建設業法の帳簿管理、契約書を保存しているだけで
整っていると言い切れますか
建設業者には、営業所ごとに帳簿を備え、請け負った建設工事ごとに必要事項を記載し、所定の書類とあわせて保存するルールがあります。何を記録し、どう工事ごとに整理すればよいのかを、行政書士の視点で分かりやすく整理しました。
契約書や注文書をきちんと保存していても、それだけで建設業法上の帳簿管理ができているとは限りません。建設業者には、営業所ごとに帳簿を備え、請け負った建設工事ごとに必要事項を記載し、所定の書類とあわせて保存するルールがあります。建設業法第40条の3と建設業法施行規則では、帳簿の記載事項、添付書類、保存期間などが定められています。
しかも、帳簿は工事が終われば処分してよいものではありません。帳簿と帳簿に添付した書類は原則として5年間保存し、発注者(宅地建物取引業者を除く。)と締結した住宅を新築する建設工事に係るものは10年間保存します。また、完成図や発注者との所定の打合せ記録、一定の場合の施工体系図といった「営業に関する図書」についても10年間の保存義務があります。
この記事では、建設業法上の帳簿管理が必要となる建設業者を主な対象として、建設業法上の帳簿に何を記録し、契約書や注文書・請書などをどのように工事ごとに整理すればよいのかを解説します。建設業許可を取得した事業者にとっては、許可取得後の継続管理として特に確認しておきたい内容です。
営業所ごとに備え、工事ごとに法定事項を記載します。
契約書の写しなど、工事ごとに帳簿へ添付します。
完成図や打合せ記録などを引渡し日から10年間保存します。
原則5年、住宅新築工事は10年が目安になります。
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。
まずは現在の帳簿や書類の管理状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
現在の管理方法で足りているか気になる方へ
今お使いの帳簿や工事別ファイルをそのままお見せいただいても構いません。
建設業許可を取った会社が備える帳簿で押さえたい3つの基本
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 建設業法上の帳簿は、建設工事の契約内容等を記録するもの
- 営業所ごとに備え、請け負った建設工事ごとに記録・添付する
- 工事の目的物の引渡し後も、法定期間保存する
建設業法上の帳簿は、社内で任意に作成する工事一覧とは異なり、法令に基づいて備えるものです。営業所ごとに帳簿を備えたうえで、工事ごとに必要事項を記載し、契約書などの所定書類を対応させます。さらに、工事が終わった後も一定期間保存する必要があるため、作成から保存までを一連の管理として考えることが重要です。
建設業法上の帳簿は、建設工事の契約内容等を記録するもの
建設業法上の帳簿は、請け負った建設工事について、法令で定められた事項を継続して記録するためのものです。帳簿には、営業所の代表者に関する事項のほか、注文者との請負契約、一定の住宅新築工事、下請契約などについて定められた事項を記載します。国土交通省の作成例でも、営業所情報、注文者との請負契約、下請契約などが区分して示されています。
そのため、工事名や請負金額を一覧にしただけの社内資料があったとしても、それだけで建設業法上の帳簿として必要な内容を満たしているとは限りません。たとえば、社内で「工事台帳」という名称の資料に、工事名、工事場所、請負金額、工期、担当者などを記録している会社もあります。しかし、建設業法上の帳簿には、営業所代表者、注文者との契約日、完成確認のための検査終了日、目的物の引渡日、下請契約に関する事項なども記載対象になります。
重要なのは、書類の名称ではありません。現在使用している帳票に、建設業法上必要となる記載事項が含まれているかを確認することです。また、帳簿を作ることと契約書を保存することも分けて考える必要があります。帳簿には法定事項を記載し、そのうえで契約書など所定の書類を請け負った建設工事ごとに対応させて保存します。
営業所ごとに備え、請け負った建設工事ごとに記録・添付する
建設業法上の帳簿は、営業所ごとに備えます。一方、帳簿への記載や所定書類の添付は、請け負った建設工事ごとに行います。ここで「営業所ごと」と「工事ごと」を混同しないことが重要です。
たとえば複数の営業所を設けている会社であれば、単に工事現場から最も近い営業所へ書類を集めればよいわけではありません。どの営業所がその請負契約を締結する建設業法上の営業所に当たるのかを確認し、その営業所ごとに帳簿を備えます。
○○店舗新築工事/△△工場改修工事
□□事務所新築工事
つまり、管理の考え方は「帳簿を備える単位=営業所」「帳簿へ記載・添付する単位=請け負った建設工事」です。複数営業所がある会社では、「どの工事をどの営業所の帳簿へ記録するか」を担当者の感覚で決めず、請負契約を締結する営業所との対応関係を明確にしておきましょう。
