建設業許可の5つの要件とは?
経管・専技で見落としやすいポイントを行政書士が解説
「自分の経験で足りるのか」「この資格で対象になるのか」。建設業許可の要件を調べても、自社に当てはまるかどうかまで判断するのは簡単ではありません。この記事では、川崎市北部の事業者が申請前に確認しておきたいポイントを、専門用語をかみ砕きながら整理します。
この記事の対象
これから建設業許可の取得を検討している、川崎市北部の一人親方・法人代表の方を主な対象としています。経営業務の管理体制(経管)と営業所技術者等(専技)は特に確認事項が多くなりやすいため、この記事ではその部分を丁寧に整理します。
経営業務の管理体制(経管)に加え、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への必要な加入・届出も確認されます。
営業所技術者等(専技)として、資格または実務経験により技術力を確認します。
財産的基礎、誠実性、欠格要件に該当しないことも、あわせて確認される事項です。
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。
まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
建設業許可を取るために確認したい5つの要件
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 経営業務の管理体制|建設業の経営経験などが確認される
- 営業所技術者等|資格や実務経験で技術力を確認される
- 財産的基礎|工事を請け負える資金面の条件を確認する
- 誠実性|不正・不誠実な行為をするおそれがないことが必要
- 欠格要件|一定の事情に該当すると許可を受けられない
まず押さえておきたいのは、建設業許可について「4つの許可要件と欠格要件を合わせれば5つ」と単純に数えると、現在の制度を正確に表せないという点です。
国土交通省の現行資料では、適正な経営体制を有し適切な社会保険に加入していること、営業所技術者等を配置していること、誠実性、財産的基礎等が許可に必要な条件として示されています。これとは別に、一定の欠格要件に該当しないことも必要です。
本記事では検索時によく使われる「5つの要件」という表現に合わせて主要項目を整理していますが、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について必要な加入や届出をしていることも、あわせて確認しておきたい事項です。見出しの数だけにとらわれず、自社に必要な条件を一つずつ確認していきましょう。
経営業務の管理体制|建設業の経営経験などが確認される
建設業許可では、建設業の経営を適正に管理できる体制が必要です。一般に「経管」と呼ばれる部分で、法人であれば常勤役員等、個人であれば本人または支配人などについて、一定の建設業に関する経営経験が確認されます。国土交通省は、建設業について5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有する者が常勤役員等である場合など、複数の認定ルートを示しています。
代表的なのは、常勤役員等のうち1人が、建設業について5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有するケースです。このほか、一定の立場で経営業務を管理した経験や、経営業務の管理責任者を補佐してきた経験などによって確認する方法もあります。
また、一定の経験を持つ常勤役員等と、その人を直接補佐する者を組み合わせて経営管理体制を整える方法もあります。この場合、補佐する側には、財務管理・労務管理・業務運営について、それぞれ建設業で5年以上の経験が必要です。
必ず3人の補佐者を配置しなければならないわけではありません。1人が財務管理・労務管理・業務運営のうち複数の分野について、それぞれ5年以上の経験を有する場合は、その1人で複数の分野を兼ねることができます。一方で、一つの分野について必要な経験が不足している場合は、他の分野の経験でそのまま補えるものではないため、分野ごとに確認しておくと安心です。
そのため、「社長を5年以上しているから経管は問題ない」と年数だけで決めることはできません。どの会社で、どの立場で、何年間、建設業の経営に関わってきたのかを整理しておくと、確認がスムーズに進みます。
