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第49回 情報開示請求実務

不開示決定通知をどう読むか
不開示事由と理由記載の崩しどころ

不開示決定通知は、読む順番を誤ると、本来検討すべき論点を見落としやすい書面です。全部不開示なのか、不存在なのか、理由記載に不足があるのかを分けて確認すれば、審査請求や再請求の判断が具体的になります。

対象:特定行政書士になりたての方目的:通知書読解から争点整理まで一次情報確認を重視
本稿の前提国の行政機関に対する情報公開請求を念頭に、情報公開法の基本構造を確認しながら説明します。自治体案件では、当該自治体の情報公開条例、規則、審査基準、様式、教示を原典で確認してください。相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。

不開示決定通知は「結論」ではなく「争点の入口」として読む

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 不開示決定通知を読み違えると、争うべき論点を外す
  • 初回相談で最初に確認するのは「不開示になった理由」だけではない
  • 本記事で扱う範囲:通知書の読解から争点抽出の初動まで

不開示決定通知は、単に「開示されなかった」という結果を知らせるだけの書面ではありません。処分の種類、根拠条文、理由記載、対象文書、教示など、次の対応を考えるための材料が含まれています。まずは結論ではなく、結論に至る書面の構造を確認します。

不開示決定通知を読み違えると、争うべき論点を外す

不開示決定通知を読むときは、最初に「何を検討する案件なのか」を見極めます。不開示事由そのものが問題になる場合もあれば、対象文書の特定、文書不存在、部分開示の検討、理由記載の具体性が中心になる場合もあります。

たとえば、通知書に「不開示」と書かれていても、実際には請求対象文書を保有していないという判断が含まれていることがあります。この場合、不開示情報への該当性だけを論じても、行政側の判断構造に届きにくくなります。処分類型、対象文書、根拠条文、理由記載、教示の順に分解して確認することが大切です。

初回相談で最初に確認するのは「不開示になった理由」だけではない

相談対応では、「なぜ不開示になったのか」を聞くだけでは十分ではありません。通知書全体の構造と、関連資料がそろっているかを確認します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

確認すべき資料 実務上の目的
不開示(一部開示)決定通知書 処分の特定、根拠条文、理由記載、教示を確認する
開示請求書の控え 当初の請求文言と対象文書のズレを確認する
延長通知書・補正依頼書 手続経過や文書探索の経緯を把握する
一部開示された文書 黒塗り位置と前後文脈から不開示情報の性質を整理する
届いた封筒・追跡記録 処分を知った日の客観的確認に使う

本記事で扱う範囲:通知書の読解から争点抽出の初動まで

本記事では、不開示決定通知を受け取った後、どの順番で読み、どの資料と照合し、どのように争点を整理するかを扱います。具体的な審査請求書の全文作成、個別事件の見通し判断、詳細なケース検討は、通知書や資料を確認したうえで個別に整理する領域です。

情報公開請求の実務では、国の情報公開法か自治体条例か、対象文書が何か、不開示事由がどの条項かによって判断が変わります。本記事は、通知書を読み、資料を集め、争点候補を絞るための実務的な見取り図として使えるように構成しています。

不開示決定通知で最初に分けるべき5つの処分類型

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 全部不開示・一部開示・不存在・対象文書非該当・存否応答拒否を分ける
  • 「不開示」と書かれていても、争点は不開示事由だけとは限らない
  • 処分類型を誤ると、審査請求書の主張もずれる

相談者は「不開示だった」と一括りに表現しがちですが、実務上は複数の類型があります。ここを分けると、見るべき条文、集める資料、審査請求での主張の方向が明確になります。

図解|最初に分ける5つの類型
全部不開示
文書はあるが全体を開示しない
一部開示
開示部分と黒塗り部分がある
不存在
文書を保有していない
対象文書非該当
制度上の行政文書等に当たらない
存否応答拒否
有無を答えるだけで不開示情報が明らかになる