工事の目的物の引渡し後も、法定期間保存する
帳簿と帳簿に添付した書類には、法定の保存期間があります。原則として、帳簿および帳簿に添付した書類は5年間保存します。ただし、発注者(宅地建物取引業者を除く。)と締結した住宅を新築する建設工事に係る帳簿および帳簿添付書類は、10年間保存します。国土交通省の2026年版ハンドブックでも、この区分が示されています。
保存期間は、原則として工事目的物を引き渡した日から起算します。ただし、その請負契約に基づく債権債務が引渡し前に消滅した場合には、債権債務が消滅した日から起算します。したがって、「帳簿を作成した日から5年」でも、「建設業許可を取得した日から5年」でもありません。工事ごとに、引渡日など保存期間の起算点となる日を確認する必要があります。
ご確認いただきたい点
すべての工事について一律に「5年経過したら処分」という設定にしていると、10年保存が必要な住宅新築工事の帳簿・添付書類を誤って処分してしまうおそれがあります。工事別の管理表やフォルダに、引渡日・保存区分・保存期間・保存期限を記録しておくと、工事終了後の管理もしやすくなります。
帳簿に記録する内容を4つの視点で整理
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 営業所の代表者に関する事項
- 注文者との請負契約に関する事項
- 住宅新築工事に関する事項
- 下請契約および一定の場合の下請代金の支払に関する事項
帳簿には、工事名や契約日だけではなく、営業所の代表者、注文者との契約、一定の住宅新築工事、下請契約などについて法令で定められた事項を記載します。自社の「工事台帳」を帳簿として利用している場合も、帳票名ではなく、必要な記載事項がそろっているかを確認しましょう。
営業所の代表者に関する事項
建設業法上の帳簿には、工事に関する事項だけではなく、営業所の代表者の氏名と、その者が営業所の代表者となった年月日も記載します。国土交通省の帳簿作成例でも、営業所情報としてこれらの項目が設けられています。この項目は、工事契約書だけを管理していても確認できないため、社内の工事台帳をそのまま建設業法上の帳簿として利用している会社では見落としやすいところです。
営業所の代表者が変更された場合には、帳簿の記載内容にも変更を反映します。また、帳簿の記載事項について変更が生じた場合には、変更年月日を付記したうえで変更後の事項を記載します。実務上も、単純に旧情報を消して新しい内容だけへ上書きする管理は避けた方がよいでしょう。変更前の内容を後から確認する必要がある場合には、変更履歴や変更根拠となる資料との対応関係を維持しておくと確認しやすくなります。これは工事内容や契約条件の変更についても同じです。変更後の情報だけを残し、いつ・何が変更されたのか確認できなくなる運用にはしないことを意識しましょう。
注文者との請負契約に関する事項
注文者と締結した建設工事の請負契約については、工事と契約関係を特定できる事項を帳簿へ記録します。主な記載事項としては、請け負った建設工事の名称、工事現場の所在地、注文者との契約日、注文者の商号・名称または氏名、注文者の住所、注文者が建設業者である場合の建設業許可番号、注文者による完成確認のための検査が完了した年月日、工事目的物を引き渡した年月日などがあります。国土交通省の帳簿作成例でも、注文者に関する事項として商号・名称または氏名、住所、許可番号の欄が設けられています。
許可番号の記載について
注文者が建設業者である場合は、その建設業許可番号を記載します。注文者が建設業者でない場合には、建設業許可番号を記載する対象ではありません。一般の個人施主や建設業者ではない企業にまで許可番号を求めるという意味ではありません。
帳簿を確認するときは、「工事名と請負金額が書いてある」というだけで終わらせないことが大切です。契約締結から、注文者による完成確認のための検査、目的物の引渡しまでを、一つの工事として追える状態になっているか確認しましょう。
住宅新築工事に関する事項
発注者(宅地建物取引業者を除く。)と、住宅を新築する建設工事の請負契約を締結した場合には、通常の請負契約に関する事項に加えて、住宅に関する所定事項も帳簿へ記載します。記載事項には、まず当該住宅の床面積があります。また、住宅の請負契約が発注者と2以上の建設業者との間で締結された共同請負で、法令上の対象となる場合には、建設瑕疵負担割合に関する事項を記載します。さらに、その住宅について住宅建設瑕疵担保責任保険契約を締結し、所定の条件に該当する場合には、保険法人の名称も記載対象です。国土交通省の帳簿資料でも、床面積、共同請負の場合の建設瑕疵負担割合、保険法人に関する事項が示されています。
