事実関係を細かく整理しなければ判断を誤りやすくなります。

すでに日本での配属先や赴任時期が決まっているのであれば、申請書類を作り始める前に、勤務歴、具体的な職務内容、企業間関係、報酬条件を一度整理しておくとよいでしょう。

「企業内転勤で申請できるのか」「技術・人文知識・国際業務を選択したほうがよいのか」「予定している現場対応が在留資格の活動範囲に収まるのか」など、自社だけでは判断が難しいケースでは、異動計画を確定する前の段階で在留資格を扱う専門家に具体的な事情を伝えて確認することで、申請方針を整理しやすくなります。

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在留資格・外国人雇用の確認について

外国人の雇用や在留資格の手続きでは、現在の在留資格、業務内容、雇用契約の内容を整理することが大切です。事業者の方は、採用前の確認からご相談いただけます。

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