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見守り契約業務 7-3

見守り契約の定期連絡設計
新人行政書士が一人で進める実務手順

電話、メール、LINE、ビデオ通話等の選び方から、頻度、質問、連絡不能時の段階対応、緊急連絡先、警察・消防との連携、契約書・記録簿までを実務順に解説します。

連絡手段頻度設計不応答対応個人情報記録・契約

最初に押さえる考え方

見守り契約の定期連絡は、決められた日に電話をかけるだけの業務ではありません。本人との接点を継続し、普段の状態と比較しながら生活・健康・判断状況の変化を把握し、必要に応じて家族、医療、介護、福祉、警察、消防等へつなぐ業務です。

契約は、一般に法律行為ではない事務を委託する民法第656条の準委任として設計します。受任者は、契約で定めた方法を善良な管理者の注意をもって実施しますが、本人の安全や異変の発見を保証するものではありません。

図解|定期連絡を機能させる五つの設計
本人に合う手段使い慣れた電話等を主手段とし、代替手段も決めます。
続けられる頻度孤立度、健康、支援者、費用を合わせて決めます。
確認する内容毎回の基本項目と、前回からの変化を確認します。
不応答時の手順再連絡、第三者連絡、訪問確認、通報の順序を決めます。
記録と見直し実施結果と判断理由を残し、本人の状態に合わせて改定します。
連絡不能時の対応を決めずに始めない「週1回電話する」だけでは、何回かけるか、誰へ連絡するか、いつ警察・消防へつなぐかが判断できません。契約前に段階、時刻、連絡先、情報共有範囲、費用を文書化します。

この記事で到達できること

選べる

本人の生活、身体状況、通信能力に応じて電話、メール、LINE、ビデオ通話、手紙等を選べます。

設計できる

頻度、曜日、時間帯、所要時間、確認内容、確認完了基準を具体化できます。

対応できる

連絡不能時に、再連絡から緊急連絡先、訪問確認、110番・119番まで段階的に判断できます。

書面化できる

契約書、実施計画書、同意書、緊急連絡先指定書、記録簿へ落とし込めます。

この業務が必要になる実務場面

おひとりさまの生活を継続的に確認する

  • 一人暮らしで、親族が遠方にいる。
  • 慢性疾患、転倒歴、救急搬送歴がある。
  • 外出や近隣交流が少ない。
  • 任意後見契約はあるが、まだ効力が生じていない。
  • 緊急連絡先を頼める人が少ない。

誰へ、いつ、どの情報を伝えるかを本人と決めます。民生委員や近隣住民は契約関係にない第三者であるため、連絡する場合も「予定された連絡が取れない」など必要最小限の事実にとどめます。

おふたりさま世帯の共倒れに備える

夫婦、兄弟姉妹、友人同士の二人暮らしでも、双方が高齢、一方が他方を介護、一方の入院で生活が成り立たない等の事情があります。世帯単位でなく、契約者ごとに本人確認と意思確認を行い、相手が代答しただけで確認完了としません。

任意後見・財産管理・死後事務と接続する

定期連絡は、本人の変化を客観的に蓄積する役割を持ちます。判断能力低下を行政書士が独断で確定するのではなく、本人、任意後見受任者、親族、医師等が次の対応を検討する材料として記録します。

本人宅で契約する

本人から訪問を求められた場合と、行政書士側から訪問・電話で勧誘した場合では契約経緯が異なります。訪問販売または電話勧誘販売等に該当する可能性がある場合は、適用除外を含め、法定書面やクーリング・オフ等を確認します。

基本知識

定期連絡の目的

目的 実務上の意味
安否確認 本人が所定の方法で応答できる状態かを確認します。
変化の把握 声、言葉、返信速度、生活状況を平常時と比較します。
早期の支援 医療、介護、福祉、消費者被害等の支援が必要な兆候を整理します。
関係者への接続 本人の同意と契約に基づき、必要な連絡先へつなぎます。
信頼関係の維持 本人が小さな困り事を相談できる関係を継続します。

