追加工事は口頭で受けても大丈夫?
着工前に整理したい見積書と変更契約
追加工事を頼まれたとき、「誰から」「いくらで」「工期はどうなるか」を確認しないまま着手していないでしょうか。メールやチャットでの依頼だけでは、当初契約との違いが分かりにくくなることもあります。着工前に変更内容を整理し、書面として残す考え方を、行政書士の視点から確認していきます。
最初に押さえたい考え方
追加工事の書面は、相手を疑うための書類ではありません。何を、いくらで、いつまでに行うのかを双方で確認し、工事の進み方について同じ前提を持つための書類です。特に建設業法が適用される建設工事では、追加・変更工事によって当初契約の内容を変更する場合、原則として着工前に変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することが求められています。
誰から、何を、どこまで頼まれたのかを当初契約と照らし合わせます。
追加・減額の金額、消費税の扱い、変更後の請負代金総額を整理します。
完成時期が変わるかどうか、変わらない場合はその旨も記録します。
署名または記名押印のうえ相互に交付し、原則として着工前に手続きを終えます。
追加工事に着手する前に確認したい3つの事項
追加工事では、当初契約の範囲と変更後の内容を区別して整理することが基本です。建設業法が適用される場合、追加・変更契約は原則として着工前に書面化することが求められます。国土交通省も、追加工事について着工後や工事終了後に書面による契約変更を行った事例を、望ましくない対応として示しています。まずは、変更される内容を当初契約との関係で確認できる状態にすることから始めましょう。
追加する作業内容を当初契約と区別して整理する
「何を追加するのか」を当初契約の工事内容と区別して記録します。「追加工事一式」とだけ記載すると、後から具体的な作業範囲を確認しにくくなることがあります。たとえば内装工事で壁紙の追加施工を依頼された場合は、施工する部屋、面積、材料、施工範囲などを整理します。設備工事であれば、追加する機器や配管、設置場所、数量も確認したい項目です。
変更契約書等を作成する際は、次のような情報を具体化しておくと整理しやすくなります。
- 追加・変更する工事の内容と施工場所・範囲
- 仕様、図面、数量、材料、施工方法
- 当初契約との変更点と、変更の対象となる既存工事
- 写真や図面など必要に応じた添付資料
なお、追加工事の内容が施工前には数量まで確定できないケースもあります。この場合も、着工前に具体的な作業内容、契約変更の対象となること、変更契約を行う時期、契約単価などを記載した書面を取り交わし、内容が確定した後は遅滞なく変更契約等の手続きを行うという考え方があります。
追加工事の金額と見積条件を確認する
追加される作業だけでなく、請負代金がどのように変わるのかを施工前に確認します。見積書の作成だけで施工に進むのではなく、変更後の契約内容について双方の合意を適切な書面等で確認することが大切です。
| 確認項目 | 記録する内容の例 |
|---|---|
| 当初請負代金 | 原契約で定めた金額 |
| 追加・変更額 | 追加または減額となる金額 |
| 消費税等 | 税込・税別、税額の扱い |
| 変更後総額 | 最終的な請負代金総額 |
| 支払条件 | 支払時期・支払方法 |
| 減額項目 | 中止・取消しとなる既存工事 |
「追加工事だから追加額だけ記載すればよい」とは限りません。当初の請負代金に対して、追加・減額を反映した変更後の請負代金総額が分かるように整理することが重要です。
建設業法が適用される場合、契約締結前の見積条件の提示と、一定の見積期間についても定めがあります。予定価格が500万円未満なら1日以上、500万円以上5,000万円未満なら10日以上、5,000万円以上なら15日以上が原則で、やむを得ない事情がある場合に限り5日以内の範囲で短縮できます。追加工事等の見積りについても、この考え方が関係します。見積書には、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費、必要な作業日数などを可能な限り明示し、法定福利費や安全衛生経費、建設業退職金共済掛金などの必要経費も適切に扱うことが望まれます。
工期・施工時期への影響を確認する
