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第5-8回 成年後見申立支援業務

成年後見申立支援における
収支予定表の作成支援

新人行政書士が、本人の年金、施設費、医療費、介護費、公共料金、税金、借入返済、不明支出を整理し、後見開始後の財産管理に役立つ収支予定表を作成できるようにする実務ガイドです。

対象:新人行政書士読了目安:約30分相談・資料確認・関係機関連携に対応

1. この回の到達目標

この回では、成年後見申立支援の一環として、本人の毎月の収入・支出を整理し、後見開始後の財産管理の基礎資料となる収支予定表の作成支援を行えるようになることを目標とします。

  • 本人の収入、支出、年単位支出、一時的支出を区別できる。
  • 通帳履歴、ネットバンキング明細、請求書、領収書、年金通知書、施設請求書等から月額ベースの収支を整理できる。
  • 不明支出、現金引出し、キャッシュレス決済、家族立替、本人負担か家族負担か不明な支出を確認できる。
  • 赤字や資金不足が見込まれる場合に、地域包括支援センター、福祉事務所、弁護士、司法書士、税理士等へつなぐ場面を判断できる。
  • 本人の生活水準、生活歴、医療・介護上の必要性を尊重し、単なる節約表ではなく生活維持の見通し資料として作成できる。
  • 家庭裁判所提出書類の作成自体は行政書士も可能である一方、申立代理や裁判手続の遂行は行えないことを説明できる。
前回との接続前回5-7では、本人の財産状況を把握するため、預貯金、不動産、保険、負債、収入、契約関係の資料を収集することを学びました。本回では、そのうち「毎月のお金の流れ」の整理に集中します。

2. この業務が必要になる実務場面

申立て前の相談段階

親族、地域包括支援センター、病院、施設、ケアマネジャー等から「年金だけで施設費を払えるか分からない」「通帳からお金が減っている理由が分からない」「入院費や施設費の支払いが続くか心配」と相談される場面です。収支予定表は、後見制度の利用、専門職関与、福祉制度相談の必要性を考えるための資料になります。

後見人候補者を検討する前

毎月赤字が続く、預金残高が急速に減少している、借入返済が複数ある、家族への送金や現金引出しが多い、不動産収入や賃貸管理がある場合は、親族候補者だけで対応できるか慎重に整理します。詳細は5-10で扱います。

おひとりさま・おふたりさま案件

身寄りがない、親族と疎遠、配偶者も高齢、子がいない案件では、本人の生活費を誰も把握していないことがあります。年金口座、施設費、公共料金、家賃、スマートフォン決済、サブスクリプション、自宅維持費などを一緒に確認します。

相談時の安心感相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、確認した方がよい資料や支出項目を一緒に整理します。資料がそろっていない段階でも、分かる範囲から確認を始められます。

3. 基本知識

収支予定表とは

収支予定表とは、本人について今後見込まれる収入と支出を月額・年額で整理した資料です。本人の生活を維持できるか、後見開始後の財産管理の見通しを立てられるか、赤字・未払い・不明支出がないかを確認するために使います。

公的書式との関係裁判所では成年後見人等向けに収支予定表の書式が公開されています。本回は提出書式の細かな記入方法ではなく、行政書士が申立支援の前段階で事実を整理し、関係者が判断しやすくするための作成支援を扱います。

月額収支と年額収支を分ける理由

固定資産税、住民税、火災保険料、年払い保険料、墓地管理料、NHK年払い、家財整理費、入院時の一時金などをすべて毎月支出にすると、実態より赤字が大きく見えます。一方で、年額支出を見落とすと、月額収支は黒字でも年単位では資金不足になることがあります。

区分 内容
毎月収入 毎月または隔月で継続する収入 年金、給与、生活保護、手当、家賃収入
毎月支出 原則として毎月継続する支出 家賃、施設費、医療費、介護費、公共料金、食費
年単位・不定期支出 年1回、数か月ごと、一時的に発生する支出 税金、保険料、入院一時金、修繕費、家財整理費