定期連絡は監視ではない

本人が外出する、電話に出ない、予定を変えること自体を異常と決めつけません。本人には手段や頻度の変更、旅行・入院時の一時停止を申し出られることを説明します。

個人情報の基本個人データの第三者提供は、原則として本人の事前同意を得ます。ただし、本人の生命、身体または財産の保護のために必要があり、本人の同意を得ることが困難な場合は、個人情報保護法第27条第1項第2号に基づき、必要最小限の情報を提供できることがあります。危険の内容、同意取得が困難な理由、提供先、提供情報、対応結果を記録します。

連絡手段別の比較

手段 利点 注意点 確認完了の例
固定電話 操作に慣れた高齢者が多い 外出、留守番電話、着信拒否 本人と直接会話し基本項目を確認
携帯電話 外出先でもつながる 充電切れ、マナーモード、聴力 本人と直接会話
メール 都合のよい時間に返信できる 未読、迷惑メール、入力負担 所定項目を含む本人の返信
LINE等 短文で返信しやすい 既読だけでは安否を確認できない 合意済みの本人返信
ビデオ通話 表情や様子を確認しやすい 操作負担、通信、プライバシー 本人と会話し基本項目を確認
SMS アプリなしで短文を送れる 誤送信、詐欺メッセージとの混同 所定の本人返信
手紙 デジタル機器が不要 即時性がなく安否確認の主手段には不向き 本人の返信が到着

主手段と補助手段を決め、既読、開封済み、呼出し音だけでは原則として確認完了にしません。

外部クラウド・LINE等を使うとき

  • 誤送信防止、画面ロック、多要素認証、アクセス権限を確認する。
  • 保存期間、バックアップ、契約終了後の削除方法を決める。
  • 事業者によるデータ取扱い、国外保存の可能性、外国第三者提供への該当性を確認する。
  • 委託先のアクセス制御、暗号化、ログ管理等の安全管理措置を把握する。

国外サーバへ保存されることだけで直ちに外国第三者提供となるとは限りません。サービス事業者がデータを取り扱う構造や契約条件を確認し、判断が難しい場合は個人情報保護に詳しい専門家へ確認します。

通話録音

録音する場合は、目的、対象、利用範囲、聴取権限者、保存場所、保存期間、第三者提供、削除方法を明示し、原則として本人の事前同意を得ます。録音しない場合も、日時、本人の発言、観察事項、対応結果を記録します。

実務の進め方

図解|定期連絡設計フロー
  1. 本人確認を行い、本人自身から契約意思を確認します。
  2. 起床、通院、外出、介護サービス等の生活リズムを把握します。
  3. 孤立、健康、転倒、通信能力、支援者等のリスクを整理します。
  4. 主連絡手段と補助手段を実際に操作して確認します。
  5. 頻度、曜日、時間帯、標準所要時間を決めます。
  6. 毎回の基本確認項目と確認完了基準を決めます。
  7. 不応答時の再連絡、第三者連絡、訪問確認、通報基準を決めます。
  8. 情報共有、録音、外部サービス利用について同意を得ます。
  9. 契約書・実施計画書・同意書・記録簿を作成します。
  10. 約1か月の試行後、本人の負担と実効性を見直します。

本人確認と意思確認

親族が同席していても、本人自身の言葉で、目的、方法、費用、連絡不能時の対応、第三者連絡、変更・終了を理解しているか確認します。親族が回答を遮る、本人が委縮する場合は、可能な範囲で個別面談を設けます。

頻度の決め方

確認要素 頻度を高める方向の事情 調整できる事情
孤立度 一人暮らし、他者との接触が週1回未満 家族や支援者が日常的に訪問
健康 退院直後、転倒歴、状態変化 状態が安定し医療・介護支援がある
通信能力 操作忘れ、聴力・視力の負担 複数手段を自力で利用できる
緊急連絡先 全員遠方、対応できる人が少ない 近隣に訪問可能な連絡先がいる
継続性 見守り以外の接点が少ない 費用と事務所体制を含め無理なく継続できる
本人の状況 初期提案の例
生活が安定し、日常的な交流がある 月1~2回
一人暮らしで親族が遠方 週1回
転倒歴があり外出が少ない 週2回を含め検討
退院直後 一定期間、週2~3回を含め検討
急変リスクが高い 行政書士の連絡だけにせず医療・介護サービスを併用