したがって、建設瑕疵負担割合は、住宅新築工事であれば常に記載する事項ではありません。共同請負など、法令上の条件に該当するかを確認して判断します。また、住宅新築工事では保存期間についても注意が必要です。発注者(宅地建物取引業者を除く。)と締結した住宅を新築する建設工事に係る帳簿および帳簿添付書類は10年間保存するため、一般工事と同じ5年保存として一律管理しないようにしましょう。
下請契約および一定の場合の下請代金の支払に関する事項
自社が建設業者として下請契約を締結した場合には、その下請契約について所定事項を帳簿へ記載します。主な項目は、下請負人に請け負わせた建設工事の名称、工事現場の所在地、下請負人との契約日、下請負人の商号・名称または氏名、下請負人の住所、下請負人が建設業者である場合の許可番号、工事完成を確認するための検査が完了した年月日、工事目的物の引渡しを受けた年月日などです。下請負人についても、許可番号は相手方が建設業者である場合の記載事項です。建設業者でない者について、存在しない許可番号を求めるという意味ではありません。
さらに、特定建設業者が注文者となり、法令で定める一定の一般建設業者へ建設工事を下請負させた場合には、追加の記載義務が生じます。具体的には、支払った下請代金の額、支払年月日、支払手段、支払手形を交付した場合の手形金額・交付年月日・満期、代金の一部を支払った場合の支払残額、遅延利息を支払った場合の額と支払年月日などです。国土交通省の帳簿資料でも、これらの追加事項が整理されています。これらは任意に記載する情報ではありません。法令上の要件に該当する場合には記載が必要です。対象となるかを判断するときは、注文者側の許可区分、下請負人の許可区分、下請負人の資本金等を確認する必要があります。
帳簿と一緒に管理する工事関係書類を4つの場面で確認
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 工事を受注したときの契約書・注文書・請書
- 契約内容を変更したときの変更契約書類
- 下請業者と契約したときの契約関係書類
- 工事完成・引渡しまでに生じる関係資料
帳簿は必要事項を記載するだけではなく、契約書など法令で定める書類を工事ごとに対応させて管理します。また、帳簿への添付書類とは別に、完成図、請負契約の当事者が相互に交付した発注者との打合せ記録、一定の場合の施工体系図など、「営業に関する図書」として保存するものがあります。それぞれの位置づけを区別して整理することが重要です。
工事を受注したときの契約書・注文書・請書
帳簿には、請負契約の契約書またはその写し等を、請け負った建設工事ごとに添付します。一定の下請契約については、下請代金の支払いを証明する書類またはその写しも添付対象です。また、建設業者が発注者から直接建設工事を請け負い、施工体制台帳を作成しなければならない工事である場合には、施工体制台帳のうち建設業法施行規則で定める所定事項が記載された部分も帳簿への添付対象となります。すべての元請工事が対象となるわけではなく、建設業法上、施工体制台帳の作成義務が生じる工事に限られます。国土交通省の2026年版ハンドブックでも、施工体制台帳には工事の種類や下請契約の状況に応じた作成義務があることが整理されています。
つまり、帳簿添付書類は「契約書だけ」ではありません。一方、実際の取引では、1枚の請負契約書ではなく、注文書と請書を組み合わせて契約する方法もあります。この場合も、「注文書が残っているから十分」「請書があるから問題ない」とは限りません。建設工事の請負契約では、工事内容、請負代金、工期、検査・引渡し、支払いなどについて、建設業法で定められた事項を書面等で明確にする必要があります。注文書・請書方式を採用する場合は、基本契約書や基本契約約款との関係を含め、一つの工事について必要な契約条件が確認できる状態にしておくことが重要です。注文書だけ、請書だけという書類単位で判断せず、その工事の請負契約全体を確認できるかという視点で整理しましょう。
契約内容を変更したときの変更契約書類
建設工事では、契約締結後に工事内容、請負代金、工期などを変更することがあります。この場合、当初契約書だけを残していても、最終的にどの条件で工事を施工したのか確認できません。帳簿の記載事項に変更が生じた場合には、変更年月日を付記したうえで変更後の事項を記載します。そのため、変更が発生した場合は、変更契約書類を保存することと、帳簿へ変更内容を反映することを一つの流れとして管理するとよいでしょう。
さらに、変更前の内容を後から確認できる必要がある場合には、変更履歴や変更契約書等との対応関係も維持します。変更後の事項だけを記載して、変更前の記録や変更根拠を消去する運用は避けましょう。たとえば当初工期が4月1日から6月30日で、変更後に4月1日から7月31日へ変更された場合、帳簿の終了日だけを7月31日に上書きして終わるのではなく、いつ変更されたのか、どの変更契約書に基づくのかを追える状態にしておくと確認しやすくなります。現場担当者だけが変更契約書を持ち、帳簿担当者に変更内容が伝わらない状態を防ぐためにも、変更契約時の社内連絡ルートまで決めておくことが重要です。