本人の生活水準を前提にする

収支予定表は、支出を削るための表ではありません。本人の財産を本人のために使い、生活の質を維持できるかを見る資料です。新聞代、理美容代、嗜好品、趣味費、少額の交際費なども、本人の生活歴や意思、医療・介護上の必要性を踏まえて確認します。

行政書士の業務範囲

行政書士は、官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類の作成や相談等を行うことができます。家庭裁判所提出書類の作成自体は可能ですが、申立代理や裁判手続の遂行は行えません。代理、紛争対応、法的主張の構成が必要な場合は弁護士へ、本人申立支援や裁判所提出書類作成支援の観点から必要な場合は司法書士へつなぎます。

4. 実務の進め方

図解|収支予定表作成支援の流れ
1 立場確認相談者と本人の関係、利益相反を確認
2 本人確認本人の意思、生活歴、大切な支出を確認
3 資料収集通帳、年金通知、請求書、決済履歴を収集
4 入出金確認最低1年、可能なら2年分を確認
5 月額換算年金・年払い費用を月額化
6 不明支出ATM、カード、QR決済を別表化
7 赤字確認資金不足時期を見通す
8 連携判断福祉、法律、税務、登記の相談先へ

手順1 相談者の立場を確認する

本人、配偶者、子、兄弟姉妹、甥姪、ケアマネジャー、地域包括支援センター、病院相談員、施設職員、民生委員、任意代理契約に基づく代理人など、誰からの相談かを確認します。本人との関係、通帳や印鑑の管理者、本人の同意、親族間対立、本人財産から相談者が利益を受けていないかを記録します。

手順2 本人確認・意思確認を行う

本人と面談できる場合は、氏名、生年月日、住所、現在の居所、誰がお金を管理しているか、本人が大切にしている支出、家族への援助の意思、スマートフォン決済やネット銀行の利用状況を確認します。判断能力が低下していても、分かりやすい言葉で説明し、反応や生活歴を記録します。

手順3 資料を収集する

収入確認資料として、年金振込通知書、年金額改定通知書、給与明細、生活保護決定通知書、各種手当通知、家賃収入の契約書・入金口座、個人年金の支払通知、親族援助の振込記録を確認します。支出確認資料として、施設請求書、病院請求書、薬局領収書、介護サービス請求書、家賃契約書、公共料金、保険料、税金、カード明細、借入金返済予定表、通帳を確認します。

現代の実務では、紙の通帳だけでなく、ネットバンキングの入出金明細画面、スクリーンショット、CSV出力、電子マネー・QRコード決済・交通系ICカードの利用履歴やチャージ記録も確認します。ID、パスワード、暗証番号、ワンタイムパスワードを行政書士が預かることは避け、本人または適切な権限者の操作で表示してもらいます。

手順4 入出金履歴を確認する

最低でも直近1年分、可能であれば2年分を確認します。家庭裁判所への申立時に1年から2年分の通帳写し等が必要となる運用が多いためです。入院、施設入所、転居、家族管理開始など生活状況が変わった前後は比較します。

  • 年金等の入金日と金額を確認する。
  • 毎月同じ日に引き落とされる支出を拾う。
  • 隔月、年1回、不定期の支出を分ける。
  • ATM現金引出し、カード、振込、QR決済チャージを一覧化する。
  • 家族や第三者への送金、借入返済らしき引落しを確認する。
  • 口座間振替を収入・支出として二重計上しない。

手順5 収入と支出を月額換算する

年金は2か月に1回支給されることが多いため、偶数月に240,000円入金されている場合は月額120,000円として整理します。固定資産税年60,000円は月額換算5,000円、火災保険料年24,000円は月額換算2,000円として参考表示します。

手順6 本人の生活維持に必要な支出を確認する

生活維持に不可欠か、医療・介護上必要か、本人の意思や生活歴に照らして重要か、契約上支払い義務があるか、解約・停止を検討できるか、本人のためでなく家族や第三者の利益になっていないかを見ます。

手順7 赤字・資金不足を確認する

月額収入、月額支出、年額支出の月額換算、預金残高をもとに、毎月赤字の場合は何か月で資金不足になりそうかを計算します。税金、入院、家財処分、葬儀費用、修繕費などがあると、実際には早まることがあります。