これは医学的な安全基準ではありません。行政書士が疾患の危険度を判断せず、必要に応じて本人の同意を得て医師、訪問看護師、ケアマネジャー等と調整します。

曜日・時間帯・所要時間

「毎週1回」ではなく、「毎週水曜日の午前10時から10時30分までの間」のように設定します。通院、デイサービス、買物、昼寝等と重ならない時間を選び、祝日、年末年始、担当者不在、本人の外出時の扱いも決めます。

標準所要時間は5~15分程度を目安とし、個別手続の相談が長くなる場合は別の面談を設定します。会話時間の急な変化自体が本人の状態を知る材料になることもあります。

毎回確認する内容

  • 本人自身が応答しているか。
  • 今日の体調、食事、水分、転倒・けが。
  • 通院、服薬について困り事がないか。
  • 買物、家事、支払い等の生活上の困り事。
  • 不審な電話、訪問、請求、購入がないか。
  • 前回から変わったこと、次回までに相談したいこと。

安否確認項目の詳細は第7-5回で扱います。

本人の負担を抑える

  • 質問票を尋問のように読み上げない。
  • 本人が寝ている時間や介護サービス中を避ける。
  • ビデオ通話や録音を本人へ無理に求めない。
  • 一度の不応答で多数の第三者へ連絡しない。
  • 本人の回答や生活上の選択を非難しない。
  • 変更希望を定期的に確認する。

ヒアリング項目

本人・生活

  • 氏名、生年月日、住所、連絡先
  • 一人暮らし・同居者
  • 起床、就寝、通院、外出
  • 介護・配食等の利用日
  • 親族・近隣との交流
  • ペットの有無

健康・支援

  • 持病、服薬、転倒、搬送歴
  • かかりつけ医、訪問看護
  • 介護認定、ケアマネジャー
  • 過去の連絡不能
  • 虐待・搾取・孤立の兆候
  • セルフネグレクトの兆候

通信

  • 固定・携帯電話の操作
  • 着信音と聴力
  • メール・LINE・SMS
  • 端末の共用
  • 充電・通信障害
  • 代替手段

連絡条件

  • 頻度、曜日、時間帯
  • 標準所要時間
  • 祝日・休業日
  • 旅行・入院時の停止
  • 再連絡回数・間隔
  • 返信期限

第三者連絡

  • 連絡先の順位
  • 提供してよい情報
  • 管理会社・民生委員等
  • 訪問可能な人
  • 鍵の保管者
  • 警察・消防への移行基準

録音・データ

  • 録音の有無と目的
  • 保存期間・利用範囲
  • クラウド利用
  • 国外保存の可能性
  • アクセス権限
  • 終了後の削除

おふたりさまの追加確認

  • 二人とも契約者か、一人だけか。
  • 相互に共有してよい情報は何か。
  • 一方が他方を代弁していないか。
  • 一方の入院・死亡時に残る人を誰へつなぐか。
  • 家計管理・介護を一方へ集中させていないか。

判断フロー

図解|連絡不能時の段階別対応
  1. 旅行、通院、入院、時間変更等の事前連絡を確認します。
  2. 予定時刻に主連絡手段へ連絡し、結果を記録します。
  3. 合意した間隔を空けて再連絡します。
  4. 携帯電話、SMS、LINE等の補助手段へ移ります。
  5. 所定の返信期限までに再度確認します。
  6. 基準に達したら、指定された緊急連絡先へ必要最小限の情報を伝えます。
  7. 所在不明や異変情報が重なる場合は、外部からの訪問確認を検討します。
  8. 生命・身体の危険が具体的に疑われる場合は、回数を待たず110番・119番へ連絡します。
  9. 室内確認は親族・管理会社の立会い、または警察・消防の臨場・指示のもとで行います。

