補正連絡が来たらどう動くか|情報開示請求の補正・取下げ・再請求を実務で判断する手順
情報開示請求の補正対応では、行政機関の指摘に応じるだけでなく、請求目的に照らして補正・取下げ・再請求のどれを選ぶかを整理する必要があります。この記事では、初めて案件を扱う行政書士が、相談対応から受任後の実務まで落ち着いて進められるよう、判断、資料確認、書き方、提出後管理を順番に解説します。
補正連絡は「失敗」ではなく請求を整える実務上の分岐点
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 補正連絡が来た時点でまず確認すべきこと
- 特定行政書士が支援できる範囲と慎重に扱うべき範囲
- この記事で扱う4つの実務ブロック
補正連絡は、請求が直ちにうまくいかなかったという意味ではありません。行政機関が対象文書を特定し、手続を進められる形に整えるための確認機会です。連絡内容、請求目的、対象文書、期限、依頼者の利益を分けて確認すると、補正・取下げ・再請求の判断がしやすくなります。
補正連絡が来た時点でまず確認すべきこと
補正連絡が来たら、「何を理由に補正を求められているのか」を正確に確認します。行政文書の特定が足りないのか、氏名・住所などの請求者情報に不備があるのか、手数料や提出先に問題があるのかで対応は変わります。電話で受けた場合は、日時、担当部署、担当者名、指摘内容、補正期限、求められた対応を記録します。メールでの個別往復に対応しない機関もあるため、必要に応じて窓口での確認、FAX、書面、補正書の提出により認識を明確にします。
特定行政書士が支援できる範囲と慎重に扱うべき範囲
情報開示請求の書類作成や申請代理は、行政書士法に基づく官公署提出書類の作成等として、通常の行政書士も取り扱い得る業務です。特定行政書士でなければ開示請求の入口を扱えない、という整理ではありません。一方、不開示決定、部分開示決定、却下等の後に審査請求などの行政不服申立てを代理する場面では、特定行政書士としての資格・業務範囲が問題になります。開示請求の段階と、不服申立ての代理段階を分けて説明することが大切です。
この記事で扱う4つの実務ブロック
この記事では、補正連絡への対応を「判断」「資料」「書き方」「提出後」の4ブロックで整理します。まず、補正・取下げ・再請求のどれを選ぶかを考えます。次に、請求書控え、行政文書ファイル管理簿、審査基準、様式、標準処理期間を確認します。そのうえで補正書や補足連絡の文言を整え、提出後は期限や通知を管理します。この順番を意識すると、依頼者の目的からずれにくくなります。
提出後の流れを知ると補正対応で慌てない
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 開示請求書の提出後に行政機関で行われる基本確認
- 開示決定等までの期限と補正期間の関係
- 補正・期限延長・大量請求時の特例を分けて理解する
情報開示請求は、提出して終わる手続ではありません。提出後には、受付、形式確認、文書特定、補正照会、期限管理、決定通知という流れがあります。この流れを先に理解しておくと、補正連絡が来ても、今どの段階にいるのかを落ち着いて判断できます。
氏名・住所、対象文書の表示、手数料、受付番号を確認します。
文書名が不明な場合は、内容・期間・部署・業務で補います。
この期間は開示決定等の期限計算から除かれます。
通知書の理由と教示を読み、次の対応を整理します。
開示請求書の提出後に行政機関で行われる基本確認
開示請求書が提出されると、行政機関は形式面と対象文書の特定可能性を確認します。氏名・住所などの請求者情報、対象文書の表示、手数料、提出先などが確認対象です。連絡先は実務上求められることが多いものの、情報公開法上の開示請求書の必須記載事項とは分けて理解します。補正連絡につながりやすいのは、「行政文書の名称その他の行政文書を特定するに足りる事項」が不足している場合です。
開示決定等までの期限と補正期間の関係
国の行政機関に対する情報開示請求では、開示決定等までの期限が定められています。ただし、補正依頼から補正が完了するまでの期間は、この期限計算から除かれる扱いです。実務では、受付日、補正連絡日、補正期限、補正提出日を一覧で管理します。依頼者には、「いつまでに行政機関が決定するか」だけでなく、「補正に要した期間が期限にどう影響するか」を説明すると、進行状況を共有しやすくなります。
