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死後事務委任契約業務 3-23

死後事務委任の預託金返金・残金処理
新人行政書士が一人で進める実務手順

預託金残額の計算、返金先の権限確認、遺言執行者・相続人への引継ぎ、振込記録、受領書、返金先が分からない場合の初期対応までを実務順に解説します。

残額計算返金先確認返金記録保留・専門家連携

最初に押さえる原則

死後事務の葬儀、納骨、住居明渡し、公共料金の精算等が終わっても、預託金の残額が処理されていなければ、預託金管理業務は終了していません。返金・残金処理は、余った金銭を返すだけではなく、受領額、支出額、報酬、実費、立替金、返金先の権限、返金方法及び受領結果を一つずつ確認する最終決算です。

図解|残金処理を支える四つの確認
計算預託金、追加預託、返戻金、利息、報酬、実費、立替金を照合します。
根拠契約書、遺言書、戸籍、就任承諾書等から返金先を確認します。
実行返金通知、口座確認、振込、組戻し確認、受領書取得まで行います。
記録計算表、振込控え、受領書、完了報告書、台帳閉鎖記録を保存します。
返金できない場合も、管理を止めないことが大切です返金先が分からない場合は、理由を記録し、残金を分別管理し、確認事項と次回見直し日を定めます。状況が整理されていない段階でも、弁護士等へ相談しながら進められます。

この記事で到達できること

残額を確定できる

入出金を証憑と照合し、計算表、預り金台帳及び口座残高を一致させられます。

返金先を判断できる

遺言執行者、相続人、受遺者、相続財産清算人、連絡先を区別できます。

返金記録を残せる

通知書、口座確認書、振込控え、受領書、完了報告書を一連の記録にできます。

難しい案件を連携できる

返金先不明、相続人不明、争いがある場面で送金を保留し、専門家へつなげられます。

この業務が必要になる実務場面

  • 死後事務を終えた後、預託金が残った。
  • 病院、施設、管理会社等の最終請求が未確定である。
  • 敷金、保証金、解約返戻金等が後から入金された。
  • 死後事務受任者と遺言執行者が別人である。
  • 相続人が複数おり、誰へ返すか整理する必要がある。
  • 相続人の所在が分からない、又は連絡が取れない。
  • 相続人全員が相続放棄した可能性がある。
  • 内縁配偶者、パートナー、友人等が受領を希望している。
状況 最初に確認すること 基本対応
返金先が明確 本人・権限・口座 内訳通知後に返金し、受領書を取得
未確定費用がある 留保根拠、見込額、期限 必要最小限を留保し、確定後に再精算
遺言執行者がいる 遺言、就任、管理口座 残金と資料の引継方法を協議
相続人が不明 戸籍、遺言、放棄状況 送金を保留し、弁護士等へ相談
受領権限に争いがある 対立内容、通知書、代理人 行政書士が分配判断をせず弁護士へ連携

基本知識

預託金は行政書士の自己資金ではありません

預託金は、契約に定めた死後事務費用へ充てるために預かった金銭です。報酬として確定した部分を除き、事務所の運転資金や他案件の支払いに使用しません。行政書士職務基本規則では、預り金を自己の金員と区別して管理し、その状況を記録することが求められています。

残額と利息等の帰属

委任者の生前に残る未使用預託金は、原則として委任者に帰属します。死亡後の未使用残金、預託金に付された利息その他の果実も、契約又は遺言に有効な別段の定めがない限り、原則として相続財産に含めて扱います。発見した現金や預金払戻金等が預託金とは別の相続財産である場合は、預託金台帳へ混在させず、別途管理します。

遺言がある場合は内容を先に確認します

契約書に返金先が書かれていても、遺言がある場合は遺言内容との整合性を確認します。契約上の指定が単なる受領窓口なのか、第三者に財産を取得させる趣旨なのかによって検討事項が変わります。高額な残金、友人・内縁配偶者等への指定、遺言との矛盾がある場合は、弁護士へ相談します。