追加作業によって完成時期が変わる場合、その内容も契約書面に反映します。国土交通省も、追加工事に伴う工期変更について、建設業法第19条第2項に基づく変更契約の対象として整理しています。
| 確認項目 | 記録する内容の例 |
|---|---|
| 当初着手日・完成日 | 原契約の着手・完成予定日 |
| 変更後着手日・完成日 | 変更後の着手・完成予定日 |
| 変更日数 | 何日延長・短縮するか |
| 追加工事着手日 | 追加部分をいつ開始するか |
| 工程への影響 | 他工種・引渡し等への影響 |
| 工期変更なしの場合 | 「工期変更なし」と明記 |
追加工事によって必要な工期が延びる場合に、著しく短い期間での完成を求めることは、建設業法上の「著しく短い工期」の問題につながる可能性があります。資材価格や労務費、資材納期などが工期や請負代金に影響する場合は、変更協議の方法や算定方法もあわせて確認しておくと安心です。
変更契約で残しておきたい4つの記録
ここで紹介する4項目は、実務上の基本的な管理事項です。建設業法が適用される場合、これら4項目だけを記載すれば法定の契約書面を満たすという意味ではなく、当初契約で定められている法定事項のうち変更される事項を記載し、変更されない事項との関係も明確にする必要があります。
誰から依頼されたのかを記録する
依頼経緯を確認するための社内管理として、依頼者の氏名・所属、依頼日時、依頼方法、依頼内容を記録します。ただし、現場担当者から依頼を受けた場合、その担当者が発注者を代表して契約条件を変更できる権限を持っているかは別途確認したい点です。社内承認の有無と、発注者・受注者間で契約変更が成立したことは別の問題として考え、最終的には契約当事者または適切な代理権限を有する者による合意を、法令に適合した書面等で確認します。
追加工事の内容と範囲を記録する
作業内容と施工範囲を具体的に記録します。ここが曖昧なままだと、工事完了後に認識の違いが生じることがあります。原契約の名称・契約日・工事場所、変更対象となる工事内容・施工範囲、変更前後の仕様、図面・数量・材料・施工方法、追加・減額となる部分、添付する見積書・図面・写真等を整理すると、当初契約と追加工事の関係を追いやすくなります。複数回の追加工事が発生する現場では、変更履歴も残しておくと、最終的な契約内容を確認しやすくなります。
追加金額・支払条件を記録する
追加金額だけでなく、変更後の請負代金総額や支払条件まで確認します。当初の請負代金額、追加・変更による増額または減額、消費税および地方消費税の扱い、変更後の請負代金総額、支払時期・方法、中止・取消しとなる既存工事の有無、その他の精算条件を整理しておきます。
また、発注者が取引上の地位を不当に利用し、必要な増額に応じないまま追加工事を施工させることは、建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金」の問題につながる可能性があります。書面を残すことは費用を必ず回収できることを意味するものではありませんが、何を、いくらで、どの条件で変更したのかを当事者間で確認するための重要な基盤になります。
変更後の工期やその他の条件を記録する
金額と作業内容に加え、当初の着手日・完成日、変更後の着手日・完成日、変更日数、追加工事の着手日、全体工程への影響、工期変更の有無、資材納期への影響、価格変動時の協議方法などを整理します。工期に変更がない場合でも、「工期変更なし」と確認しておくと、変更契約の内容を後から確認しやすくなります。
合意を残す3つの方法の使い分け
追加工事の記録には、それぞれ役割があります。変更契約書や適法な注文書・注文請書は契約変更の主要書面、見積書は工事内容・価格・条件を示す見積資料、メール・チャット・写真・図面・打合せ記録は補助資料というように区別して管理すると分かりやすくなります。
| 資料 | 主な役割 |
|---|---|
| 変更契約書 | 契約変更の主要書面 |
| 適法な注文書・注文請書 | 契約変更の主要書面 |
| 適法な電子契約 | 法定要件を満たす契約書面に代わるもの |
| 見積書 | 工事内容・価格・条件を示す見積資料 |
| メール・チャット | 依頼・協議・承認経緯の補助資料 |
| 写真・図面 | 施工範囲・施工状況の補助資料 |
| 打合せ記録 | 協議内容を示す補助資料 |
変更契約書・変更注文書で正式な契約内容を残す