手順8 記録化・説明・完了報告

収集資料一覧、確認済みの収入・支出、不明点、推定で記載した項目、本人・親族・支援者から聞き取った内容、赤字見込み、連携提案先、行政書士として対応した範囲を記録します。

5. ヒアリング項目

本人に確認すること

  • 現在の居所と今後の生活希望
  • 年金・収入の認識
  • 誰がお金を管理しているか
  • 支払いで大切にしたいもの
  • 新聞、理美容、趣味、嗜好品等
  • 家族への援助の意思
  • ネット銀行・スマートフォン決済の利用

親族・支援者に確認すること

  • 本人の収入源
  • 毎月の支払い担当者
  • 施設費、入院費、家賃の未払い
  • 預金残高と減少傾向
  • 借金、カードローン、保証債務
  • 家族立替や本人からの送金
  • 親族間の金銭管理への不満

施設・病院・ケアマネジャーに確認すること

  • 月額利用料と内訳
  • 医療費・薬代の平均
  • 介護保険自己負担額
  • 日用品費、理美容費、おむつ代
  • 預り金管理と未払い
  • 今後増加しそうな費用
  • 生活保護や減免相談の状況

6. 判断フロー

図解|赤字・不明支出がある場合の判断
確認1赤字は一時的か継続的か。施設費、医療費、自宅費用、借入返済、家族送金を分ける。
確認2預金で何か月維持できるか。年額支出や不定期支出も加味する。
確認3ATM引出し、カード、QR決済、電子マネーの使途を確認する。
確認4本人の生活維持に必要な支出か、第三者利益の支出かを整理する。
確認5生活困窮は地域包括支援センター・福祉事務所、債務や使い込み疑いは弁護士等へつなぐ。

不明支出は、通帳摘要、請求書、領収書、カード明細、ネットバンキング、決済アプリ履歴を確認し、本人・親族・施設に聞き取ります。説明がつかないものは不明支出として別表管理し、使い込みや利益相反が疑われる場合は弁護士等へ連携します。

7. 作成・確認する書類

収支予定表の項目例

収入項目 確認資料 整理方法
老齢年金・遺族年金・障害年金 年金通知、通帳 2か月分を月額換算
給与、生活保護、各種手当 給与明細、決定通知 継続性と支給内容を確認
家賃収入、個人年金、配当 契約書、入金口座、支払通知 毎月収入と年額収入を区別
親族援助 通帳、聞取り 継続性要確認と明記
支出項目 確認資料 注意点
家賃、施設費、医療費、介護費 契約書、請求書、領収書 施設費の内訳と二重計上に注意
公共料金、通信費、食費、日用品費 通帳、請求書、施設明細 入院・施設入所後も必要か確認
保険料、税金、借入返済 保険証券、納税通知、返済予定表 年払・月払を区別。債務整理は専門職へ
カード、電子マネー、QR決済、通販 明細、利用履歴、チャージ記録 チャージと実利用を分ける

不明支出一覧

日付 金額 摘要 想定内容 確認先 結果
4/30 50,000円 ATM 生活費、家族引出し 本人、長男 未確認
5/10 23,000円 カード 通信費、買物 カード明細 明細待ち
6/15 20,000円 QRチャージ 本人買物、第三者利用 アプリ履歴 要確認

資料確認一覧

通帳、ネット銀行明細、年金通知、施設請求書、医療費領収書、カード明細、QR決済履歴について、対象期間、確認日、確認者、不足資料を一覧化します。後日の説明や他士業連携がしやすくなります。

8. 文例・記載例

収支予定表の記載例

本人は要介護3で有料老人ホームに入所中。主な収入は老齢年金。自宅は賃貸住宅で、退去手続未了のため家賃が継続している。長女が通帳を管理している。

月額収入は老齢年金125,000円、個人年金20,000円、合計145,000円。月額支出は施設費168,000円、医療費8,000円、薬代4,000円、日用品費6,000円、携帯電話3,000円、自宅家賃55,000円、電気・水道5,000円、合計249,000円。月額差額はマイナス104,000円。預金残高が1,800,000円であるため、単純計算では約17か月で資金不足となる可能性がある。