返金先と連絡先は同じとは限りません

関係者 確認資料の例 注意点
遺言執行者 遺言書、就任承諾書、就任通知がある場合はその写し、選任審判書 就任通知は常に必須とは限らず、就任承諾書等で就任事実を確認
相続人 戸籍、法定相続情報一覧図 一人だけに全額返す場合は代表権限を確認
包括受遺者 遺言書、本人確認資料 遺言内容と遺言執行者の権限を確認
相続財産清算人 選任審判書、本人確認資料、管理口座 審判の確定の要否や即時抗告期間経過後の取扱いを個別確認
緊急連絡先等 契約書、指定書 連絡窓口であるだけでは受領権限にならない

報酬・実費・立替金を分けます

区分 内容 確認事項
報酬 行政書士業務の対価 契約額、追加報酬の合意、消費税、既受領額
実費 葬儀費、納骨費、医療費、賃料、郵送料等 請求書、領収書、振込記録、契約目的との関係
立替金 行政書士が一時的に自己資金で支払った額 支払日、支払先、必要性、証憑、二重計上の有無
相続財産へ戻す場合も、送金先を具体的に確認します「相続財産へ戻す」という名目だけでは送金できません。遺言執行者の管理口座、相続人全員、権限ある代表相続人、相続財産清算人等、実際の受領者と権限を確認します。

実務の進め方

図解|返金・残金処理の全体手順
  1. 死後事務の実作業と未確定請求を確認します。
  2. 預託金、追加預託、返戻金、利息等の入金総額を確定します。
  3. 報酬、実費、立替金を証憑と照合します。
  4. 残金計算表を作り、預り金台帳及び口座残高と一致させます。
  5. 契約書及び遺言書から返金先候補を確認します。
  6. 本人確認、受領権限、振込口座、争いの有無を確認します。
  7. 返金通知書を送り、振込又は対面引渡しを行います。
  8. 振込控え、受領書、完了報告書を保存し、台帳を閉鎖します。

未払費用・未収入金を洗い出す

  • 葬儀・火葬費の請求が確定した
  • 納骨・永代供養費が確定した
  • 病院・施設の最終請求を確認した
  • 賃料、管理費、原状回復費が確定した
  • 電気、ガス、水道、通信費の最終請求を確認した
  • 家財処分費、他士業費用が確定した
  • 敷金、保証金、返戻金、買取代金等を確認した

未確定費用を留保する場合

未確定費用がある場合は、契約上の留保条項、権利者の同意その他の根拠を確認します。留保額は合理的な見込額の範囲にとどめ、対象費用、金額、期限、再精算予定を記録します。「将来何かあるかもしれない」という理由だけで残金全額を長期間留保するのではなく、定期的に見直します。

入金総額を確定する

預託金等入金総額=当初預託額+追加預託額+返戻金・解約返戻金等+利息その他の果実-既返還額

契約書、預託金受領証、預り金台帳、管理口座、追加送金記録、返戻金記録を照合します。現金受領がある場合は、受領証、現金出納帳、銀行入金記録を確認します。

支出を一件ずつ照合する

  1. 口座明細と現金出納帳から全支出を抽出します。
  2. 請求書、領収書、振込控えを対応させます。
  3. 報酬、実費、立替金に区分します。
  4. 返金、取消し、値引き、二重計上を確認します。
  5. 証憑がない支出は理由と代替資料を記録します。
  6. 不明出金が解消するまで最終残額を確定しません。

残金計算表の項目例

区分 主な項目
基本情報 事件名、委任者、死亡日、契約日、業務完了日、計算基準日、担当者、確認者
入金 当初預託金、追加預託金、返戻金、解約返戻金、敷金返還、利息
支出 支払日、区分、内容、支払先、金額、証憑番号
返金 返金先、法的地位、権限資料、口座、返金日、受領書取得日
残金計算例 金額
預託金・返戻金・利息等の合計 2,130,100円
行政書士報酬 440,000円
実費 1,350,000円
立替金精算 6,000円
返金振込手数料 550円
最終残額 333,550円

三つの残高を一致させる

残金計算表上の残額=預り金台帳上の残額=管理口座上の当該依頼者残額

複数依頼者の預託金を一つの口座で管理している場合は、口座全体ではなく依頼者別補助元帳と照合します。不一致がある場合は、振込手数料、未記帳、返戻金、利息、別案件の混入、報酬の二重控除等を確認します。

