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行政書士実務マニュアル > 死後事務委任契約業務
第3-15回 死亡時連絡体制の作り方

死後事務委任契約を実際に動かす
死亡時連絡体制の作り方

死後事務委任契約は、契約書を作成しただけでは十分に機能しません。本人の死亡や危篤、救急搬送、安否確認の情報が受任者へ届いて初めて、葬儀・火葬・関係者連絡・費用精算などの準備へ進めます。本記事では、新人行政書士が、本人、親族、友人、医療機関、介護施設、管理会社、葬儀社、外部見守りサービス等をつなぎ、死亡時に確実に連絡が届く仕組みを整える手順を解説します。

対象:新人行政書士死後事務委任契約業務 3-15図解・文例・チェックリスト収録
この記事の位置づけ前回までに、親族・緊急連絡先の確認、死後事務委任契約書の条項、死亡後に実行するには契約書だけでなく連絡体制が必要であることを確認しました。本回では、契約締結後に「本人死亡時の連絡が行政書士事務所へ届く状態」を作る実務を扱います。死亡直後24時間以内の対応、葬儀・火葬手配、病院・施設費用の精算、孤独死発見時の警察対応の詳細は次回以降で扱います。

1. この回の到達目標

  • 死亡時連絡体制を作る目的を、本人・親族・関係機関へ説明できる。
  • 本人の死亡や異変を発見する可能性のある人・機関を洗い出せる。
  • 医療機関、介護施設、管理会社、親族、友人、外部見守り事業者等との連絡順序を設計できる。
  • 緊急連絡カード、冷蔵庫保管カード、携帯用カード、死亡連絡受付票を作成できる。
  • 契約書、連絡先一覧、葬儀希望書、公正証書の正本・謄本等の保管場所を整理できる。
  • 施設・病院・管理会社へ事前登録する際の注意点を説明できる。
  • 外部見守りサービスと死後事務委任契約を連携させる仕組みを作れる。
  • 個人情報共有同意を取得し、共有先・共有内容・共有目的を記録できる。
  • 行政書士の業務範囲を超える医療判断、警察対応、紛争解決、継続的な安否確認サービスと切り分けて説明できる。

2. この業務が必要になる実務場面

死亡時連絡体制は、死後事務委任契約を締結したすべての案件で検討します。特に、おひとりさま・おふたりさまの相談では、死亡を最初に知る人が親族とは限りません。

場面 確認すること
自宅で一人暮らし 管理会社、近隣、配食、訪問介護、外部見守りサービス、緊急カードの有無。
夫婦のみの高齢世帯 一方が倒れたとき、もう一方が連絡できるか。第三者ルートがあるか。
施設入所中 施設の緊急連絡先、身元引受人欄、死亡時連絡先の登録状況。
入院・通院中 病院が行政書士を緊急連絡先として扱うか。取扱いは医療機関ごとに異なる。
親族と疎遠 誰に契約の存在を知らせるか。死亡後の連絡順序と共有範囲。
賃貸住宅 行政書士が連帯保証人ではないこと、契約と予納金の範囲で残置物・費用精算に対応すること。
葬儀社・納骨先が決まっている 死亡時に誰が葬儀社へ連絡するか。希望書と事前相談資料の保管場所。
新人行政書士が意識したいこと契約書があっても、病院・施設・管理会社・親族・友人・葬儀社が受任者の存在を知らなければ、死亡時に連絡が届きません。契約書作成後の連絡体制まで整えて、初めて実務として機能します。

3. 基本知識

3-1. 死亡時連絡体制とは

死亡時連絡体制とは、本人の死亡、危篤、救急搬送、安否確認不能、死亡疑いが生じたときに、発見者や関係機関から死後事務受任者へ速やかに連絡が届くよう、関係者、連絡先、書類、保管場所、更新ルールを整備する仕組みです。

死亡診断書・死体検案書は、死亡を医学的に確認・証明する医師作成の文書であり、これに基づき死亡届、戸籍、火葬許可などの手続が進みます。行政書士が死亡確認や医療判断を行うわけではありません。

