見守り契約とは?
新人行政書士が一人で進める実務手順
おひとりさま・おふたりさまの生活状況や健康状態の変化を継続的に確認し、必要な支援へつなぐ見守り契約について、相談受付、受任判断、契約設計、継続運用までを実務順に解説します。
最初に押さえる考え方
見守り契約は、本人を監視する契約ではありません。定期的な電話、訪問、オンライン面談等によって本人との接点を保ち、生活状況、健康状態、連絡状況、判断能力等の変化を早めに把握し、必要な支援へつなぐ契約です。
行政書士の役割は、本人の自己決定を尊重しながら、契約で定めた範囲の確認、記録、連絡を継続することです。預金管理、施設契約の代理、医療同意、身元保証、死後事務等が必要になった場合は、別の契約や制度、関係専門職との連携を検討します。
この記事で到達できること
説明できる
見守り契約の目的、業務内容、他契約との違いを本人や家族へ分かりやすく説明できます。
受任判断できる
本人の意思、判断能力、緊急性、利益相反、事務所体制を確認して受任可否を整理できます。
設計できる
連絡方法、訪問、連絡不能時の対応、情報共有、報酬等の基本項目を設計できます。
つなげられる
財産管理、任意後見、死後事務、医療・介護・福祉への接続時期を判断できます。
この業務が必要になる実務場面
一人暮らしで近くに頼れる人がいない
- 配偶者と死別または離婚している。
- 子がいない、または子や兄弟姉妹が遠方にいる。
- 近所付き合いが少なく、急病時の発見に不安がある。
- 郵便物、支払い、通院等の変化を確認する人がいない。
高齢者二人だけで暮らしている
- 夫婦、事実婚のパートナー、兄弟姉妹等の二人暮らしである。
- 一方が他方の介護や家計管理を担っている。
- 一方の入院や死亡によって、他方の生活も成り立ちにくくなる。
- 二人とも体調に不安があり、外部への相談が遅れやすい。
二人暮らしであっても、支援能力が十分とは限りません。契約当事者が二人の場合は、それぞれについて本人確認と意思確認を行います。
任意後見契約の効力発生前を支える
任意後見契約は、本人の判断能力が低下しただけで自動的に効力が生じるものではなく、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。見守り契約は、任意後見開始前の期間に本人の変化を把握する仕組みとして活用できます。
財産管理や死後事務へつなげる
現在は本人が財産管理を行えていても、支払い忘れ等が増えれば財産管理等委任契約を検討することがあります。また、死後事務委任契約を締結していても、生前の連絡体制がなければ入院や死亡を把握できません。見守り契約は、各契約を実際に機能させる情報把握の基盤になります。
基本知識
見守り契約の実務上の定義
本人と受任者との間で、生活状況、健康状態、連絡状況、判断能力の変化等を定期的に確認し、異変が認められた場合に、あらかじめ定めた連絡先や関係機関へ連絡する継続的な契約です。一般には、当事者の合意に基づく準委任契約として構成します。
主な業務
| 業務 | 概要 | 主な確認対象 |
|---|---|---|
| 定期連絡 | 電話、メール、オンライン面談等 | 応答、会話、体調、通院、困り事、不審な請求等 |
| 定期訪問 | 自宅、施設等での対面確認 | 身だしなみ、歩行、室内、郵便物、食品、契約書類等 |
| 安否確認 | 重大な危険がないかを確認 | 連絡不能、急病、転倒、行方不明等 |
| 生活状況確認 | 日常生活の変化を把握 | 食事、服薬、通院、支払い、ごみ出し、ペット等 |
| 連絡・接続 | 本人の同意や契約に基づく連携 | 親族、医療、介護、福祉、任意後見受任者等 |
定期連絡の具体的な頻度は第7-3回、訪問内容は第7-4回、安否確認項目は第7-5回、異変時の詳細対応は第7-7回で扱います。
見守り契約だけで予定しない業務
見守り契約は、確認、記録、連絡、支援への接続を中心とします。次の業務が必要な場合は、別の契約や制度を検討します。
- 預金の払戻し、通帳・印鑑・キャッシュカードの管理
- 公共料金、施設費等の代理支払い
- 施設入所契約、賃貸借契約解除、不動産売却等の代理
