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死後事務委任契約業務 3-21

親族・関係者への報告
誰に何をどこまで伝えるかを判断する実務手順

死亡第一報から葬儀、納骨、住居明渡し、遺言執行者への引継ぎまで、新人行政書士が報告し過ぎ・報告不足を避けながら進める判断基準を整理します。

報告範囲守秘義務財産情報記録保存

最初に押さえる原則

死後事務委任業務における報告は、単なる経過連絡ではありません。本人の希望に沿って必要な事実を伝え、遺言執行者、相続人、施設、葬儀社、管理会社等との役割を整理し、受任者が契約に基づいて事務を進めたことを記録する重要な工程です。

一方、親族だから詳しく伝える、緊急連絡先だからすべて伝えるという判断は適切ではありません。報告の可否と範囲は、契約書、本人の具体的な希望、報告先指定書、相手の立場、事務上の必要性、守秘義務、情報の管理主体を順に確認して決めます。

死後事務委任契約の法的な捉え方民法上、委任は原則として委任者の死亡により終了します。実務上は、死亡後の事務処理を目的として、死亡を契機に履行される準委任契約として構成され、いわゆる死後事務委任契約として運用されています。契約名だけで判断せず、死亡後に行う事務、連絡権限、費用、秘密保持、引継ぎ等の条項を確認します。
図解|報告範囲を決める七つの確認
契約書報告権限、委任事項、終了時の報告を確認します。
本人の希望誰に、いつ、何を伝えるかを確認します。
報告先一覧連絡順位、禁止先、予備連絡先を見ます。
相手の立場親族、相続人、受遺者、実務関係者を区別します。
必要性その情報が事務遂行に本当に必要かを考えます。
秘密・個人情報本人と生存者双方への影響を確認します。
管理主体行政書士、遺言執行者、相続人の誰が回答すべきかを整理します。

この記事で到達できること

報告先を分類できる

直ちに報告する人、実施後に報告する人、照会時に対応する人、原則として連絡しない人を整理できます。

開示範囲を判断できる

死亡・葬儀等の事実と、財産・遺言・医療等の慎重に扱う情報を区別できます。

記録を残せる

電話、メール、書面について、伝えた内容と伝えなかった内容の双方を記録できます。

適切に引き継げる

遺言執行者や弁護士等へ渡す資料と、行政書士が保管・処分判断を抱え込まない基準を理解できます。

必要になる実務場面

死亡直後

本人が指定した親族、緊急連絡先、友人、遺言執行者、施設、葬儀社、管理会社、ペット引取人等への連絡を検討します。全員へ一斉に知らせるのではなく、直ちに知らせる人、葬儀日程確定後に知らせる人、葬儀後または納骨後に知らせる人を分けます。死亡直後の手配自体は3-16で扱った内容を前提とします。

葬儀・火葬終了後

葬儀・火葬が終了した事実、葬儀形式、遺骨の保管、今後の納骨予定等を報告します。葬儀終了を伝えられる場合でも、費用の内訳、支払原資、参列者、死因まで直ちに開示できるとは限りません。葬儀運営の詳細は3-17で扱った内容を前提とします。

住居整理・家財処分時

明渡し、鍵返却、家財搬出等を報告します。親族から、室内を見たい、写真を引き取りたい、処分を止めたい、鍵を渡してほしいと求められることがあります。相続財産となる物と生活用品を区別し、最終的な処分権限を持つ者を確認します。実行手順は3-19で扱った内容を前提とします。

各種解約後

公共料金、通信、施設契約等の解約結果を必要な相手へ報告します。契約先、顧客番号、請求額、返金額、口座情報を一律に共有するのではなく、報告目的に応じて絞ります。解約実務は3-20で扱った内容を前提とします。

疎遠な親族から照会を受けたとき

おひとりさま案件では、長年疎遠だった兄弟姉妹や甥姪が、葬儀後に詳細説明を求めることがあります。相手が親族を名乗っても、預貯金、遺言、保険、受遺者、鍵や通帳の保管場所を電話口で伝えず、本人確認、続柄、情報の管理主体を確認します。

