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死後事務委任契約業務 3-18

病院・施設費用の精算
新人行政書士が一人で実務判断するための進め方

本人が亡くなった後は、入院費、施設利用料、食費、日用品費、退去費用、保証金・預り金・敷金、居室私物の確認が同時に進みます。本記事では、死後事務受任者として、契約範囲と預託金残額を確認しながら、支払うもの、確認してから判断するもの、相続人・遺言執行者・専門家へ引き継ぐものを整理します。

病院費用施設利用料預託金管理おひとりさま支援

この実務で大切にする考え方

病院・施設費用の精算は、請求書を受け取って支払うだけの作業ではありません。死後事務委任契約の範囲、預託金残額、請求項目の内訳、保証金や預り金の返還、遺言執行者の有無、相続放棄の可能性、私物処分の可否を同時に確認します。

医療費・施設利用料等の未払費用は、原則として相続債務に該当し得ます。支払いは相続財産や相続関係に影響するため、死後事務受任者は善良な管理者として、根拠資料を確認し、記録を残し、必要に応じて関係者へ報告します。

最初に押さえる実務の境界行政書士が行うのは、契約に基づく支払事務、資料収集、事実整理、預託金管理、関係者への報告です。施設に対して「高額」「不当」「通常損耗ではないか」などの評価を伝えたり、減額・支払拒絶を交渉したりすることは避けます。争いがある場合は、事実関係を整理して弁護士へつなぎます。

おひとりさま・おふたりさまの支援では、親族がいない、疎遠である、相続放棄を検討している、遺言執行者が別にいる、といった事情がよくあります。本人の意思と契約内容を軸にしながら、相続人等へ引き継ぐべき事項を整理することが重要です。

この記事で到達できること

支払可否を整理できる

請求された費用を、支払候補、追加確認、支払保留に分けて判断できます。

預託金を管理できる

預託金が受任者固有の財産ではないことを前提に、支払記録と領収書を整理できます。

返金を慎重に扱える

保証金、敷金、施設預り金、入居一時金返還金について、指定受取人や遺言執行者を確認できます。

私物処分を急がない

相続財産の処分や相続放棄への影響を意識し、写真・一覧化・保管を優先できます。

図解|病院・施設費用精算の4つの軸
契約範囲医療費、施設費、退去費用、返金受領、私物引取りの権限を確認します。
費用内訳請求書、明細書、精算書で、対象期間と計算内容を確認します。
財産管理預託金残額、返還金、相続債務、遺言執行者の管理権限を整理します。
記録と報告支払記録、領収書、写真、連絡記録を完了報告につなげます。

基本知識

死後事務受任者が精算できる範囲

支払いの可否は、死後事務委任契約書の記載で確認します。医療費、入院費、施設利用料、介護費、退去費用、居室明渡し、返金受領、私物引取り、不要品処分が委任事項に含まれているかを見ます。

確認条項 見る内容 注意点
支払権限 医療費・施設費・退去費用を支払えるか 葬儀だけの委任なら、施設費用は別途確認します。
支払原資 預託金、管理口座、本人資金のどれか 死亡後は本人名義口座が凍結されることがあります。
返金受領 保証金・敷金・預り金等を受け取れるか 指定受取人や遺言執行者の有無も確認します。
私物対応 引取り、保管、処分の権限があるか 処分権限がない場合、廃棄は行わず保管を優先します。
紛争対応 争いがある費用をどう扱うか 行政書士が交渉せず、弁護士等へ引き継ぎます。

預託金の性質

預託金は、受任者固有の財産ではありません。委任契約に基づいて管理する金銭であり、事務所資金と分けて管理し、支払日、支払先、金額、支払内容、根拠資料、領収書を記録します。

預託金があるからといって、請求された費用を自由に支払えるわけではありません。契約範囲、支払優先順位、残額、相続人・遺言執行者への影響を確認してから処理します。

確認すべき請求項目

区分 主な項目 確認ポイント
病院費用 入院費、診療費、食事代、差額ベッド代、文書料、病衣代 対象期間、保険適用、自費、死亡日までの請求か。
施設費用 施設利用料、介護サービス自己負担、居住費、管理費、食費 死亡月が満額か日割か、明渡日までか。
実費 日用品費、洗濯代、理美容費、オムツ代 使用明細や実利用分を確認します。
退去費用 清掃費、原状回復費、廃棄費、鍵交換費 内訳資料や写真の有無を、報告資料として確認します。
返金関係 保証金、敷金、施設預り金、入居一時金返還金 充当予定、返金額、指定受取人、返金先を確認します。