- 手術、治療、延命措置等への医療同意
- 本人の意思に反する入院・入所や行動制限
- 本人死亡後の葬儀、納骨、住居明渡し等
身元保証人や連帯保証人になることが法律上常に一律禁止されているとは限りませんが、広範な経済的責任と利益相反の可能性を伴います。見守り受任者が同時に引き受けることは通常避け、施設が必要とする機能を整理して代替手段を検討します。
本人宅への立入りも当然に認められるものではありません。本人の事前同意、契約上その他の適法な根拠と必要性を確認します。生命・身体への切迫した危険が疑われる場合は、行政書士が単独で判断して立ち入るのではなく、警察、消防、管理会社等と連携します。
任意後見・財産管理・死後事務との比較
| 項目 | 見守り契約 | 財産管理等委任契約 | 任意後見契約 | 死後事務委任契約 |
|---|---|---|---|---|
| 目的 | 状態確認と早期発見 | 判断能力がある間の財産・生活事務支援 | 判断能力低下後の財産管理・身上保護事務 | 死亡後の事務処理 |
| 主な時期 | 契約後から終了まで | 本人が委任内容を理解できる間 | 任意後見監督人選任後 | 本人死亡後 |
| 代理権 | 通常は付与しない | 契約で定めた範囲 | 契約・登記された範囲 | 委任した死後事務の範囲 |
| 財産管理 | 原則として行わない | 契約範囲で行う | 契約範囲で行う | 死後事務に必要な範囲 |
| 医療同意 | 権限は生じない | 当然には生じない | 当然には生じない | 対象外 |
| 家庭裁判所 | 原則関与なし | 原則関与なし | 監督人を選任 | 原則関与なし |
| 本人死亡後 | 原則終了 | 原則終了 | 終了 | 業務開始 |
任意後見への接続
- 本人の判断能力が十分な間に任意後見契約を締結します。
- 見守り契約により定期連絡・訪問を続けます。
- 生活状況や判断能力の変化を客観的に記録します。
- 一時的な体調不良か、継続的な変化かを確認します。
- 本人、任意後見受任者、親族、医師等と情報を整理します。
- 申立権者が任意後見監督人選任申立ての要否を検討します。
- 家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると契約が開始します。
見守り担当者は、本人、任意後見受任者、親族等が申立ての要否を判断するための情報を蓄積します。行政書士が医学的に「認知症である」と断定したり、独断で開始時期を決めたりするものではありません。
実務の進め方
- 相談者、本人、紹介者の関係と緊急性を確認します。
- 本人確認を行い、本人との個別面談で契約意思を確認します。
- 生活、健康、判断能力、支援者、既存契約を把握します。
- 見守り契約で対応する範囲と他契約・他機関へつなぐ範囲を整理します。
- 利益相反、安全面、事務所の継続体制を確認して受任判断します。
- 連絡方法、訪問、情報共有、不応答時対応、報酬等を設計します。
- 契約書、説明書、同意書等を作成し、再度意思確認して締結します。
- 初回日程と平常時情報を登録し、定期連絡・訪問を開始します。
- 毎回記録し、異変時は契約に従って関係者・関係機関へつなぎます。
- 状態変化に応じて契約を見直し、終了時は引継ぎと報告を行います。
相談受付と緊急性の確認
- 相談者と本人の氏名・関係
- 本人の居住地と居住形態
- 本人と現在連絡が取れているか
- 本人自身が契約を希望しているか
- 判断能力について気になる事情があるか
- 医療・介護サービスと既存契約の有無
室内で倒れている可能性、通常と異なる長期の連絡不能、自傷・虐待・行方不明、火災・ガス漏れ、急病等が疑われる場合は、契約相談より119番、110番、地域包括支援センター、管理会社、親族等への連絡を優先します。
本人確認
見守り契約では生活情報や健康情報を継続的に扱います。本人確認を丁寧に行う一方、本籍等を含む必要以上の個人情報は取得しません。
| 区分 | 書類例 | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 顔写真付き | マイナンバーカード表面、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、在留カード等 | 有効期限、氏名、生年月日、住所、本人の顔を確認 |