建設業法第19条第2項では、当初契約の内容を変更するとき、原則として追加・変更工事の着工前に、変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することが求められています。変更契約書には、原契約の名称・契約日・工事場所、変更対象となる工事内容・施工範囲、変更前後の仕様・図面・数量・材料・施工方法、追加・減額金額、変更後の請負代金総額、消費税等の取扱い、変更前後の着手日・完成日、支払時期・支払方法、価格変動・資材納期遅延時の協議方法、変更しない条項と原契約との優先関係、合意日、当事者の署名または記名押印、添付見積書・図面・写真等の特定といった事項を確認します。原契約のどの部分を変更し、どの部分は変更しないのかを明確にすることが、変更契約書を分かりやすくするポイントです。
見積書と注文書・発注書を組み合わせて残す
見積書と注文書・発注書を組み合わせて管理する方法もあります。ただし、見積書は工事内容や金額、条件を示す見積資料であり、見積書の提示だけで契約変更の合意が当然に成立するわけではありません。発注者がその見積内容を正式に発注し、受注者がそれを受ける場合には、注文書・注文請書などを適切な方式で相互に取り交わすことが必要になります。
基本的な流れは、追加依頼→見積条件の確認→見積書作成→内容・金額の協議→注文書・注文請書等による合意→着工、というように整理できます。注文書・注文請書を変更契約に用いる場合は、注文書と注文請書の双方に変更内容を記載し、それぞれの当事者が署名または記名押印して相互に交付するなど、建設業法第19条や国土交通省の取扱いに適合させることが大切です。基本契約書や基本約款を併用する場合は、個別の注文書・注文請書との関係や、どの条項が適用されるのかもあわせて確認します。
メール・チャット・写真・打合せ記録を補助資料として残す
メールやチャット、写真、図面、打合せ記録は、追加工事が発生した経緯や協議内容を確認するための補助資料として役立ちます。発注者からメールで依頼された場合はそのメールを保存し、施工箇所の写真や図面に範囲を示しておけば、何を追加したのかを把握しやすくなります。
ただし、通常のメールやチャットを保存するだけで、建設業法第19条第2項の書面交付義務を当然に満たすわけではありません。電子契約として処理する場合は、建設業法第19条第3項その他の関係法令・ガイドラインに適合する電磁的措置を利用することが必要です。「何を正式な契約書面として扱い、何を補助資料として保存するのか」を社内で決めておくと、担当者による判断のばらつきを減らせます。
現場と社内で認識をそろえる3段階の流れ
追加工事では、施工前に確認すべき事項を社内フローとして決めておくことが役立ちます。ここで紹介する「追加依頼→見積→確認→注文・承認→施工」という流れは、社内管理上の基本的な流れです。建設業法が適用される場合は、これに加えて、法定事項を記載した変更契約書面の作成、署名または記名押印、相互交付、または法令に適合した電子的手続きを行う必要があります。
依頼を受けた時点で、まず内容を確認する
追加作業を依頼されたら、まず「これは当初契約に含まれている作業なのか」を確認します。現場で依頼された場合でも、追加工事に該当するなら契約内容を変更する手続きが必要になることがあります。①当初契約の工事範囲を確認する、②追加・変更に該当するか判断する、③追加工事なら見積条件を整理する、④契約変更に必要な書面等を準備する、⑤必要な合意・交付を確認して着工する、という順番で進めると整理しやすくなります。
追加工事の数量等が施工前には確定できない場合には、限定的な取扱いがあります。その場合も、着工前に具体的な作業内容、契約変更の対象となること、変更契約を行う時期、契約単価などを確認し、確定後は遅滞なく変更契約を行います。
見積・変更内容を担当者と発注者側で確認する
追加工事として扱うことになったら、作業内容、金額、工期などを整理し、発注者側と確認する段階を設けます。担当者同士で確認したというだけでなく、社内担当者の確認と、発注者・受注者双方による契約変更の合意は分けて考えることが大切です。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 工事内容 | 何を追加・変更するか |
| 仕様・範囲 | どこまで施工するか |
| 金額 | 増額・減額後の金額と請負代金総額 |