基本知識

報告先は立場ごとに分ける

区分 主な相手 考え方
契約上の指定先 指定親族、友人、緊急連絡先 指定された時期・方法・範囲で報告します。ただし必要性・相当性を超える開示はしません。
事務上必要な関係者 施設、葬儀社、管理会社、寺院、ペット引取人 契約事務を進めるために必要な情報だけを伝えます。
法的・財産的関係者 相続人、受遺者、遺言執行者、相続財産清算人 相手の立場、情報の管理主体、開示手続を確認します。
友人・知人 友人、近隣者、所属団体 本人の指定がある範囲を基本とし、財産・遺言情報は分けます。
連絡禁止・注意先 絶縁親族、迷惑行為歴のある者等 本人の希望と法的な通知必要性を分け、必要時は専門家と協議します。

相続人であっても、情報の開示主体、遺言執行者の有無、財産の管理主体等に応じて、行政書士から直接開示できるとは限りません。一方で、相続人として必要な情報まで一律に拒むのでもなく、適切な回答主体と手続を整理します。

報告は五段階に分ける

図解|死亡後の報告段階
  1. 死亡第一報 死亡の事実と、詳細が未確定であることを伝えます。
  2. 葬儀・火葬の連絡 日程、参列可否、終了の事実を必要な範囲で伝えます。
  3. 納骨・遺骨の報告 納骨完了、納骨先、保管状況を本人の指定に沿って伝えます。
  4. 生活関係事務の報告 住居明渡し、家財整理、解約、施設退去等を伝えます。
  5. 業務完了報告 完了、未了、引継事項を整理します。詳細は3-22で扱います。

報告しやすい情報と慎重に扱う情報

比較的報告しやすい情報 開示主体・必要性を慎重に確認する情報
死亡の事実、死亡年月日、葬儀・火葬終了、納骨完了、住居明渡し、解約の進捗、連絡窓口、引継ぎ済みの事実 死因・病歴、診断書、預貯金、口座情報、不動産、株式、保険、債務、遺言内容、受遺者、預託金、費用内訳、鍵・通帳・印鑑の保管場所、メール・SNS、交友関係、親族への評価
個人情報だけでなく守秘義務も確認します個人情報保護法は原則として生存する個人の情報を対象としますが、故人の情報に遺族等の生存者の情報が含まれる場合は、その生存者の個人情報となり得ます。さらに行政書士には行政書士法第12条の守秘義務があるため、個人情報保護法の対象外であっても、契約と職業倫理に基づく慎重な取扱いが必要です。

「全部知る権利がある」と言われたとき

相手の権利を電話口で肯定・否定せず、氏名、住所、続柄、本人確認資料、求める情報、目的、緊急性、遺言執行者の有無、他の相続人との対立、当職が管理する権限を確認します。

「ご親族であることは承りました。ただし、当職が管理している情報は、故人との契約、守秘義務および関係者の権限に基づいて取り扱う必要があります。現時点で電話口から財産情報や契約書の内容をお伝えすることはできません。ご関係とご請求内容を確認し、適切な回答主体と回答可能な範囲をご連絡します。」

実務の進め方

図解|親族・関係者報告の実行順序
  1. 契約書、公正証書、本人希望書、報告先一覧、連絡禁止先、遺言執行者情報を確認します。
  2. 報告先ごとに、立場、本人確認状況、報告根拠、報告時期、開示可能事項を一覧化します。
  3. 直ちに報告、実施後に報告、照会時に対応、原則非報告の四区分に分けます。
  4. 報告目的を一つずつ明確にし、必要最小限の情報を選びます。
  5. 行政書士、遺言執行者、相続人、施設等のうち誰が回答主体かを確認します。
  6. 緊急性、正確性、証拠性に応じて電話、メール、書面を選びます。
  7. 財産・遺言等を求められた場合は、本人確認と権限確認を行い、即答しません。
  8. 報告後、その日のうちに伝達内容、留保事項、質問、次回期限を記録します。
  9. 紛争の兆候があれば詳細説明を中断し、遺言執行者または弁護士へ連携します。