| 顔写真なし | 資格確認書、介護保険被保険者証、基礎年金番号通知書、住民票等 | 原則として複数書類、本人宅面談等で追加確認 |
| 補助資料 | 資格情報のお知らせ、住所宛て郵便物等 | 単体で本人確認を完結せず、他書類を補助 |
2024年12月2日に従来の健康保険証の新規発行は終了し、従来の保険証は遅くとも2025年12月1日までに有効期限を満了しています。現在は、マイナ保険証を利用できない方等に資格確認書が交付され、マイナ保険証保有者には資格情報のお知らせが交付される場合があります。交付対象や運用は、契約時点の厚生労働省・保険者の案内を確認します。
確認情報は、氏名、生年月日、現住所、実際の居住場所、電話番号、郵便物送付先、緊急連絡先を基本とします。本籍や戸籍上の情報は、任意後見、遺言、死後事務等を併せて受任するなど、業務上必要な場合に限って取得します。
本人の意思確認
家族や施設から紹介された場合も、契約者本人の意思を直接確認します。可能な限り本人だけで話す時間を設け、本人自身の言葉で希望を説明してもらいます。
- 「今回、行政書士に何を頼みたいと考えていますか」
- 「電話や訪問を受けることを希望しますか」
- 「連絡が取れない場合、誰に連絡してよいですか」
- 「家族へ、どの情報まで伝えてよいですか」
- 「毎月の費用と解約方法をどのように理解していますか」
- 「財産管理や医療同意は別の支援になることをご理解いただけますか」
契約目的を説明できない、本人が明確に拒否している、家族が個別面談を拒む、意思表示が短時間で大きく変動するなどの場合は、受任を急がず追加面談や専門職連携を検討します。
受任判断
| 確認区分 | 受任に向けて確認する状態 | 追加整理が必要な場面 |
|---|---|---|
| 本人意思 | 本人が目的・費用・情報共有を理解し希望している | 家族の意向だけで進んでいる |
| 業務範囲 | 確認・記録・連絡を中心に設計できる | 24時間監視、介護、医療判断等が中心 |
| 安全 | 訪問時の安全と緊急時の連絡先が確保できる | 暴力、危険な住環境等がある |
| 利益相反 | 本人の利益を中心に対応できる | 家族間紛争、財産受領、保証兼務等がある |
| 継続体制 | 代替担当者と記録共有体制がある | 一人の担当者しか対応できない |
契約内容の基本設計
- 契約の目的
- 定期連絡の方法と通常日時
- 定期訪問の有無
- 応答がない場合の再連絡方法
- 緊急連絡先と連絡順序
- 関係機関へ連絡する条件
- 情報共有の目的・相手・範囲
- 自宅訪問、鍵預託、立入りの条件
- 記録・報告方法
- 報酬、実費、緊急対応費
- 契約期間、変更、解約
- 判断能力低下、入院、施設入所、死亡時の扱い
- 業務の限界と代替担当者
契約後の初期設定
- 初回連絡日・訪問日を確定する。
- 本人と事務所の電話番号を相互に登録する。
- 緊急連絡先本人の了承を確認する。
- 医療機関、ケアマネジャー、地域包括支援センター等を整理する。
- 任意後見契約等の既存契約を確認する。
- 本人の平常時の話し方、歩行、通院、生活方法等を記録する。
- 旅行、入院等の不在予定に関する連絡ルールを決める。
- 記録簿と契約見直し時期を設定する。
ヒアリング項目
本人・生活
- 氏名、生年月日、住所、連絡先
- 一人暮らし・同居人
- 食事、買物、ごみ出し、郵便物
- 公共料金の支払方法
- 近隣関係、外出、地域活動
- 鍵、火気、災害避難、ペット
健康・介護
- 持病、かかりつけ医、服薬
- 転倒、入院、救急搬送歴
- 介護認定、ケアマネジャー
- 訪問介護・看護、通所日
- 医療・介護上の緊急連絡先
- 情報共有に関する希望
判断能力
- 面談目的を理解しているか
- 契約を自分の言葉で説明できるか
- 費用と選択肢を比較できるか
- 支払い忘れが増えていないか
- 不審な購入・契約がないか
- 医療機関の受診歴
見守りの希望
- 最も不安なこと