返金先を確認する

契約書の預託金条項、報酬控除条項、残金返還条項、遺言との関係、留保条項、連絡不能時の処理を確認します。遺言書がある場合は、遺言執行者、包括遺贈、特定遺贈、残余財産の帰属等を確認します。

遺言執行者へ引き継ぐ場合

  • 遺言書及び遺言執行者指定部分
  • 就任承諾書を主とする就任確認資料
  • 就任通知が作成されている場合はその写し
  • 家庭裁判所選任の場合は選任審判書
  • 本人確認資料、印鑑証明書、管理口座資料
  • 残金計算表、収支明細、完了報告書、主要証憑

就任通知は常に作成義務がある書類として扱わず、就任承諾書その他の事情から就任の事実を確認します。

相続人代表者へ返金する場合

相続人全員を戸籍等で確認し、代表相続人指定書、相続人全員の同意書、本人確認資料、必要に応じて印鑑証明書を取得します。「長男」「喪主」「同居者」であることだけを代表権限の根拠にしません。

相続財産清算人へ引き継ぐ場合

選任審判書、本人確認資料、管理口座及び引継方法を確認します。審判の確定の要否、通常は即時抗告期間経過後にどのように取り扱うか、確定状況を示す資料が必要かは、審判内容、提出先の運用及び専門家の指示に応じて確認します。

本人確認と口座確認

  • 氏名、住所、生年月日を確認した
  • 法的地位及び受領権限を確認した
  • 本人確認書類を取得した
  • 口座名義と受領者名を照合した
  • メールによる口座変更は既知の連絡先へ折り返した
  • 高額送金は事務所内で二者確認した

返金通知から台帳閉鎖まで

  1. 返金額、内訳、返金先、予定日、異議申出期限を書面で通知します。
  2. 振込前に金額、権限、口座、争いの有無を再確認します。
  3. 原則として銀行振込を用い、振込控えを保存します。
  4. 可能な限り受領書を取得します。
  5. 完了報告書へ返金日、金額、方法、受領者の地位を記載します。
  6. 残高が0円になったことを確認し、預り金台帳を閉鎖します。

確認・ヒアリング項目

契約時に本人へ

  • 残金を誰へ引き渡したいか
  • 遺言書と遺言執行者の有無
  • 第1順位者が不在の場合の予備指定
  • 相続人との関係、疎遠・不和の有無
  • 内縁配偶者等へ残したい意向の法的整備
  • 未確定費用、振込手数料の扱い

遺言執行者へ

  • 就任承諾書等による就任確認
  • 本人確認、連絡先、管理口座
  • 相続人への通知状況
  • 遺言の有効性や権限への異議
  • 残金・証憑の引継時期
  • 受領書発行の可否

相続人候補者へ

  • 被相続人との続柄
  • 他の相続人、相続放棄の有無
  • 遺言書、遺言執行者の有無
  • 相続人間の争い
  • 代表権限及び全員の同意
  • 本人確認資料、返金口座

おひとりさま・おふたりさま

  • 親族の所在と最終連絡時期
  • 友人・パートナーの受領権限
  • 二人分の預託金の区分
  • 共同生活費との混在
  • 同時死亡時の予備指定
  • 長期保留時の管理方法

判断フロー

図解|返金前の判断
  1. 全請求と返戻金が確定しているか。未確定なら留保根拠と見込額を確認します。
  2. 計算表、台帳、口座残高が一致しているか。不一致なら送金を進めません。
  3. 遺言があるか。ある場合は遺言内容と遺言執行者の就任を確認します。
  4. 契約上の返金先指定が遺言と整合するか確認します。
  5. 相続人が確定しているか。代表者へ返す場合は全員の同意等を確認します。
  6. 受領権限に争いがあるか。ある場合は送金を保留し弁護士へ連携します。

送金を保留して専門家へ相談する場面

  • 遺言の有効性又は契約条項の解釈が問題になっている。
  • 複数人が残金の受領を求めている。
  • 相続人の範囲又は相続放棄の状況が不明である。
  • 相続人全員が相続放棄した可能性がある。
  • 内容証明郵便、差押え、仮差押え等の通知がある。
  • 預託金不足、流用、記録不一致が判明した。
  • 行政書士自身又は関係者に利益相反のおそれがある。

