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死後事務委任契約業務 3-19

死後事務委任の住居・家財対応
新人行政書士が一人で進める実務手順

本人死亡後の鍵確保、初回入室、貴重品探索、家財分類、遺品整理業者との連携、賃貸住宅の明渡し、施設居室の退去、持ち家の保全までを、記録様式と判断基準に沿って整理します。

入室記録貴重品保全家財目録明渡し・退去

この実務で大切にする考え方

本人が死亡すると、本人が所有していた現金、家財、貴重品、不動産その他の権利義務は、原則として相続の対象になります。死後事務委任契約がある場合でも、受任者が室内の物を一律に廃棄、売却又は形見分けできるとは限りません。

最初に押さえる四つの区分①契約に基づく死後事務、②相続人・遺言執行者等の判断を要する財産処分、③漏水防止や腐敗物除去などの緊急保全、④弁護士・司法書士等へつなぐ法的手続又は紛争対応を分けて考えます。

実務では、確認していない物は捨てず、権限が不明な物は保留し、移動した物は記録します。現金、通帳、印鑑、遺言書、高価品を扱う場面では、できる限り複数人で確認します。

図解|住居・家財対応の四つの軸
権限契約、遺言、相続関係、所有者を確認します。
保全盗難、漏水、火災、腐敗、散逸を防ぎます。
記録写真、動画、目録、立会記録をつなげます。
引継ぎ相続人、遺言執行者、清算人等へ渡します。

この記事で到達できること

初回入室を安全に行える

鍵、立会者、撮影順序、緊急保全を整理できます。

重要物を保全できる

現金、通帳、印鑑、遺言書、権利証等を記録できます。

家財処理を管理できる

分類、目録、処分承認、業者手配を進められます。

明渡し・保全を完了できる

賃貸、施設、持ち家ごとの終了記録を整えられます。

必要になる実務場面

賃貸住宅

賃料、解約、残置物、原状回復、敷金、鍵返還を扱います。賃借権と家財の所有権は相続の対象となり得るため、賃貸借の解除と残置物処理の権限を別々に確認します。国土交通省・法務省のモデル契約条項は参考になりますが、利用は義務ではなく、実際の契約内容を優先します。

施設利用契約、退去期限、貸与品、福祉用具、預り品、清掃費、鍵等を確認します。賃貸住宅と同じ扱いとは限らないため、入居契約書、管理規程、重要事項説明書を読みます。

持ち家

施錠、防犯、漏水、火災、郵便物、庭木、管理費、近隣対応を確認します。売却、賃貸、解体、大規模修繕は本回の対象外であり、相続人又は遺言執行者等へ引き継ぎます。

おひとりさま

相続人が分からない場合や、先順位から後順位までの相続人全員が相続放棄した結果、相続人の存在が明らかでない場合は、相続財産清算人選任を検討します。申立人は利害関係人又は検察官であり、死後事務受任者も未払報酬・立替金など具体的な法律上の利害関係があれば申立人となり得ますが、受任者という立場だけで当然に申立人となるわけではありません。申立人適格、申立書作成、選任後の法的判断は弁護士又は司法書士へつなぎます。

法律婚をしていないパートナーが当然に相続人になるとは限りません。本人単独所有品、パートナー所有品、共同購入品、所有者不明品を分け、同居していたことだけを理由に帰属を判断しません。

基本知識

行為を三段階に分ける

区分 主な行為 実務対応
必要最小限の保全 施錠、止水、腐敗物除去、現況撮影、貴重品の一時保全 理由と前後写真を残し、速やかに報告します。
権限確認後の実行 大量廃棄、形見分け、売却、契約解除、原状回復発注 契約、遺言、相続人等の指示を確認します。
専門家・権利者へ引継ぎ 所有権争い、遺産分割、相続放棄との関係、法的交渉 作業を保留し、資料を整理して連携します。

相続財産と早期対応物

現金、通帳、印鑑、貴金属、時計、美術品、車両、パソコン、写真、権利証、保険証券、契約書等は相続財産となり得ます。腐敗食品、生ごみ、火気・漏水の原因物、施設貸与品、レンタル品等は早期対応が必要ですが、早期対応が必要であることと自由に処分できることは同じではありません。