下請業者と契約したときの契約関係書類
自社が建設業者として下請契約を締結した場合には、その下請契約について所定事項を帳簿へ記載し、契約書またはその写し等を工事ごとに対応させて管理します。元請として発注者と締結した契約書だけを残せばよいわけではありません。一つの工事について、発注者との請負契約、自社と下請負人との請負契約、変更契約、必要となる帳簿添付書類を対応させて整理します。
また、特定建設業者が、法令で定める一定の一般建設業者と下請契約を締結した場合には、下請代金の支払いに関する事項を帳簿へ記載し、その支払いを証明する書類またはその写しを帳簿に添付します。対象となるかは、注文者側の許可区分、下請負人の許可区分・資本金等の要件を確認して判断します。
施工体制台帳に関する帳簿添付についても、対象を限定して理解する必要があります。建設業者が発注者から直接建設工事を請け負い、施工体制台帳を作成しなければならない工事である場合には、施工体制台帳のうち、建設業法施行規則で定める所定事項が記載された部分も帳簿への添付対象となります。すべての元請工事が対象となるわけではなく、建設業法上、施工体制台帳の作成義務が生じる工事に限られます。施工体制台帳全体を帳簿へ添付するわけではありません。
所定部分には、たとえば主任技術者または監理技術者の氏名・資格、監理技術者補佐を置いた場合の氏名・資格、専門技術者を置いた場合の氏名・担当する工事内容・資格、下請負人の商号・名称・住所・許可業者である場合の許可番号、下請負人に請け負わせた建設工事の内容・工期、下請負人が配置した主任技術者に関する事項、下請負人が専門技術者を置いた場合の事項など、建設業法施行規則で定められた事項が含まれます。国土交通省の資料では、施工体制台帳の所定部分について、工事目的物の引渡し後に施工体制台帳から必要な部分を抜粋して帳簿へ添付する方法も示されています。これは「工事が終わるまで添付してはいけない」という意味ではありません。工事中から必要事項を把握し、帳簿や対象工事との対応関係を確認できる状態にしておくことが重要です。
混同しやすい点
施工体制台帳と施工体系図は別のものです。施工体系図については、施工体系図を作成しなければならない作成建設業者が、「営業に関する図書」として保存します。施工体制台帳の所定部分を帳簿へ添付するルールと、施工体系図を営業に関する図書として保存するルールを混同しないようにしましょう。
工事完成・引渡しまでに生じる関係資料
工事完成後に残す書類には、帳簿への添付書類とは別に、建設業法上の「営業に関する図書」があります。発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、施工上必要に応じて作成した、または発注者から受領した完成図を保存します。また、請負契約の当事者が相互に交付した、工事内容に関する発注者との打合せ記録も保存対象です。一方、施工体系図については、施工体系図を作成しなければならない作成建設業者が保存対象者となります。したがって、発注者から直接工事を請け負った建設業者であれば、すべての会社が施工体系図を保存するという意味ではありません。施工体系図の作成義務がある工事かを確認したうえで判断します。
これら営業に関する図書の保存期間は、請け負った建設工事ごとに、工事目的物を引き渡した日から10年間です。帳簿および帳簿添付書類にある債権債務消滅時の起算点の取扱いとは区別して管理します。つまり、契約書等の帳簿添付書類と、完成図・発注者との所定の打合せ記録・一定の場合の施工体系図は、同じ「工事書類」であっても法令上の位置づけが異なります。自社で保存フォルダを作る場合にも、少なくともどちらの区分に該当する書類なのかを確認できるようにしておくと、保存期間を判断しやすくなります。
| 区分 | 主な例 | 保存の考え方 |
|---|---|---|
| 帳簿への添付書類 | 契約書またはその写し等、一定の場合の下請代金の支払証明書類、発注者から直接請け負った工事のうち施工体制台帳の作成義務が生じる工事における施工体制台帳の所定部分 | 帳簿とともに法定期間保存 |
| 営業に関する図書 | 完成図、請負契約の当事者が相互に交付した発注者との打合せ記録、施工体系図の作成義務がある場合の施工体系図 | 工事目的物の引渡しから10年間保存 |
| その他の工事関係資料 | 自社独自のチェック表、現場管理資料など | 法令・契約・社内ルール等を個別確認 |
ここまでの内容を、自社の書類と照らし合わせてみませんか
帳簿添付書類と営業に関する図書の区別は特に見落とされやすい部分です。
建設工事の書類を工事ごとに管理する3つの理由