依頼者への説明文例

通帳、年金通知、施設請求書、医療費領収書を確認した結果、現在の本人の月額収入は約145,000円、月額支出は約249,000円と見込まれます。毎月約104,000円の赤字であり、預金残高から見ると、今後1年半程度で資金不足となる可能性があります。自宅家賃と公共料金が継続しているため、退去可能性や家財整理の時期について、ケアマネジャー、施設、親族間で確認することが望まれます。

不明支出確認の文例

通帳上、毎月末にATMから50,000円前後の現金引出しがあります。この支出が本人の日用品費、施設預り金、親族立替精算、その他の用途のいずれであるか確認が必要です。使途が確認できるまでは「不明支出」として別表管理し、本人の生活費として確認できたもののみ月額支出へ反映します。

本人意思尊重の記録例

本人は新聞購読について「毎朝読みたい」と述べており、施設職員からも本人が新聞を日課として読んでいるとの説明があった。月額購読料は本人の生活上の楽しみ・生活習慣に関わる支出と考えられるため、現時点では継続支出として整理した。

業務範囲を示す文例

当職が行う支援は、本人の収支状況を確認資料に基づいて整理し、関係者間で状況を把握しやすくするための資料作成支援です。行政書士は家庭裁判所提出書類の作成自体は可能ですが、申立代理や裁判手続の遂行は行えません。代理、紛争対応、法的主張の構成が必要な場合は弁護士へ、本人申立支援や裁判所提出書類作成支援の観点から必要な場合は司法書士へ相談します。

9. 他士業・関係機関との連携

連携先 相談する場面 行政書士の注意
地域包括支援センター 高齢者本人の生活維持が難しい、親族支援がない、経済的虐待や使い込みが疑われる、福祉制度につなぐ必要がある 月額収入、支出、赤字額、預金残高、不明支出、本人の希望を事実に絞って共有
福祉事務所 年金だけでは施設費・医療費を賄えない、預金が少ない、親族扶養が期待しにくい 生活保護の申請支援、作成支援、窓口同行等の詳細は第24カテゴリで扱う。代理申請、審査請求、訴訟等は弁護士連携
弁護士 使い込み疑い、多額債務、住宅ローン、破産可能性、訴訟、差押え、親族間対立、申立代理、紛争対応 行政書士は権利判断や代理交渉に踏み込まず、資料整理にとどめる
司法書士 家庭裁判所への申立手続について本人申立支援または裁判所提出書類作成支援の観点から相談が必要な場合、不動産登記、相続登記、抵当権確認 認定司法書士の簡裁代理・債務整理相談は個別債権額140万円以下の範囲。多額債務や破産可能性は弁護士を優先
税理士 家賃収入、不動産売却、確定申告未了、税金滞納、医療費控除、所得区分 税額や申告要否を断定しない
施設・病院・ケアマネジャー 施設費内訳、医療費・介護費の増減、預り金、未払い、本人の生活に必要な支出 本人または適切な権限者の同意を得て確認する

10. 新人が迷いやすいポイント

年金入金額をそのまま月収にする

偶数月240,000円入金なら、月額は120,000円として整理します。

一時的支出を毎月支出に入れる

入院一時金、家電購入、退去費用は不定期支出として分けます。

年額支出を見落とす

固定資産税、保険料、墓地管理料などは年額欄を設けます。

施設費を二重計上する

施設費に食費・居住費・日用品費が含まれるか確認します。

現金引出しを生活費と扱う

使途が確認できるまでは不明支出として管理します。

本人の楽しみをすぐ削る

新聞、理美容、趣味費は本人の生活歴と生活の質を確認します。

借金を支出整理で終える

返済不能、督促、差押えがあれば弁護士等へつなぎます。

ネット銀行や決済アプリを見落とす

紙の通帳がなくても、入出金明細や利用履歴を確認します。

申立代理に踏み込む

書類作成支援は可能ですが、申立代理や裁判手続遂行は弁護士等へつなぎます。

11. トラブル予防策

業務範囲を明確にする

受任時に、収支予定表作成支援は資料に基づく事実整理であること、家庭裁判所提出書類の作成自体は可能であること、申立代理や裁判手続の遂行は行えないこと、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士・福祉機関へつなぐことを説明します。

