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死後事務委任契約業務 実務マニュアル

3-4 親族・緊急連絡先の確認

本人死亡時に「誰から連絡を受け、誰へ、何を、どの順番で、どこまで伝えるか」を設計する。親族・緊急連絡先の確認は単なる名簿作成ではなく、死後事務委任契約を作動させる起動装置を整える作業です。

テーマ:死亡時連絡体制重点:守秘義務・本人意思・紛争予防

この回でできるようにすること

前回3-3では、初回相談で死亡後に必要な事務全体を聞き取り、次回以降の詳細設計につなげることを扱いました。今回は、その希望を実行可能な連絡体制に落とし込みます。死亡後の事務は、受任者が死亡の事実を把握できなければ開始できません。

  • 親族、推定相続人に該当し得る者、緊急連絡先、友人、支援者、医療・介護関係者、管理会社、葬儀社等を分類する。
  • 死亡時第一報を受けるルートと、受任者から発信する連絡順位を分けて設計する。
  • 「連絡する人」「連絡しない人」「事後報告する人」を記録する。
  • 本人の希望と親族感情が対立しそうな場合に、紛争を誘発しにくい記録方法を選ぶ。
  • 関係者へ受任者情報を事前共有するための本人同意を取得する。
  • 行政書士法上の守秘義務を踏まえ、本人の同意範囲を超えた情報提供を避ける。
  • 連絡先変更時の更新ルールを契約・運用に組み込む。
  • 親族から苦情が出た場合、行政書士が説明できる範囲と弁護士へつなぐ範囲を区別する。

この回では、死亡直後24時間以内の具体的実行手順、葬儀社との具体的契約、相続人調査の詳細な戸籍実務、親族間紛争の交渉は扱いません。死亡直後の動きは第3-16回、親族・関係者への報告は第3-21回、親族トラブル予防は第0-6回で扱います。

この業務が必要になる場面

一人暮らし病院、施設、管理会社、友人、近隣住民の誰も受任者を知らなければ、契約があっても受任者は死亡を把握できません。緊急連絡カード、エンディングノート、財布内カード、スマートフォンの緊急情報、管理会社登録などを組み合わせます。
親族と疎遠・不仲「知らせたくない」「葬儀後に最低限知らせたい」「財産のことは知らせたくない」などの希望が出ます。推定相続人に該当する場合、完全に無視できるとは限らないため、本人意思と実務上の制約を分けて記録します。
パートナー・友人・支援者内縁配偶者、同性パートナー、友人、近隣支援者、ケアマネジャー、訪問看護師など、法律上の親族でなくても本人の生活を支えている人がいます。
病院・施設医療機関や介護施設は、緊急時連絡先、身元引受人、支払担当者、退院・死亡時の連絡先を求めることがあります。行政書士が医療判断や身元保証まで引き受けるかは別問題です。
住居関係賃貸住宅、分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームでは、死亡後の立会い、鍵、残置物、原状回復、賃料精算の連絡先が必要です。
葬儀・火葬葬儀社との契約は別回で扱いますが、「死亡時に葬儀社へ連絡する順位」と「誰が葬儀社名・連絡先を把握しているか」は本回で整理します。

最初に押さえる基本知識

親族確認と推定相続人確認は目的が違う

親族一覧は、本人と人的関係のある人を広く把握する一覧です。兄弟姉妹、甥姪、いとこ、元配偶者、内縁者、同性パートナー、友人、近隣住民、支援者なども含みます。

一方、推定相続人は、仮に現時点で本人が死亡した場合に相続人となるべき法律上の地位にある者です。本人ヒアリングから、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹の有無を確認し、血族順位に基づく該当性を整理できます。ただし、戸籍等による裏付け前の情報と確定結果は必ず分けます。

記載例:本人申告上、配偶者なし、子なし、父母死亡、兄Bあり。血族順位からは兄Bが第3順位の推定相続人に該当する可能性が高い。ただし、戸籍等による裏付けは未了。

この記録なら、「戸籍調査前だから何も分からない」という誤解も、「本人が言ったから確定」という早合点も避けられます。

「連絡する」とは何を伝えることか

実務では、「連絡する」という言葉を分解します。死亡の第一報、搬送先・安置先、葬儀・火葬日程、参列可否、納骨先、受任者の立場、遺言書の有無、財産や相続の窓口、鍵・家財・ペット・保険・年金等の手続状況、本人希望により詳細を伝えない旨など、伝える内容は場面で異なります。