さらに、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、会社(法人)または個人事業主として加入が必要な場合に、必要な届出をきちんと行っていることも確認しておきたいポイントです。社会保険についても、申請前に現在の加入・届出状況を整理しておくとよいでしょう。
営業所技術者等|資格や実務経験で技術力を確認される
建設業許可では、営業所ごとに、許可を受けようとする建設業について一定の資格または経験を持つ「営業所技術者等」を配置する必要があります。国土交通省や現在の申請資料では「営業所技術者等」という名称が使われており、以前の制度や資料で使われてきた「専任技術者」「専技」という言葉を目にすることもあります。
一般建設業では、国家資格等によって要件を満たす方法のほか、指定学科の卒業後に所定の実務経験を積む方法、許可を受けようとする建設業に係る建設工事について10年以上の実務経験を有する方法などがあります。どの方法を使えるかは、取得したい業種や資格、学歴、実際の工事経験によって変わります。
ここで大切なのは、「建設業界で10年以上働いた」という事実だけでは判断できない点です。10年の実務経験による場合は、許可を受けようとする業種に係る建設工事に実際に携わった期間を確認する必要があります。
また、実務経験によって複数業種の要件を証明する場合、同じ期間を自由に使い回せるわけではありません。同じ期間に複数の業種の工事に携わっていたとしても、その期間を複数業種の実務経験として重複して使えるとは限らないため、業種ごとの経験期間を個別に整理しておくと確認しやすくなります。
つまり、資格がないからとすぐに諦める必要はありませんが、10年間建設業に携わっていれば何業種でも取得できるというものでもありません。資格、取得したい業種、実際に携わった工事、経験期間、証明資料をセットで確認していきましょう。
財産的基礎|工事を請け負える資金面の条件を確認する
建設業許可では、工事を適切に履行できるだけの財産的基礎や金銭的信用も求められます。建設工事では、材料費、人件費、機械器具費などを先に負担する場面もあるため、一定の資金面の条件が設けられています。
特に、これから一般建設業の新規許可を取得する事業者が確認しておきたいのは、主に次の基準です。
- 自己資本が500万円以上ある
- 500万円以上の資金調達能力がある
国土交通省が示す一般建設業の基準には、これらのほか、「許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績を有すること」という基準もあります。
ただし、この5年間の営業実績に関する基準は、すでに建設業許可を受けて継続して営業している事業者が更新や業種追加などを行う際に関係するものです。初めて新規許可を申請する事業者の場合は、建設業を5年以上続けていることをもって500万円の確認を省略できるわけではないため、あわせて整理しておくと安心です。
新規申請では、自己資本または500万円以上の資金調達能力をどのように確認できるかを先に整理しておくとよいでしょう。
また、500万円という基準は一般建設業についてのものです。特定建設業では財産的基礎の基準が異なり、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上など、一般建設業より厳しい財務条件が設けられています。一般建設業か特定建設業かを確認し、自社が申請する区分に合わせて確認していきましょう。
誠実性|不正・不誠実な行為をするおそれがないことが必要
建設業許可では、請負契約の締結や履行について、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことも必要です。国土交通省も、建設業許可の条件として誠実性を掲げています。
対象となるのは申請者である法人または個人だけではありません。営業取引上重要な地位にある役員等についても確認されます。
誠実性という言葉は抽象的ですが、「建設工事の請負契約を適切に締結し、契約内容に従って誠実に履行することが期待できるか」という観点で考えると分かりやすいでしょう。
過去の事業活動について気になる事情がある場合は、時間が経っているからと自己判断せず、経歴や過去の事実関係を整理し、許可申請への影響があるかを確認しておくと安心です。ほかの条件のように資格証や決算書の数値だけで判断しにくい項目だからこそ、心当たりがある場合は申請書の作成を進める前に確認しておくことをおすすめします。
欠格要件|一定の事情に該当すると許可を受けられない