推定と確定を分ける

「年金通知で確認済」「直近3か月平均」「親族聞取りによる推定」「資料未確認」「使途不明」「本人名義口座間の資金移動」など、数字の根拠を表に残します。

本人財産から誰が利益を受けているか確認する

親族への定期送金、家族の携帯代、住宅ローン、本人名義カードの家族利用、QRコード決済の第三者利用、通販サイトの本人以外の商品購入などは、本人利益性を確認します。判断が難しい場合は弁護士等へ相談します。

デジタル情報を安全に扱う

ID・パスワード・暗証番号・ワンタイムパスワードは預からず、本人または適切な権限者の操作で画面表示してもらいます。必要最小限の範囲で確認し、スクリーンショットやCSVの保存・廃棄方法を記録します。

赤字見込みをそのままにしない

赤字額、預金残高、資金不足時期の目安、支出の見直し候補、福祉制度相談の必要性、借入・滞納の有無、連携先、説明日を記録します。

12. ケーススタディ

事案

Aさん82歳。認知症が進行し、有料老人ホームに入所中。配偶者は死亡、子はいない。甥が月1回面会しているが金銭管理には不慣れ。地域包括支援センターから、成年後見申立てを検討したいとして相談があった。

資料は、通帳1冊、年金振込通知書、施設請求書3か月分、病院領収書、薬局領収書、介護用品領収書、固定資産税納税通知書、火災保険料通知、QRコード決済のチャージ履歴、ネット銀行口座の存在を示すメール、通販サイトの定期購入メール。

収入と支出の整理

通帳には偶数月に年金260,000円の入金があるため、月額換算は130,000円です。その他収入は確認できませんが、ネット銀行口座の存在があるため未確認事項として残します。

施設費は基本利用料120,000円、食費45,000円、管理費20,000円、介護保険自己負担18,000円、日用品費7,000円、合計210,000円。医療費は月平均8,000円、薬代4,000円、携帯電話3,000円、自宅電気代2,000円。固定資産税年60,000円、火災保険年24,000円で、年額支出の月額換算は7,000円です。

赤字見込み

月額収入130,000円、実質月額支出234,000円、月額赤字104,000円。預金残高1,560,000円であれば、単純計算では約15か月で資金不足となる可能性があります。QRコード決済チャージ月平均15,000円、通販定期購入4,000円を含めると、月額赤字は約123,000円となる可能性があります。

新人行政書士の対応

  • 年金、施設費、固定資産税、火災保険は確認済み、医療費・薬代は直近平均、QR決済・通販・ネット銀行は要確認として分ける。
  • 本人が新聞や理美容を楽しみにしている場合、本人の生活の質に関わる支出として記録する。
  • 自宅に戻る見込みが低く、自宅関連費用が継続しているため、地域包括支援センターと今後の住居・家財整理を確認する。
  • 年金より施設費が高く、親族援助も見込めないため、福祉事務所へ相談する。
  • 不動産、資金不足、デジタル支出、不明支出があるため、専門職後見人の検討につなげる。詳細は5-10で扱う。
完了報告例Aさんの月額収入は年金換算で約130,000円、月額支出は年額支出の月額換算を含め約234,000円と見込まれます。毎月約104,000円の赤字であり、預金残高1,560,000円からすると、単純計算では約15か月で資金不足となる可能性があります。QRコード決済や通販定期購入は本人の生活費か未確認のため、別表で確認を続けます。今後は地域包括支援センター、福祉事務所、必要に応じて司法書士・弁護士・税理士等と連携し、生活維持、後見人候補者、不動産管理の方向性を検討することが望まれます。