緊急連絡先へ移る基準

基準
回数 同一日に主手段へ3回、補助手段にも応答がない。
時間 予定時刻から2時間、または午後3時まで返信がない。
反復 予定どおりの不応答が短期間に繰り返される。
事情 退院直後、前回の発熱・転倒、意味不明な返信、虐待・財産被害等がある。

110番・119番を検討する事情

  • 助けを求める声、うめき声、転倒音等がある。
  • 呼びかけに応答がなく、直前に重い体調不良を訴えていた。
  • 外から倒れている姿が確認できる。
  • 煙、火災、ガス臭、異常な水漏れがある。
  • 自傷・他害、犯罪、暴力、侵入が具体的に疑われる。

急病・負傷・救急搬送が必要と考えられる場合は119番、事件・事故や警察による安否確認が必要な場合は110番を検討します。

行政書士単独の解錠・立入りは行わない本人の事前同意や鍵の預託契約があっても、行政書士には警察官・消防隊員のような強制的な緊急立入り権限はありません。単独立入りは、本人の現在意思、住居侵入等の問題、貴重品紛失、現場保存、親族間紛争、安全確保の面で大きなリスクがあります。鍵を持つ親族・管理会社の立会いを求めるか、生命・身体の危険が強く疑われる場合は警察・消防へ通報し、その臨場・指示のもとで確認します。

作成・確認する書類

書類 主な記載事項
見守り契約書 準委任、善管注意義務、業務範囲、頻度、費用、結果保証の否定、単独立入り禁止、終了。
定期連絡実施計画書 主・補助手段、曜日、時間、完了基準、再連絡、第三者連絡、訪問・通報基準。
緊急連絡先指定書 氏名、関係、順位、対応時間、訪問可否、鍵、提供可能情報、本人・連絡先の了承。
個人情報・第三者提供同意書 取得情報、目的、提供先、条件、緊急時例外、外部サービス、保存・削除。
通話録音同意書 目的、対象、利用範囲、権限者、保存場所・期間、第三者提供、削除。
本人情報シート 生活リズム、平常時の声・会話、通院、支援者、配慮事項、通常の返信速度。
定期連絡記録簿 日時、手段、応答者、発言、観察事実、前回比較、対応、連絡先、判断理由、次回。

契約書へ盛り込む事項

  • 民法第656条の準委任としての位置付け
  • 善良な管理者の注意をもって行うこと
  • 連絡方法、頻度、曜日、時間帯
  • 不応答時の段階別対応
  • 第三者提供と緊急時例外
  • 110番・119番への連絡
  • 単独解錠・立入りを行わないこと
  • 医療・介護判断を行わないこと
  • 常時監視・結果保証ではないこと
  • 記録・録音・クラウド利用
  • 通常報酬、再連絡・訪問・緊急対応費
  • 変更、解除、入院・転居・死亡時の終了

契約書条項の詳細は第7-11回で扱います。契約方法が訪問販売・電話勧誘販売等に該当する可能性がある場合は、法定書面、クーリング・オフ等も確認します。

連絡記録の項目例

  • 予定時刻、各発信時刻、連絡手段、発信先。
  • 応答者と本人確認結果、開始・終了時刻、録音の有無。
  • 体調、食事、水分、転倒、通院、服薬、生活上の困り事。
  • 声・話し方・返信内容の変化、前回との相違。
  • 再連絡、緊急連絡先、警察・消防、訪問確認の有無。
  • 提供した情報、緊急時例外を用いた理由、立会者・指示内容。
  • 次回予定、継続確認事項、記録作成者・確認者。
避けたい記録 確認可能な記録
認知症が悪化した 約5分間に同じ質問を3回繰り返し、本日の日付を「先週」と回答した。
体調が悪そう 本人は「昨日から食事を取っていない」と述べ、発話途中に息継ぎが増えた。
連絡がつかなかった 10時、10時15分、10時30分に固定電話へ発信し、いずれも呼出し後応答なし。

文例・記載例

定期連絡の開始

こんにちは。○○行政書士事務所の○○です。今日は定期連絡の日です。今、5分ほどお話ししても大丈夫ですか。念のため、○○様ご本人でいらっしゃることを確認させてください。