作成・確認する書類

分類 書類 役割
契約・権限 死後事務委任契約書、遺言書、戸籍、就任承諾書、選任審判書、委任状 返金先と受領権限を確認
会計 預託金受領証、預り金台帳、収支明細書、残金計算表、証憑一覧 受入額、支出額、残額を確定
返金 返金通知書、口座確認書、振込控え、受領書 返金の予定、実行、受領を証明
引継ぎ 引継書、資料一覧、未処理事項一覧 遺言執行者等へ残金と資料を引継ぎ
完了・保留 完了報告書、返金保留通知書、保留管理票 終了又は保留の状態を記録

返金先権限確認表

確認事項 確認資料 確認日 確認者
氏名・名称 本人確認書類    
法的地位 戸籍、遺言、審判書等    
代表権限 同意書、指定書、委任状    
就任 就任承諾書等    
口座名義 通帳、口座確認書    
争いの有無 面談・連絡記録    

文例・記載例

契約書の残金処理条項例

第○条(預託金残額の処理)

1 受任者は、本契約に基づく死後事務に要した実費、受任者の報酬、立替金その他本契約に基づき控除できる金額を預託金から支払います。

2 遺言がある場合、受任者は、その内容及び遺言執行者の権限を確認し、原則として遺言内容を優先して預託金残額を処理します。

3 残額がある場合、受任者は、遺言執行者、別紙指定受領者、相続人全員又は全員が指定した代表者、相続財産清算人その他法令上受領権限を有する者の順に、具体的な権限を確認して引き渡します。

4 返還先が判明しない場合、受領権限に争いがある場合その他安全に返還することが難しい合理的事情がある場合、受任者は返還を一時保留し、弁護士等へ相談できます。

5 未確定費用がある場合、受任者は合理的に見込まれる必要最小限の額を相当期間留保し、確定後速やかに精算します。

6 預託金に付された利息その他の果実は、別段の定めがない限り、残金に算入します。

返金通知書例

故○○○○様との死後事務委任契約に基づく事務が終了しましたので、預託金の収支及び残額をご報告します。

預託金等入金総額2,130,100円、死後事務実費1,350,000円、行政書士報酬440,000円、立替金6,000円、振込手数料550円、返金額333,550円です。

上記返金額を令和○年○月○日に、ご指定の○○銀行○○支店の口座へ振り込む予定です。添付した収支明細及び口座をご確認いただき、訂正又はご不明な点がありましたら令和○年○月○日までにお知らせください。

受領書例

私は、令和○年○月○日、故○○○○に係る死後事務委任契約の預託金残額として、金333,550円を、○○行政書士事務所から指定口座への振込みにより受領しました。

受領者の地位:遺言執行者
住所:
氏名:         印

返金保留通知書例

故○○○○様に係る預託金残額は、令和○年○月○日現在300,000円です。現在、相続人の範囲及び所在を確認中であり、適法かつ確実な返還先を確認できていません。

このため、受領権限を有する方が確認できるまで返還を一時保留し、当該残額を当事務所の自己資金と区別して管理します。関係資料の確認及び弁護士等への相談を行い、適切な返還先又は法的処理が確認でき次第、改めて報告します。

完了報告書への記載例

本件で受領した預託金、返戻金及び利息等の合計額は2,130,100円でした。同金額から死後事務実費1,350,000円、行政書士報酬440,000円、立替金6,000円及び振込手数料550円を控除した残額は333,550円です。

上記残額は、令和○年○月○日、遺言執行者○○○○様名義の管理口座へ振り込みました。振込控え及び受領書を添付します。これにより、本件に係る預託金残高は0円となり、預託金管理業務を終了しました。

他士業・関係機関との連携

連携先 主な場面 引き継ぐ資料
弁護士 返金先の争い、契約・遺言の解釈、相続放棄、供託、損害賠償、交渉 契約書、遺言、戸籍、台帳、計算表、連絡記録
司法書士 相続登記、家庭裁判所提出書類等の業務範囲に属する事項 戸籍、財産資料、相続関係資料
税理士 相続税、準確定申告、債務控除、個別税務判断 収支明細、請求書、返戻金資料
遺言執行者 相続財産に属する残金と証憑の引継ぎ 残金計算表、完了報告書、台帳写し、主要証憑
家庭裁判所 相続財産清算人選任等を検討する場合 申立ては弁護士・司法書士と役割を確認
相談内容がまとまっていなくても整理できます返金先が分からない、相続人から異なる連絡が来た、契約書と遺言の関係が判断しにくい場合は、まず資料と経過を時系列で整理します。行政書士の業務範囲を超える判断や交渉が必要な場合は、適切な専門家へつなぎます。