遺言書と遺言執行者

公正証書遺言、法務局保管遺言、自宅保管遺言、特定家財の遺贈、祭祀財産、ペット、写真・手紙、デジタル機器の指示を確認します。封印された遺言書らしき物は開封せず、発見場所と外観を記録して専門家へ連絡します。

利益相反

行政書士自身又は関係者が家財を取得することは原則として避けます。死後事務受任者、遺言執行者、一部相続人の受任者、業者紹介料の受領者を兼ねる場合は、判断者と利益を受ける者が重ならないよう整理します。

実務の進め方

図解|住居・家財対応の実行順序
  1. 契約、遺言、相続関係、住居契約、費用原資を確認します。
  2. 明渡し・退去期限と鍵の所在を確認します。
  3. 立会者を決め、初回入室前に関係者へ連絡します。
  4. 入室前後を撮影し、危険・衛生状態を確認します。
  5. 貴重品と重要書類を探索し、封緘・目録化します。
  6. 家財を保全、形見、査定、廃棄、判断保留に分類します。
  7. 権限者へ中間報告し、処理方針を書面で確認します。
  8. 適法な処理経路を確認して業者を手配します。
  9. 搬出、清掃、形見分け、貸与品返却を記録します。
  10. 明渡し、施設退去又は持ち家保全を完了し、報告します。

案件ファイル

「契約・権限」「相続関係」「住居契約」「鍵」「初回入室」「写真・動画」「重要物」「家財目録」「関係者連絡」「業者・許可」「作業記録」「形見分け」「明渡し」「費用」「完了報告」に分けます。写真名は「20260715_初回入室_玄関_01」のように統一します。

現場へ行く前の五項目

  • 住居の種類と契約名義
  • 鍵の保有者、本数、警備設備
  • 明渡し・退去・賃料発生の期限
  • 死後事務受任者、相続人、遺言執行者等の権限
  • 預託金、相続財産、敷金等の費用原資

鍵の確保

受領日時、交付者、鍵の種類、本数、番号、合鍵、郵便受け、物置、金庫、車両、返却先を鍵受領記録に記載します。鍵には氏名・住所を直接表示せず案件番号で管理します。解錠が必要な場合は権限と費用を確認し、できる限り管理会社等の立会いで行います。

初回入室と撮影

現金・高価品がある、相続人が不明、孤独死現場、同居人の物が混在する場合は複数人で入室します。建物外観、玄関、各室全景、収納、台所、冷蔵庫、水回り、ベランダ、物置、メーター、重要物発見場所、退室後の施錠まで撮影します。物を動かす前の写真を残します。

入室記録項目

基本情報

案件番号、所在地、入退室時刻、目的、入室者、立会者、解錠者、鍵。

外部状況

扉、封印、郵便物、異臭、破損、侵入跡、メーター。

室内状況

通電、ガス、水道、食品、ごみ、害虫、ペット、床・壁、危険物。

処置

移動・廃棄・持出し物、理由、写真番号、報告先、施錠。

緊急保全

ガス臭、漏水、火災のおそれ、腐敗食品、害虫、ペット、薬品、刃物、現金等の露出があれば必要最小限の措置を行います。なぜ即時対応が必要だったか、何を処理したか、立会者、費用、報告日時を記録します。

貴重品・重要書類探索チェック

金銭・金融

  • 現金、外貨、金券
  • 通帳、カード
  • 証券、暗号資産資料
  • 貸金庫、借用書

印章・不動産

  • 実印、銀行印、印鑑登録証
  • 登記識別情報、権利証
  • 固定資産税資料
  • 車検証、駐車場契約

保険・終活

  • 生命・火災保険証券
  • 遺言書、保管証
  • 死後事務・財産管理契約
  • 形見分け、連絡先一覧

身分・デジタル

  • 免許証、旅券、保険関係書類
  • マイナンバーカード
  • パソコン、スマートフォン
  • 記録媒体、パスワード資料
マイナンバー関係資料死者の個人番号も番号法上の安全管理対象です。発見記録には「マイナンバーカード1枚」などと記載し、個人番号を書き写さず、裏面を漫然と撮影・複写・共有しません。手続上必要な場合だけ目的を限定し、不要になった複写物は復元できない方法で廃棄します。