報告先と報告内容の整理表

相手 主な報告 時期 慎重に扱う事項
指定親族 死亡、葬儀終了、納骨、完了 本人指定による 財産、遺言、死因
緊急連絡先・友人 死亡第一報、本人指定事項 死亡確認後 相続情報、費用、親族情報
遺言執行者 死亡、遺言書・重要物の保管、親族照会、引継事項 原則早期 引継前の処分・支出
相続人 必要な事実、回答窓口、引継状況 身分等確認後 全財産、他人の個人情報
受遺者 遺言執行者への取次ぎ、必要な事務連絡 遺言執行者と調整 遺言全文、他の受遺者
施設・病院 死亡、退去、荷物、精算窓口 速やかに 相続関係の詳細
葬儀社・寺院・霊園 本人希望、発注、納骨、支払方法 必要時 不要な財産・親族情報
管理会社・貸主 死亡、明渡し予定、鍵、残置物 速やかに 遺言、預金、親族の事情

報告手段の選び方

  • 電話:死亡第一報、急ぐ葬儀連絡、緊急対応。終了後は必ず記録し、重要事項は書面でも確認します。
  • メール:日程、場所、質問受領、葬儀・納骨・明渡し報告。宛先、CC、BCC、添付を再確認します。
  • 書面:正式報告、物品引渡し、契約外要求、紛争兆候、完了報告。追跡可能な送付方法を検討します。

複数の親族へ同じメールを送る場合でも、互いのアドレス、受遺者の存在、費用等が見えないよう、原則として個別送信またはBCCを用います。

本人確認

必要に応じて、本人確認書類、戸籍、法定相続情報一覧図、委任状、遺言執行者の就任を示す資料、裁判所の審判書等を確認します。取得目的、確認日、保管場所、閲覧権限、廃棄方法も記録します。

報告記録に残す事項

  • 日時、方法、相手、本人確認方法、報告根拠
  • 伝えた内容、伝えなかった内容、その理由
  • 相手の質問・要求、当職の回答、留保事項
  • 客観的な相手の発言、紛争兆候、同席者
  • 添付・送付資料、次回期限、連携先

確認する項目

生前の報告先

  • 死亡を知らせる・知らせない人
  • 葬儀前・葬儀後・納骨後の区分
  • 連絡順位と予備連絡先
  • 連絡不能時の調査範囲
  • 連絡禁止理由と安全上の事情

伝えてよい内容

  • 死亡日・死因
  • 葬儀形式・場所
  • 納骨先
  • 住居明渡し
  • 財産・遺言・受遺者・費用

照会者への確認

  • 氏名、住所、連絡先、続柄
  • 死亡を知った経緯
  • 求める情報と目的
  • 緊急性と紛争の有無
  • 本人確認・戸籍等の提出可否

おひとりさま・おふたりさま特有の確認

おひとりさま案件では、疎遠な法定相続人、事実上の家族、金銭要求歴、SNS公表、暴力・ストーカー等の事情を確認します。おふたりさま案件では、残されたパートナーへの説明範囲、法律婚でない場合の権限、共有住居・家財・ペット、双方の親族への報告順位、同時死亡時の予備連絡先を整理します。

判断フロー

図解|報告してよいか
  1. 相手の立場と本人確認状況を確認します。
  2. 契約書と本人の最新の指定を確認します。
  3. 死亡、葬儀、財産照会等の報告目的を明確にします。
  4. 目的達成に必要な最小限の情報へ絞ります。
  5. その情報を行政書士が回答することが適切か確認します。
  6. 遺言執行者、相続人、代理人等の権限者を確認します。
  7. 紛争兆候がなければ適切な方法で報告し、あれば詳細回答を留保します。

財産情報を求められた場合

  • 本人確認と法的立場は確認できているか
  • 当該情報を誰が管理しているか
  • 行政書士に開示権限があるか
  • 遺言執行者がいるか
  • 他の相続人・受遺者等の情報を含むか
  • 書面回答、一部開示、マスキングで足りるか
  • 紛争が生じていないか