欠格要件は、経管や財産的基礎のように「条件を満たせばよい」という性質のものとは異なります。一定の事情に該当すると建設業許可を受けられないという、許可を妨げる事由です。国土交通省の資料でも、許可に必要な条件と欠格要件は分けて整理されています。
欠格要件には、一定の許可取消処分を受けてから所定の期間を経過していない場合、対象となる刑罰を受けて一定期間を経過していない場合、暴力団員等に該当する場合などがあります。
また、申請書や添付書類に重要な事項について虚偽の記載があったり、重要な事実の記載が欠けていたりする場合も確認の対象となります。神奈川県も、経験確認のための過去の書類を申請用に加工・復元することは認められず、不許可や許可取消し、刑事責任につながる可能性があると案内しています。
すべての項目を暗記する必要はありません。ただし、申請者本人や法人の役員等について、過去の処分や刑罰など気になる事情がある場合には、申請準備の早い段階で確認しておくと、その後の準備を進めやすくなります。
経管・専技でつまずきやすい3つのポイント
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 「社長歴が長い=経管の要件を満たす」とは限らない
- 資格がなくても実務経験で認められる可能性がある
- 経験があっても証明できなければ申請が難しくなる
建設業許可で特に確認事項が多くなりやすいのが、経営業務の管理体制と営業所技術者等です。「長く会社を経営している」「現場経験は十分にある」という場合でも、それだけで許可に必要な条件を満たしていると断定はできません。
誰が、どの会社で、どの立場で、どのような経験をしてきたのか。さらに、その経験をどの資料で裏付けられるのかまで確認しておくと、その後の準備がスムーズになります。
建設業について5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を持つ常勤役員等がいるケース。
一定の立場で経営業務を管理した経験や、管理責任者を補佐してきた経験によって確認する方法。
一定の常勤役員等と、財務・労務・業務運営を担う補佐者を組み合わせる方法。1人が複数分野を兼ねることも可能です。
「社長歴が長い=経管の要件を満たす」とは限らない
経管の確認では、単に代表取締役や社長を長く務めているかではなく、建設業についてどのような立場で経営業務に携わってきたのかがポイントです。
代表的な基準は、建設業について5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を持つ常勤役員等がいることです。一方、一定の立場で経営業務を管理した経験や、経営業務の管理責任者を補佐してきた経験などによって確認する方法もあります。
さらに、一定の条件を満たす常勤役員等と、その人を直接補佐する者によって経営管理体制を構築する方法もあります。この補佐体制では、財務管理・労務管理・業務運営について、それぞれ5年以上の建設業での経験を持つ者が必要です。必ず3分野を別々の3人が担当する必要はありません。
1人が財務管理・労務管理・業務運営のうち複数の分野について、それぞれ5年以上の経験を有していれば、その人が複数分野を兼ねることができます。したがって、補佐者を1人置けば無条件で足りるという意味でもなく、各分野について必要な経験を満たしているかを確認しておくことが大切です。
つまり、「社長を何年しているか」だけでは判断できません。会社名、役職、在任期間、その会社で建設業を営んでいた期間、実際の担当業務を時系列で整理しておくと、確認がしやすくなります。
資格がなくても実務経験で認められる可能性がある
営業所技術者等について、国家資格がないからと建設業許可を諦める必要はありません。
一般建設業では、一定の国家資格等を持っている方法だけでなく、指定学科の卒業と所定の実務経験を組み合わせる方法や、許可を受けようとする建設業に係る建設工事について10年以上の実務経験を有する方法などがあります。
大切なのは、「10年間建設関係の仕事をしていた」という年数だけでは判断できない点です。実務経験期間は、許可を受けようとする業種に係る建設工事に実際に携わった期間を確認して判断します。複数の業種について実務経験を使いたい場合も、同じ期間を当然に複数業種へ重複して使えるわけではありません。
たとえば、ある10年間に内装工事と別業種の工事の両方を経験していたとしても、「同じ10年をそれぞれの業種について10年ずつあることにする」という単純な考え方はできません。具体的な工事内容と期間を業種ごとに確認しておくと安心です。