保証金・預り金・敷金・返還金の違い

保証金や敷金は、未払費用や退去費用へ充当されることがあります。施設預り金は、日用品購入等の小口現金として使われていることが多く、使用明細と残額を確認します。入居一時金返還金は、契約内容や償却期間、返還金受取人の指定によって扱いが変わります。

返金は一律に相続財産と決めつけません。生前の入居契約で返還金受取人が指定されている場合は、その定めを確認します。指定がない返還金について、遺言執行者がいるときは、原則として遺言執行者が指定する口座へ直接返金してもらいます。受任者が一時的に受領する場合でも預かりにすぎず、速やかに引き渡し、記録を残します。

身元引受人・保証債務との関係

死後事務受任者であることと、施設入居契約上の身元引受人、連帯保証人、身元保証契約の当事者であることは別です。施設から支払いを求められた場合は、署名した契約書、契約当事者、保証範囲、保証限度額、保証期間を確認します。保証債務の有無に争いがある場合は、弁護士へつなぎます。

非弁リスクの基本

資料請求・事実確認にとどめる場合でも、請求内容について「高額である」「不当である」「通常損耗ではないか」「支払義務はないのではないか」といった評価を、口頭・書面を問わず施設へ伝えないようにします。これらは法的主張と受け取られることがあります。

請求内容に疑問が生じた場合は、受任者が自ら是正を求めるのではなく、当該状態のまま事実関係を整理し、相続人・遺言執行者へ報告するか、弁護士へ引き継ぎます。

病院・施設費用精算の進め方

図解|死亡連絡後から精算報告までの基本フロー
  1. 死亡日時、死亡場所、病院・施設担当者、遺体搬送後の状況を記録します。
  2. 死後事務委任契約書を確認し、医療費・施設費・退去費用・返金受領・私物対応の権限を見ます。
  3. 預託金残額、葬儀・納骨予定費用、報酬、予備費を整理します。
  4. 病院・施設へ、請求書、明細書、精算書、預り金明細の提供を依頼します。
  5. 費用を、支払候補、追加確認、保留・専門家連携に分類します。
  6. 保証金、敷金、施設預り金、入居一時金返還金、指定受取人を確認します。
  7. 遺言執行者や相続放棄検討者がいる場合は、返金・支払い・処分を慎重に扱います。
  8. 居室私物は写真撮影・一覧化・保管を優先し、廃棄は急ぎません。
  9. 支払う場合は、預託金管理表に記入し、領収書・振込控えを保存します。
  10. 相続人・遺言執行者・指定連絡先へ、支払済み事項と未確定事項を報告します。

死亡月の日割精算

死亡月の請求は、月額満額、死亡日までの日割、居室明渡日までの日割、実利用分のいずれかで計算されることがあります。施設へは、異議や評価ではなく、精算報告のための内訳確認として連絡します。

項目 確認する内容
家賃・居住費 死亡日までか、明渡日までか、月額満額か。
食費 実食数か、日割か、死亡後分が含まれていないか。
管理費・生活支援費 契約終了日までか、明渡日までか、日割の有無。
介護サービス費 サービス提供日までの請求か。
日用品費・洗濯代 実使用分か、定額請求か、明細があるか。

支払いと立替え

死後事務において、受任者個人または事務所が費用を立て替えることは、原則として行いません。特に預託金不足が見込まれる場合は、支払いを保留し、相続人、遺言執行者、相続財産清算人等へ引き継ぎます。

やむを得ず立替えを検討する場合でも、事前承認、立替額の上限、回収可能性、契約上の根拠、相続放棄への影響、事実上の債務引受と誤解されないかを確認し、記録を残します。

私物引取りと居室明渡し

居室の私物は、資産価値の有無にかかわらず、死後事務委任契約に廃棄処分権限の明記がない限り、受任者が単独で廃棄しません。相続人が相続放棄を検討している場合は、処分権限の有無にかかわらず、廃棄・売却・譲渡・消費などの処分行為を保留します。