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 一つの工事でも契約後に書類が増えていく
- 当初契約だけでは工事の経過を確認できないことがある
- 帳簿と関係書類を同じ工事にひも付ければ確認しやすい
帳簿への記載や所定書類の添付は、請け負った建設工事ごとに行います。そのため、契約書、変更書類、下請契約書類をそれぞれ種類別に保管するだけではなく、一つの工事として関係を追える状態にしておくことが重要です。
一つの工事でも契約後に書類が増えていく
建設工事では、契約締結時にすべての情報が確定するとは限りません。受注時には契約書類があり、その後、契約内容の変更、下請契約の締結、下請契約の変更、完成確認のための検査、工事目的物の引渡しなどが順次発生します。そのため、帳簿も契約締結時に一度記載して終わりではありません。帳簿は、各記載事項に関係する事実が生じ、または明らかになったときに必要な記録を行い、記載事項に変更があれば変更年月日を付して変更後の内容を反映します。
契約書または注文書・請書を工事番号と対応させます。
変更年月日を付して帳簿へ反映します。
下請契約書類と必要事項を帳簿へ追加します。
検査終了日と引渡日を帳簿へ記載し、保存期限を確定します。
社内では、「受注したら工事を登録する」「変更があれば変更年月日を付して更新する」「注文者による完成確認のための検査が終了した日を記載する」「目的物を引き渡した日を記載する」という流れを決めておくと、記録漏れを防ぎやすくなります。後から一年分の契約書を集め、工事内容を思い出しながら帳簿を作る方法では、変更契約や引渡日の確認が難しくなることがあります。工事が始まったときに管理を始め、工事の進行に合わせて帳簿も完成させていくという考え方が重要です。
当初契約だけでは工事の経過を確認できないことがある
契約書を保存していても、「最初の契約書だけ」という状態では実際の工事経過を確認できないことがあります。帳簿についても同様です。変更後の情報だけを上書きしてしまうと、以前の契約条件や変更根拠を確認できなくなる場合があります。そのため、当初契約書、変更契約書、帳簿の変更履歴、下請契約書、完成・引渡しに関する情報などを同じ工事として追えるようにしておくことが大切です。「契約書を保存しているか」という確認から一歩進めて、「この工事が契約から完成までどのように変化したのかを確認できるか」という視点で管理状況を見直しましょう。
帳簿と関係書類を同じ工事にひも付ければ確認しやすい
工事ごとの管理では、すべての書類を一冊の紙ファイルへ綴じる必要はありません。重要なのは、帳簿から対象工事の関係書類をたどることができ、関係書類からもどの工事の帳簿に対応するか確認できる状態です。たとえば「A-2026-015 ○○店舗改修工事」のように、帳簿、元請契約関係、変更契約関係、下請契約関係、帳簿添付書類、完成・引渡し関係、営業に関する図書を対応させて、共通の工事番号を設定する方法があります。
ただし、電子管理の場合は、工事番号ごとにフォルダを分けただけで建設業法上の要件を満たすとは限りません。建設業法施行規則上認められた方法により、帳簿への記載や添付書類の保存を電磁的記録で行うこともできます。スキャナで読み取った書類を帳簿への添付に代える場合も、当該営業所で必要に応じて明確に表示できることなど、同規則の要件を満たす必要があります。単にスキャンして保存するだけで、すべての原本保存義務がなくなるわけではありません。したがって、「紙をPDFにしたから電子保存は完了」と判断するのではなく、「建設業法上認められる方法で帳簿と添付書類を管理できているか」まで確認することが重要です。
建設業特有の書類管理で混同しやすい3つのポイント
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 「工事台帳」と建設業法上の帳簿は同じとは限らない
- すべての工事関係書類が法定の添付書類とは限らない
- 帳簿だけ作ればよいわけではなく関係書類との対応が重要
すでに社内で工事台帳を作成し、契約書類も保存している会社ほど、「帳簿管理はできている」と考えやすいものです。しかし、建設業法上の帳簿、帳簿添付書類、営業に関する図書、施工体制台帳、施工体系図にはそれぞれ異なる役割があります。まず区分を整理して、自社の管理と照らし合わせましょう。
「工事台帳」と建設業法上の帳簿は同じとは限らない
社内で「工事台帳」という名称の書類を使用していても、その名称だけで建設業法上の帳簿を備えているとは判断できません。重要なのは中身です。たとえば工事台帳に工事名、請負金額、担当者、工期などを記載していても、建設業法上必要となる、営業所代表者に関する事項、注文者との請負契約に関する事項、完成確認のための検査終了日、工事目的物の引渡日、下請契約に関する事項、一定の住宅新築工事に関する追加事項などが不足している可能性があります。一方、既存の工事台帳がある場合に、必ずすべてを捨てて新しい帳簿を作り直さなければならないわけでもありません。現在の様式と法定記載事項を照合し、「すでに記録できている項目」と「追加が必要な項目」に分けて確認する方法が現実的です。