3-2. 契約書との関係

死後事務委任契約書は、受任者の権限、業務範囲、報酬、費用、報告先などを定める書面です。一方、死亡時連絡体制は、その契約を現実に発動させる仕組みです。

図解|契約を実際に動かす3点セット
死後事務委任契約書
+ 死亡時連絡先一覧・連絡フロー
+ 緊急連絡カード・保管書類一覧
= 死亡時に受任者へ連絡が届き、契約内容を確認できる状態

3-3. 行政書士の立ち位置

行政書士が中心的に担うのは、書類作成、本人意思の確認・記録、連絡体制の整理、外部サービスや関係機関との連絡先登録、死亡連絡を受けた後の死後事務への接続です。

行政書士自身が、継続的な見守りサービス、警備的な駆けつけ、医療判断、警察対応への介入、相続人間の紛争解決を当然に引き受けるものではありません。継続的な安否確認は、民間事業者、自治体、SaaS、配食確認、センサー型サービス等の外部サービスを活用し、行政書士事務所は緊急連絡先または二次連絡先として連携する設計を基本とします。

4. 実務の進め方

図解|死亡時連絡体制づくりの全体像
生活状況を把握 → 発見者候補を洗い出す → 発見者別の連絡フローを作る → 受任者への連絡ルートを複数化 → 緊急カードを作成 → 契約書・希望書の保管場所を整理 → 病院・施設・管理会社・外部見守り事業者へ共有 → 個人情報共有同意を取得 → 更新ルールを決める

手順1 生活類型を確認する

自宅一人暮らし、自宅で配偶者と二人暮らし、施設入所中、入院中、親族・友人との交流あり、賃貸住宅など、本人の生活類型を確認します。一人暮らしで近隣関係が薄い場合は、発見遅れを防ぐため、外部見守りサービスや管理会社との連携を重点的に整えます。

手順2 死亡・異変を発見する可能性がある人を洗い出す

  • 医療機関、介護施設、訪問介護、訪問看護、ケアマネジャー
  • 管理会社、大家、近隣住民、友人、親族
  • 外部見守り事業者、自治体安否確認事業、配食サービス
  • 葬儀社、菩提寺、警察、消防

手順3 死亡発見者別の連絡フローを作る

発見者・把握者 基本フロー 注意点
医療機関 病院の登録緊急連絡先 → 行政書士事務所・指定親族 → 契約書・希望書確認。 行政書士を親族同等に扱うかは医療機関ごとに異なる。事前登録を確認。
介護施設 施設台帳 → 行政書士事務所・指定親族 → 居室、費用、荷物の予定確認。 身元引受人、支払責任者、死後事務受任者を混同しない。
自宅・近隣 近隣・友人 → 119番・110番が必要な場合は優先 → 行政書士事務所。 警察確認前に遺体・遺品・通帳・印鑑・スマートフォン等へ触れない。
管理会社 家賃滞納、郵便物、異臭等 → 緊急連絡先台帳 → 行政書士事務所。 行政書士は連帯保証人ではない。残置物等は契約と予納金の範囲で対応。
外部見守りサービス 不通・センサー異常・訪問不在 → 契約上の緊急連絡先 → 行政書士事務所。 行政書士が見守りサービス提供主体にならない。
親族 親族 → 行政書士事務所 → 本人希望・契約内容・報告範囲を確認。 事前に契約の存在を知らせる範囲を本人に確認。
自宅死亡時の重要注意孤独死、死因不明、変死の可能性がある場合、警察による確認が行われることがあります。警察の確認が完了し、事件性がないと判断され、関係機関から立入りや引渡しの確認が得られるまでは、受任者であっても室内の遺品、現金、通帳、印鑑、鍵、スマートフォン、書類等に触れないようにします。