補正・期限延長・大量請求時の特例を分けて理解する
補正、期限延長、大量請求時の特例は、いずれも提出後に出てくる可能性がありますが、意味は異なります。補正は請求書の不備や文書特定の不足を整える場面です。期限延長は、正当な理由により決定までの期間が延びる場面と整理できます。大量請求時の特例は、対象文書が著しく大量で、通常の期限内にすべて決定することが困難な場合に問題になります。
| 連絡・通知 | 主な意味 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 補正連絡 | 請求内容や形式の不備確認 | 補正・取下げ・再請求を検討 |
| 期限延長通知 | 決定期限の延長 | 延長理由と新期限を確認 |
| 大量請求時の特例通知 | 大量文書による処理期間の特例 | 対象範囲と段階的決定を確認 |
| 決定通知 | 開示・部分開示・不開示等 | 開示実施または次段階を検討 |
補正連絡で多い3つの指摘を切り分ける
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 行政文書の特定が不十分な場合
- 請求者情報・連絡先・手数料に不備がある場合
- 請求先や対象文書の所管がずれている場合
補正連絡で慌てる原因の多くは、指摘内容をひとまとめに受け止めてしまうことにあります。まずは、補正の理由を「文書特定」「形式不備」「所管違い」に分けることが重要です。原因が分かれば、補正すべきか、取下げて再請求すべきかも判断しやすくなります。
行政文書の特定が不十分な場合
最も多い補正理由は、行政文書の特定が不十分な場合です。請求者が文書名を完全に知っているとは限りませんが、行政機関が検索できる程度の具体性は必要です。たとえば「補助金に関する資料一式」では広すぎることがあります。その場合は、「令和○年度」「○○補助金」「交付決定に関する決裁文書」「担当部署」「通知・審査資料」などに分け、文書を探せる状態に近づけます。
請求者情報・連絡先・手数料に不備がある場合
請求者情報や手数料の不備は、内容面の争いではなく、手続の形式面の問題です。情報公開法上、開示請求書には氏名・住所などの記載が求められます。電話番号やメールアドレスなどの連絡先は、実務上記載を求められることが多いものの、法定の必須記載事項とは区別して整理します。まず当該行政機関の様式と手数料案内を確認し、収入印紙、納付書、現金納付、郵送料などの扱いを個別に見ます。
請求先や対象文書の所管がずれている場合
請求先や所管がずれている場合も、補正連絡や案内につながります。行政文書は、原則として当該行政機関が保有する文書を対象に請求します。行政機関から事案の移送、つまり情報公開法上の制度としての移送の可能性や、担当部署の案内が示されることもあります。ただし、常に移送されるとは限りません。自治体案件では当該自治体の条例・規則が根拠になるため、条例、規則、実施機関の案内を確認します。
補正に応じる前に確認する資料リスト
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 請求書控え・受付日・受付番号・担当部署を確認する
- 行政文書ファイル管理簿や公表資料で文書の当たりを付ける
- 当該機関の審査基準・標準処理期間・様式を確認する
補正対応では、担当者の説明だけに頼らず、必ず資料に戻って確認します。資料確認をしないまま補正すると、依頼者の目的から外れた文書に請求が寄ってしまうことがあります。請求書控え、公表資料、審査基準、様式を順に確認することで、補正の精度が上がります。
当初の請求文言、受付日、受付番号、担当部署を確認します。
ファイル名、担当課、保存期間、業務分類から候補を探します。
不適法処理、手数料、提出方法、標準処理期間を確認します。
請求書控え・受付日・受付番号・担当部署を確認する
最初に確認する資料は、提出済みの請求書控えです。どの文言で請求したのかを確認しなければ、補正すべき箇所を正確に判断できません。依頼者から相談を受けた場合は、請求書控え、受付印、受付メール、郵送記録、行政機関からの連絡メモをそろえます。請求書控えがない場合は、依頼者の記憶だけで進めず、行政機関に受付状況を確認し、可能な範囲で請求内容を復元します。
行政文書ファイル管理簿や公表資料で文書の当たりを付ける