全部不開示・一部開示・不存在・対象文書非該当・存否応答拒否を分ける

全部不開示は、対象文書は存在するが全部を開示しない判断です。一部開示は、開示部分と不開示部分が混在しています。不存在は、行政機関が対象文書を保有していないという判断です。対象文書非該当は、請求されたものが情報公開制度上の行政文書や公文書に当たらないという整理になります。

存否応答拒否は、文書があるかないかを答えるだけで不開示情報を明らかにすることになる場合に問題となります。通知書のタイトルだけでは判断しにくいことがあるため、本文、別紙、理由欄、対象文書名を合わせて確認します。

「不開示」と書かれていても、争点は不開示事由だけとは限らない

通知書に「不開示」と書かれていると、不開示事由の該当性だけを検討しがちです。しかし、請求内容に対して行政側が狭い文書特定をしている場合、問題は対象文書の捉え方にある可能性があります。

黒塗りがある場合には、部分開示の範囲や、黒塗り部分と理由の対応関係が争点になり得ます。理由が抽象的なときは、どの情報がどの不開示事由に当たるのかが読み取れるかを確認します。不開示という言葉だけで結論を急がず、処分の種類を落ち着いて分けてください。

処分類型を誤ると、審査請求書の主張もずれる

不存在決定に対して不開示事由該当性だけを論じても、行政側の判断構造に届きません。逆に、全部不開示なのに文書探索の問題だけを主張しても、中心争点が見えにくくなります。

審査請求書では、対象となる処分が何で、どの判断を問題にするのかを特定します。通知書、開示請求書の控え、補正依頼、延長通知、開示された文書を並べると、処分類型を確認しやすくなります。資料が一部しかない場合も、まず現在ある資料から整理を始められます。

通知書の記載から読み取るべき7つの確認項目

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 実施機関・処分日・文書番号で対象処分を特定する
  • 請求内容と対象文書名の対応関係を確認する
  • 開示しない部分と不開示事由の対応を確認する
  • 根拠条文が国の情報公開法か自治体条例かを確認する
  • 理由記載が具体的か、条文の引き写しに近いかを確認する
  • 教示欄で審査請求先・期間・提出方法を確認する
  • 添付資料・別紙・部分開示文書の有無を確認する

通知書は、上から順に読めば足りる書面ではありません。実施機関、対象文書、理由記載、教示欄を分けて確認することで、争点候補が見えやすくなります。

実施機関・処分日・文書番号で対象処分を特定する

最初に確認するのは、誰が、いつ、どの請求に対して処分したのかです。実施機関、処分日、文書番号を押さえることで、対象処分を特定できます。同じ相談者が複数の請求をしている場合、文書番号や受付番号を開示請求書の控えと照合します。

処分日は、審査請求期間の確認にも関わります。ただし、期間の主観的な起算は「処分があったことを知った日の翌日から起算して」判断します。通知書の日付だけで足りるとは限らないため、到達日、受領状況、封筒や追跡記録も分けて確認します。

請求内容と対象文書名の対応関係を確認する

次に、請求内容と行政側が特定した対象文書名を照合します。相談者が求めた情報と、行政側が対象とした文書が一致しているかを見るためです。

たとえば、請求では「会議の検討資料一式」を求めたのに、通知書では「議事録」のみが対象文書として記載されている場合、文書特定が狭い可能性があります。反対に、請求文言が抽象的だったため、行政側が特定できる範囲で判断していることもあります。請求書の控えを横に置いて確認しましょう。

開示しない部分と不開示事由の対応を確認する

一部開示や黒塗りがある場合は、どの部分が、どの不開示事由によって不開示とされたのかを確認します。複数の不開示事由が挙げられている場合、どの部分にどの事由が適用されたのかが争点になります。

対応関係が不明確なままでは、反論も抽象的になりがちです。審査請求を検討する場合は、「この部分について、どの理由で不開示とされたのかが読み取れるか」を確認します。読み取れない箇所は、理由記載の具体性を検討する材料になります。