手順4 本人宅・本人携帯・事務所の3か所で備える

本人宅には冷蔵庫保管カードや緊急連絡先一覧、本人携帯用には財布サイズのカード、事務所には契約書、希望書、個人情報共有同意書、死亡連絡受付票を備えます。暗証番号、パスワード、通帳・印鑑の具体的保管場所は緊急カードに記載しません。

手順5 定期更新を予定に入れる

年1回を基本に、持病がある方、一人暮らしの方、施設移動が多い方は半年に1回程度の確認を検討します。転居、入院、施設入所、葬儀社変更、管理会社変更、親族死亡、外部見守りサービス変更があれば随時更新します。

5. ヒアリング項目

生活状況

  • 住所、居住形態、同居者、近隣関係、日常訪問者。
  • 鍵を持つ人、管理会社、配食、訪問介護、外部見守りサービス。
  • 電話・スマートフォン・メールの利用状況。

親族・友人

  • 親族、友人、知人、菩提寺、葬儀社の連絡先。
  • 誰に契約の存在を知らせてよいか。
  • 死亡後に連絡不要または控えたい相手。

医療・介護

  • かかりつけ医、通院先、診察券、お薬手帳。
  • 健康保険証または資格確認書、介護保険証。
  • マイナンバーカードの保管場所、健康保険証利用登録、暗証番号記録の有無。

契約・希望書

  • 死後事務委任契約書の原本または写し。
  • 公正証書の場合、公証役場名と正本・謄本の保管場所。
  • 葬儀希望書、納骨希望書、エンディングノート、財産目録。

住居・管理会社

  • 賃貸借契約、管理会社、大家、保証会社。
  • 死亡時の連絡先登録可否。
  • 残置物搬出、原状回復費用、予納金の範囲。

情報共有

  • 病院・施設・管理会社へ契約書写しを提出してよいか。
  • 外部見守り事業者に行政書士事務所を登録してよいか。
  • 共有先、共有内容、共有目的を同意書に記録。
マイナンバーカードの扱い暗証番号は緊急連絡カード、冷蔵庫カード、携帯カードに記載しません。預かる必要がある場合も、本人意思、使用目的、封緘保管、閲覧権限、使用記録を慎重に決めます。不要な取得は避けます。

6. 判断フロー

本人は一人暮らしか
→ はい:外部見守りサービス、管理会社、冷蔵庫カードを重点整備
→ いいえ:同居者が死亡時に連絡できる状態か確認

親族は協力的か
→ はい:指定親族を一次または二次連絡先へ登録
→ 不明・疎遠:行政書士事務所、施設、管理会社、外部見守り事業者を中心に設計

医療機関・施設が関与しているか
→ はい:緊急連絡先登録、契約書写し、同意書提出の可否を確認
→ いいえ:自宅発見に備え、緊急カード・管理会社・外部見守りサービスを整備

本人は情報共有に同意しているか
→ はい:共有先・共有内容・目的を同意書に記録
→ いいえ:連絡体制が弱くなる点を説明し、可能な範囲で再設計
リスク 事情 対応
高い 一人暮らし、親族疎遠、持病、賃貸、近隣関係が薄い、見守り未利用。 外部見守りサービス、管理会社登録、冷蔵庫カード、携帯カード、緊急受付体制を重点整備。
中程度 親族は遠方、施設・病院の関与あり、友人はいる。 施設・病院登録、親族・友人への事前共有、緊急カード整備。
比較的低い 同居家族あり、施設入所中、連絡先が明確。 最低限、契約の存在、連絡先一覧、希望書保管場所を共有。

7. 作成・確認する書類

必ず作成する書類

  • 死亡時連絡先一覧
  • 死亡時連絡フロー図
  • 緊急連絡カード
  • 冷蔵庫保管カード
  • 携帯用カード
  • 個人情報共有同意書
  • 保管書類一覧
  • 死亡連絡受付票

必要に応じて作成

  • 病院提出用緊急連絡先登録依頼書
  • 施設提出用死亡時連絡先届
  • 管理会社向け説明書
  • 外部見守り事業者向け登録メモ
  • 葬儀社向け事前連絡メモ
  • 親族・友人向け説明メモ
  • マイナンバーカード等重要物確認書