行政文書の特定で迷う場合は、行政文書ファイル管理簿や公表資料を確認します。文書名が分からなくても、ファイル名、担当課、保存期間、業務分類、政策名などから、請求対象の候補を探せることがあります。審議会資料、予算資料、事業評価書、通知、Q&A、議会資料、報道発表などに、対象文書の名称や担当部署が示されていることもあります。行政機関が使っている正式名称に近づけるほど、検索可能性が高まります。
当該機関の審査基準・標準処理期間・様式を確認する
補正対応では、当該機関の審査基準、標準処理期間、様式、手数料案内を確認します。情報公開法の条文だけでは、実際の提出方法や機関ごとの運用までは分かりません。審査基準では、不開示情報の判断、行政文書該当性、部分開示、存否応答拒否、不適法な請求として処理され得る場面などが整理されている場合があります。自治体案件では、条例、規則、様式、審査会答申、電子申請の可否まで確認します。
補正するか取下げるかを判断する3つの基準
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 文書を特定し直せば目的に届くか
- 請求範囲を狭めることで依頼者の利益を損なわないか
- いったん取下げて再請求した方が早く正確か
補正連絡への対応では、「補正するか、取下げるか、再請求するか」の判断が重要です。すべての案件で補正が最適とは限りません。依頼者の目的、現在の請求内容、行政機関の指摘、期限、手数料を比較し、目的に近い方法を選びます。
文書を特定し直せば目的に届くか
まず確認すべき基準は、文書を特定し直せば依頼者の目的に届くかどうかです。補正によって対象文書が明確になり、必要な情報に近づけるなら、補正を優先する価値があります。たとえば、依頼者が知りたいのが処分に至る判断過程であれば、対象は通知書だけでなく、決裁文書、理由整理資料、審査記録、検討資料などになる可能性があります。実際に保有されているか、不開示情報に該当するかは別問題として整理します。
請求範囲を狭めることで依頼者の利益を損なわないか
行政機関から「範囲が広い」と指摘された場合、請求範囲を狭める対応が考えられます。ただし、狭め方によっては、依頼者が本当に必要としていた文書が対象外になるおそれがあります。期間、部署、文書類型、対象事業、処分名などの軸を使い、目的に必要な文書を残しながら検索可能な範囲に整えます。補正は行政機関の都合だけで行うものではなく、依頼者の利益を守るための再設計です。
いったん取下げて再請求した方が早く正確か
現在の請求内容が大きくずれている場合は、補正よりも取下げと再請求を検討することがあります。たとえば、請求先が違う、対象文書の前提が誤っている、請求範囲が広すぎて補正では整理しきれない場合です。ただし、取下げると現在の請求手続はいったん終了するため、再請求では受付日や期限管理が新しくなります。手数料の扱いも機関ごとに確認します。取下げ前に新しい請求案を作っておくと、手続の空白を小さくできます。
補正書・補足連絡の書き方で外さない要点
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 行政文書名が不明なときは「内容・期間・部署・業務」で特定する
- 補正の趣旨は簡潔にし、請求目的を書きすぎない
- 電話連絡だけで終わらせず記録化する
補正書や補足連絡では、長く説明するよりも、行政機関が対象文書を検索できる情報を明確に示すことが大切です。請求者の思いを詳しく書くより、文書の特定に必要な要素を整理して記載します。書き方の目的は、行政機関が処理できる請求に整えることです。
行政文書名が不明なときは「内容・期間・部署・業務」で特定する
行政文書名が不明な場合でも、補正できる余地はあります。文書名そのものにこだわるより、「内容・期間・部署・業務」の4要素で特定する方法が実務的です。
| 特定要素 | 記載例 |
|---|---|
| 内容 | ○○処分の判断過程に関する資料 |
| 期間 | 令和○年○月から令和○年○月まで |
| 部署 | ○○課、○○係、関係部署 |
| 業務 | 審査、決裁、通知、協議、照会回答 |
行政文書ファイル管理簿や公表資料の表現を使い、行政機関側が検索する方向を把握しやすい形に整えます。
補正の趣旨は簡潔にし、請求目的を書きすぎない
補正書では、補正の趣旨を簡潔に書きます。開示請求は、原則として請求者の動機を詳細に説明する手続ではありません。実務上は、「令和○年○月○日付け開示請求について、行政文書を特定するため、以下のとおり補正します」といった形で足ります。そのうえで、対象文書の内容、期間、部署、文書類型を具体化します。文書特定のために必要な背景は補足しつつ、請求目的の説明に寄りすぎないようにします。