取得したい業種を決め、その業種についてどの期間を実務経験として確認できるかを整理していきましょう。
経験があっても証明できなければ申請が難しくなる
建設業許可では、本人が「昔から建設業をしている」「10年以上現場に出ている」と説明するだけでは、必要な経験が確認できたことにはなりません。
神奈川県も、経営業務の管理責任者や営業所技術者等の実務経験について、経験内容を裏付ける資料を確認し、申請前に事実確認を念入りに行うよう案内しています。県の案内では、実務経験を裏付ける資料として「請求書等」が明示されています。
実際の準備では、経験の内容に応じて、工事請負契約書や請求書など、当時どのような建設工事に携わっていたかを確認できる資料が残っているかを整理しておくことが重要です。工事写真など手元にある関連資料も含め、まず何が残っているか確認しておくと、その後の証明方法を検討しやすくなります。
特に確認しておきたいのが、以前勤務していた会社での経験や、古い個人事業時代の経験を使うケースです。本人には明確な記憶があっても、当時の工事内容や期間を客観的に確認できる資料が残っていないことがあります。会社がすでに廃業している、古い書類を処分してしまったといった事情があれば、証明方法を早めに検討しておくと安心です。
神奈川県は、申請のために過去の書類を加工したり復元したりする行為は認められないとも明記しています。経験年数だけを数えるのではなく、その期間を何の資料で証明できるのかまでセットで確認しておきましょう。
申請書を作る前に確認しておきたい3つのこと
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 取得したい建設業の業種を先に整理する
- 経営経験・資格・実務経験を時系列で整理する
- 経験を裏付ける資料が残っているか確認する
建設業許可では、申請書を先に完成させるよりも、業種・人・経験・証明資料を確認することが先です。
特に、営業所技術者等の条件は取得したい業種によって変わります。経管についても、過去のどの経験を使うのかによって確認すべき内容が異なるため、先に全体像を整理しておくと、申請途中で大きく戻るリスクを減らせます。
取得したい建設業の業種を先に整理する
最初に確認したいのが、「どの建設業の許可を取得したいのか」です。
建設業許可は業種ごとに取得する仕組みであり、営業所技術者等に必要となる資格・実務経験も、許可を受けようとする建設業との対応関係で判断されます。国土交通省も、営業所ごとに許可を受けようとする建設業について、一定の資格または経験を持つ営業所技術者等を配置する必要があるとしています。
現在請け負っている工事、これから受注したい工事、元請や取引先から許可取得を求められている工事などを書き出し、まず対象業種を整理してみましょう。
似たような仕事内容に見えても、建設業法上は別の許可業種として扱われる場合があります。取得したい業種を先に決め、その業種について営業所技術者等になれる人がいるかを確認する順番で進めると、そのあとの確認がスムーズです。
経営経験・資格・実務経験を時系列で整理する
取得したい業種が見えたら、次は許可に関係する人の経歴を時系列で整理します。
経管については、次のような情報をまとめると確認しやすくなります。
- どの会社に在籍していたか
- いつからいつまで在籍していたか
- どの役職・立場だったか
- その会社で建設業を営んでいた期間はいつか
- 経営上どのような業務を担当していたか
営業所技術者等については、保有資格に加えて、実務経験を使うのであれば工事業種・勤務先・経験期間・実際の工事内容を整理しましょう。特に10年以上の実務経験を使う場合は、単なる在籍期間ではなく、許可を受けようとする業種に係る建設工事へ実際に携わっていた期間を確認することが重要です。
最初から正式な申請書へ書き込む必要はありません。「2016年4月~2021年3月 A社 取締役」「2021年4月~現在 自社 代表取締役」といった簡単な一覧でも、時系列にすると空白期間や会社の切り替わりが見えやすくなります。そのうえで、それぞれの期間を何の資料で確認できるかを紐づけていくと、申請前に不足している情報を発見しやすくなります。
経験を裏付ける資料が残っているか確認する
経歴を整理したら、それぞれの期間を裏付ける資料が残っているかを確認します。
神奈川県では、経営業務の管理責任者や営業所技術者等の実務経験について、経験を裏付ける資料の確認が必要であることを案内し、申請前に事実確認を念入りに行うよう案内しています。具体例として県の案内では「請求書等」が示されています。