根拠条文が国の情報公開法か自治体条例かを確認する

国の行政機関であれば行政機関情報公開法、自治体であれば当該自治体の情報公開条例や規則が基本です。独立行政法人等の場合は、別の情報公開法制が問題になることもあります。

自治体案件では、国の情報公開法と似た構造であっても、条文番号、定義、手続、審査会の仕組み、様式が異なる場合があります。通知書に記載された根拠条文を確認したら、e-Gov法令検索、自治体の例規集、実施機関の公式案内、審査基準で原典確認を行います。

理由記載が具体的か、条文の引き写しに近いかを確認する

理由記載は、通知書読解の中核です。条文番号が書かれているかだけでなく、どの情報が、なぜ、その不開示事由に当たるのかが示されているかを見ます。

判例上も、情報公開条例に基づく非開示決定の理由付記について、単に根拠規定を示すだけでは足りず、開示請求者が非開示事由のどれに該当するのかを根拠とともに了知し得る程度であることが求められるとされています。情報公開法に基づく不開示決定でも、理由記載の具体性を検討する際の重要な参照軸になります。

教示欄で審査請求先・期間・提出方法を確認する

教示欄は、審査請求を検討する場合の入口です。行政不服審査法上、審査請求期間は原則として「処分があったことを知った日の翌日」から起算して3か月以内と定められています。また、処分を知らなかった場合であっても、「処分があった日の翌日から起算して1年」を経過したときは、原則として審査請求をすることができなくなります。

通知書の日付だけでなく、実際に手元に届いた日、つまり処分を知った日を客観的に確認します。封筒の消印、郵便追跡記録、メールの受信日時、窓口交付の記録などを保存してください。期限、提出先、提出方法を早い段階で確定させると、その後の検討が安定します。

添付資料・別紙・部分開示文書の有無を確認する

通知書本体だけで判断せず、添付資料、別紙、部分開示文書の有無を確認します。重要な説明が別紙に書かれていたり、不開示部分の範囲が開示文書側に示されていたりするためです。

一部開示の場合、黒塗りの位置や前後の文脈から、不開示部分の性質を推測できることがあります。推測を断定してはいけませんが、確認すべき論点を整理する助けになります。通知書、封筒、別紙、開示文書、請求書控えを一式で確認するのが実務的です。

不開示事由を崩す前に見るべき4つの条文対照

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 情報公開法5条のどの号に当てはめているかを確認する
  • 情報公開法6条の部分開示が検討されているかを確認する
  • 情報公開法7条の「公益上の理由による裁量的開示」の余地があるかを確認する
  • 情報公開法8条の存否応答拒否が使われているかを確認する

国の行政機関であれば、情報公開法5条、6条、7条、8条、9条の関係を押さえることが基本です。自治体では対応する条例の規定を確認し、条文番号を置き換えて読みます。

情報公開法5条のどの号に当てはめているかを確認する

不開示情報の中心は、情報公開法5条に整理されています。通知書では、個人情報、法人情報、国の安全、公共の安全、審議・検討、事務事業など、どの類型に当てはめているかを確認します。

同じ不開示でも、個人情報を理由とする場合と、事務事業への支障を理由とする場合では、検討の方向が異なります。通知書の記載を条文の要件に分解し、どの要件が問題になりそうかを確認します。

情報公開法6条の部分開示が検討されているかを確認する

全部不開示とされていても、部分開示の余地がないかを確認します。情報公開法6条は、不開示情報が記録されている部分を除いて開示できる場合の考え方に関わります。

文書全体を不開示にする必要があるのか、氏名や一部の記載を除けば開示できるのかを見ます。通知書に部分開示の検討が具体的に書かれていない場合、審査請求で確認すべき論点になります。ただし、部分的に開示すると不開示情報が推知される場面もあるため、文書の構成を踏まえて整理します。