| 工期 | 着手日・完成日への影響 |
| 支払条件 | 支払時期・支払方法 |
| 契約書面 | 変更契約書・注文書・注文請書等 |
| 承認・権限 | 契約変更を行う権限者の確認 |
記録を確認してから追加作業に着手する
追加工事は、必要な確認と契約変更手続きを終えてから着手することを基本にすると、あとから経緯が分からなくなる心配を減らせます。社内では、追加工事用のチェックリストを一枚用意するだけでも運用しやすくなります。
- 当初契約の範囲を確認した
- 追加・変更内容と見積条件を整理した
- 追加・変更金額と変更後の請負代金総額を確認した
- 工期への影響と契約権限者を確認した
- 必要な変更契約書面を整え、署名または記名押印・相互交付等を確認した
- 必要な補助資料を保存した
書類整備で気を付けたい4つのポイント
追加工事の書類整備では、「何を作るか」だけでなく「いつ作るか」も大切です。建設業法が適用される建設工事では、追加・変更工事について原則として着工前の書面による変更契約が必要とされています。
「いつものことだから」と口頭だけで進めてしまう場合
以前も同じように処理したという経験があっても、今回の工事の発注者、金額、作業範囲、工期などの条件が同じとは限りません。建設業法が適用される場合には、追加・変更契約について着工前の書面化が原則として必要ですので、口頭合意だけで施工することを日常的な進め方にはしないことをおすすめします。少なくとも、追加工事の内容、金額、工期、契約変更の当事者・権限者などを確認し、法令に適合する契約書面を整えることが安心につながります。なお、民法上の契約成立の問題と、建設業法上の書面交付義務は別の話であり、口頭での合意が意味を持たないわけではありません。重要なのは、建設業法上必要な書面化もあわせて行うことです。
担当者の了承と正式な承認を区別する
現場担当者から依頼された場合、その担当者が契約条件を変更する権限を持っているとは限りません。担当者が依頼した事実と、発注者法人として契約変更を承認したことは分けて考えます。社内では、誰が追加工事の依頼を受け、誰が見積を確認し、誰が契約変更を承認するのかをあらかじめ決めておくと、権限のない担当者による依頼を防ぎやすくなります。最終的には、契約当事者または適切な代理権限を有する者による契約変更の合意を、法令に適合した書面等で確認します。
書類は施工後にまとめてではなく、施工前に整える
建設業法第19条第2項が適用される場合、追加・変更工事については原則として着工前に変更内容を書面化し、必要な方式で相互に交付することが求められています。施工後にまとめて整理しようとすると、依頼日時、具体的な作業範囲、金額の合意過程、工期変更の有無などが曖昧になりやすい傾向があります。
追加工事の数量や内容を施工前に確定できず、その都度の変更契約が難しい場合には、着工前に具体的な作業内容、契約変更の対象となること、変更契約を行う時期、契約単価などを記載した書面を取り交わすという限定的な取扱いがあります。内容が確定した後は遅滞なく変更契約等を行います。災害その他やむを得ない事情により、通常の変更契約を着工前に締結できない場合も、可能な限り着工前に依頼内容、作業範囲、契約変更の対象となること、契約単価、変更契約を行う時期などを、書面または法令に適合した電磁的方法で確認し、内容が確定した時点で遅滞なく正式な変更契約を行うことが望まれます。
記録は実際の経緯と一致させる
書類が不足していた場合でも、実際には確認していない内容を後から作成したり、事実と異なる日付や承認状況を記載したりすることは避けたい対応です。記録が不足している場合は、不足している事実を明確にしたうえで、現在確認できる資料を整理します。メール、チャット、写真、図面、打合せ記録などが残っていれば、実際の経緯を確認するための補助資料として保存しましょう。大切なのは、実際の契約経緯と記録を一致させることです。追加依頼を受けた段階から施工前の確認手順を社内で定着させておくと、事後的な書類作成に頼らずに済みます。
認識違いを防ぎやすい会社の共通点
追加工事への対応を担当者の経験だけに任せるのではなく、会社として一定の手順を持つことが役立ちます。ただし、社内ルールは建設業法上の契約書面に代わるものではなく、法令上必要な契約書面を適切に整えたうえで、社内管理の仕組みを組み合わせることが基本です。
当初契約と変更後の内容を一覧で確認する