特に遺言書の有無や内容は、相続人・受遺者の利害に直結します。親族から聞かれたからといって、安易に「遺言があります」「誰に遺贈されています」と伝えてはいけません。遺言執行者の有無、相手方の立場、開示の必要性、本人意思、紛争リスクを踏まえます。

死後事務受任者は、相続財産の分配、相続人間の意見調整、遺産分割の代理交渉を行えません。説明できるのは、受任契約の範囲、本人の生前意思、実施済み事務の事実に限ります。紛争性が出たら弁護士へつなぎます。

守秘義務と情報共有

行政書士は、業務上取り扱った事項について守秘義務を負います。本人の同意なく、親族、友人、医療機関、介護施設、管理会社、葬儀社等へ本人情報を提供してはいけません。

ただし、関係機関へ受任者情報を共有しなければ、死亡時に受任者へ連絡が来ない場面があります。その場合も、共有先、共有目的、共有情報、共有時期を記録し、必要最小限にとどめます。

  • 病院等へ伝える情報:契約の存在または締結予定、死亡時連絡希望、受任者の氏名・事務所名・電話・メール。
  • 明確に否定する事項:医療判断、身元保証、債務保証を引き受ける趣旨ではないこと。
  • 原則共有しない情報:親族不和、財産内容、遺言内容、病歴、性的指向、パートナー関係など。

連絡先の分類

図解:死亡時連絡体制は5分類で整理する

  • 人的関係
    親族、推定相続人に該当し得る者、内縁・同性パートナー、友人、知人、近隣住民、民生委員、勤務先、宗教関係者、ペット預け先候補。
  • 医療・介護
    主治医、病院相談員、地域包括支援センター、ケアマネ、訪問看護、訪問介護、デイサービス、介護施設、薬局。
  • 住居関係
    管理会社、貸主、保証会社、管理組合、管理人、見守りサービス、警備会社、鍵保管者。
  • 死後事務実行
    葬儀社、搬送業者、火葬場、寺院、納骨先、墓地管理者、家財整理業者、ペット引取先。火葬場は通常、葬儀社経由。
  • 契約・財産
    金融機関、保険会社、年金事務所、公共料金、携帯電話、インターネット、サブスク、クレジットカード。

疎遠な親族、パートナー、友人がいる場合

親族と疎遠な場合

本人が「兄とは絶縁している」と述べても、法律上は推定相続人に該当する場合があります。「連絡しなくていい」という希望があっても、死亡後に親族から苦情が出る可能性があります。

確認すべきことは、連絡したくない理由、一切連絡しない希望なのか葬儀後・火葬後・納骨後なら報告してよいのか、親族から苦情が出る可能性を理解したうえで希望を維持するのか、の3点です。

虐待、DV、金銭トラブル、宗教・思想上の対立、性的指向やパートナー関係を知られたくない事情がある場合、情報共有自体が本人の安全・尊厳を害することがあります。本人のプライバシーを守る視点が必要です。

内縁・同性パートナー、友人、支援者

法律上の親族以外に、本人が最も信頼する人がいることは珍しくありません。確認項目は、死亡時第一報の可否、葬儀・火葬・納骨の希望を共有してよいか、親族へ存在を伝えてよいか、親族と接触する意思があるか、死亡後事務への関与範囲、金銭負担や法的責任を負わせない設計か、です。

友人やパートナーを第一連絡先にすることはあります。ただし、喪主役、遺品引取役、相続人対応役まで期待するなら、本人と相手方双方の同意確認が必要です。

火葬・葬送と親族感情

受任者が本人の死亡後に葬儀・火葬等を実施することがあります。実務上、葬儀社、火葬場、自治体は、本人の生前意思、契約書、公正証書、死亡診断書、火葬許可申請の実務、関係者の状況等を踏まえ、受任者を火葬等を行う者として扱うことがあります。

しかし親族から見ると、「なぜ行政書士が遺体を引き取ったのか」「なぜ親族に知らせず火葬したのか」が不信感を生みます。事後報告では、本人の生前意思、公正証書等の有無、葬祭等の方法、祭祀主宰者の指定、受任者が行った事務範囲を、誤解を招かないように記載します。祭祀承継や遺骨引渡しを争う場合、行政書士は交渉せず弁護士へ連携します。

実務の進め方

本人確認と意思能力・理解状況を確認する。
守秘義務と情報共有の範囲を説明する。
家族構成・親族関係の概略を聞く。
推定相続人の該当性と戸籍等による要裏付け事項を分ける。
死亡時に連絡してほしい人、連絡してほしくない人、事後報告でよい人を確認する。
第一報を受けるルートと、関係者へ発信する順位を設計する。
関係機関へ受任者情報を共有する範囲を決め、同意を取る。
連絡先一覧表、死亡時連絡順位表、更新ルールを作成し、読み合わせる。