実際には、自社の状況に応じて、工事請負契約書、請求書など、当時の工事内容や取引を確認できる資料が残っているかを探してみましょう。工事写真など関連する資料が残っている場合も、まずはまとめて整理しておくと、どの資料を正式な確認資料として使用できるか相談しやすくなります。
大切なのは、「申請するときに必要になったら探せばいい」と後回しにしないことです。以前の勤務先へ確認が必要になるケースもあれば、数年前、十数年前の資料を探さなければならない場合もあります。経験期間そのものは十分なのに、必要な裏付けを確認できないとなれば、申請方針にも影響します。
さらに、神奈川県は、許可申請のために過去の書類を加工したり復元したりすることは認められないと明記しています。申請書に着手する前に、経歴→必要な経験期間→手元にある資料の順で照らし合わせておくことが、無駄な準備を減らすポイントです。
神奈川県で建設業許可を申請する際に押さえたい3つの注意点
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 川崎市の事業者でも許可要件そのものを先に確認する
- 経験証明は「何年働いたか」だけでは判断できない
- ネット上の一般論だけで自社の可否を決めない
神奈川県では、「建設業許可申請の手引き」を公開しています。現在の県ホームページでは、最新版として「令和8年度版」が案内されています。申請方法や必要書類は変更されることがあるため、実際に手続きを進める際は、その時点で公開されている最新版を確認しておくと安心です。
制度の概要が分かっても、自社が実際に該当するかどうかは、経歴・資格・工事内容・証明資料によって異なります。神奈川県の最新資料と自社の事情を照らし合わせて確認していきましょう。
川崎市の事業者でも許可要件そのものを先に確認する
川崎市北部で事業をしている場合も、最初に確認したいのは申請書の書き方や提出方法だけではありません。自社が建設業許可を受けるために必要な条件を満たせそうかを確認することが先です。
神奈川県では、「建設業許可申請の手引き-令和8年度版-」を公開し、申請手続き、記載例、許可に関する確認資料などを案内しています。また、経営業務の管理責任者や営業所技術者等の実務経験については、申請前に事実確認を念入りに行うよう案内しています。
申請様式を先に入手すると、空欄を埋める作業から始めたくなるかもしれません。しかし、経管になれる人がいない、営業所技術者等の業種が合わない、実務経験を十分に証明できない、社会保険について必要な届出が済んでいないといった状況が後から分かると、準備をやり直すことになります。
まずは次の事項を整理するとよいでしょう。
- 取得したい許可業種
- 経営業務の管理体制
- 営業所技術者等
- 社会保険の加入・届出状況
- 財産的基礎
- 誠実性・欠格要件
- 経歴や工事経験を裏付ける資料
その後に申請書類の作成へ進む方が、自社に足りないものを早い段階で把握しやすくなります。
経験証明は「何年働いたか」だけでは判断できない
営業所技術者等について実務経験を使う場合は、勤務年数だけではなく、その期間にどの種類の建設工事へ実際に携わっていたのかが重要です。
一般建設業では、許可を受けようとする建設業に係る建設工事について10年以上の実務経験を有することなどが、営業所技術者等になる方法の一つとして示されています。指定学科の卒業や一定の資格と実務経験を組み合わせる別の方法もあります。
実務経験期間は、許可を受けようとする業種に係る建設工事に実際に携わった期間を確認して判断します。また、同じ期間に複数業種の工事に携わっていた場合でも、その期間を複数業種について当然に重複して使えるとは限りません。「10年間働いたから2業種とも10年の実務経験がある」という単純な計算は避け、業種ごとの工事内容と経験期間を整理しておきましょう。
確認するときは、次の4点をセットにすると整理しやすくなります。
- どの工事に携わったか
- その工事が何業種に該当するか
- いつからいつまで経験したか
- その期間をどの資料で裏付けられるか
この整理を先にしておくと、「経験はあるのに証明の段階で進められない」という事態を防ぎやすくなります。
ネット上の一般論だけで自社の可否を決めない
建設業許可について検索すると、「経管は5年」「実務経験は10年」「500万円必要」といった分かりやすい数字が多く出てきます。制度を理解する入口としては役立ちますが、自社へそのまま当てはめられるとは限りません。