- 電話、メール、訪問の希望
- 曜日、時間帯、再連絡方法
- 連絡してよい人・避けたい人
- 自宅訪問を認める条件
- 入院・施設入所後の継続
おふたりさまの追加確認
- 二人とも契約者になるか、一人だけか。
- 相手方へ共有してよい情報は何か。
- 二人の希望が異なる場合、どのように確認するか。
- 一方が入院または死亡した場合、残された一方を誰につなぐか。
- 家計管理と介護をどちらが担っているか。
- 双方の緊急連絡先と任意後見契約等の有無。
判断フロー
- 本人が定期的な確認を希望しているか。希望がなければ契約を進めません。
- 本人が目的、内容、費用を理解できるか。疑義があれば追加面談や専門職連携を行います。
- 希望内容が確認・記録・連絡の範囲か。代理や財産管理は別契約を検討します。
- 連絡不能時の対応と連絡先を設計できるか確認します。
- 利益相反、安全面、事務所の継続体制を確認します。
- 各項目を整理できた場合に契約内容を具体化します。
判断能力の変化が疑われる場合
- 前回と比べた具体的な変化を記録します。
- 体調不良、睡眠不足、薬の影響等、一時的要因の可能性を確認します。
- 支払い、契約、生活上の判断への影響を確認します。
- 本人の意向を踏まえ、医師、親族、地域包括支援センター等と連携します。
- 任意後見契約がある場合は、任意後見受任者等と申立ての要否を整理します。
- 任意後見契約がない場合は、法定後見や福祉支援等を検討します。
作成・確認する書類
| 時期 | 書類 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 相談・受任前 | 相談受付票、本人確認記録、面談・意思確認記録、利益相反確認票、受任可否判定票、見積書 | 本人、希望、能力、受任リスクを記録 |
| 契約時 | 見守り契約書、重要事項説明書、個人情報取扱同意書、情報共有同意書、緊急連絡先登録票 | 業務範囲、費用、連絡条件を合意 |
| 契約後 | 本人基礎情報票、予定表、連絡記録、訪問記録、異変報告書、関係機関連絡記録 | 継続運用と変化を記録 |
| 見直し・終了 | 契約見直し記録、変更合意書、終了確認書、引継ぎ・完了報告書 | 状態変化、担当変更、終了を明確化 |
確認する既存書類
- 任意後見契約公正証書、登記事項証明書
- 財産管理等委任契約書、死後事務委任契約書
- 遺言書、医療意思表示書、緊急連絡カード
- 介護保険関係書類、ケアプラン、医療機関一覧
- 賃貸借・施設入所・身元保証関連契約書
- 葬儀・納骨、ペット、親族・支援者関係資料
原本を預かる場合は預り証を発行し、保管場所、閲覧権限、返還方法を明確にします。
文例・記載例
本人への基本説明
見守り契約は、定期的にお電話や訪問をして、生活や体調に大きな変化がないかを確認する契約です。連絡が取れない場合や心配な変化が見つかった場合には、あらかじめ決めておいたご家族や支援機関へ連絡します。
この契約では、預金管理、施設との契約、医療同意等を当然に行うものではありません。そのような支援が必要になった場合は、別の契約や制度を一緒に整理します。
家族への説明
見守り契約は、ご本人を常時監視したり、安全を保証したりする契約ではありません。契約で定めた日時と方法で状況を確認し、変化が認められたときに、合意した連絡先へつなぐ仕組みです。
ご家族が費用を負担する場合も、ご本人の意思を確認します。また、ご本人の同意なく生活状況や健康情報をすべて報告することはありません。共有範囲は契約時に整理します。
医療同意に関する説明
緊急連絡先として病院から連絡を受けたり、ご本人が示した希望を医療機関へ伝えたりすることは、契約内容に応じて対応できます。ただし、行政書士に手術や治療へ同意する権限が生じるわけではありません。医療に関する希望の整理と、具体的な医療判断は区別して進めます。
身元保証を求められた場合
見守り契約には、入院や施設入所における身元保証または連帯保証は含まれていません。施設が求めている内容を、緊急連絡、費用支払い、退院支援、死亡時対応等に分けて確認し、利用できる別の契約やサービスを整理します。
業務範囲条項の例