現金は発見場所、封筒外観、金種・枚数を複数人で確認し、現金確認書と封緘袋を用います。通帳と印鑑は別保管し、権限なく預金を引き出しません。遺言書、登記識別情報、高価品は個別番号を付けて保全します。

家財の分類

分類 対応
重要保全品 現金、通帳、遺言書、権利証、写真、遺骨 個別目録と封緘・保管
権限者判断品 家具、家電、コレクション、車両 処分前に指示を確認
形見分け候補 愛用品、写真、記念品、時計 引渡記録を作成
査定候補 貴金属、美術品、楽器、ブランド品 即決せず査定・承認
廃棄候補 生活ごみ、汚損物、壊れた物 写真と承認後に処理
判断保留 所有者不明、共同所有、価値不明 一時保管を検討

家財目録

管理番号、品名、数量、発見場所、所有者表示、状態、推定価値、写真番号、分類、指示者、搬出先、処分方法、売却額、処分費、受領者を記載します。衣類等は一括記載もできますが、ポケットや収納内を確認します。

中間報告

初回入室後、室内状況、緊急措置、発見財産、家財量、期限、判断事項、見積り予定、一時保管の必要性を報告します。相続人が複数いる場合は、一人の指示だけで一括処分しません。全員が相続放棄したとの説明がある場合は、受理状況、後順位相続人、遺言・受遺者、清算人選任の有無を確認します。

遺品整理業者の選定

家財量が多い、高額、特殊清掃、高価品買取り、相続人不明の場合は相見積りを検討します。作業範囲、責任者、保険、追加料金、買取品、写真、貴重品発見時の停止ルールを確認します。

家庭残置物の処理経路家庭から排出される不要な残置物は原則として一般廃棄物です。収集運搬は、当該市区町村の一般廃棄物収集運搬業許可を持つ者又は市区町村の委託を受けた者が行います。産業廃棄物収集運搬業許可や古物商許可だけでは、家庭ごみを廃棄物として運搬する根拠にはなりません。実際の運搬者、許可区域、有効期間、委託関係、処理先を確認します。
  • 法人名、所在地、責任者、損害保険
  • 分別、搬出、清掃、保管、買取りの範囲
  • 一般廃棄物を実際に運搬する者と許可・委託関係
  • 処理施設、家電リサイクル、処理困難物
  • 人件費、車両費、処分費、追加料金、買取額
  • 貴重品発見時の停止、保留箱、無断処分禁止

作業当日

開始前に残す物と保留場所を表示し、床・壁・建具、車両、作業人数、実際の運搬者を記録します。作業中は部屋ごとに進め、現金・通帳・遺言書・写真・高価品を発見したら止めます。終了後は全室、収納、ベランダ、物置、傷、残置物、鍵を確認し、見積書と請求書を照合します。

形見分け

本人の希望、遺言、所有権、経済的価値、権限者の指示を確認します。引渡日、受領者、本人との関係、品名、管理番号、写真番号、状態、付属品、指示者、署名を記録します。郵送は追跡可能な方法を用います。

賃貸住宅の明渡し

  • 解約権限と残置物処理権限を別々に確認した
  • 家財、冷蔵庫、収納、ベランダ、物置を確認した
  • 備付設備、貸与品、郵便物を確認した
  • 清掃に必要な電気・水道の停止日を調整した
  • 入居時資料と退去時写真を比較した
  • 原状回復費を無権限で承認していない
  • 鍵本数、返還日時、敷金精算先を記録した

施設居室の退去

契約終了日、利用料最終日、貸与品、レンタル福祉用具、薬、預り金、保証金、清掃費、鍵、郵便物、施設保管の貴重品を確認します。施設職員の説明だけで廃棄範囲を決めず、契約書・貸与品一覧と照合します。

持ち家の保全

施錠、合鍵、郵便物、漏水、ガス、電気、冷蔵庫、給湯器、庭木、雨漏り、災害対策、害虫、管理組合、保険、定期巡回を確認します。大規模な家財処分、売却、賃貸、解体、長期管理契約は、遺言執行者又は相続人等へつなぎます。

完了記録

業務期間、権限、入室履歴、立会者、緊急措置、発見財産、家財分類、搬出・保管・処分、業者・許可関係、形見分け、費用、鍵、明渡し又は保全状況、未解決事項、引継先をまとめます。