電話連絡だけで終わらせず記録化する
補正連絡は電話で来ることもあります。しかし、電話だけで対応を終えると、後から「何を求められたのか」「どの期限だったのか」が不明確になりやすくなります。記録すべき項目は、連絡日時、行政機関名、部署、担当者名、補正理由、求められた対応、補正期限、こちらの回答、今後の予定です。担当者個人とのメール往復を当然の前提にせず、窓口での書面確認、FAX、所定様式、補正書の提出など、当該機関の運用に沿って記録を残します。
取下げを選ぶときに説明すべき依頼者への注意点
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 取下げは不開示決定とは意味が違う
- 手数料・期限・再請求時の扱いを確認する
- 取下げ後に再請求する場合の設計を先に決める
取下げは、請求をやめるだけの単純な対応ではありません。不開示決定との違い、手数料や期限への影響、再請求の設計を依頼者に説明する必要があります。取下げを選ぶ場合は、次に何をするかを決めてから進めることが重要です。
取下げは不開示決定とは意味が違う
取下げは、現在の開示請求を請求者側の意思で終了させる対応です。一方、不開示決定は、行政機関が開示しない旨の処分をする場面です。両者は意味も、その後の対応も異なります。依頼者には、「取下げると不開示と判断されたわけではない」と説明します。処分が出ていないため、審査請求の対象となる処分が存在しない場合もあります。次に不服申立てを検討するのか、再請求で請求対象を整えるのかを分けて考えます。
手数料・期限・再請求時の扱いを確認する
取下げを検討する場合は、手数料、期限、再請求時の扱いを確認します。手数料が返還されるか、再請求時に改めて必要になるか、取下げ書の様式があるかは、行政機関や自治体によって異なることがあります。また、取下げると現在の請求に基づく期限管理は終了します。再請求を行う場合は、新たな受付日から期限を管理することになります。自治体案件では、条例や規則、情報公開窓口の案内に従います。
取下げ後に再請求する場合の設計を先に決める
取下げ後に再請求する予定があるなら、取下げ前に再請求案を作っておくと進めやすくなります。再請求案では、対象文書、対象期間、担当部署、文書類型、請求先、手数料、提出方法を整理します。初回請求で補正を求められた理由を反映し、同じ指摘を受けにくい形に整えます。依頼者には、「取下げ」は終わりではなく、請求を組み直すための手続であると説明します。
再請求で失敗しないための特定し直しの手順
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 初回請求のどこが広すぎたかを整理する
- 文書名が不明な場合は行政文書ファイル管理簿から逆算する
- 請求範囲を「期間・部署・文書類型」で再構成する
再請求は、同じ請求を出し直す作業ではありません。初回請求で文書特定が不十分だった点を整理し、行政機関が処理できる形に組み直す作業です。再請求の精度は、初回請求の振り返りで決まります。
初回請求のどこが広すぎたかを整理する
再請求の前に、初回請求のどこが広すぎたのかを確認します。期間が広いのか、部署が広いのか、文書類型が広いのか、対象事業が広いのかで対応は異なります。「○○事業に関する文書一式」と書いた場合、決裁文書、契約書、会議資料、照会回答、内部メモなど、非常に広く読めることがあります。行政機関から受けた補正理由と依頼者の目的を照合し、残すべき範囲と削れる範囲を分けます。
文書名が不明な場合は行政文書ファイル管理簿から逆算する
文書名が分からない場合は、行政文書ファイル管理簿から逆算します。業務分類、ファイル名、作成・取得年度、保存期間、担当部署などは、請求文言を整える手がかりになります。再請求案では、ファイル管理簿上の名称や分類を参考にして、「○○課が保有する令和○年度○○事業に係る交付決定関係文書」など、行政機関が検索しやすい形に近づけます。公表資料に出ている会議名、通知名、事業名、担当課名も活用します。
請求範囲を「期間・部署・文書類型」で再構成する