新人が気をつけたい点

確認が不足しやすい点 整える対応
残金を長期間預かり続ける 保留理由、確認経過、専門家相談、次回見直し日を記録する。
緊急連絡先へ返金する 連絡先と財産受領権限を分けて確認する。
遺言を確認せず契約書だけで処理する 遺言内容を先に確認し、矛盾があれば弁護士へ相談する。
遺言執行者の「就職」と記載する 「就任」「就任承諾書」「就任通知」に統一する。
就任通知を必須書類と考える 就任承諾書その他の資料・行為から就任事実を確認する。
長男・喪主を代表者と考える 相続人全員の指定又は同意等を確認する。
契約にない報酬を控除する 報酬条項、追加業務、事前合意を確認する。
利息・返戻金を計上しない 案件の入金として記録し、残金計算へ反映する。
確定証明書が常に必要と考える 審判の確定の要否、抗告期間、提出先の運用を個別確認する。
振込控えだけで終了する 可能な限り受領書を取得し、受領原因と地位を記録する。

トラブル予防策

  • 契約時に遺言との優先関係、返金先の順位、予備の返金先を定めます。
  • 未確定費用の留保条件、金額、期間、精算方法を明記します。
  • 預託金は自己資金と分け、依頼者別台帳を作成します。
  • 支出ごとに証憑番号を付け、現金払いをできる限り減らします。
  • 追加報酬や予定外支出は、説明と合意を記録します。
  • 口座変更はメール以外の既知の連絡経路でも確認します。
  • 高額返金は二者確認とし、振込控え・受領書を保存します。
  • 保留案件は保留管理票へ登録し、定期的に見直します。

保留管理票の項目

項目 記載内容
案件情報 委任者、残金額、保留開始日、管理口座
保留理由 相続人不明、争い、未確定費用、権限資料不足等
確認状況 返金先候補、不足資料、最終連絡日、専門家相談日
今後の管理 担当者、責任者、次回見直し日、予定する対応

ケーススタディ

預託金残額30万円・相続人と連絡が取れない

行政書士Aは、おひとりさまのXと死後事務委任契約を締結し、150万円を預かりました。葬儀、納骨、住居明渡し、公共料金の解約、家財処分、病院・施設費の精算を終え、報酬、実費及び立替金を控除すると30万円が残りました。

契約書には「残金は相続人に返還する」とあります。Xには兄Yがいると聞いていましたが、電話は不通で、手紙も返送されました。遺言書は確認できていません。緊急連絡先の友人Zは、自分に30万円を渡してほしいと申し出ています。

最初に行うこと

  1. 残金計算表、台帳及び口座を照合し、30万円が確定残額であることを確認します。
  2. 30万円を事務所収入へ振り替えず、分別管理を続けます。
  3. 契約上の返金先が相続人であり、Zには受領権限が確認できないことを記録します。
  4. 公正証書遺言、自筆証書遺言保管制度の利用等、遺言の有無を確認します。
  5. 戸籍等から相続人の範囲とYの状況を整理します。
  6. 電話、郵便、返送理由等の連絡経過を記録します。
  7. 弁護士等へ相談し、相続人調査、相続放棄、清算人選任等の必要性を検討します。
  8. 保留管理票へ登録し、次回見直し日を設定します。

友人Zへの説明例

現在残っている30万円は、死後事務のためにお預かりした金銭です。契約書では相続人へ返還すると定められており、緊急連絡先又は葬儀を手伝った方であるという理由だけでは、当事務所からお渡しすることができません。現在、遺言の有無及び受領権限を有する方を確認しており、確認が終わるまで事務所資金と区別して管理します。