一つでも不明な点がある場合は、その場で開示せず、確認後に回答します。

作成・確認する書類

書類 用途
親族・関係者報告管理表 相手の立場、報告根拠、報告時期、開示可能・留保事項を一元管理
報告判断メモ 判断に迷う照会について、本人確認、管理主体、回答方針を整理
電話連絡記録 発言、要求、回答、留保、次回期限、紛争兆候を客観的に保存
メール・書面送付記録 宛先、本文、添付、送付方法、受領状況を保存
情報開示依頼書 申請者、求める情報、目的、理由、本人確認・相続関係資料を確認
引継書・受領書 遺言書、戸籍、通帳、印鑑、鍵、現金、貴重品等の引渡しを証拠化
財産の一時保管と処分権限は別です行政書士は契約範囲内で重要物を一時保管し、権限者へ引き継ぎます。財産の管理・処分に関する最終的な権限が当然に行政書士へ帰属するものではありません。

文例・記載例

死亡第一報

突然のお電話で失礼いたします。私は、○○様から死亡後の事務について委任を受けております、行政書士の○○と申します。大変申し上げにくいことですが、○○様は令和○年○月○日にご逝去されました。生前のご指定に基づき、ご連絡を差し上げております。現在、葬儀その他の手配を進めておりますが、未確定の事項もございます。本日は、まず死亡の事実をお知らせしました。

死因、医療機関、死亡場所、相続人としての地位を自分から断定せず、葬儀参列については本人希望と形式を確認してから回答します。

葬儀・火葬終了報告

故○○○○様の葬儀・火葬につきまして、令和○年○月○日、本人の生前の希望および死後事務委任契約に基づき、滞りなく終了しましたのでご報告します。ご遺骨は現在○○にて一時保管しており、納骨等の予定は関係先との調整後にご連絡します。費用、財産および相続に関する事項は、開示主体、権限および報告範囲を確認のうえ対応します。

葬儀後に初めて知らせる相手には、「葬儀は生前の本人の希望に基づき、参列者を限定して執り行いました」と客観的に説明します。

納骨報告

故○○○○様のご遺骨につきまして、令和○年○月○日、本人の生前の希望に基づき、○○霊園・○○納骨堂へ納骨を完了しましたのでご報告します。

本人が納骨先を非開示としている場合は、所在地を記載せず、納骨完了の事実だけを伝えます。

住居明渡し・家財処分報告

故○○○○様が使用されていた住居について、管理会社との協議と室内整理を行い、令和○年○月○日に鍵を返却し、明渡しを完了しました。室内の物品は、契約、本人の指定および関係権利者との確認に従い、保管、引渡しまたは処分を行っています。現金、預貯金関係書類、貴金属、権利証、写真、手紙等は一般の処分対象と区別し、権限者へ引き継ぎます。

契約外要求への回答

ご要望は承りました。ただし、当職の業務は故○○様との死後事務委任契約に定められた範囲に限られます。今回のご要望が委任事項に含まれるか、遺言執行者、相続人その他の権利者の判断や同意が必要かを確認するため、現時点で実施をお約束することはできません。確認後、対応可否をご連絡します。相続人間の意見調整や法的紛争への対応が必要な場合は、弁護士への相談をご案内します。

財産情報の回答留保

お問い合わせの預貯金、不動産、保険その他の財産情報は、相続関係、遺言執行者の有無、情報の管理主体および当職の報告権限を確認する必要があります。電話または本人確認未了のメールでは回答できません。開示を希望される情報と理由を書面でご提出ください。確認後、当職から回答するか、適切な担当者をご案内します。

他士業・関係機関との連携

遺言執行者

遺言執行者は、任務を開始したとき、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知します(民法第1007条第2項)。受遺者への通知について同項の明文規定はありませんが、遺贈実行のために連絡が必要になることがあります。死後事務受任者による死亡・葬儀等の報告と、遺言執行者による遺言執行上の通知を分けます。