私物処分と単純承認リスク私物の処分が、民法第921条第1号の「相続財産の処分」に該当すると、相続人について単純承認が成立したとみなされる可能性があります。行政書士は、まず写真撮影、一覧化、貴重品と一般物の分類、保管場所の確保、関係者への報告を行います。
  • 現金、通帳、印鑑、キャッシュカード、保険証券、不動産権利証、遺言書らしき書面は保管を優先します。
  • スマートフォン、パソコン、外部記録媒体、写真、手紙、位牌、仏具、宗教用品も慎重に扱います。
  • 他者の遺骨・位牌等が居室に残されている場合や、墓地使用許可証・改葬関係書類がある場合は、次工程へ明確に引き継ぎます。

ヒアリング項目

病院・施設へ確認すること

  • 担当部署、担当者名、連絡先、請求書発行予定日、支払期限。
  • 本人の入院・入所期間、死亡日時、請求対象期間。
  • 入院費、施設利用料、食費、日用品費、洗濯代、理美容費の内訳。
  • 死亡月の計算方法、居室明渡日、保管費や追加費用の発生時期。
  • 施設預り金、保証金、敷金、入居一時金返還金の有無。
  • 当初預入額、現在残額、充当予定額、返金予定額、返還金受取人の指定有無。
  • 居室内私物の保管場所、施設預り品、貴重品、引取り期限、一時保管可能期間。
  • 清掃費・原状回復費がある場合、報告資料としての内訳資料や写真の有無。

相続人・遺言執行者等へ確認すること

  • 病院・施設から請求が来ていることを把握しているか。
  • 相続放棄を検討している人がいるか。
  • 遺言執行者が選任されているか、財産管理を開始しているか。
  • 施設契約の保証人・身元引受人が誰か。
  • 私物の引取り希望、保管希望、処分に関する意向があるか。
  • 返金の受領者、指定口座、重要書類や貴重品の引渡先。
  • 未払費用について、弁護士等への相談が必要な事情があるか。

判断フロー

図解|支払い可否の判断
  1. 契約に支払権限がなければ、相続人・遺言執行者へ引き継ぎます。
  2. 請求書・明細書・精算書がなければ、精算報告用資料として提供を依頼します。
  3. 対象期間や内訳が確認できない場合、評価や異議を述べず、明細の提供を依頼します。
  4. 預託金残額が不足する場合は支払いを保留し、原則として立替えません。
  5. 遺言執行者がいる場合、相続財産からの支払い・返金受領について確認します。
  6. 相続放棄を検討している人がいる場合、支払い・返金受領・私物処分を慎重に扱います。
  7. 紛争性や法的判断を要する事項があれば、支払いを保留し、弁護士等へつなぎます。
  8. 問題が整理できた費用のみ、支払記録を作成して支払います。
図解|返金の判断
  1. 保証金・敷金・預り金・返還金の有無を確認します。
  2. 指定受取人がいる場合は、契約内容に従って接続します。
  3. 指定受取人がいない場合は、遺言執行者の有無を確認します。
  4. 遺言執行者がいるときは、原則として遺言執行者指定口座へ直接返金してもらいます。
  5. 受任者が一時受領する場合は預かりとして記録し、速やかに引き渡します。
  6. 相続放棄や相続争いの可能性があれば、受領を保留して専門家へつなぎます。

確認・整理する資料

区分 資料 確認ポイント
契約 死後事務委任契約書、本人希望書、公正証書 支払権限、返金受領、私物処分、報告義務を確認します。
病院 請求書、診療費明細書、領収書 対象期間、金額、支払期限、支払先を確認します。
施設 施設利用料明細、精算書、入居契約書、重要事項説明書 死亡月の計算、退去費用、返還金を確認します。
預り金 預り金管理明細、差引精算書 使用履歴、残額、未払費用への充当を確認します。
退去費用 清掃費・原状回復費の見積書、写真資料 関係者報告のため、内訳を整理します。
私物 私物一覧、居室写真、預り品返還確認書 保管物、重要物、処分保留物を分類します。
支払 預託金管理表、振込控え、領収書 支払日、支払先、金額、根拠を記録します。
報告 関係者報告書、未確定事項引継書 相続人・遺言執行者・専門家へ引き継ぎます。