その後の分岐

  • Yが唯一の相続人と確認できた場合は、本人確認、相続放棄、口座を確認して返金します。
  • 複数相続人が判明した場合は、全員又は権限ある代表者へ返金します。
  • 遺言執行者が判明した場合は、就任を確認して引継方法を協議します。
  • 相続人不存在又は全員放棄の可能性がある場合は、弁護士等と清算人選任等を検討します。
  • YとZが権利を争う場合は、送金を保留し、交渉を行わず弁護士へ連携します。
この事例の結論現時点では30万円を誰にも送金せず、分別管理、遺言・相続人確認、連絡記録、専門家相談、定期見直しを進めます。返金先が確定した後に、通知、振込、受領書取得、最終報告を行います。

実務チェックリスト|返金・残金処理確認

業務・収支

  • 全請求・返戻金を確認した
  • 利息その他の果実を確認した
  • 報酬、実費、立替金を区分した
  • 全支出に証憑番号を付けた
  • 計算表、台帳、口座が一致した

返金先

  • 契約書と遺言書を確認した
  • 遺言執行者の就任を確認した
  • 相続人の範囲を確認した
  • 代表者の権限を確認した
  • 争い・相続放棄の可能性を確認した

本人・口座

  • 本人確認資料を取得した
  • 法的地位を確認した
  • 口座名義を照合した
  • 口座変更を別経路で確認した
  • 高額送金を二者確認した

返金・記録

  • 返金通知書を送付した
  • 振込控えを保存した
  • 組戻しがないことを確認した
  • 受領書を取得した
  • 完了報告書へ反映した

保留・完了

  • 留保の根拠、額、期限を記録した
  • 返金不能時に専門家へ相談した
  • 保留管理票と見直し日を設定した
  • 残高0円を確認した
  • 台帳閉鎖日を記録した

確認テスト

問題1
緊急連絡先の友人から返金を求められた場合、そのまま振り込めますか。
連絡先であることと受領権限は別です。契約、遺言、戸籍その他の権限資料を確認します。
問題2
残金計算表、台帳、口座残高が一致しない場合はどうしますか。
原因が解消するまで返金を進めません。未記帳、二重計上、返戻金、利息、別案件混入等を確認します。
問題3
遺言執行者の就任通知がなければ、就任していないと判断できますか。
就任通知の有無だけでは判断しません。就任承諾書、選任審判書、本人の意思、執行行為等から確認します。
問題4
預託金に付いた利息を事務所収入にできますか。
契約に有効な別段の定めがない限り、原則として残金へ算入し、死亡後は相続財産として扱います。
問題5
相続人が複数いる場合、長男へ全額返せますか。
長男であることだけでは足りません。相続人全員の指定・同意等により代表権限を確認します。
問題6
相続財産清算人への引継ぎには、常に確定証明書が必要ですか。
一律ではありません。審判の確定の要否、即時抗告期間経過後の取扱い、提出先の運用を個別に確認します。
問題7
返金先が分からない場合、残金を預かったままでよいですか。
分別管理を続けつつ、保留理由、確認経過、専門家相談、次回見直し日を記録し、適切な処理へ進めます。
問題8
振込控えがあれば、受領書は不要ですか。
振込控えに加え、可能な限り受領書を取得し、受領者の地位、受領原因、受領額を明確にします。

次回への接続

次回の第3-24回では、預託金不足、報酬控除をめぐる意見の相違、相続人間の対立、遺言執行者との役割調整、誤送金、証憑紛失、長期保留、行政書士の辞任・死亡・廃業時の引継ぎ等を扱います。

相続人調査の詳細はカテゴリ13、遺言執行者による財産管理・分配はカテゴリ2、相続人への名義変更・払戻し等はカテゴリ22で扱います。

HANAWA行政書士事務所にご相談ください相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、契約書、遺言書、預託金台帳、領収書、相続関係など、確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、契約、遺言、相続関係、所属会の規則、裁判所・金融機関等の最新の取扱いを確認してください。

公的情報

HANAWA行政書士事務所|死後事務委任契約業務

預託金の計算、返金先確認、記録保存を丁寧につなぐ実務を大切にします。

あわせて確認したいこと

相続・遺言・終活の手続きを確認したい方へ

相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

相続、遺言、任意後見、死後事務委任などをまとめて考えたい場合は、家族構成や財産、必要な手続きを整理するところから相談できます。

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