この順番を守る理由は、本人の希望を確認する前に関係機関へ連絡すると、本人が知られたくない情報を漏らすおそれがあるためです。

面談での説明例

今日は、万一のときに私たちが確実に連絡を受け、必要な方へ適切な順番で連絡できるように、連絡先を整理します。親族全員に知らせるための作業ではありません。連絡してほしい方、連絡してほしくない方、葬儀後の報告だけでよい方を分けて確認します。
行政書士には守秘義務がありますので、ご本人の同意なく、ご親族や関係機関へ情報を提供することはありません。ただし、死亡時に私へ連絡が入るようにするため、病院、施設、管理会社などへ、私が死後事務の受任者または受任候補者であることを事前に伝える必要がある場合があります。

1人ごとに確認する基本単位

氏名、本人との関係、続柄または関係性、推定相続人の該当性、戸籍等による裏付けの要否、住所、電話、メール、LINE等の連絡手段、勤務先または所属、連絡可能時間帯、緊急時連絡可否、死亡時第一報の可否、葬儀日程連絡の可否、納骨後報告の可否、財産・相続関係の連絡可否、本人が連絡を希望する理由、連絡しない理由、本人希望と相手方意向のズレ、備考を確認します。

名前と電話番号だけの一覧では実務に使えません。死亡時は、電話がつながらない、夜間である、相手が高齢で理解できない、親族同士が不仲である、といった事態が起きます。

死亡時第一報と連絡順位

死亡時第一報は、受任者が死亡情報を受けるルートと、受任者から関係者へ死亡情報を伝えるルートの2系統で設計します。新人が見落としやすいのは前者です。

図解:第一報の受信ルート

  • 病院 → 行政書士
  • 介護施設 → 行政書士
  • 管理会社 → 行政書士
  • 友人・見守りサービス → 行政書士
  • 葬儀社 → 行政書士
  • 警察 → 行政書士
    本人所持の緊急連絡カード等で受任者情報が確認できた場合に限る補助ルート。

警察から行政書士への直接連絡は、当然に期待できるルートではありません。緊急連絡カード、本人携帯の緊急情報、管理会社・施設への登録、友人・見守りサービスとの連携を併用します。医療機関も、本人の生前同意や内部規程により対応が分かれるため、病院だけに依存しません。

連絡順位の考え方

  1. 死亡情報を最初に把握する可能性が高い人・機関。
  2. 本人の希望を最も理解している人。
  3. 死亡直後の対応に協力できる人。
  4. 法的・実務的に後日連絡が必要になる人。
  5. 連絡すると混乱や妨害が予想される人。
  6. 葬儀後の報告で足りる人。

標準例は、第1順位が病院・施設・管理会社・見守りサービス・友人などの受信先、第2順位が本人指定のパートナー・友人・特定親族、第3順位が葬儀社・寺院・納骨先、第4順位が事後報告対象者、第5順位が本人希望により連絡しない対象者です。

「親族全員へ必ず連絡します」「親族には一切知らせません」「警察や病院から必ず当職へ連絡が来るようにします」と約束してはいけません。連絡先不明、相続人からの照会、葬儀場の運用、内部規程、紛争対応により実行できない場合があります。

安全な言い方は、「現時点で把握できている連絡先について、連絡順位と連絡内容を整理します」「法的・実務的に連絡や説明が必要になる場合があります」「紛争性が出た場合は弁護士へ連携します」です。

ヒアリング項目

本人の生活状況

  • 一人暮らしか。同居人はいるか。
  • 内縁配偶者、同性パートナー、事実上家族のような人はいるか。
  • 普段、体調不良や緊急時に連絡する人は誰か。
  • 病院、施設、管理会社へ届けている緊急連絡先は誰か。
  • 鍵を預けている人、見守りサービス、安否確認サービスはあるか。
  • スマートフォンの緊急情報、財布内カード、エンディングノートに緊急連絡先を書いているか。
  • 登録済みの緊急連絡先が古くなっていないか。

親族関係

  • 配偶者、離婚歴、死別歴、子、養子、認知した子、前婚の子はいるか。
  • 父母・祖父母、兄弟姉妹、亡くなった兄弟姉妹、甥姪はいるか。
  • 連絡を取っている親族、連絡先が分かる親族、連絡してほしくない親族はいるか。
  • 金銭トラブル、暴力、脅迫、虐待、宗教上の対立はあるか。
  • 本人申告上、推定相続人に該当しそうな人と、戸籍等による未確定要素は何か。