確認する項目

本人死亡前に確認

  • 住居契約、所有者、鍵、管理会社
  • 現金、通帳、印鑑、遺言書の場所
  • 高価品、形見分け、寄附・廃棄希望
  • 写真、手紙、仏壇、遺骨、ペット
  • 相続人候補、遺言執行者、パートナー
  • 預託金、費用上限、立替え

本人死亡後に確認

  • 死亡日時、住居への最終入室者
  • 警察の関与、封鎖、鍵
  • ペット、漏水、冷蔵庫、危険物
  • 相続人、相続放棄、後順位相続人
  • 明渡し・退去期限、立会希望
  • 処分への異議、費用承認者

判断フロー

図解|物を処理してよいか
  1. 腐敗、危険、衛生上の緊急性を確認します。
  2. 第三者所有物又は貸与品でないか確認します。
  3. 現金、遺言書、高価品等は処分せず保全します。
  4. 契約に具体的な処理権限があるか確認します。
  5. 相続人、遺言執行者、受遺者の権利との抵触を確認します。
  6. 価値又は所有者が不明なら保留し、必要に応じて専門家へ相談します。
図解|相続人不明・全員相続放棄
  1. 戸籍上の相続人と後順位相続人を調査します。
  2. 相続放棄申述受理通知書等で受理状況を確認します。
  3. 遺言、受遺者、相続財産清算人の有無を確認します。
  4. 緊急保全を超える処分は保留します。
  5. 弁護士又は司法書士と清算人選任及び申立人適格を検討します。

作成・確認する書類

作成書類 主な用途
実施計画書・権限確認票 期限、権限者、費用、作業範囲を整理
鍵受領記録・入室立会記録 鍵管理と現場状況を証明
現況写真一覧・緊急措置記録 作業前後と即時対応の根拠を保存
重要物発見記録・現金確認書 発見、封緘、保管、引継ぎを管理
家財目録・判断保留品一覧 分類、処理方針、写真を対応
中間報告書・処分承認書 権限者の判断を記録
業者比較表・許可確認票・作業指示書 費用、処理経路、作業範囲を確認
形見分け・貸与品・鍵の引渡記録 受領者、品目、日時を証明
明渡・退去確認書・保全引継書 住居対応の終了又は引継ぎを記録
費用一覧・完了報告書 支出、未処理事項、添付資料を整理

確認資料として、死後事務委任契約、賃貸借・施設契約、遺言書、相続関係資料、相続放棄受理資料、許可証・委託資料、見積書、請求書、領収書、原状回復資料をそろえます。

文例・記録例

初回入室記録

2026年7月15日午前10時2分、管理会社担当者○○氏及び当職補助者○○の立会いの下、管理会社保管の合鍵で入室した。解錠前の玄関扉及び鍵穴に破損はなく、立入制限表示も認められなかった。入室直後、玄関から室内全体を連続動画で撮影した。

リビングテーブル上に財布1点、寝室机上に預金通帳2冊が露出していたため、発見場所を撮影し、立会者と確認の上、個別の封緘袋に収納した。冷蔵庫内の腐敗食品は、悪臭及び害虫発生のおそれがあったため、写真撮影後、衛生上の緊急措置として廃棄した。その他の家財は処分していない。

現金発見記録

管理番号V-003。2026年7月15日午前10時27分、寝室北側タンス上段右側で「緊急用」と記載された封筒を発見。現金150,000円、10,000円札15枚。発見者は行政書士○○、立会者は管理会社○○及び補助者○○。封緘袋C-002に収納し、事務所耐火金庫で保管。遺言執行者へ同日午後1時10分に報告した。

マイナンバーカード発見記録

管理番号ID-004。寝室机上段引出しでマイナンバーカード1枚を発見。表面のみ目視確認し、個人番号の転記・複写は行っていない。本人確認書類と区分して封緘し、必要な手続及び引渡先を確認する。

処分承認依頼

故○○様の居室について、初回確認及び重要物探索を完了しました。現金、通帳、印鑑、保険関係書類、本人確認書類、写真類及び価値判断が難しい物は処分対象から除外して保管しています。その他の家財は別紙目録のとおり分類しました。廃棄候補品についても、目録と写真をご確認いただいた上で、書面により処理方針をご指示ください。