基本質問

今日の体調はいかがですか。食事や水分は普段どおり取れていますか。転んだり、けがをしたりしたことはありませんか。お薬や通院、買物、家事、支払いなどで困っていることはありませんか。最近、知らない人からの電話や訪問、不審な請求はありませんでしたか。

留守番電話

○○様、○○行政書士事務所の○○です。本日は定期連絡日でしたのでお電話しました。お急ぎでなければ、本日正午までに折り返しをお願いいたします。電話番号は○○です。

病名、財産状況、詳しい契約内容等は残しません。

SMS・LINE

○○行政書士事務所の○○です。本日の定期連絡でお電話しました。お変わりなければ「元気です」とご返信ください。ご都合のよい時間にお電話いただいても構いません。

緊急連絡先

○○行政書士事務所の○○です。○○様の見守り契約に基づきご連絡しています。本日、予定していた定期連絡について、固定電話および携帯電話へ複数回連絡しましたが、午後3時現在、応答がありません。外出や通院などの予定をご存じでしょうか。

「鍵を開けて入ってほしい」と依頼されても、行政書士単独では解錠・立入りを行いません。鍵を所持する親族・管理会社の立会いを求めるか、生命・身体の危険が強く疑われる場合は110番または119番へ通報し、警察官・消防隊員の臨場・指示のもとで確認します。

実施計画書

主連絡手段は本人の固定電話とし、毎週水曜日の午前10時から10時30分までの間に受任者から連絡する。固定電話に応答がない場合は15分後に再連絡し、その後、本人の携帯電話へ連絡する。いずれにも応答がない場合はSMSを送信し、同日正午までの返信を求める。午後3時まで連絡が取れない場合は第1順位の緊急連絡先へ連絡する。ただし、生命または身体の危険が具体的に疑われる場合は、前記の時刻または回数を待たず警察または消防へ連絡することがある。受任者は単独で本人宅を解錠し、室内へ立ち入らない。

業務範囲・責任

本契約は、民法第656条に定める準委任契約として、本人との会話または通信を通じて生活状況等を確認し、必要に応じて関係者へ連絡することを目的とする。受任者は、善良な管理者の注意をもって業務を行う。本業務は、本人の生命・身体の安全を常時監視し、異変の発生防止または発見を保証するものではない。受任者は、医療上の診断、介護上の専門判断、身体介護、救命行為その他資格を要する行為を行わず、連絡不能時であっても原則として単独で本人宅を解錠し、室内へ立ち入らない。

第三者提供

本人は、所定の方法によっても連絡が取れない場合、受任者が指定された緊急連絡先、介護支援専門員、地域包括支援センターその他別紙記載の関係者へ、安否確認に必要な最小限の情報を提供することに同意する。ただし、本人の生命、身体または財産の保護のために必要があり、本人の同意を得ることが困難な場合には、受任者は法令に基づき必要最小限の情報を関係機関等へ提供できる。

通話録音

本人は、定期連絡の実施状況、本人の意思および受任者の対応内容を正確に確認する目的で、受任者が通話を録音することに同意する。録音データは契約履行、苦情・事故対応および合意内容の確認に限って利用し、権限を付与された者以外へ開示しない。保存期間は○年間とし、期間経過後は法令または紛争対応上必要な場合を除き安全な方法で消去する。

他士業・関係機関との連携

連携先 主な場面 行政書士が整理すること
弁護士 親族紛争、虐待、財産搾取、立入り・鍵、交渉、特商法・個人情報の疑義 本人意思、契約、経過、証拠、関係者
司法書士 成年後見申立て、不動産登記等 本人・親族・財産関係、必要資料
医師・訪問看護師 急な会話変化、体調不良、服薬、転倒、退院直後 診断せず、本人発言と観察事実
ケアマネジャー サービス欠席、生活機能低下、見守り頻度の見直し 記録、本人同意、必要な支援
地域包括・市町村 孤立、生活機能低下、虐待、セルフネグレクト、消費者被害 本人意思、危険、支援者、経過
民生委員・管理会社 外出予定や外部状況の確認 契約外の第三者として情報を最小限に限定
警察・消防 切迫した生命・身体の危険、事件・事故、安否確認 住所、最終連絡、異音・異臭等の具体的事実