13. 実務チェックリスト

受任前確認

  • 相談者と本人の関係
  • 本人確認資料
  • 本人意思確認
  • 利益相反・親族対立
  • 業務範囲の説明
  • 申立代理不可の説明

収入確認

  • 年金通知と入金口座
  • 年金の月額換算
  • 給与・生活保護・手当
  • 家賃収入・個人年金
  • 親族援助の継続性
  • ネット銀行への入金

支出確認

  • 家賃・施設費
  • 医療費・薬代・介護費
  • 公共料金・通信費
  • 保険料・税金
  • 借入返済
  • カード・QR決済・通販

年額支出

  • 固定資産税
  • 住民税
  • 火災保険
  • 墓地管理料
  • NHK等年払い
  • 不定期支出

入出金確認

  • 直近1年分以上
  • 可能なら2年分
  • ATM引出し一覧
  • カード引落し
  • 電子マネー履歴
  • 口座間振替の除外

不明支出

  • 通帳摘要確認
  • 請求書・領収書確認
  • カード明細確認
  • 決済アプリ確認
  • 本人・親族・施設へ確認
  • 使い込み疑いは専門職へ

赤字確認

  • 月額収入合計
  • 月額支出合計
  • 年額支出の月額換算
  • 預金残高
  • 資金不足時期
  • 福祉事務所等への相談

完了報告

  • 資料一覧
  • 収支予定表
  • 不明支出一覧
  • 推定と確定の区別
  • 連携先提案
  • 資料返却・保管記録

14. 確認テスト

問1
偶数月ごとに年金300,000円が入金されている場合、月額年金収入はいくらか。
150,000円。2か月分として入金されることが多いため、2で割って月額換算します。
問2
施設入所時の一時金300,000円を毎月支出として計上してよいか。
原則として毎月支出にはせず、一時的支出または特別支出として分けます。
問3
固定資産税年額72,000円の月額換算額はいくらか。
6,000円です。72,000円を12か月で割ります。
問4
毎月50,000円のATM引出しを親族が「生活費だと思う」と説明した場合、確定してよいか。
確定しません。領収書、施設預り金記録、本人・親族への聞取り等で確認し、不明なら別表管理します。
問5
年金収入130,000円、支出210,000円、預金960,000円の場合、単純計算で何か月程度維持できるか。
月額赤字は80,000円で、960,000円÷80,000円=12か月です。年額支出があれば早まることがあります。
問6
借入返済が月60,000円あり、預金残高も少ない場合、行政書士が債務整理方針を決めてよいか。
決めません。弁護士または司法書士へ連携します。司法書士の簡裁代理・債務整理相談は、認定司法書士で個別債権額140万円以下等の制限があります。
問7
家庭裁判所提出書類の作成まで依頼された場合、どう説明するか。
書類作成自体は行政書士も可能です。ただし、申立代理や裁判手続の遂行は行えないため、代理や紛争対応が必要な場合は弁護士へ、本人申立支援や裁判所提出書類作成支援の観点から必要な場合は司法書士へつなぎます。
問8
銀行口座から毎月20,000円がQRコード決済にチャージされている。生活費として確定してよいか。
確定しません。チャージは資金移動の場合があるため、決済アプリの利用履歴を確認します。

15. 次回への接続

今回は、成年後見申立支援において、本人の毎月の収入・支出を整理し、後見開始後の財産管理の基礎資料となる収支予定表を作成支援する方法を学びました。

次回5-9では、親族関係資料の整理を扱います。誰が申立人になれるか、推定相続人や親族関係をどう確認するか、戸籍資料をどのように整理するかを学びます。後見人候補者の検討は5-10、家庭裁判所手続の流れは5-11、行政書士ができる支援・できない支援の詳細は5-12で扱います。

相談につなげるための自然な案内文相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、年金、施設費、医療費、公共料金、借入返済、不明な出金など、確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

HANAWA行政書士事務所|行政書士実務講座 成年後見申立支援業務 第5-8回

本記事は教育・研修目的の一般情報です。個別案件では最新の法令・裁判所書式・自治体案内・専門職の判断をご確認ください。

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