本人宅に置く書類

  • 緊急連絡カード、冷蔵庫保管カード
  • 契約書の写し、葬儀希望書
  • かかりつけ医、薬、介護関係資料
  • 公正証書の正本・謄本の保管場所メモ
  • ペット・住居・家財に関する希望書

事務所で保管する書類

  • 契約書原本または写し
  • 本人確認記録、意思確認記録
  • 個人情報共有同意書
  • 連絡先更新履歴
  • 葬儀・納骨希望書
  • 死亡連絡受付票

8. 文例・記載例

緊急連絡カード

私は、死亡後の葬儀・火葬・納骨・関係者連絡等について、下記事務所と死後事務委任契約を締結しています。死亡、危篤、救急搬送、安否確認等の際は、下記へ連絡してください。

氏名/生年月日/住所/かかりつけ医/緊急連絡先1・2/死後事務受任者/行政書士事務所名/担当者/電話/緊急携帯/メール/契約書・希望書類の保管場所/最終更新日。

冷蔵庫保管カード

この用紙は、緊急時に関係機関の方へ確認していただくため、本人の同意に基づき作成しています。貴重品、通帳、印鑑、キャッシュカード、マイナンバーカード、暗証番号、パスワード等はこの場所に保管していません。死亡確認、救急搬送、警察対応等は、関係機関の判断に従ってください。

管理会社向け共有メモ

当事務所は、死後事務委任契約の受任者であり、賃貸借契約上の連帯保証人ではありません。ただし、死後事務委任契約に基づき、本人の死後の残置物搬出、関係者連絡、賃貸借終了に伴う事務連絡、原状回復費用の精算等について、契約および予納金の範囲内で対応する権限を有しています。室内立入り、鍵の管理、遺体発見時の対応は、管理会社の規程および警察・消防等の指示に従います。

外部見守り事業者向け登録メモ

利用者○○様は、死亡後の事務について、下記行政書士事務所と死後事務委任契約を締結しています。安否確認不能、救急搬送、死亡確認、警察・消防・管理会社との連携が必要な場合は、契約上の緊急連絡先として下記事務所へご連絡ください。行政書士事務所は、貴社に代わって継続的な見守りサービスや現地駆けつけを提供するものではありません。

個人情報共有同意書

私は、死亡時、危篤時、救急搬送時、安否確認時、施設入所時その他緊急時に、死後事務委任契約の受任者が必要な対応を行えるよう、医療機関、介護施設、ケアマネジャー、管理会社、外部見守り事業者、葬儀社、指定親族、指定友人に対し、氏名、住所、生年月日、緊急連絡先、契約の存在、受任者の連絡先、葬儀・納骨希望その他必要最小限の情報を共有することに同意します。暗証番号、パスワード、遺言内容、預貯金残高等は、必要性がない限り共有しません。

死亡連絡受付票

受付日時/受付者/連絡者氏名・所属・電話番号/本人氏名/現在地/状況(危篤・救急搬送・死亡確認済み・死亡疑い・安否確認依頼・警察対応中)/死亡確認者/死亡場所/遺体の所在/病院・施設・警察署名/親族連絡状況/葬儀社連絡状況/管理会社連絡状況/事件性確認の状況/室内立入りの可否/遺品接触の可否/次に求められている対応。

10. 新人が間違えやすいポイント

注意点 実務対応
契約書だけで完了と考える 死亡情報が届く入口を複数作り、カード・一覧・共有書類を整備する。
行政書士が見守りサービスを提供すると説明する 外部見守りサービスを活用し、行政書士は緊急連絡先または二次連絡先として連携する。
親族がいるから大丈夫と考える 親族が実際に連絡できるか、本人が共有を希望するかを確認する。
病院・施設に何も伝えていない 本人同意を得て、緊急連絡先登録や契約書写し提出の可否を確認する。
管理会社に保証人と誤解される 連帯保証人ではないこと、契約・予納金の範囲で対応することを文書化する。
自宅死亡時に遺品へ触れる 警察確認前は遺体・遺品・現金・通帳・印鑑・書類に触れない。
連絡カードを更新しない 年1回または半年1回、転居・入院・施設入所・連絡先変更時に更新する。
個人情報共有同意を取らない 共有先、共有情報、共有目的を同意書に記録する。