高齢者虐待・セルフネグレクト

虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、市町村への通報の要否を検討します。生命または身体に重大な危険が生じている場合は通報義務が問題となり、それ以外の場合も通報に努めることとされています。本人から「言わないでほしい」と言われても、危険性と法令上の扱いを確認します。

セルフネグレクトは高齢者虐待防止法の直接の対象ではありませんが、生命・身体に重大な危険が生じることがあります。地域包括支援センター、市町村、医療・福祉機関等へ相談し、本人の意思を尊重しながら支援方法を検討します。

民生委員・近隣住民への情報

契約関係にない第三者であるため、可能な限り匿名化し、個人を特定する必要がある場合も「予定された連絡が取れない」「外出予定を知っているか」等に限定します。病名、財産、家族関係、契約内容を当然には伝えません。

相談内容がまとまっていなくても大丈夫ですまず現在の状況を伺い、本人の希望、生活状況、連絡方法、緊急連絡先、既存契約を一緒に整理します。行政書士の業務範囲を超える判断が必要な場合は、適切な専門家や関係機関へつなぎます。

新人が気をつけたい点

確認が不足しやすい点 整える対応
「週1回電話」とだけ定める 曜日、時間、回数、間隔、補助手段、期限、第三者連絡、通報まで具体化します。
既読を安否確認完了とする 本人から所定の返信を得る等、手段ごとの完了基準を決めます。
一度の不応答で多数へ連絡する 生活リズムと危険情報を踏まえ、合意した段階で進めます。
緊急連絡先へ全情報を伝える 本人同意の範囲で必要最小限とし、緊急時例外も理由を記録します。
親族の指示を本人より優先する 報酬負担者と契約者を区別し、本人の意思・利益を中心にします。
認知症等を行政書士が診断する 発言、反復回数、時間、前回との違いを記録し、医療へつなぎます。
本人同意があれば単独入室できると考える 同意・鍵預託があっても単独解錠を行わず、立会いまたは公的機関の臨場を求めます。
緊急時にも情報提供できないと考える 生命・身体・財産保護の例外を理解し、必要性と提供内容を記録します。
虐待とセルフネグレクトを同じ根拠で扱う 法的位置付けを区別しつつ、いずれも放置せず関係機関へ相談します。
本人へ知らせず恒常的に録音する 目的、範囲、保存等を示し、事前同意を基本とします。
一人の担当者しか運用を知らない 代替担当、記録共有、休業時の対応、アクセス権限を決めます。

トラブル予防策

本人の同意を確認する事項

  • 使用する電話番号、メール、LINE等。
  • 留守番電話、SMS、通信履歴、会話記録。
  • 通話録音の目的、利用範囲、保存期間。
  • 緊急連絡先へ連絡する条件と提供情報。
  • ケアマネジャー、地域包括、管理会社等への連絡条件。
  • 訪問確認、警察・消防への通報条件。
  • 行政書士が単独解錠・立入りを行わないこと。
  • 外部クラウド、保存、削除、同意撤回。
  • 再連絡、訪問、緊急対応の追加費用。

緊急連絡先本人へ確認する事項

  • 指定を承知しているか、連絡先は正しいか。
  • 対応可能な曜日・時間、訪問可能性。
  • 鍵の保管状況、対応できない場合の代替者。
  • 行政書士から届く情報の範囲。

情報提供範囲を相手ごとに分ける

提供先 安否 健康 財産 生活情報
親族 同意範囲 同意範囲 原則提供しない 同意範囲
ケアマネジャー 支援に必要な範囲 原則提供しない 支援に必要な範囲
管理会社 連絡不能等 原則提供しない 提供しない 原則提供しない
民生委員・近隣 必要最小限 原則提供しない 提供しない 必要最小限
警察・消防 緊急対応に必要な範囲 必要な範囲 原則提供しない 必要な範囲