たとえば経管には複数の確認方法があり、常勤役員等1人の経験によって確認するケースだけでなく、一定の常勤役員等と、その人を直接補佐する人員を組み合わせる方法もあります。補佐者についても、財務管理・労務管理・業務運営のそれぞれについて必要な経験を満たしているかを確認しなければなりません。
営業所技術者等についても、取得業種、一般建設業・特定建設業の違い、資格、学歴、実務経験などによって条件が変わります。財産的基礎についても、500万円という数字は一般建設業についての基準であり、特定建設業にはより厳しい財務条件があります。
さらに、現在は健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、会社や個人事業主として加入が必要な場合に、必要な届出を行っていることも確認されます。
一般的な制度を理解したら、次は自社の経歴・資格・工事内容・財務状況・社会保険・証明資料を一つずつ当てはめて確認していきましょう。
建設業許可で失敗を防ぐための3ステップ
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- まず5つの要件に当てはまるか確認する
- 次に経管・専技の経験と証明方法を確認する
- 判断が難しい部分は申請準備前に個別確認する
建設業許可で準備の遠回りを防ぐには、必要書類をとにかく集めるのではなく、許可を受けるための条件を確認することから始めるのがおすすめです。
全体を確認し、特につまずきやすい経管・営業所技術者等を詳しく見たうえで、判断が難しい部分を個別に確認します。この順番で進めれば、申請書を作成する前に自社の課題を把握しやすくなります。
経管・専技・財産的基礎・誠実性・欠格要件と、社会保険の加入状況を一通り書き出します。
候補者の経歴を時系列で整理し、それぞれの期間を裏付ける資料の有無を確認します。
自社だけで判断しにくい点は、申請準備を本格化させる前に確認しておくと安心です。
まず5つの要件に当てはまるか確認する
最初は細かな申請書類を集めるより、自社が許可を受けるために確認すべき条件を一通り整理します。
この記事では検索ニーズに合わせて「5つの要件」という形で説明していますが、実際の制度では、適正な経営体制や営業所技術者等、誠実性、財産的基礎等に加え、適切な社会保険への加入が求められ、さらに欠格要件に該当しないことも確認されます。
まず自社について、次のような項目を書き出してみましょう。
- 経管の候補になりそうな人はいるか
- 営業所技術者等になりそうな人はいるか
- 取得したい建設業の業種は決まっているか
- 健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、加入が必要な場合に必要な届出をしているか
- 一般建設業の場合、財産的基礎を確認できそうか
- 誠実性や欠格要件について気になる事情はないか
この段階で「ここは自分では判断できない」という項目が見つかっても心配はいりません。むしろ、申請書を完成させてから不足に気づくより、早い段階で判断できないところを把握しておく方が、その後の準備を進めやすくなります。
次に経管・専技の経験と証明方法を確認する
全体を確認したら、経管と営業所技術者等について詳しく整理します。
経管であれば、候補者について会社名、役職、在任期間、建設業の経営に関わった内容などを確認しましょう。営業所技術者等であれば、保有資格、取得したい業種、実務経験の内容と期間を整理します。実務経験を使う場合は、「何年働いたか」だけではなく、許可を受けたい業種に係る工事へ実際に携わっていた期間を見ることが重要です。
そして、経験を整理するときに必ず一緒に確認したいのが証明方法です。神奈川県は、経営業務の管理責任者や営業所技術者等について、実務経験を裏付ける資料を確認することを示しており、県の案内では請求書等が例示されています。また、申請前に事実確認を念入りに行うよう案内しています。
たとえば「建設会社の役員を7年間していた」「内装工事を12年間経験している」という経歴があったとしても、それだけで終わりではありません。「その役員経験を何で確認できるか」「その12年間がどの業種の工事だったか」「その工事経験をどの資料で裏付けられるか」まで整理しておくと安心です。
工事請負契約書や請求書など、当時の取引や工事内容を確認できる資料が手元にあるかを探しておきましょう。関連する工事写真などが残っている場合も、まずまとめて整理しておけば、正式にどの資料を使えるか確認するときに役立ちます。