情報公開法7条の「公益上の理由による裁量的開示」の余地があるかを確認する

情報公開法5条の不開示情報に該当する場合であっても、同法7条は、公益上特に必要があると認めるときに、行政機関の長が裁量で行政文書を開示できる旨を定めています。したがって、不開示事由に該当するかどうかだけで検討を終えるのは早計です。

歴史的・社会的に重大な関心を集める事案、国民の生命・身体の保護に関わる情報、行政運営の透明性が強く求められる場面では、公益上の必要性をどのように整理できるかが問題になります。不開示事由該当性を争う主張と、仮に該当するとしても公益上開示すべきだという主張を分けると、書面の構成が明確になります。

情報公開法8条の存否応答拒否が使われているかを確認する

存否応答拒否は、文書が存在するかどうかを答えるだけで不開示情報を開示することになる場合に問題となります。通常の不開示とは構造が異なるため、通知書でこの判断が使われていないかを確認します。

この類型では、対象文書の内容だけでなく、請求文言そのものが重要です。請求の仕方によって、存否を答えることの意味が変わる場合があります。審査請求を検討する際は、開示請求書の文言を必ず確認してください。

理由記載の弱点を見つける4つの読み方

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 「なぜその情報が不開示事由に当たるのか」が書かれているかを見る
  • 不開示部分と理由の対応関係が分かるかを見る
  • 抽象的な危険・支障だけで終わっていないかを見る
  • 文書不存在の場合は探索・保有・廃棄の説明があるかを見る

理由記載を見る目的は、行政側の判断過程を読み取ることです。少なくとも「どの情報について、どの条文を根拠に、なぜ開示しないのか」が分かるかを確認します。

「なぜその情報が不開示事由に当たるのか」が書かれているかを見る

理由記載では、条文名や号数だけでなく、具体的な当てはめが書かれているかを確認します。どの記載が、どの要件に当たるのかが分からなければ、請求者側は十分な検討がしにくくなります。

単に条文の文言をなぞっただけの通知書は、理由記載の不備を検討する入口になります。ただし、行政側にも不開示情報を明らかにしすぎない制約があります。争点化する際は、「どの情報が、どの要件を、どの根拠で充足するのかが通知書から読み取れない」という形で整理します。

不開示部分と理由の対応関係が分かるかを見る

黒塗り箇所が複数ある場合、すべてに同じ理由が当てはまるとは限りません。ある部分は個人情報、別の部分は審議・検討情報、さらに別の部分は事務事業情報ということもあります。

審査請求を検討する際は、開示文書に番号を振り、「どの黒塗りが、どの理由に対応するのか」を整理します。対応関係が読めない箇所は、弁明書や審査会手続で明らかになることもあります。初動では、確認事項として記録しておきます。

抽象的な危険・支障だけで終わっていないかを見る

理由記載には、「支障を及ぼすおそれ」「率直な意見交換が損なわれるおそれ」「適正な遂行に支障」などの表現が使われることがあります。これらの言葉自体は条文構造上よく出てきますが、抽象的な表現だけで足りるかは別問題です。

確認すべきなのは、その危険や支障がどの事務に関わるのか、なぜ開示によって発生するのか、どの程度具体的に説明されているかです。「対象部分と理由の対応が分からない」「支障の内容が抽象的で、条文要件との関係が不明」といった形に整理すると実務的です。

文書不存在の場合は探索・保有・廃棄の説明があるかを見る

文書不存在の場合は、不開示事由ではなく、文書を保有していないという判断が中心になります。理由記載では、どのように探索したのか、なぜ保有していないと判断したのか、保存期間や廃棄の有無が説明されているかを確認します。

過去の通知、会議開催記録、予算資料、メールの存在をうかがわせる資料があれば、文書保有や探索範囲を検討する材料になります。文書不存在は、不開示情報該当性とは別の組み立てが必要です。