支払記録に残す項目

  • 支払日、支払先、支払内容、対象期間、請求額、支払額。
  • 支払方法、振込手数料、預託金残額、支払根拠条項。
  • 確認資料、領収書の有無、報告先、報告日、未確定事項。

説明文例・記録例

病院へ請求書・明細書を依頼する文例

〇〇病院 医事課 御中

お世話になっております。故〇〇〇〇様の死後事務受任者である行政書士〇〇です。故人の入院費用精算につき、死後事務委任契約に基づき確認を進めております。精算報告書作成および預託金管理のため、請求書、診療費明細書、対象期間が分かる資料、既払金・預り金等がある場合の精算書、支払期限および振込先が分かる資料をご送付いただけますでしょうか。お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

死亡月の計算内訳を確認する文例

〇〇ホーム 事務ご担当者様

お世話になっております。故〇〇〇〇様の死後事務受任者である行政書士〇〇です。死亡月の施設利用料精算について、当方、死後事務受任者として相続人または関係者への精算報告を行う必要がございます。お手数ですが、家賃・居住費、管理費、食費、生活支援サービス費、日用品費等について、計算内訳の分かる明細がございましたら、請求書と併せてご送付またはご提示いただけますと幸いです。

保証金・預り金・返還金確認の文例

〇〇ホーム 御中

故〇〇〇〇様の退去精算に関し、入居時にお預けしている金銭の確認をお願いいたします。精算報告資料として、保証金、敷金、施設預り金、入居一時金返還金、その他預り金について、当初預入額、現在残額、未払費用への充当額、退去費用への充当額、返金予定額が分かる資料がございましたら、ご提供いただけますでしょうか。また、返還金受取人または指定受取人の定めがある場合は、その確認方法についてもご案内いただけますと幸いです。遺言執行者が選任されている場合には、返金先について別途確認のうえ、改めてご案内いたします。

原状回復費用・清掃費の資料依頼文例

〇〇ホーム 御中

退去時の清掃費用および原状回復費用について確認させていただきます。死後事務受任者として、お預かりしている預託金の範囲内での執行可否、および相続人または遺言執行者への報告・確認が必要となります。つきましては、社内および関係者への確認資料といたしますので、内訳の分かる見積書や、修繕箇所の写真等の資料がございましたら、ご提供いただけますようお願い申し上げます。

私物引取りに関する施設への文例

〇〇ホーム 御中

故〇〇〇〇様の居室内私物について確認のご連絡です。死後事務受任者として、相続人または遺言執行者への報告が必要となるため、搬出前の状態を確認し、写真撮影および私物一覧の作成を行いたく存じます。私物の廃棄・処分については、契約上の権限、相続人の意向、相続放棄の可能性等を確認する必要があるため、現時点では処分を行わず、確認作業を優先いたします。立会可能日時および一時保管可能期間をご教示いただけますと幸いです。

相続人・遺言執行者への報告文例

故〇〇〇〇様の病院・施設費用精算について、現時点の状況をご報告いたします。〇〇病院入院費は請求額128,000円、対象期間は令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日で、請求書・明細書を確認済みです。〇〇ホーム施設利用料は請求額162,000円で、死亡月の計算内訳を施設へ確認中です。保証金残額300,000円については、施設側控除予定額、返金予定額、返還金受取人の指定有無を確認中です。清掃費・原状回復費については、内訳資料および写真資料の提供を依頼しています。現時点で全額支払いは行っておりません。居室内の私物については、写真撮影および一覧化を行い、廃棄・処分は行っておりません。

他士業・関係機関との連携

場面 連携先 理由
原状回復費、保証債務、減額交渉、支払拒絶、契約解釈の争い 弁護士 法的主張や交渉が必要な場面は、行政書士の範囲を超えることがあります。
相続放棄、家庭裁判所手続、相続財産清算人の選任 司法書士・弁護士 一般説明にとどめ、個別の手続判断や法的助言は専門家へつなぎます。
相続税、準確定申告、入居一時金返還金の税務整理 税理士 税務判断を断定せず、領収書と支払記録を整理して引き継ぎます。
施設利用料、介護サービス実績、預り金使用状況 施設相談員・ケアマネジャー 費用の内訳や生活支援の実績を確認します。
生活保護受給者、身寄りのない高齢者の支援経過 福祉事務所・地域包括支援センター 制度利用や行政側の関与状況を確認します。
私物搬出、保管、処分見積り 家財整理業者 処分権限と相続放棄への影響を確認したうえで、必要な範囲に限ります。