判断が難しい部分は申請準備前に個別確認する
自社で整理しても判断できない点が残る場合は、申請書類をすべて完成させる前に個別確認しておくと安心です。建設業許可では、会社ごとの経歴や状況によって判断が変わる部分があります。
たとえば、「以前の会社での役員経験を経管に使えるのか」「資格はないが、この工事経験で営業所技術者等になれるのか」「複数業種について実務経験をどう整理すればよいのか」「昔の経験について手元の資料で証明できるのか」「社会保険について必要な加入・届出ができているのか」といったケースです。
経営業務の管理体制には複数の確認方法があり、営業所技術者等についても資格・学歴・業種・実務経験によって判断が変わります。神奈川県でも、「建設業許可申請の手引き-令和8年度版-」が公開されており、許可に関する確認資料について詳細に案内されています。
さらに、経験を裏付ける資料については、申請のために過去の書類を加工・復元せず、事前に事実確認を念入りに行うよう案内されています。
書類を一通り作り終えてから「この経験では足りなかった」「必要な資料が確認できなかった」と分かるより、先に疑問点を洗い出しておいた方が、その後の準備を進めやすくなります。建設業許可では、書類作成の速さより、自社が必要な条件を満たしているかを正確に確認することが先です。自分や自社が該当するか判断しにくい部分は、申請準備を本格化させる前に個別に確認してみましょう。
ここまでの整理が難しく感じても大丈夫です。
現在の状況を伺いながら、経管・専技の確認方法を一緒に整理します。
よくある質問
経管は社長を長く務めていれば要件を満たしますか
役職の在任年数だけでは判断できません。どの会社で、どの立場で、建設業の経営にどのように関わってきたかを確認する必要があります。常勤役員等と補佐者を組み合わせる方法もあるため、あわせて確認しておくと安心です。
資格がなくても営業所技術者等になれますか
国家資格がなくても、指定学科の卒業と実務経験の組み合わせや、10年以上の実務経験によって認められる場合があります。許可を受けようとする業種に実際に携わった期間を確認することが大切です。
自己資本が500万円なければ建設業許可は取れませんか
500万円以上の自己資本のほか、500万円以上の資金調達能力があることでも、一般建設業の財産的基礎の基準を確認できる場合があります。特定建設業ではより厳しい基準が設けられています。
社会保険への加入も確認されますか
はい。現在は適正な経営体制に加えて、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について必要な加入・届出をしていることも、建設業許可を受けるために確認される事項とされています。
公的情報もあわせて確認できます
制度の内容や申請方法は変更されることがあるため、実際に手続きを進める際は、申請時点の最新案内もあわせて確認してください。
まとめ|自社の状況を一つずつ整理していきましょう
- 建設業許可では、経営体制・営業所技術者等・誠実性・財産的基礎等だけでなく、必要な社会保険への適切な加入・届出についても確認します。
- 欠格要件は積極的に「満たす条件」ではなく、該当すると許可を受けられない事由として分けて考えます。
- 経管は社長歴だけ、営業所技術者等は資格の有無や建設業での勤務年数だけで判断せず、実際の経験内容まで確認します。
- 一般建設業の新規申請では自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力などを確認し、既存許可業者に関係する5年間の営業実績の基準と混同しないようにします。
- 経営経験や実務経験は年数だけでなく、その経験をどの資料で裏付けられるかまで申請前に確認します。
建設業許可では、申請書をきれいに作成することより先に、「誰がどの条件を満たすのか」「その経験を何で証明できるのか」「社会保険や財産面を含めて不足がないか」を整理することが大切です。特に経管や営業所技術者等は、一見似た経歴でも、役職・工事業種・経験期間・証明資料によって判断が変わります。
「資格がないから難しそう」「経験は長いから大丈夫」「資金が500万円あれば問題ない」と一部分だけで結論を出さず、現在の経歴、資格、取得したい業種、社会保険の状況、手元にある資料を整理してみましょう。
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。