  • 死亡日、死亡確認資料、遺言書の保管場所
  • 相続人・受遺者候補の連絡先
  • 通帳、印鑑、鍵、権利証、現金、貴重品の保管状況
  • 住居明渡期限、葬儀費用、家財処分の進捗
  • 親族からの照会、紛争兆候、処分を留保した物

財産の管理・処分に関する最終的な権限は、遺言執行者の権限に属する事項は遺言執行者に、それ以外は相続人その他の権利者に帰属します。行政書士は契約範囲内の保管、現状維持、引継ぎにとどめます。

弁護士

契約無効、家財処分差止め、損害賠償、遺言の有効性、遺留分、財産帰属、葬儀費用負担、示談、訴訟等が問題となる場合に連携します。事実通知や資料取次ぎと、紛争当事者間の交渉を区別します。

司法書士・税理士

不動産登記、相続財産清算人等の裁判所手続は司法書士へ、相続税、準確定申告、税務評価等は税理士へつなぎます。

施設・管理会社

死亡、退去、荷物、鍵、精算窓口等の必要情報に絞ります。相続人全員の連絡先を求められても、行政書士または遺言執行者の窓口情報で足りるかを確認します。

新人が気をつけたい点

考え違い 整える対応
親族なら財産を説明してよい 本人確認、立場、管理主体、開示権限を確認します。
本人の親族への不満をそのまま伝える 「本人の希望に基づく」と客観的に説明します。
電話で長時間説明する 財産、遺言、責任等は即答せず、質問を書面化します。
契約に書いてあれば何でもできる 物の性質、相続財産、第三者の権利、個別権限を確認します。
一時保管者が処分主体になる 重要物を保全し、遺言執行者等の権限者へ引き継ぎます。
口頭報告だけで終える 伝えた内容、留保した内容と理由を当日中に記録します。
全員へ同じメールを送る 相手別に必要情報を分け、個別送信またはBCCを使います。
親族間の伝言役になる 事務連絡と交渉を分け、対立時は弁護士へ連携します。

トラブル予防策

  • 契約締結時に、報告先、時期、死亡日・死因・葬儀・納骨先・財産情報の開示可否を別紙化します。
  • 死亡第一報、葬儀、納骨、生活関係事務、完了報告を分けます。
  • 戸籍上の続柄と、交流頻度・金銭問題等の実際の関係を分けて記録します。
  • 重要なメール・書面は、宛先、管理主体、添付、他人の情報を送信前に確認します。
  • 「全部説明してほしい」という要求を、死亡経緯、葬儀、財産、遺言、家財、支出、損害賠償等に分解します。
  • 確認中は「拒否」ではなく「本人確認と権限確認まで回答を留保する」と説明します。
  • 事務所内でも閲覧権限、端末、廃棄、会話場所、SNS投稿を管理します。

ケーススタディ

疎遠な兄弟から葬儀後に詳細説明を求められた場合

82歳の甲は独身で子がなく、弟乙、妹丙とは約20年間交流がありませんでした。甲は行政書士Aへ、死亡直後は友人丁だけに連絡し、直葬後に乙・丙へ死亡を知らせ、財産や遺言はAから説明しないよう指定しました。遺言執行者は弁護士Bです。

火葬後、乙はAへ、葬儀前に知らせなかった理由、死因、葬儀費用、預金、遺言、自宅の鍵を求め、家財処分の停止を要求しました。

最初に行う対応

  1. 「突然のご連絡となり、ご不快なお気持ちがあることは承りました」と受け止めます。
  2. 葬儀は本人の生前の希望と契約に基づき、参列者を限定したと客観的に説明します。
  3. 死亡日、火葬終了、死後事務受任者として対応中であることだけを必要範囲で答えます。
  4. 死因、費用内訳、預金、遺言、鍵、家財の帰属は回答を留保します。
  5. 乙の本人確認書類、続柄を示す戸籍、質問書の提出を求めます。
  6. Bへ要求内容、回答済み・留保事項、鍵・家財・重要物の保管状況を報告します。
  7. 現金、通帳、印鑑、権利証、貴金属、写真、手紙等を一般処分から分けて保全します。