| 項目 | 当初契約 | 変更後 |
|---|---|---|
| 工事内容 | ○○工事 | ○○工事+追加作業 |
| 仕様・範囲 | ○○仕様 | ○○仕様+追加範囲 |
| 請負代金 | ○○円 | ○○円 |
| 工期 | ○月○日~○月○日 | ○月○日~○月○日 |
| その他条件 | - | ○○を追加 |
この一覧は、変更契約書を作成するための確認資料として役立ちますが、一覧そのものが建設業法上の変更契約書面になるとは限りません。法定事項を記載した契約書面は別途適切に整える必要があります。複数回の追加工事が発生する会社では、変更履歴を残し、現在の契約金額や承認済みの変更内容を追えるようにしておくと、現場と事務担当者の認識を合わせやすくなります。
現場担当者だけに任せず、社内で記録を共有する
追加工事に関する情報を現場担当者だけが持っている状態は、できるだけ避けたいところです。担当者が不在になった場合、追加工事の経緯、金額、工期、契約変更の状況などが分からなくなることがあります。見積書、注文書・注文請書、変更契約書などを案件ごとに管理し、必要な担当者が確認できるようにしておくと安心です。誰が見ても、追加工事の内容と契約変更の状況が分かる状態を作ることが目的であり、紙、Excel、メールなど、現在使っている手段でも運用できます。電子的な方法で契約書面を取り交わす場合には、単なるファイル保存やチャット履歴の保存ではなく、建設業法上の電子契約に関する要件を確認しましょう。
工事ごとに使える書式をあらかじめ整備する
追加工事が発生するたびにゼロから書類を作るのではなく、基本的な書式を整えておくと、現場での対応が安定します。追加工事の見積書、追加注文書・注文請書、変更契約書、確認チェックリスト、変更内容の管理表、添付図面・写真の管理欄などを準備しておくと便利です。ただし、契約形態、工事内容、発注者との関係、基本契約の有無などによって必要な書類や記載事項は変わりますので、まずは自社で頻繁に発生する追加工事のパターンを洗い出し、法令に適合する書式と、現場で使いやすい社内フローを整えていくことが現実的です。
着手前に整理し、必要であれば相談してみましょう
追加工事への対応で大切なのは、問題が起きてから書類を探すことではなく、施工前に変更内容と契約条件を整理しておくことです。特に、建設業法が適用される場合には、追加・変更工事について原則として着工前の書面化が必要になります。
自社の追加工事の書類運用を振り返ってみる
最近の工事を一つ取り上げ、「追加工事を頼まれてから施工するまでに、どのような確認と記録をしているか」を振り返ってみましょう。
- 追加工事と当初契約の範囲を区別できているか
- 見積条件と見積期間を適切に確保しているか
- 変更後の請負代金総額と消費税等の扱いを確認しているか
- 工期変更の有無、支払時期・方法を確認しているか
- 契約変更の権限者を確認しているか
- 変更契約書・注文書・注文請書等を適切に使っているか
- 署名または記名押印・相互交付等を確認しているか
- 電子契約を利用する場合に法令上の要件を確認しているか
- メール・チャット・写真・図面・打合せ記録を補助資料として整理しているか
一つでも気になる項目があれば、そこが自社の書類運用を見直すきっかけになります。追加工事が多い会社ほど、担当者の経験や記憶だけに頼らない仕組みが役立ちます。まず一つの案件で確認項目を整理し、使いやすい方法に整えてから社内へ広げると、無理なく運用を改善できます。
変更契約書・追加注文書の整備は専門家にも相談できます
追加工事が頻繁に発生する場合、自社の取引形態や工事内容に合わせて、変更契約書、追加注文書・注文請書、確認書、見積書などの書式と社内運用を整えておくと、現場での確認がしやすくなります。建設業法に準拠した変更契約書や追加注文書などの書式作成、社内の契約運用の構築については、建設業法や予防法務に詳しい行政書士などの専門家に相談する方法があります。行政書士は、建設業許可の手続だけでなく、当事者間に争いがなく合意内容が確定している場合の契約書その他の権利義務・事実証明に関する書類の作成や、書類作成に関する相談を取り扱っています。