通知書の記載を裏取りする5つの一次資料

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • e-Gov法令検索で根拠条文を確認する
  • 行政機関・自治体の審査基準で判断枠組みを確認する
  • 開示請求時の控えで請求文言と対象文書を照合する
  • 標準処理期間・延長通知・補正依頼の有無を確認する
  • 審査会答申は「類似争点の探し方」として参照する

通知書だけでは、判断の適否を十分に検討できません。根拠条文、審査基準、請求書控え、処理経過、審査会答申を照合することで、争点候補が具体化します。二次情報は原典探索の入口にとどめ、本文の骨格は一次資料で組み立てます。

e-Gov法令検索で根拠条文を確認する

国の行政機関に対する情報公開請求では、まずe-Gov法令検索で根拠条文を確認します。不開示情報、部分開示、公益上の理由による裁量的開示、存否応答拒否、開示決定等の通知に関する規定を直接読みます。

審査請求を検討する場合は、行政不服審査法の審査請求期間や審査請求書の記載事項も確認対象です。条文を読むときは、見出しだけで判断せず、本文、ただし書、各号、除外規定まで確認します。

行政機関・自治体の審査基準で判断枠組みを確認する

審査基準には、不開示情報該当性、部分開示、公益上の理由による裁量的開示、存否応答拒否などについて、実施機関がどのような枠組みで判断するかが示されていることがあります。

自治体案件では、条例本文だけでなく、規則、要綱、事務取扱要領、様式、審査基準も確認します。同じ「情報公開」と呼ばれていても、自治体ごとに手続や表現が異なります。当該実施機関の公式資料で裏取りすることが重要です。

開示請求時の控えで請求文言と対象文書を照合する

開示請求書の控えは、通知書を読むうえで欠かせない資料です。通知書の対象文書名だけを見ても、請求者が本来求めていた情報とのズレが分からないからです。

請求文言が広すぎる場合、補正を求められていることがあります。反対に、請求文言が狭すぎたために、本来必要な文書が対象から外れていることもあります。請求日、宛先、請求文言、対象期間、対象部署、補足説明を確認します。

標準処理期間・延長通知・補正依頼の有無を確認する

標準処理期間、延長通知、補正依頼の有無は、手続経過を把握するための資料です。延長通知が出ていれば、どのような理由で処理期間が延びたのかを確認できます。

補正依頼があった場合は、請求文言の特定や対象文書の範囲に影響している可能性があります。通知書、延長通知、補正依頼、回答、開示文書を日付順に並べると、どこで認識のズレが生じたのかが見えやすくなります。

審査会答申は「類似争点の探し方」として参照する

審査会答申は、類似争点を探す資料として有用です。ただし、答申紹介だけで記事や主張を構成するのは避けます。まず条文、審査基準、通知書、請求書控えを確認し、そのうえで答申を参照する順番が安全です。

答申を見るときは、結論だけではなく、どの不開示事由が問題になったのか、行政側の理由、請求者側の主張、審査会の判断枠組みを確認します。答申は個別事案に基づく判断であり、対象文書や条例が違えば結論が変わることもあります。

相談時に聞き取るべき6つの事実関係

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 依頼者が何を知りたくて請求したのかを確認する
  • 請求前にどの窓口・部署とやり取りしたかを確認する
  • 開示された部分と不開示部分の関係を確認する
  • 同種文書が過去に公開・公表されていないかを確認する
  • 期限がいつから進んでいるかを確認する
  • 審査請求以外の選択肢を検討する必要があるかを確認する

通知書の読解だけでは、相談対応として十分ではありません。依頼者が何を知りたかったのか、どのような経緯で請求したのかを聞き取ることで、通知書に表れていない争点が見える場合があります。

依頼者が何を知りたくて請求したのかを確認する

最初に聞くべきなのは、依頼者が何を知りたくて情報公開請求をしたのかです。請求書の文言だけでは、真の目的が分からないことがあります。

たとえば、「会議資料」を請求したつもりでも、実際に知りたいのは意思決定の経緯、関係者の発言、契約金額、行政指導の根拠かもしれません。目的を把握できれば、審査請求で争うべきか、別の文書を再請求すべきか、公表資料で足りるかを判断しやすくなります。