受任者は、委任者に対し、毎月一回、電話により安否及び生活状況を確認します。
受任者は、所定の方法によっても連絡が取れない場合、または委任者の生命、身体もしくは財産に重大な危険が生じていると合理的に判断した場合、指定された緊急連絡先その他必要な関係機関へ連絡できます。
受任者は、委任者の住居へ当然に立ち入る権限を有しません。立入りは、本人の事前同意その他適法な根拠があり、かつ必要性が認められる場合に限ります。
本契約は、財産管理、法律行為の代理、医療同意、身元保証、連帯保証または24時間の安全保証を内容とするものではありません。
他士業・関係機関との連携
| 連携先 | 主な場面 | 行政書士が整理する情報 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 家族間紛争、虐待、財産搾取、詐欺、代理交渉、訴訟等 | 契約、本人意思、経過、関係者、記録 |
| 司法書士 | 成年後見申立て、不動産登記、相続登記等 | 本人・親族・財産関係、必要資料 |
| 税理士 | 所得税、相続税、贈与税、不動産処分税務等 | 財産、取引、申告状況 |
| 医師・医療機関 | 認知機能、急病、服薬、入退院、医療意思等 | 観察した事実と本人の発言 |
| 地域包括・社会福祉士 | 介護、認知症、虐待、生活困窮、権利擁護等 | 生活状況、支援者、本人の希望 |
| ケアマネ・介護事業者 | サービス調整、施設入所、日常生活の変化等 | 連絡記録、変化、共有同意 |
| 警察・消防 | 切迫した生命・身体の危険、行方不明、犯罪被害等 | 最終連絡、住所、危険を示す事実 |
| 自治体・社協等 | 緊急通報、配食、日常生活自立支援、福祉制度等 | 本人の希望、利用中の支援 |
成年後見申立て支援の考え方
成年後見申立てに関する資料整理、親族関係・財産関係の調査、事実関係を整理した文書の作成等について、行政書士が関与し得る場面があります。一方、申立代理、裁判所提出書類の作成に関する他士業法との関係、紛争性を案件ごとに確認し、必要に応じて司法書士または弁護士へ連携します。
新人が気をつけたい点
| 確認が不足しやすい点 | 整える対応 |
|---|---|
| 見守りを幅広い生活支援契約として扱う | 確認・記録・連絡と、代理・財産管理・介護等を分けます。 |
| 家族の希望だけで契約する | 本人との個別面談で契約意思と情報共有範囲を確認します。 |
| 電話をかけただけで完了する | 不応答時の再連絡、前回比較、次の対応まで行います。 |
| 「元気そう」「認知症のようだ」と記録する | 発言、回数、室内、歩行等を客観的に記録します。 |
| 鍵を慣例的に預かる | 必要性、使用条件、保管、持出記録、返還方法を定めます。 |
| 医療同意ができると説明する | 緊急連絡、意思の伝達、医療同意を区別します。 |
| 身元保証を付随業務として受ける | 必要な機能を分解し、別制度・専門事業者等を検討します。 |
| マイナンバーカード両面をコピーする | 本人確認では表面のみを使用し、個人番号を取得しません。 |
| 一人の担当者だけで運用する | 代替担当者、記録共有、業務継続手順を整えます。 |
トラブル予防策
- 「生活全般を支援する」等の抽象的表現を避け、連絡方法、回数、対応時間、対象外業務を具体化します。
- 夜間休日を含む24時間対応との誤解を防ぎ、緊急時は119番・110番等を利用することを説明します。
- 情報共有の目的、共有先、項目、条件、同意撤回、保存期間を定めます。
- 本人と家族双方から依頼を受ける場合、費用負担者と契約者が異なる場合は利益相反を確認します。
- 見守り、財産管理、任意後見、死後事務を同一人が受任する場合は、権限集中を踏まえて記録と第三者確認を強化します。
- 初期費用、月額報酬、訪問費、交通費、緊急対応費、追加業務費を分けて示します。
- 連絡・訪問記録は即日作成し、本人の発言、客観的状況、判断理由、次回確認事項を残します。
- 入院、転居、介護認定、配偶者死亡、認知機能変化等を契約見直しの契機とします。
客観的な記録例
| 避けたい記録 | 確認可能な記録 |