すべての工事関係書類が法定の添付書類とは限らない
建設工事の書類管理では、「残している書類をすべて帳簿添付書類」と考えないことが重要です。ここでも、施工体制台帳の所定部分が帳簿添付書類となるのは、すべての元請工事ではなく、建設業法上、施工体制台帳の作成義務が生じる工事に限られます。帳簿添付書類と営業に関する図書は、法令上も別に整理されています。国土交通省資料でも、契約書等や対象工事における施工体制台帳の所定部分を帳簿側で扱う一方、完成図、打合せ記録、施工体系図を営業に関する図書として区分しています。そのため、「施工体制台帳=施工体系図」「完成図=帳簿添付書類」と考えないようにしましょう。また、自社独自の現場写真やチェックシートについて、実務上残しておく意味があるからといって、直ちに建設業法上の帳簿添付書類になるわけではありません。何を保存しているかだけでなく、何の規定に基づいて保存する書類なのかまで整理すると、保存期間や管理方法を判断しやすくなります。
帳簿だけ作ればよいわけではなく関係書類との対応が重要
建設業法上必要な項目を記載した帳簿があっても、それだけで工事書類の管理全体が整っているとは限りません。たとえば「帳簿は本社の共有フォルダ」「元請契約書は営業所の紙ファイル」「変更契約書は現場担当者のパソコン」「下請契約書は別部署」という状態では、一つの工事を確認するときに関係書類を探し回ることになります。そこで確認したいのが、帳簿を起点として工事全体を追えるかという点です。帳簿に記載した工事番号などから、当初契約、変更契約、下請契約、帳簿添付書類、完成・引渡し情報、営業に関する図書まで確認できる状態にしておけば、自社の管理状況を把握しやすくなります。建設業法上の帳簿を単独の書類として考えるのではなく、工事ごとの記録管理の中心として位置づけることがポイントです。
過去の工事書類が整理されていないときの3ステップ
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- まず工事単位で一覧にする
- 契約から完成までの書類を工事ごとに集める
- 今後は受注時から工事別に管理する
帳簿のルールを確認してから、「過去の工事について帳簿が十分ではない」「契約書はあるが工事ごとにまとまっていない」と気付くこともあります。その場合、最初からすべての書類を並べ替えるのではなく、まず工事一覧を作り、一件ずつ帳簿と関係書類を確認する方法が効率的です。
対象となる工事を営業所・工事名・契約日などで一覧化します。
契約→変更→下請契約→検査→引渡しの流れで確認します。
受注した段階から帳簿と書類をひも付けて記録します。
まず工事単位で一覧にする
過去分を整理するときは、最初に対象となる工事を一覧化します。契約書が入ったファイルや共有フォルダを端から整理する方法では、「全部で何件の工事があるのか」「どの工事の確認が終わったのか」「どの工事に不足があるのか」が分からなくなりやすいためです。
- 対応する営業所/工事名/工事現場の所在地/注文者/契約日
- 元請・下請の区分/契約書類の有無/下請契約の有無
- 完成確認のための検査終了日/引渡日
- 帳簿の有無/保存区分/保存期限
保存期間については、通常の帳簿・添付書類なのか、発注者(宅地建物取引業者を除く。)と締結した住宅を新築する建設工事に係る10年保存の帳簿・添付書類なのかを区別します。また、営業に関する図書については、工事目的物の引渡しから10年間の保存が必要となるため、同じ工事の中でも保存区分が複数存在する場合があります。一覧化すると、「帳簿はあるが契約書が見つからない」「契約書はあるが引渡日が未記載」「営業に関する図書だけ保存期限が違う」といった不足や管理上の違いを把握しやすくなります。
契約から完成までの書類を工事ごとに集める
工事一覧を作成したら、一件ずつ契約から完成・引渡しまでの流れを確認します。確認する順番は、契約→変更→下請契約→完成確認のための検査→引渡しという工事の流れに沿わせると整理しやすくなります。そのうえで、帳簿の法定記載事項がそろっているか、契約書類が工事に対応しているか、変更内容が帳簿へ反映されているか、変更前の内容や変更根拠を確認できるか、下請契約の必要事項が記載されているか、対象となる支払証明書類が添付されているか、発注者から直接請け負った工事について施工体制台帳の作成義務が生じる工事か、施工体制台帳の作成義務が生じる場合は帳簿添付対象となる所定部分を確認できるか、完成図や所定の打合せ記録が営業に関する図書として保存対象になっているか、施工体系図の作成義務がある工事か、保存期間と起算点が正しく設定されているかを確認します。