請求前にどの窓口・部署とやり取りしたかを確認する

請求前の窓口や部署とのやり取りも重要です。事前相談で文書名を案内された、担当部署を指定された、補正を求められたといった経緯があれば、対象文書の特定に関わります。

聞き取りでは、担当部署名、担当者名、やり取りの日付、電話・メール・窓口の別、案内された文書名を確認します。メールやメモが残っていれば、通知書と一緒に整理します。

開示された部分と不開示部分の関係を確認する

一部開示の場合は、開示された部分と不開示部分の関係を確認します。黒塗り部分だけを見るのではなく、前後の文脈、ページ構成、項目名、表の見出しを合わせて読みます。

開示部分から、不開示部分が個人名なのか、金額なのか、評価内容なのか、審議内容なのかを推測できる場合があります。推測を断定するのではなく、どの不開示事由が使われているかを検討する材料として扱います。

同種文書が過去に公開・公表されていないかを確認する

行政機関のウェブサイト、会議資料、審議会資料、入札情報、予算資料、議会資料などに、類似情報が公表されていることがあります。既に公表されている情報があれば、今回の不開示判断との関係を検討できます。

ただし、公表例があるからといって、同じ結論になるとは限りません。対象文書、時期、記載内容、関係者、根拠条例が違えば判断も変わります。公表資料は、質問や主張を具体化するための補助資料として扱います。

期限がいつから進んでいるかを確認する

審査請求を検討する場合、期限の確認は最優先事項です。行政不服審査法上、審査請求期間は原則として「処分があったことを知った日の翌日」から起算して3か月以内です。また、処分を知らなかった場合であっても、「処分があった日の翌日から起算して1年」を経過したときは、原則として審査請求ができなくなります。

郵送で届いた場合は、封筒、消印、追跡記録、受領日を保存します。メール通知であれば、受信日時や添付ファイルの受領状況も確認します。代理人が後から相談を受けた場合、相談日ではなく、本人が処分を知った日が問題になります。

審査請求以外の選択肢を検討する必要があるかを確認する

不開示決定を受けたからといって、常に審査請求だけが選択肢になるわけではありません。請求文言に問題があった場合は、再度の開示請求の方が実務的なことがあります。公表資料や別制度で必要情報に近づける場合もあります。

再調査請求や再審査請求については、一般論で可能・不可能を断定せず、個別法、条例、教示欄を原典で確認します。その案件で取り得る手段を整理したうえで、相談者に分かりやすく説明します。

審査請求書に落とし込むための3つの争点整理

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 処分の取消しを求めるのか、理由記載の不備を問題にするのかを分ける
  • 不開示事由該当性・部分開示・文書特定のどれを主軸にするか決める
  • 「開示すべき理由」と「通知書のどこが不十分か」を分けて書く

審査請求書に落とし込む段階では、言いたいことをすべて並べるのではなく、争点を整理します。主張の軸が定まれば、必要な資料、補足すべき事実、反論の順番も明確になります。

処分の取消しを求めるのか、理由記載の不備を問題にするのかを分ける

審査請求では、まず何を求めるのかを整理します。不開示決定の取消しを求めるのか、理由記載の不備を中心に問題にするのか、文書不存在の判断を争うのかで、書くべき内容が変わります。

処分の取消しを求める場合は、対象文書や不開示部分が開示されるべき理由を示します。理由記載の不備を問題にする場合は、通知書のどの記載では判断過程が分からないのかを具体的に示します。主軸を決め、補助的な主張を整理すると読みやすくなります。

不開示事由該当性・部分開示・文書特定のどれを主軸にするか決める

争点整理では、不開示事由該当性、部分開示、文書特定のどれを主軸にするかを決めます。不開示事由該当性を争う場合は、条文要件に照らして、なぜ該当しないと考えるのかを整理します。