新人が気をつけたい論点

論点 気をつけること 実務対応
請求額を全額即時支払う 契約範囲、預託金残額、請求内訳を確認してから判断します。 支払候補、追加確認、保留に分けます。
口頭請求だけで支払う 「だいたい」の金額では記録が残りません。 請求書、明細書、精算書を取得します。
非弁リスク 「高額」「不当」「通常損耗」等の評価を施設へ伝えません。 資料収集と事実整理にとどめます。
立替え 個人資金や事務所資金での立替えは原則行いません。 やむを得ない場合は事前承認と記録を残します。
返金受領 指定受取人や遺言執行者を確認せず受け取ると整理が難しくなります。 返金先、受領権限、引渡記録を確認します。
私物処分 処分が相続財産の処分と評価されることがあります。 写真、一覧、保管を優先し、相続放棄の可能性があれば処分を保留します。
身元引受人 死後事務受任者と保証契約当事者は別です。 契約書、署名、保証範囲を確認します。
連絡記録不足 後日、誰が何を確認したかが重要になります。 電話でも日時、相手、内容、次の対応を記録します。

ケーススタディ

施設から未払費用と原状回復費用を請求された場合

Aさんは、配偶者も子もいないおひとりさまです。行政書士Bと死後事務委任契約を締結し、預託金80万円を預けていました。Aさんは介護付き有料老人ホームで7月10日に死亡しました。葬儀・火葬は手配済みです。

施設から、7月分施設利用料210,000円、食費62,000円、日用品費18,000円、清掃費55,000円、原状回復費280,000円、合計625,000円の請求が届きました。入居時の保証金は300,000円で、施設は「原状回復費に充当します」と説明しています。居室には、衣類、写真、通帳、印鑑、古い仏具、スマートフォンが残されています。遠方の甥が相続人である可能性がありますが、相続放棄を検討しているという情報があります。

確認せずに進めると整理が難しくなる点

  • 死亡月の利用料計算、食費の実食数、日用品費の使用明細が確認できていません。
  • 原状回復費の内訳、保証金300,000円の差引精算、返還金受取人の指定有無が未確認です。
  • 遺言執行者の有無、預託金から他費用を差し引いた残額、相続放棄への影響も整理が必要です。
  • 私物の一括廃棄は、相続財産の処分と評価される可能性があります。

正しい進め方

まず契約書で、施設利用料支払い、退去費用支払い、保証金・返還金確認、返金受領、居室明渡し、私物引取り、廃棄処分、立替えの可否を確認します。次に預託金80万円から、葬儀・火葬費用330,000円、納骨予定費用80,000円、死後事務報酬予定150,000円、予備費50,000円を差し引き、支払可能見込額を190,000円として整理します。この状態で625,000円を即時に支払うことは適切ではありません。

施設へは、「精算報告および預託金管理のため、7月分施設利用料、食費、日用品費、清掃費、原状回復費、保証金充当予定額について、内訳の分かる資料をご提供いただけますでしょうか」と依頼します。この段階で「高額ではないか」「通常損耗ではないか」「減額してほしい」とは伝えません。

項目 判断
死亡日または明渡日までの施設利用料 明細確認後、支払候補。
実食分の食費 明細確認後、支払候補。
使用実績のある日用品費 明細確認後、支払候補。
清掃費 内訳確認後に判断。
原状回復費280,000円 資料確認。争いがあれば弁護士へ接続。
保証金300,000円 差引精算書、返還先、指定受取人を確認。
私物廃棄 相続放棄の可能性があるため保留。

居室内の通帳、印鑑、スマートフォン、写真、仏具等は、廃棄せず、写真撮影と一覧化を行います。相続人・遺言執行者へは、請求状況、確認中の資料、支払い保留の理由、私物を処分していないことを報告します。

実務チェックリスト

初動確認

  • 死亡日時・死亡場所を確認した
  • 病院・施設担当者を記録した
  • 請求書発行時期と支払期限を確認した
  • 私物保管場所と明渡し期限を確認した
  • 保管費・追加費用の発生時期を確認した

契約確認

  • 医療費・施設費の支払権限を確認した
  • 預託金からの支払権限を確認した
  • 返金受領権限を確認した
  • 私物引取り・廃棄処分権限を確認した
  • 立替え可否と報告先を確認した