ここでも、元請工事であることだけを理由に施工体制台帳の所定部分が帳簿添付対象になるわけではありません。まず、その工事に施工体制台帳の作成義務が生じているかを確認することが必要です。過去の書類に不足が見つかった場合、記憶だけを頼りに帳簿を埋めることは避けます。まず契約書、変更契約書、工事関係資料など、確認できる資料を集め、その内容に基づいて整理しましょう。判断できない項目が残る場合には、形だけ帳簿を完成させるのではなく、専門家へ確認した方が安全です。
今後は受注時から工事別に管理する
過去分を整理しても、今後も同じ管理方法を続けていれば、次回また整理し直すことになります。そこで、今後の工事については受注した段階から工事別の管理を始めることが重要です。たとえば、次の流れを社内ルールにします。
- 請負契約を締結する営業所を確認する
- 工事番号を設定する
- 契約時点で判明している帳簿事項を記載する
- 契約書類を工事番号と対応させる
- 契約変更があれば変更年月日を付して帳簿へ反映する
- 変更前の記録や変更契約書との対応を維持する
- 下請契約を締結した場合は必要事項と契約書類を追加する
- 必要に応じて下請代金の支払事項・支払証明書類を追加する
- 発注者から直接請け負った工事では、施工体制台帳の作成義務が生じる工事かを確認する
- 作成義務が生じる場合は、帳簿添付対象となる施工体制台帳の所定部分を把握する
- 完成確認のための検査終了日を記録する
- 工事目的物の引渡日を記録する
- 帳簿添付書類と営業に関する図書を区別する
- 5年・10年の保存区分と起算点を確認して保存期限を設定する
こうしておけば、後になってから、「変更契約書はどこにあるか」「この下請業者はどの工事だったか」「この元請工事には施工体制台帳が必要だったのか」「施工体制台帳のどの部分が帳簿に関係するのか」「施工体系図は保存対象か」「5年保存か10年保存か」と調べ直す負担を減らせます。後から帳簿を作るのではなく、工事とともに帳簿と書類を整えていく。これが建設業法上の帳簿管理を継続しやすくする基本的な考え方です。
工事ごとの管理が建設業許可後の手続にも役立つ2つの場面
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 毎年の変更届で工事実績を整理するとき
- 建設業許可を更新するとき
建設業法上の帳簿を、そのまま変更届や許可更新申請として提出するわけではありません。ただし、建設業許可を受けた事業者には許可後も継続して行う手続があります。日頃から工事ごとに情報を整理しておけば、許可後の手続で過去の工事を確認するときにも役立ちます。
毎年の変更届で工事実績を整理するとき
建設業許可を受けた事業者は、事業年度終了後の変更届出において、許可行政庁や許可業種、事業者の状況などに応じて、工事経歴書を含む必要書類を作成します。ここで注意したいのは、工事経歴書と建設業法上の帳簿は別の書類だという点です。「工事経歴書を作っているから帳簿はいらない」あるいは「帳簿があるから工事経歴書は作らなくてよい」という関係ではありません。
ただし、日頃から工事単位で、工事名、工事場所、注文者、工事内容、契約関係、完成・引渡しに関する情報などを整理していれば、許可後の手続で工事実績を確認するときの手掛かりになります。反対に、契約書は担当者ごとに分散し、工事一覧もなく、完成工事も一覧になっていない状態では、届出時に過去の工事を一件ずつ調べ直さなければなりません。提出書類や記載方法については、許可行政庁、許可業種、その年度の状況などに応じて確認が必要です。帳簿と工事経歴書を同じものとして扱うのではなく、日頃の工事管理を、許可後手続でも確認できる基礎資料にするという考え方が適しています。
建設業許可を更新するとき
建設業許可を継続する会社では、許可後の各種届出とともに、許可更新にも対応していきます。帳簿自体が許可更新申請書になるわけではありません。しかし、許可取得後の書類管理を長期間確認していなければ、更新などの機会に、「工事台帳はあるが、法定項目が足りていない」「契約書は保存しているが、帳簿との対応が分からない」「変更契約が帳簿へ反映されていない」「注文者や下請負人の許可番号の扱いを誤っている」「施工体制台帳と施工体系図を混同している」「元請工事ならすべて施工体制台帳が必要だと思っていた」「施工体制台帳の作成義務がある工事なのに、帳簿添付対象となる所定部分を確認していない」「5年保存と10年保存を区別していない」といった状況が見つかることがあります。
こうした問題は、更新直前に数年分を一度に確認するより、普段から工事ごとに管理しておく方が対応しやすくなります。特にすでに許可を取得している会社では、今後受注する工事だけではなく、現在保存期間中にある過去工事の帳簿・帳簿添付書類・営業に関する図書についても、一度管理状況を確認しておくとよいでしょう。建設業許可は「取ったら終わり」の制度ではありません。帳簿や工事関係書類についても、許可取得後に継続して行う管理の一つとして整理しておくことが大切です。