部分開示を主張する場合は、全部を開示できなくても、どの部分なら開示できる可能性があるのかを示します。文書特定を争う場合は、請求内容と対象文書のズレ、探索範囲の不十分さを問題にします。

「開示すべき理由」と「通知書のどこが不十分か」を分けて書く

審査請求書では、「開示すべき理由」と「通知書のどこが不十分か」を分けて書くと整理しやすくなります。開示すべき理由は、対象文書や不開示部分が不開示情報に当たらない、または部分開示できるという実体面の主張です。

一方、通知書の不十分さは、理由記載が抽象的、対象部分との対応が不明、探索経過が説明されていないといった手続・説明面の主張です。「実体面の主張」「理由記載に関する主張」「文書特定に関する主張」のように整理すると、読み手が争点を把握しやすくなります。

提出前に確認する4つの実務チェック

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 審査請求期間と起算日を通知書・教示欄で確認する
  • 審査請求先が処分庁か審査庁かを確認する
  • 代理人として提出する場合の委任状・資格表示を確認する
  • 自治体案件では条例・規則・様式を必ず原典確認する

提出前の確認では、内容面だけでなく、期限、提出先、代理権、様式を点検します。特に自治体案件では、国法の一般論だけで進めず、条例と公式様式を確認します。

審査請求期間と起算日を通知書・教示欄で確認する

行政不服審査法上、原則として「処分があったことを知った日の翌日」から起算して3か月以内に審査請求をする必要があります。さらに、「処分があった日の翌日から起算して1年」を経過したときは、原則として審査請求ができなくなる点にも注意します。

通知書の日付、到達日、本人が処分を知った日、相談を受けた日を混同しないことが重要です。受任時に期限表を作り、最終期限だけでなく、内部確認期限、依頼者確認期限、提出予定日を分けて管理すると安全です。

審査請求先が処分庁か審査庁かを確認する

審査請求書の提出先は、教示欄と根拠法令で確認します。処分をした行政機関と、審査請求を受ける審査庁が同じとは限りません。

自治体案件では、実施機関が知事・市町村長なのか、教育委員会、公安委員会、選挙管理委員会、議会などなのかによって、審査庁が細かく変わります。地方自治体の長以外の機関が処分庁である場合、行政不服審査法上の「最上級行政庁」が存在しないため、処分庁自らが審査庁となるケースも多く見られます。条例、規則、様式、教示を必ず照合します。

代理人として提出する場合の委任状・資格表示を確認する

特定行政書士が代理人として関与する場合は、委任状、資格表示、代理権の範囲を確認します。審査請求書に代理人として記載する以上、誰から、どの範囲で委任を受けたのかを明確にします。

委任状には、対象処分、情報公開請求に関する審査請求、書類作成・提出・受領に関する権限などを適切に記載します。自治体や行政機関によって様式が用意されている場合は、その様式を優先して確認します。

自治体案件では条例・規則・様式を必ず原典確認する

自治体案件では、当該自治体の条例、規則、様式、審査基準、教示を原典で確認します。国の情報公開法と似た制度であっても、不開示情報の表現、部分開示の規定、公益上の裁量的開示の有無、審査会への諮問手続、提出先、様式が異なる場合があります。

同じ自治体でも、教育委員会、公安委員会、公営企業、議会など、実施機関によって窓口や様式が異なることがあります。「どの実施機関の、どの条例に基づく処分か」を特定することが出発点です。

提出後に備える3つの対応

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 弁明書・反論書で争点が変わることを想定する
  • 審査会に諮問された後の資料確認の流れを押さえる
  • 追加主張は「通知書の読み方」で見つけた争点に戻って整理する

審査請求書を提出して終わりではありません。提出後には、弁明書、反論書、審査会への諮問、答申、裁決といった流れが続く場合があります。最初に読んだ通知書の争点整理を土台にしながら、提出後の資料で主張を補正していきます。