11. トラブル予防策

連絡ルートを複線化する

図解|連絡が止まらない体制
病院・施設・管理会社・外部見守り事業者・親族・友人
→ 行政書士事務所代表番号
→ 緊急携帯
→ 予備担当者
→ メール・FAX
→ 契約書・希望書確認

事務所側の受付体制を整える

  • 代表電話、緊急携帯、メール、予備担当者を決める。
  • 夜間・休日対応の有無を契約書・説明書に記載する。
  • 死亡連絡受付票を用意し、職員が聞く項目を統一する。
  • 本人ファイル、契約書、葬儀希望書に速やかにアクセスできるようにする。
  • 個人情報・暗証番号等の閲覧権限を限定する。

情報共有の範囲を明確にする

個人データの第三者提供には、原則として本人同意が必要となります。ただし、法令に基づく場合等の例外もあります。実務では、本人同意を基本に、共有先・共有内容・共有目的を記録します。

本人宅の保管物を整理する

冷蔵庫は救急時に確認されることが多い保管場所の一つとされていますが、確認は状況によります。冷蔵庫カードだけに頼らず、携帯用カード、玄関付近の表示、管理会社登録、外部見守りサービスとの連携を組み合わせます。

12. ケーススタディ

事案

Aさんは82歳女性。川崎市内の賃貸マンションで一人暮らし。夫は死亡、子はいません。甥姪とはほとんど交流がなく、近隣関係も薄い状況です。葬儀は小規模、納骨は永代供養墓を希望し、死後事務委任契約と葬儀社の事前相談は済んでいます。ただし、管理会社、外部見守り事業者、葬儀社、甥姪に行政書士事務所の連絡先を共有していません。マイナンバーカードを健康保険証として利用していますが、保管場所と暗証番号の記録状況は未確認です。

問題点

  • 自宅死亡時に発見が遅れる可能性がある。
  • 管理会社が行政書士事務所へ連絡しない可能性がある。
  • 葬儀社が本人死亡を知らず、希望が実現しにくい。
  • 甥姪が契約の存在を知らない。
  • 警察確認前に遺品へ触れるなど、初動を誤るおそれがある。
  • マイナンバーカードや保険資格情報の所在が分からない。

対応

  • 外部見守りサービスの導入を提案し、緊急連絡先または二次連絡先に行政書士事務所を登録する。
  • 管理会社へ緊急連絡先登録を依頼し、連帯保証人ではないこと、契約と予納金の範囲で残置物搬出・原状回復費用精算に対応することを説明する。
  • 冷蔵庫保管カード、携帯用カード、死亡時連絡先一覧を作成する。
  • 葬儀社へ本人同意に基づき、死後事務受任者情報を共有する。
  • 甥姪への事前通知可否、死亡後の連絡要否を本人に確認する。
  • マイナンバーカードの保管場所、資格確認書の有無、暗証番号記録の有無を確認し、緊急カードには暗証番号を記載しない。
  • 事務所内に「警察確認前は遺品に触れない」メモを整備する。

完成する体制

Aさんの異変
→ 外部見守り事業者・管理会社・近隣・医療機関
→ 行政書士事務所へ連絡
→ 死亡連絡受付票で状況確認
→ 警察・消防対応の有無を確認
→ 契約書・葬儀希望書・葬儀社情報を確認
→ 次回3-16「死亡直後24時間以内の対応」へ移行