業者への作業指示

別紙一覧で廃棄対象と明示した物のみを搬出してください。現金、通帳、印鑑、遺言書と思われる書類、登記識別情報、写真、手紙、貴金属、時計、パソコン、スマートフォン、マイナンバーカードその他重要性を判断できない物を発見した場合は、作業を停止して当職へ報告してください。家庭から排出される廃棄物は、当該区域で一般廃棄物収集運搬業の許可を有する者又は市区町村から委託を受けた者が運搬し、運搬者及び処理先を作業前に明示してください。

形見分け引渡記録

2026年8月3日、遺言執行者○○氏の指示に基づき、管理番号M-015の腕時計1点を○○様へ引き渡した。○○社製、銀色、革ベルト、ケース付き。使用感あり、作動未確認。写真番号IMG-M015-01~04。受領者は現状有姿で受領したことを確認し、受領者、引渡者及び立会者が署名した。

他士業・関係機関との連携

連携先 主な場面
弁護士 相続人間対立、所有権争い、相続放棄と処分、原状回復紛争、損害賠償、清算人申立人適格
司法書士 相続登記、法務局保管遺言、家庭裁判所提出書類、清算人選任申立て
税理士 相続税、準確定申告、高価品売却、事業用資産
賃貸人・管理会社 鍵、入室、明渡し、設備、原状回復、敷金
施設 退去期限、貸与品、預り品、薬、鍵、精算
自治体廃棄物担当 粗大ごみ、許可業者、委託業者、処理困難物、持込み施設
警察・消防 現場立入り、封鎖、遺留品、危険物、事件性

新人が気をつけたい論点

論点 整える対応
「家財処分」の一文で全部処分する 対象物、価値、相続関係、具体的権限を確認します。
一人で入室し無記録で作業する 写真、動画、目録、立会記録を組み合わせます。
全員相続放棄なら所有者がいないと考える 受理状況、後順位相続人、清算人の有無を確認します。
死後事務受任者は当然に清算人申立人になれると考える 報酬・立替金等の具体的利害関係を専門家と確認します。
マイナンバーカード裏面を撮影する 存在と保管状況だけを記録し、番号の取得を抑えます。
産業廃棄物許可で家庭残置物も運べると考える 一般廃棄物の許可又は自治体委託を確認します。
同居パートナーの物まで処分する 所有者不明品として保留し、帰属を確認します。
公共料金を先に停止する 清掃、照明、給水に必要な期間と調整します。
明渡確認書へその場で全面同意する 権限と原状回復負担の内容を確認します。

トラブル予防策

  • 重要物探索が終わるまで大量処分を始めない。
  • 写真と家財目録を権限者へ示してから処分する。
  • 高価品は査定前に売却せず、買取額と作業費を分けて記録する。
  • 相続人の意見が分かれた場合や全員放棄が疑われる場合は作業を保留する。
  • 一般廃棄物の許可・委託関係が確認できない業者に搬出させない。
  • 現金、通帳、印鑑、遺言書、権利証、高価品は二重確認する。
  • 電話の処分指示もメール等で確認し、重要品は明示的承認を得る。
  • 業者紹介料、買取り、行政書士自身の家財取得は透明性を確保する。
  • 個人番号、通帳、カード画像の共有範囲を限定する。
  • 預託金が不足しそうな場合は、緊急保全を優先して費用配分を整理する。

ケーススタディ

賃貸住宅に貴重品と大量の家財が残っている場合

82歳のAさんは賃貸マンションで一人暮らしをしていました。行政書士Bとの死後事務委任契約には、賃貸住宅の解約、家財整理、貴重品保全、形見分け、明渡しが記載されています。配偶者と子はなく、兄は死亡し、甥・姪の所在は未確認です。管理会社から3週間以内の明渡しを希望され、室内には大量の家財があります。Aさんは生前「タンスに現金があり、時計は甥に渡したい」と話していました。