弁明書・反論書で争点が変わることを想定する

審査請求後、処分庁から弁明書が出されると、通知書では見えなかった判断理由が具体化されることがあります。その結果、当初の争点が深まったり、別の争点が浮かび上がったりします。

反論書では、通知書だけではなく弁明書の記載に対しても整理して反論します。争点管理表を作ると、通知書、審査請求書、弁明書、反論書の対応関係を整理しやすくなります。

審査会に諮問された後の資料確認の流れを押さえる

情報公開案件では、審査会に諮問される場合があります。この段階では、諮問通知、理由説明書、意見書提出の機会、答申の公表状況を確認します。

自治体案件では、審査会の名称、手続、意見陳述の可否、資料閲覧の範囲が条例や規則で異なることがあります。審査会に進んだからといって結論が変わるとは限りませんが、争点が整理され、処分庁の判断過程が見えやすくなる場合があります。

追加主張は「通知書の読み方」で見つけた争点に戻って整理する

追加主張を行うときは、最初に通知書を読んだときの争点に戻って整理します。弁明書や追加資料を読むと、新しい情報に引っ張られて主張が広がりすぎることがあります。

追加主張では、「処分類型」「対象文書」「不開示事由」「公益上の裁量的開示」「部分開示」「理由記載」「教示・手続」のどれに関する主張なのかを確認します。通知書のどの記載に対し、どの資料を根拠に、どの点を問題にするのかを明確にします。

まとめ:不開示決定通知は5つに分解して読む

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 処分類型・理由記載・根拠条文・関連資料・教示を順番に確認する
  • 不開示事由だけを見ず、部分開示や文書特定の問題も検討する
  • 初動で読み違えないことが、審査請求の精度を左右する

不開示決定通知は、「不開示」という結論だけを見る書面ではありません。処分類型、理由記載、根拠条文、関連資料、教示を順に確認することで、争点候補が整理されます。

確認すべき5つの要点
  • 全部不開示・一部開示・不存在・対象文書非該当・存否応答拒否を分ける
  • 理由記載が具体的か、条文の引用だけで終わっていないかを見る
  • 根拠条文はe-Gov法令検索や自治体例規で原典確認する
  • 請求書控え、補正依頼、延長通知、開示文書、封筒を並べて読む
  • 教示欄で審査請求期間、提出先、提出方法を確認する

処分類型・理由記載・根拠条文・関連資料・教示を順番に確認する

まず処分類型を分け、次に理由記載を読み、根拠条文と照合し、関連資料で裏取りし、最後に教示欄で次の手続を確認します。この順番を守ると、相談時の説明も、審査請求書の構成も安定します。

不開示事由だけを見ず、部分開示や文書特定の問題も検討する

実務上は、部分開示の余地、公益上の裁量的開示、文書特定の範囲、文書不存在の理由、存否応答拒否の適否が重要な争点になることがあります。不開示決定通知は、行政側の判断をそのまま受け入れるかどうかを決める書面ではなく、検討余地を見つけるための出発点です。

初動で読み違えないことが、審査請求の精度を左右する

初動で行うべきことは、通知書を分解し、関連資料をそろえ、期限を確認し、争点候補を絞ることです。そのうえで、審査請求に進むのか、再度の開示請求を検討するのか、公表資料や別制度を確認するのかを判断します。

ご相談の進め方資料がそろっていれば確認はスムーズですが、通知書だけの段階でも状況整理は可能です。まずは現在分かっている内容を伺い、必要な資料、確認すべき条文、期限、次に取り得る方法を一緒に整理します。

HANAWA行政書士事務所|情報公開請求・不服申立て実務講座

本記事は教育・研修目的の実務教材です。個別案件では最新の法令、条例、通知、審査基準、様式、教示を確認してください。

あわせて確認したいこと

行政からの通知や決定を受け取った方へ

不許可通知、非開示決定、行政指導などは、理由と期限を確認したうえで次の対応を考える必要があります。通知書や決定書をもとに、進め方を整理します。

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