変更契約書の書式を整えたい、追加注文書・注文請書の運用を見直したい、見積書と契約書の関係を整理したい、現場担当者が追加工事を受けた際の社内フローを作りたい、追加工事の記録を案件ごとに管理したいといった予防的な書類整備は、建設業務を継続的に行う会社にとって大切なテーマです。すでに当事者間で紛争となっている案件について、相手方との交渉、請求、和解その他の法律事務を行政書士が代理することは業務範囲を超える場合があり、その場合は弁護士等への相談が必要になります。だからこそ、契約内容が確定している段階で、自社の書類と運用を整えておくことが役立ちます。
- 現在使用している見積書・注文書・変更契約書の書式
- 過去に追加工事が発生した際のやり取り(メール・チャット等)
- 図面、仕様書、工程表
- 電子契約サービスを利用している場合はその概要
- 今後予定している工事の概要
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。
まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
個別の紛争について交渉や法的判断を依頼したい場合は、業務範囲に応じて弁護士等の専門家へご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件についての法的判断を示すものではありません。
追加工事の変更契約についてよくある質問
追加工事を口頭で依頼された場合、着工してもよいですか
民法上は合意によって契約が成立する場合がありますが、建設業法が適用される建設工事では、追加・変更工事について原則として着工前に変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することが必要です。まずは工事内容・金額・工期を整理してから着工することをおすすめします。
見積書を作成すれば、それだけで契約変更になりますか
見積書は工事内容・価格・条件を示す資料であり、見積書の提示だけで契約変更の合意が当然に成立するわけではありません。変更契約書や、適法な注文書・注文請書などによって、双方の合意を確認することが大切です。
追加工事の内容が施工前に確定できない場合はどうすればよいですか
数量などが着工前に確定できない場合でも、具体的な作業内容、契約変更の対象となること、変更契約を行う時期、契約単価などを記載した書面を着工前に取り交わし、内容が確定した後は遅滞なく変更契約の手続きを行うという考え方があります。
メールやチャットでのやり取りは契約書の代わりになりますか
メールやチャット、写真、打合せ記録は、依頼の経緯や協議内容を確認するための補助資料として役立ちます。ただし、通常の保存だけで建設業法上の書面交付義務を満たすとは限らず、電子契約として扱う場合は法令に適合した電磁的措置が必要です。
資料がそろっていない段階でも相談できますか
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
追加工事も、着工前に変更内容を見える形にしておきましょう
- 建設業法が適用される建設工事では、追加工事・変更工事によって当初契約の内容を変更する場合、原則として着工前に変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付します。
- 変更契約では、工事内容、追加・減額金額、変更後の請負代金総額、消費税等、支払条件、変更前後の工期、価格・資材納期の変動時における協議方法などを整理し、当初契約との関係を明確にします。
- 見積書は工事内容・価格・条件を示す見積資料であり、見積書だけで契約変更の合意が当然に成立するわけではありません。適法な注文書・注文請書や変更契約書、要件を満たす電子契約などによって合意を確認します。
- メール・チャット・写真・図面・打合せ記録は、依頼経緯や協議内容を確認する補助資料として保存します。
- 追加工事の無償施工や著しく低い代金、必要な工期を確保しないままの施工などについても注意が必要です。内容・金額・工期を適切に協議し、契約に反映させることが大切です。
書面を整えたからといって、すべての行き違いを防げるわけではありません。それでも、工事内容・金額・工期・支払条件を着工前に確認しておくことは、発注者と受注者が同じ前提で工事を進めるための土台になります。
制度の基本と最新の運用は、公的情報も併せてご確認ください。
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