回答例

「葬儀および火葬は、故人の生前の希望と死後事務委任契約に基づき、参列者を限定して実施しました。預貯金、遺言書、財産については、本人確認、相続関係、情報の管理主体、遺言執行者との役割分担を整理する必要があるため、現時点で回答することはできません。鍵や家財も直ちにお渡しできませんが、重要物は一般の処分対象と区別し、権限者へ引き継ぎます。ご質問は書面でご提出ください。」

この事例の判断相続人である可能性が高くても即時に財産情報を開示しません。本人の感情的発言は伝えず、遺言関係はBへ、重要物は保全して権限者へ引き継ぎます。契約無効、損害賠償、処分差止め等に発展した場合は弁護士へ連携します。

実務チェックリスト

報告前

  • 契約と本人希望を確認した
  • 報告先・禁止先を確認した
  • 遺言執行者を確認した
  • 開示可能・留保事項を分けた
  • 情報の管理主体を確認した

相手確認

  • 氏名、連絡先、続柄を確認した
  • 必要な本人確認資料を得た
  • 戸籍・委任状等を確認した
  • 質問目的と緊急性を確認した
  • 紛争の有無を確認した

報告内容

  • 死因を不用意に伝えていない
  • 財産・遺言へ即答していない
  • 本人の希望を客観的に表現した
  • 他人の情報を含めていない
  • 契約外要求を安請合いしていない

住居・家財

  • 鍵返却・明渡しを記録した
  • 重要物を分別した
  • 処分前後の写真を保存した
  • 取得希望を記録した
  • 最終処分権限者を確認した

記録・引継ぎ

  • 電話記録を当日作成した
  • 送受信・郵送記録を保存した
  • 留保内容と理由を記録した
  • 次回期限を設定した
  • 遺言執行者等へ引き継いだ

確認テスト

問題1
弟を名乗る人から預金残高を聞かれました。どうしますか。
電話では開示せず、本人確認、続柄、遺言執行者、管理主体、当職の開示権限を確認します。
問題2
葬儀後の連絡を指定されていた親族から、なぜ事前に知らせなかったかと聞かれました。
生前の本人の希望と契約に基づき、葬儀終了後の連絡となったと客観的に説明します。
問題3
親族一人から家財を全部捨ててよいと言われました。
相続人、受遺者、遺言執行者、物の帰属・価値、処分権限を確認し、重要物を保全します。
問題4
遺言執行者が任務開始後に遺言内容を通知すべき相手は誰ですか。
相続人です(民法第1007条第2項)。受遺者への通知は同項の明文義務ではありません。
問題5
故人の情報は個人情報保護法の対象外なので自由に開示できますか。
できません。生存者の個人情報を含む場合があり、行政書士法第12条の守秘義務と契約上の秘密保持もあります。
問題6
行政書士が通帳や貴重品を保管していれば、処分を決められますか。
一時保管と最終処分権限は別です。契約範囲で保全し、遺言執行者、相続人等へ引き継ぎます。
問題7
報告記録には何を残しますか。
誰に、いつ、何を、どの根拠で伝えたかに加え、求められた事項、伝えなかった事項、その理由、引継先を残します。

次回への接続

親族・関係者への報告が一通り終わったら、3-22「完了報告書の作成」へ進みます。報告管理表、電話記録、メール、郵送記録、葬儀・納骨・住居明渡し・解約の報告、遺言執行者への引継書、未回答事項、未了事務を案件ファイルへ整理します。

完了報告では、受任者が完了した事務、実施しなかった事務、契約対象外の事務、他士業・遺言執行者へ引き継いだ事務、回答待ちの事務、返金・残金処理が必要な事務を分けます。精算書と残金返還の詳細は3-23で扱います。

HANAWA行政書士事務所にご相談ください死後事務の報告範囲は、契約内容、本人の希望、親族関係、遺言執行者の有無によって異なります。相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、必要な手続や確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、契約書、本人の意思、最新の法令・公的ガイドライン、相続関係、各専門職の職域を確認してください。

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契約、本人の意思、必要性、守秘義務、記録を確認しながら報告を進めます。

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