|---|---|
| 認知症が進んだようだ | 約10分間に同じ質問を4回繰り返した |
| 部屋が汚かった | 未開封郵便物とごみ袋が玄関から居間の床面約半分を占めていた |
| 体調が悪そう | 本人は「昨日から食事を取っていない」と述べ、立つ際に壁へ手をついた |
ケーススタディ
Aさんは78歳の女性で、夫と死別後、持家で一人暮らしをしています。子はいません。姪が遠方にいますが、年に一度程度しか会いません。買物、通院、預金管理は自分で行い、介護認定は受けていません。
近所の知人が自宅で倒れ、発見まで数日かかったことから、「月に一回、電話で元気か確認してほしい。電話に出なければ姪へ連絡してほしい」と相談しました。
確認すること
- Aさん本人が契約を希望し、目的と費用を理解しているか。
- 電話に出にくい時間、通院日、旅行等の予定。
- 持病、服薬、転倒歴、かかりつけ医、認知機能への不安。
- 姪が緊急連絡先となることを了承しているか。
- 姪以外の第二連絡先、地域包括支援センター、近隣協力者。
- 任意後見、財産管理、死後事務、遺言等の準備状況。
受任判断と説明
Aさんが内容を理解し、自ら希望している場合、受任に向けて設計できます。ただし、月1回の電話では次の確認まで最大約1か月の空白が生じます。日々の安全を保証するものではないことを伝え、自治体の緊急通報、配食、警備会社等との併用を案内します。
契約骨格の例
- 毎月第1月曜日の午前10時から正午までに電話します。
- 応答がない場合、30分以上空けて固定電話と携帯電話へ再連絡します。
- 当日夕方まで連絡が取れない場合は姪へ連絡します。
- 前回に体調不良等があれば、回数を待たず警察・消防・管理会社等への連絡を検討します。
- 通常時は姪へ毎回報告せず、重大な変化、長時間の連絡不能、入院、詐欺被害等の場合に共有します。
- 24時間対応、医療同意、身元保証、預金管理、当然の立入り、死後事務は契約対象外とします。
連絡記録例
日時:令和○年○月○日午前10時15分から10時28分
方法:携帯電話
本人の発言:「体調はいつもと変わらない。昨日スーパーへ行った。来週水曜日に内科へ行く。先月のような転倒はない」
客観的状況:受答えは明瞭で、質問へ具体的に回答した。会話中の混乱は認めなかった。
前回との比較:右膝痛は軽減したとのこと。新たな転倒なし。
対応:次回連絡日を確認し、入院等の大きな変化があれば次回を待たず連絡するよう伝えた。
次回確認:内科受診結果、右膝痛、転倒の有無。
実務チェックリスト|見守り契約の全体把握
相談・本人
- 本人の依頼意思を確認した
- 緊急性を確認した
- 居住形態と支援者を確認した
- 本人と直接面談した
- 目的、費用、解約を確認した
本人確認
- 有効な確認書類を確認した
- 顔写真なしは追加確認した
- 資格情報通知だけで完結していない
- マイナンバーカードは表面のみ
- 不要な本籍等を取得していない
業務範囲
- 連絡・訪問方法を決めた
- 不応答時の対応を決めた
- 財産管理との違いを説明した
- 医療同意権がないと説明した
- 身元保証を区別した
他契約・連携
- 任意後見契約を確認した
- 財産管理契約を確認した
- 死後事務契約を確認した
- 申立権者を確認した
- 専門職連携の要否を確認した
契約・運用
- 契約書・説明書を作成した
- 情報共有同意を取得した
- 緊急連絡先の了承を確認した
- 平常時情報を記録した
- 代替担当者を確保した
確認テスト
次回への接続
次回の第7-2回では、見守り契約が適する本人像、親族がいても支援が必要な場面、契約締結能力に疑義がある場合、医療・介護サービスとの役割分担、リスクに応じた支援方法を扱います。
定期連絡の頻度設計は第7-3回、定期訪問は第7-4回、安否確認項目は第7-5回、記録簿は第7-6回、異変時対応は第7-7回、任意後見発動の判断材料は第7-10回、契約条項は第7-11回で詳しく扱います。
本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的制度、所属行政書士会の規則、地域・関係機関の運用を確認してください。