進め方

  1. 死後事務委任契約、賃貸借契約、遺言、本人希望書を確認します。
  2. 管理会社へ、重要物探索と権限確認後に日程を示すと説明します。
  3. B、事務所職員、管理会社担当者で入室し、全景を撮影します。
  4. 腐敗食品だけを緊急処分し、前後写真を残します。
  5. タンス内の現金を3名で確認し、現金確認書と封緘袋で保全します。
  6. 時計、写真、書類、高価品を判断保留として個別管理します。
  7. 甥・姪を含む相続関係と相続放棄の受理状況を調査します。
  8. 複数業者の見積りと一般廃棄物の処理経路を確認します。
  9. 期限までに判断できない物は一時保管し、その他は承認範囲で処理します。
  10. 室内、損傷、メーター、鍵を確認して明渡記録を作ります。
この事例の要点明渡しを急ぐ事情と、相続財産を保全する必要性を分けて考えます。一時保管を使うことで、賃貸住宅の明渡しと重要物の保全を両立できます。

実務チェックリスト

権限・相続関係

  • 契約、遺言、遺言執行者を確認した
  • 相続人と後順位を確認した
  • 相続放棄受理状況を確認した
  • 清算人選任の要否を検討した
  • 利益相反を確認した

鍵・入室

  • 鍵の種類、本数、交付者を記録した
  • 複数人立会いを検討した
  • 入室前後と全室を撮影した
  • 漏水、火気、ペットを確認した
  • 退室時の施錠を記録した

重要物

  • 現金、通帳、印鑑を確認した
  • 遺言書、権利証、保険を確認した
  • 高価品、写真、デジタル機器を確認した
  • 発見場所、封緘、保管先を記録した
  • 個人番号を不要に記録していない

家財・業者

  • 家財目録と保留品一覧を作成した
  • 処分承認を書面で得た
  • 一般廃棄物の運搬者を確認した
  • 許可区域、有効期間、処理先を確認した
  • 作業前後と搬出を記録した

明渡し・退去

  • 貸与品、収納、物置を確認した
  • ライフライン停止日を調整した
  • 原状回復を無権限で承認していない
  • 鍵返還と敷金精算先を記録した
  • 施設預り品・預り金を確認した

完了

  • 全室と残置物を最終確認した
  • 見積書、請求書、領収書を照合した
  • 形見分けと引渡しを記録した
  • 未処理事項と引継先を整理した
  • 完了報告資料を作成した

確認テスト

問題1
契約書に「家財処分」とあれば、相続人等への確認なくすべて処分できますか。
一律には判断しません。具体的権限、財産価値、遺言、相続人・遺言執行者等の権利を確認します。
問題2
相続人全員が放棄したと親族から聞いた場合、家財を直ちに処分できますか。
受理状況、後順位相続人、遺言・受遺者、相続財産清算人の有無を確認し、緊急保全を超える処分は専門家へ相談します。
問題3
死後事務受任者は常に相続財産清算人選任の申立人になれますか。
受任者という立場だけでは足りません。未払報酬、立替金等の具体的な法律上の利害関係を確認します。
問題4
マイナンバーカードは表裏を撮影して通常の写真フォルダへ保存してよいですか。
不要な個人番号の取得・保存は避けます。カードの存在と保管状況を記録し、必要性がない裏面撮影や複写を行いません。
問題5
産業廃棄物収集運搬業許可があれば、家庭の廃棄家財を運搬できますか。
その許可だけでは足りません。原則として当該市区町村の一般廃棄物収集運搬業許可又は自治体委託を確認します。
問題6
持ち家で漏水している場合、相続人全員の同意まで止水を控えますか。
被害拡大を防ぐ必要最小限の措置を行い、理由、内容、写真、費用を記録して速やかに報告します。
問題7
賃貸人と原状回復費用でもめた場合、行政書士が相続人の代理人として交渉できますか。
法的紛争の代理交渉は弁護士へつなぎます。行政書士は写真、契約、見積り等の資料整理を行います。

次回への接続

今回は、鍵の確保、初回入室、重要物探索、家財分類、業者手配、形見分け、賃貸明渡し、施設退去、持ち家保全、完了記録までを扱いました。次回3-20では、電気、ガス、水道、電話、インターネット、警備、駐車場その他の契約について、解約権限、返却物、最終請求及び解約記録を整理します。

HANAWA行政書士事務所にご相談ください死後事務委任契約は、住居の種類、家財量、親族関係、遺言、費用原資によって準備する内容が変わります。相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、契約内容、遺言、相続関係、自治体・賃貸人・施設の運用等により確認事項が異なります。

公的情報

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本人の意思、財産保全、権限確認、記録化を大切にしながら住居・家財対応を進めます。

あわせて確認したいこと

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相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

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