事務所内の解錠・現場対応ルール

  1. 行政書士単独の解錠・立入りを禁止します。
  2. 現場へ向かう前に責任者または代替担当へ共有します。
  3. 生命・身体の危険が疑われる場合は110番・119番へ連絡します。
  4. 親族・管理会社等の立会い、警察・消防の臨場を求めます。
  5. 室内の現金、通帳、印鑑、貴重品等へ独断で触れません。
  6. 死亡が疑われる場合は現場を乱さず、警察等へ任せます。
  7. 時刻、立会者、状況、指示、対応を記録します。

月次レビュー

  • 不応答が増えていないか。
  • 会話時間、質問の反復、返信速度が変化していないか。
  • 体調不良、金銭トラブル、孤立の兆候が続いていないか。
  • 頻度・時間・手段が本人に合っているか。
  • 緊急連絡先や支援者に変更がないか。
  • 録音・通信データを必要以上に保存していないか。

ケーススタディ

週1回電話・2回連続で予定どおり応答がない

82歳のAさんは一人暮らしです。長女は遠方、第2順位の緊急連絡先である甥は近隣に住んでいます。毎週水曜日午前10時に固定電話へ連絡し、補助手段は携帯電話とSMSです。

前週は予定時刻に応答がなく、翌日に「買物に行っていた」と返信がありました。今週も10時、10時15分、10時30分の固定電話、携帯電話、SMSに応答がありません。

進め方

  1. 旅行、通院、入院、時間変更の事前連絡を確認します。
  2. 契約どおり固定電話、携帯電話、SMSへ連絡し、時刻と結果を記録します。
  3. 前回記録を確認し、体調不良、転倒、服薬等の懸念がなかったか確認します。
  4. 特段の危険情報がなければ、正午、午後2時等、合意した時刻に再連絡します。
  5. 午後3時まで応答がなければ、長女へ外出・通院予定を照会します。
  6. 長女が把握していなければ、本人の同意と計画書に基づき甥へ連絡します。
  7. 甥には、まず外から呼び鈴、呼びかけ、照明、郵便物、異音・異臭等を確認してもらいます。
  8. うめき声、転倒音、ガス臭、倒れている姿等があれば110番・119番へ連絡します。
  9. 行政書士が鍵を預かっていても単独で解錠せず、親族・管理会社の立会いまたは警察・消防の臨場を求めます。
  10. 本人と連絡が取れた後、曜日・時間、事前メッセージ、甥への連絡時刻を見直します。

記録例

午前10時:固定電話へ発信。呼出し音あり、応答なし。
午前10時15分:固定電話へ再発信。応答なし。
午前10時30分:固定・携帯電話へ発信。応答なし。
午前10時35分:SMS送信。正午までの返信を依頼。
午後2時:固定・携帯電話へ再発信。応答なし。
午後3時:第1順位の長女へ連絡。外出予定は把握していないとの回答。
午後3時10分:第2順位の甥へ連絡。外部確認を依頼。
午後3時45分:甥から、呼びかけに応答がなく室内から物が倒れるような音が聞こえたとの連絡。
午後3時47分:生命・身体の危険が疑われたため119番通報。行政書士単独の解錠・立入りは行わなかった。

この事例のポイント「2回連続」を、次の週まで待つ基準にはしません。本人の通常状態、前回の情報、当日の再連絡、緊急連絡先の確認を重ね、具体的な危険情報があれば回数・時刻を待たず公的機関へつなぎます。