再請求では、請求範囲を「期間・部署・文書類型」で再構成します。期間は年度、日付、処分日、通知日、会議開催日などで区切ります。部署は担当課、室、係、関係部署などを確認します。文書類型は、決裁文書、通知、照会回答、会議資料、契約関係書類、審査資料などに分けます。絞り込みすぎると重要文書を外す可能性もあるため、「優先的に請求する文書」と「必要に応じて追加請求する文書」を分ける方法もあります。
補正後に管理すべき提出後の4項目
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 補正提出日と期限計算を記録する
- 追加照会・期限延長通知・決定通知を分けて管理する
- 開示決定後の実施申出と手数料を確認する
- 不開示・部分開示の場合は次段階の検討に移る
補正を提出した後も、実務は続きます。補正提出日、期限、追加照会、通知、開示実施、不服申立ての可能性を管理する必要があります。提出後管理を怠ると、せっかく補正しても次の判断が遅れるおそれがあります。
補正提出日と期限計算を記録する
補正を提出したら、補正提出日を記録します。補正依頼から補正が完了するまでの期間は、開示決定等の期限計算に影響するため、いつ補正を求められ、いつ補正したのかが重要になります。記録項目は、補正連絡日、補正期限、補正提出日、提出方法、送付記録、行政機関の受領確認です。郵送の場合は発送日だけでなく到達見込みも確認します。電子申請の場合は、送信履歴や受付完了画面を保存します。
追加照会・期限延長通知・決定通知を分けて管理する
補正後にも、追加照会、期限延長通知、決定通知が届く場合があります。追加照会は、さらに文書特定や確認が必要な場面です。期限延長通知は、決定までの期間が延びることを知らせるものです。決定通知は、開示、部分開示、不開示、却下等の結論を示します。実務では、通知の名称、日付、理由、対応期限、次に必要な手続を一覧化します。通知の写しを依頼者に共有し、今すぐ対応が必要なものと、経過を見るものを分けて説明します。
開示決定後の実施申出と手数料を確認する
開示決定が出ても、直ちに文書が手元に届くとは限りません。開示の実施方法、閲覧、写しの交付、電子媒体、郵送、手数料、郵送料などを確認します。開示決定後の実施申出が必要な場合もあります。依頼者には、「開示決定」と「実際に文書を見ること」の違いを説明し、開示される文書の範囲、実施方法、費用、申出期限を整理して伝えます。大量の文書が対象になる場合は、先に費用見込みを確認すると安心です。
不開示・部分開示の場合は次段階の検討に移る
不開示決定や部分開示決定が出た場合は、決定通知書の理由を確認し、次段階の検討に移ります。すぐに反論文を書くのではなく、決定理由、不開示条項、対象文書、黒塗り部分、教示を読み分けます。不開示理由が、情報公開法5条各号の「個人に関する情報」「法人等に関する情報」「審議、検討等に関する情報」「事務又は事業に関する情報」などのどれに当たるとされているかを整理します。
不開示決定・部分開示が出た後の次段階判断
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- まず決定通知書の理由と教示を確認する
- 審査請求を検討する場合の期限と宛先を確認する
- 再請求で足りる場面と不服申立てを検討すべき場面を分ける
不開示決定や部分開示決定が出た後は、通知書から次の手続を判断します。審査請求、再請求、追加請求、依頼者への説明を分けて考えることが重要です。次段階判断では、期限と根拠資料の確認が欠かせません。
まず決定通知書の理由と教示を確認する
決定通知書を受け取ったら、まず理由と教示を確認します。理由には、どの文書について、どの根拠で開示・不開示・部分開示とされたのかが示されます。教示には、不服申立ての方法、期限、提出先などが記載されます。部分開示では、黒塗り部分だけを見るのではなく、開示された部分から分かる事実も整理します。開示文書の中に、追加請求につながる文書名や部署名が含まれていることもあります。
審査請求を検討する場合の期限と宛先を確認する
審査請求を検討する場合は、期限と宛先を確認します。一般的には、処分があったことを知った日の翌日から起算する期限が問題になりますが、具体的な扱いは通知書の教示と根拠法令で確認します。審査請求書には、処分の内容、処分を知った日、審査請求の趣旨と理由、教示の有無などを記載します。特定行政書士として支援する場合は、行政不服申立てに関する業務範囲、委任内容、期限、提出先を慎重に確認します。
再請求で足りる場面と不服申立てを検討すべき場面を分ける