13. 実務チェックリスト

本人確認・意思確認

  • 本人確認資料を確認した。
  • 意思能力に疑義がないか確認した。
  • 死亡時連絡体制の目的を説明した。
  • 誰に契約の存在を知らせるか確認した。
  • 個人情報共有範囲を確認した。

生活状況

  • 一人暮らし・同居者を確認した。
  • 管理会社・大家を確認した。
  • 近隣協力者を確認した。
  • 介護・医療サービスを確認した。
  • 外部見守りサービスの利用可否を確認した。

連絡先

  • 親族・友人を確認した。
  • 医療機関・施設を確認した。
  • ケアマネ・訪問介護を確認した。
  • 葬儀社・納骨先を確認した。
  • 連絡優先順位を決めた。

書類

  • 死亡時連絡先一覧を作成した。
  • 緊急連絡カードを作成した。
  • 冷蔵庫保管カードを作成した。
  • 携帯用カードを作成した。
  • 死亡連絡受付票を用意した。

保管・更新

  • 契約書の保管場所を確認した。
  • 公正証書の正本・謄本の保管場所を確認した。
  • 葬儀希望書の保管場所を確認した。
  • マイナンバーカード等重要物の保管方針を確認した。
  • 年1回または半年1回の更新ルールを決めた。

業務範囲

  • 医療判断を行わないと説明した。
  • 警察対応へ介入しないと説明した。
  • 相続人間紛争は弁護士連携とした。
  • 継続的見守りサービスの提供主体にならない。
  • 連帯保証人ではないことを管理会社へ説明した。

14. 確認テスト

問1 死後事務委任契約書を作成した後、死亡時連絡体制を整備しない場合の主な支障は何ですか。
本人死亡の情報が受任者に届かず、契約に基づく死後事務を開始できないことです。葬儀希望、納骨希望、関係者連絡、費用精算も確認できないまま進む可能性があります。
問2 一人暮らしで近隣関係が薄い依頼者に対し、行政書士自身が週1回電話確認を行う見守り契約を通常業務として提案してよいですか。
慎重に考える必要があります。基本は外部見守りサービスを導入し、行政書士事務所を緊急連絡先または二次連絡先として登録する設計です。
問3 自宅で死亡している可能性がある場合、行政書士が通帳や実印を探してよいですか。
警察確認前は触れません。事件性がないと判断され、関係機関から立入りや引渡しの確認が得られるまでは、遺品、現金、通帳、印鑑、スマートフォン、書類等に触れないようにします。
問4 緊急連絡カードに書いてはいけない情報は何ですか。
銀行暗証番号、マイナンバーカード暗証番号、スマートフォンのロック解除情報、パスワード、通帳・印鑑・現金の具体的保管場所、預貯金残高、遺言内容などです。
問5 管理会社へ行政書士事務所を登録する際、何を明確に説明しますか。
行政書士事務所は死後事務委任契約の受任者であり、賃貸借契約上の連帯保証人ではないこと。ただし、契約と予納金の範囲で残置物搬出、関係者連絡、原状回復費用精算等に対応できることです。

15. 次回への接続

今回の要点死亡時連絡体制は、死後事務委任契約の実行開始装置です。契約書、連絡先一覧、緊急カード、個人情報共有同意、病院・施設・管理会社・外部見守り事業者との連携、更新ルールまで整えて、本人死亡時に受任者へ確実に連絡が届く状態を作ります。

次回3-16では、実際に死亡連絡を受けた後、死亡直後24時間以内に行政書士が何を確認し、どの順番で動き、どこで関係機関と連携するかを扱います。葬儀・火葬手配は3-17、病院・施設費用の精算は3-18、親族・関係者への報告は3-21で詳しく扱います。

ご相談について死後事務委任契約や死亡時連絡体制の整備では、親族関係、住まい、医療・介護、葬儀希望、保管書類、緊急連絡先によって確認事項が変わります。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。

行政書士実務マニュアル|死後事務委任契約業務 第3-15回

本記事は教育・研修目的で作成されています。個別案件では最新の法令・公的資料・所属会規程・専門家判断を確認してください。

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