実務チェックリスト|定期連絡設計確認

本人・契約

  • 本人確認を行った
  • 本人と直接面談した
  • 目的・費用・限界を説明した
  • 利益相反を確認した
  • 契約経緯と特商法を検討した

生活・リスク

  • 生活リズムを確認した
  • 通院・介護日を確認した
  • 孤立・転倒等を確認した
  • 他の支援者を確認した
  • おふたりさま双方を確認した

連絡手段

  • 主・補助手段を決めた
  • 本人が操作できた
  • 端末共用を確認した
  • 確認完了基準を決めた
  • 通信障害時を決めた

頻度・時間

  • 頻度と理由を記録した
  • 曜日・時間帯を決めた
  • 所要時間を決めた
  • 祝日・休業日を決めた
  • 停止・再開方法を決めた

不応答

  • 回数・間隔を決めた
  • 返信期限を決めた
  • 第三者連絡基準を決めた
  • 訪問確認基準を決めた
  • 110番・119番基準を決めた

鍵・立入り

  • 鍵の保管者を確認した
  • 単独解錠禁止を説明した
  • 立会い原則を定めた
  • 公的機関への移行を定めた
  • 現場記録ルールを定めた

個人情報

  • 提供先・条件を定めた
  • 緊急時例外を説明した
  • 情報を最小限にした
  • クラウド安全管理を確認した
  • 保存・削除を決めた

録音・書類

  • 録音の有無を決めた
  • 事前同意を得た
  • 契約書を作成した
  • 実施計画書を作成した
  • 記録簿を準備した

確認テスト

問題1
「毎週1回電話する」だけでは、何が不足していますか。
曜日、時間帯、再連絡回数・間隔、補助手段、返信期限、第三者連絡、訪問確認、警察・消防への移行、追加費用等です。
問題2
LINEが既読になれば確認完了ですか。
原則として完了ではありません。本人が読んだ保証や安全の確認にならないため、合意した本人返信等を完了基準にします。
問題3
緊急連絡先へ本人の病歴や財産をすべて伝えてよいですか。
本人同意の範囲で、安否確認に必要な最小限へ限定します。緊急時例外を利用する場合も必要性と提供内容を記録します。
問題4
本人が「今日は話したくない」と言った場合はどうしますか。
意思を尊重しつつ、本人自身の応答と緊急の困り事がないことを最低限確認し、声の状態、発言、終了理由を記録します。
問題5
合鍵と事前同意があれば、行政書士単独で入室できますか。
原則として単独入室しません。同意や鍵預託だけで常に適法・安全になるわけではなく、親族・管理会社の立会い、または警察・消防の臨場・指示のもとで確認します。
問題6
室内から転倒音と助けを求める声がした場合、所定回数まで待ちますか。
待ちません。生命・身体の危険が具体的に疑われるため、119番または110番へ直ちに連絡します。
問題7
緊急時にも本人同意なしの情報提供は一切できませんか。
生命、身体または財産の保護に必要で、本人同意を得ることが困難な場合は、個人情報保護法上の例外により必要最小限の提供が可能なことがあります。
問題8
通話を恒常的に録音する場合、何を整えますか。
目的、対象、利用範囲、聴取権限者、保存場所・期間、第三者提供、削除方法を説明し、原則として事前同意を得ます。
問題9
セルフネグレクトは高齢者虐待防止法上の虐待ですか。
直接の対象ではありません。ただし重大な危険につながることがあるため、地域包括支援センター、市町村、医療・福祉機関等へ相談します。
問題10
「認知症が進んだ」と記録してよいですか。
診断的に断定せず、同じ質問の回数、発言、日時認識、前回との差等の観察事実を記録し、必要に応じて医療・介護職へつなぎます。

次回への接続

次回の第7-4回では、定期訪問が必要となる場面、訪問頻度、日時調整、確認範囲、居宅内へ入る場合の同意と限界、同行者・立会者、訪問記録、不在時対応、費用を扱います。

安否確認項目の詳細は第7-5回、記録簿は第7-6回、異変発見時の緊急対応は第7-7回、緊急連絡先との連携は第7-8回、任意後見発動の判断材料は第7-10回、契約書条項は第7-11回で扱います。

HANAWA行政書士事務所にご相談ください相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、本人の希望、生活状況、連絡方法、緊急連絡先、既存契約など、確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的制度、所属行政書士会の規則、地域・関係機関の運用を確認してください。

公的情報

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本人の意思を尊重し、継続的な確認と適切な連携を大切にします。

あわせて確認したいこと

相続・遺言・終活の手続きを確認したい方へ

相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

相続、遺言、任意後見、死後事務委任などをまとめて考えたい場合は、家族構成や財産、必要な手続きを整理するところから相談できます。

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