不開示や部分開示が出た場合でも、常に審査請求が適しているとは限りません。別の文書を請求すれば目的を達成できる場合や、文書特定を変えた再請求の方が早い場合もあります。一方で、行政機関の不開示理由そのものに納得できない場合、対象文書の存在や不開示情報該当性が争点になる場合は、不服申立てを検討します。依頼者が求めるゴールに照らし、再請求と不服申立てを使い分けます。
依頼者に説明しておきたい5つの実務ポイント
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 補正は請求を通すための調整であること
- 補正に応じない場合は不開示決定につながる可能性があること
- 取下げ・再請求は目的に照らして選ぶこと
- 行政機関ごとに様式・手数料・案内が異なること
- 地方公共団体では条例・規則・運用を必ず確認すること
補正対応では、依頼者への説明が実務の質を左右します。制度の説明だけでなく、今どの段階にあり、どの選択肢があり、それぞれにどのような影響があるのかを伝える必要があります。依頼者が判断できる材料を整えることが、専門職の役割です。
補正は請求を通すための調整であること
依頼者は、補正連絡を受けると「請求が拒まれた」と感じることがあります。しかし、補正は請求を処理可能な形に整えるための調整です。行政機関が対象文書を探せるように、文書名、内容、期間、部署、文書類型を具体化します。説明の際は、「行政機関からの指摘に従うかどうか」ではなく、「必要な文書に届く表現に整えるかどうか」という言い方が適しています。
補正に応じない場合は不開示決定につながる可能性があること
補正に応じない場合、請求要件を満たさない状態が解消されないため、却下、または不適法な請求としての処理につながる可能性があります。ここでいう問題は、開示・不開示の実体判断ではなく、請求として処理できる形式を満たしているかどうかです。補正内容が依頼者の目的から外れる場合は、担当者に確認し、別の表現を提案することも考えられます。最終的には当該機関の審査基準・条例上の表現を確認します。
取下げ・再請求は目的に照らして選ぶこと
取下げや再請求は、補正が難しいときの逃げ道ではありません。請求先、対象文書、請求範囲を組み直した方が依頼者の目的に近づく場合に選ぶ手続です。依頼者には、「補正で進める場合」「取下げて再請求する場合」「決定を待って次段階を検討する場合」を比較して示すと分かりやすくなります。選択肢を並べることで、納得した判断につながります。
行政機関ごとに様式・手数料・案内が異なること
情報開示請求の基本的な考え方は共通していても、様式、手数料、提出方法、開示実施の流れは行政機関ごとに異なることがあります。国の行政機関、独立行政法人、自治体では、確認すべき資料も変わります。過去の案件で使った様式をそのまま流用するのではなく、当該機関の公式サイト、様式、手数料案内、Q&A、窓口案内を確認します。
地方公共団体では条例・規則・運用を必ず確認すること
地方公共団体への情報開示請求では、国の情報公開法ではなく、当該自治体の条例や規則が根拠になります。補正、手数料、開示決定期限、不服申立て、審査会の扱いも自治体ごとに異なる場合があります。依頼者には、自治体ごとの差異を前提に説明します。「この自治体の条例ではどう扱われるかを確認します」と伝える姿勢が、誤った助言を避けるうえで大切です。
まとめ|補正連絡への対応は「文書特定」と「次の一手」の設計で決まる
情報開示請求の補正連絡は、単なる修正依頼ではなく、請求を目的に近づけるための重要な分岐点です。補正に応じるか、取下げるか、再請求するかは、依頼者が何を知りたいのか、現在の請求で目的に届くのかを確認したうえで判断します。
- 補正連絡が来たら、まず理由を「文書特定」「形式不備」「所管違い」に分けて整理します。
- 補正に応じる前に、請求書控え、受付日、行政文書ファイル管理簿、審査基準、様式を確認します。
- 文書名が不明な場合は、「内容・期間・部署・業務」で行政機関が検索しやすい形に整えます。
- 取下げや再請求を選ぶ場合は、手数料、期限、再請求案を先に確認します。
- 不開示・部分開示、または却下等の処理がされた後は、通知書の理由と教示を読み、再請求と不服申立てを分けて検討します。
補正対応で大切なのは、行政機関からの連絡に反射的に応じることではありません。依頼者の目的を確認し、一次情報に戻り、次の手続まで見据えて判断することです。資料が十分にそろっていない段階でも、現在の状況を整理するところから始められます。