請求確認

  • 請求書・明細書・精算書を取得した
  • 対象期間と死亡月の計算内訳を確認した
  • 食費・日用品費の内訳を確認した
  • 口頭請求だけで支払っていない
  • 支払候補・追加確認・保留に分類した

返金確認

  • 保証金・敷金・施設預り金を確認した
  • 入居一時金返還金を確認した
  • 差引精算書を確認した
  • 返還金受取人の指定有無を確認した
  • 遺言執行者の有無を確認した

退去費用

  • 清掃費・原状回復費の有無を確認した
  • 内訳資料・写真資料を確認した
  • 施設へ評価や異議を伝えていない
  • 減額交渉をしていない
  • 必要に応じて弁護士連携を検討した

私物・報告

  • 居室写真と私物一覧を作成した
  • 貴重品・重要書類を保管した
  • 相続放棄の可能性を確認した
  • 相続放棄の可能性があれば処分を保留した
  • 関係者へ未確定事項を報告した

確認テスト

問題1
施設から死亡月の利用料を月額満額で請求された場合、どう対応しますか。
即時支払は行わず、精算報告と預託金管理のため、請求書、明細書、計算内訳、精算書を依頼します。ただし、施設へ「高額」「不当」等の評価は伝えません。
問題2
原状回復費30万円を請求されたが、見積書や写真がない場合、支払ってよいですか。
資料確認前の支払いは控えます。内訳資料や写真資料を、預託金管理と関係者報告のために依頼します。争いが生じる場合は弁護士へつなぎます。
問題3
施設預り金5万円の返金がある場合、行政書士口座で受け取ってよいですか。
契約上の受領権限、指定受取人、遺言執行者、相続放棄の可能性を確認します。遺言執行者がいる場合は、原則として遺言執行者指定口座へ直接返金してもらいます。
問題4
預託金残額が不足する場合、受任者が立て替えてよいですか。
受任者個人または事務所による立替えは原則として行いません。やむを得ず検討する場合も、事前承認、回収可能性、契約根拠、法的リスクを確認します。
問題5
施設から「身元引受人なので支払ってください」と言われた場合、どうしますか。
死後事務受任者であることと、身元保証契約・連帯保証契約の当事者であることは別です。署名した契約書、保証範囲、保証限度額を確認し、争いがあれば弁護士へつなぎます。
問題6
相続放棄を検討している相続人がいる場合、居室内私物を処分できますか。
処分権限の有無にかかわらず、廃棄・売却・譲渡・消費などの処分行為は保留します。写真撮影、一覧化、分類、保管、関係者への報告を優先します。

次回への接続

今回は、死後事務受任者として、病院・施設費用を確認し、契約範囲と預託金残額に従って支払う方法を扱いました。大切なのは、請求された費用を即時に全額支払わないこと、契約範囲・請求書類・預託金残額・返金先を確認すること、紛争性ある費用は行政書士が交渉せず弁護士等へつなぐこと、相続放棄の可能性がある場合に私物の廃棄・処分を保留することです。

次回3-19では、施設居室や自宅に残された家財、貴重品、重要書類、不用品の整理・保管・処分・明渡しを詳しく扱います。今回作成した私物一覧、居室写真、明渡し期限、保管費用、未確定事項は、次回の住居・家財対応に引き継ぎます。

HANAWA行政書士事務所にご相談ください死後事務委任契約、見守り契約、任意後見契約、財産管理等委任契約、施設入所後の費用精算や身元保証関連の整理は、本人の生活状況や親族関係に合わせて準備することが大切です。相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

本記事は一般的な実務教材です。個別案件では、契約内容、本人の希望、親族関係、相続人の意向、遺言執行者の有無、病院・施設の運用により確認事項が異なります。

参考情報

法令や公的情報は、実務前に最新の内容を確認してください。

HANAWA行政書士事務所|死後事務委任契約業務

本人の意思・契約内容・記録化を大切にしながら、病院・施設費用の精算を丁寧に進めます。

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相続・遺言・終活の手続きを確認したい方へ

相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

相続、遺言、任意後見、死後事務委任などをまとめて考えたい場合は、家族構成や財産、必要な手続きを整理するところから相談できます。

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