よくある質問
社内の「工事台帳」があれば建設業法上の帳簿として十分ですか
名称ではなく記載事項で判断します。営業所代表者に関する事項や、注文者との契約日、完成確認のための検査終了日、目的物の引渡日など、建設業法で定められた事項が含まれているかを確認する必要があります。既存の工事台帳をすべて作り直す必要はなく、記載できている項目と不足している項目に分けて確認する方法が現実的です。
帳簿の保存期間はいつから数えますか
原則として工事目的物を引き渡した日から起算します。ただし、請負契約に基づく債権債務が引渡し前に消滅した場合は、その消滅日から起算します。契約日や許可取得日を起点にする考え方ではありませんので、工事ごとに起算点となる日を確認しておくと安心です。
帳簿と工事書類を電子データで保存することはできますか
建設業法施行規則で認められた方法によれば、電磁的記録による保存も可能です。ただし単にスキャンして保存するだけでは足りず、当該営業所において必要に応じて明確に表示できることなど、同規則の要件を満たす必要があります。
帳簿は工事が終わったら処分してよいのでしょうか
工事が完了しても、帳簿と帳簿に添付した書類には法定の保存期間があります。原則5年、住宅を新築する一定の工事は10年間の保存が必要です。完成図などの営業に関する図書についても、引渡し日から10年間保存します。
相談時に資料がそろっていなくても大丈夫ですか
大丈夫です。まずは現在の帳簿や書類の管理状況を伺い、必要な確認事項を一緒に整理いたします。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
まとめ|帳簿は工事とともに整えていくものです
- 建設業者は営業所ごとに帳簿を備え、請け負った建設工事ごとに必要事項を記載し、法令で定められた書類を添付します。
- 帳簿には、営業所代表者、注文者との請負契約、下請契約、一定の住宅新築工事などについて所定事項を記載します。注文者・下請負人の許可番号は、それぞれが建設業者である場合に記載します。
- 帳簿への添付書類には契約書またはその写し等のほか、一定の場合の下請代金の支払証明書類があります。発注者から直接請け負った工事のうち、建設業法上、施工体制台帳の作成義務が生じる工事に限り、施工体制台帳の所定部分も帳簿への添付対象となります。すべての元請工事が対象となるわけではありません。
- 完成図、請負契約の当事者が相互に交付した発注者との打合せ記録、および施工体系図の作成義務がある場合の施工体系図は、帳簿添付書類とは別の「営業に関する図書」として管理します。保存期間は工事目的物を引き渡した日から10年間です。
- 帳簿および帳簿に添付した書類は、原則として5年間保存します。ただし、発注者(宅地建物取引業者を除く。)と締結した住宅を新築する建設工事に係るものは10年間保存します。保存期間は原則として工事目的物を引き渡した日から起算し、その請負契約に基づく債権債務が引渡し前に消滅した場合には、その消滅日から起算します。
- 工事終了後にまとめるのではなく、受注時から工事単位で管理を始め、変更、下請契約、完成確認、引渡し、保存期限まで順次記録することが、管理漏れを防ぐ基本です。
建設業法上の帳簿は、「ひな形を一つ作成すれば終わり」という書類ではありません。営業所の代表者、注文者との契約、下請契約、一定の住宅新築工事、契約変更、施工体制台帳の所定部分、施工体系図などの営業に関する図書、保存期間まで、自社が実際に行う工事に応じて管理する必要があります。そのため、現在すでに工事台帳や契約書ファイルを使用している会社では、いきなりすべての様式を変更するよりも、「今の管理方法で法令上必要な部分をどこまで満たしているか」「どの部分が不足しているか」を先に確認することが重要です。
自社だけでは判断しにくい部分がある場合には、新しい帳簿を作り始める前に、現在使用している帳簿、契約書類、工事別ファイルをそのまま専門家へ見せて確認する方法もあります。必要なものを一から作り直すのではなく、現在の管理方法を生かしながら不足している部分だけを整理できれば、その後の運用も続けやすくなります。そして今後は、工事が終わってからまとめるのではなく、一件の工事を受注した時点から帳簿と関係書類をひも付けて管理することが重要です。この運用を整えておけば、帳簿そのものの備付け・保存だけでなく、過去工事の確認や建設業許可取得後の継続的な管理にもつなげやすくなります。
まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。
お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
制度の基本は公的資料も併せてご確認ください。
国土交通省「帳簿の備付け・保存について」