連絡してほしい人

  • 死亡時に最初に知らせてほしい人は誰か。
  • 死亡直後か、葬儀後でよいか。
  • 葬儀・火葬へ参列してほしい人、後日報告のみでよい人はいるか。
  • 納骨先や供養方法、遺品、ペット、SNSやメールで知らせたい人はいるか。
  • 死亡の事実、葬儀日程、納骨先、財産情報のうち、どこまで伝えてよいか。

連絡してほしくない人

  • 知らせたくない人、理由を記録してよいか。
  • 死亡直後は不可だが、葬儀後・納骨後なら可か。
  • 相続手続で必要になった場合、最低限の連絡をしてよいか。
  • 問い合わせが来た場合、死亡事実、住所、病院名、葬儀場所、納骨先、パートナー情報をどこまで説明してよいか。
  • 祭祀、遺骨、墓、葬儀主宰について争われる可能性はあるか。

関係機関への情報共有

  • 主治医、病院、介護施設、ケアマネ、管理会社、貸主、見守りサービス、葬儀社へ受任者情報を共有してよいか。
  • 共有情報は、氏名、連絡先、契約の存在、死亡時連絡希望に限定するか。
  • 財産内容や親族関係までは共有しない方針でよいか。
  • 未払医療費、施設利用料、賃料等について、預託金または管理財産から契約に基づき清算する予定があるか。
  • 医療判断、身元保証、債務保証を引き受けないことを明記してよいか。

更新ルール

連絡先が変わった場合の通知者、年1回の定期確認、入院・入所・転居・親族関係変化時の臨時更新、スマートフォン連絡帳・エンディングノート・紙一覧表のどれを正とするか、判断能力低下後の更新方法、古い緊急連絡先の削除・変更を確認します。

判断フロー

連絡対象者の分類

本人との関係を、親族、推定相続人に該当し得る者、パートナー、友人、支援者、関係機関に分ける。
血族順位から推定相続人該当性を確認し、戸籍等による裏付け未了なら「要裏付け」と記録する。
本人の希望を、連絡希望、連絡拒否、事後報告のみ、未定に分ける。
搬送、葬儀、鍵、住居、ペット、医療・施設精算に必要な人は順位を上げる。
暴力、脅迫、金銭要求、親族対立、秘密情報がある場合は連絡内容を制限する。
推定相続人に該当する可能性が高い人は、完全に無視する設計を避け、事後報告や相続手続段階の連絡可能性を残す。

第一報を誰から受けるか

本人が死亡する可能性が高い場所を、自宅、病院、施設、外出先、不明に分けます。最初に把握する人・機関を特定し、受任者情報を知っているかを確認します。必要なら本人同意のうえで事前共有します。24時間対応の要否、夜間・休日対応を契約上引き受けるか、緊急連絡用携帯、留守電、メール、フォーム等の運用も決めます。

連絡しない希望がある場合

対象者、関係、連絡先、推定相続人該当性、理由、一切不可か時期限定か、祭祀・火葬・遺骨トラブルの可能性、問い合わせ時の回答範囲、行政書士が実行できる限界、本人の理解確認を記録します。

関係機関へ共有する場合

共有しなければ死亡時連絡が来ない可能性が高いか、本人の明示的同意があるか、共有先・目的・情報が特定されているか、医療判断・身元保証・債務保証と誤解されないか、預託金清算スキームがあるか、共有履歴を残したかを確認します。

作成・確認する書類

親族・緊急連絡先確認表

目的は、関係者情報を一覧化することです。単なる住所録ではなく、連絡可否、連絡順位、本人希望、注意事項を含めます。

区分 確認内容 記録の注意
親族 氏名、続柄、推定相続人該当性、住所、電話、メール、死亡時第一報、葬儀連絡、事後報告、連絡しない希望 血族順位からの推認と戸籍等による裏付けを分ける。
パートナー・友人 関係性、第一報可否、葬儀・納骨情報の共有可否、親族への開示可否 費用負担や法的責任を負わせない設計にする。
医療・介護 病院、主治医、施設、ケアマネ、訪問看護等 事前同意、内部規程、直接連絡の可否を確認する。
住居 管理会社、貸主、保証会社、管理組合、鍵保管者 鍵、残置物、原状回復、賃料精算の窓口を整理する。
葬儀 葬儀社、搬送業者、寺院、納骨先、墓地管理者 火葬場調整は通常葬儀社経由で整理する。

死亡時連絡順位表

順位 連絡先 目的 伝える内容 伝えない内容 期限
受信1 病院・施設・管理会社 死亡情報を行政書士へ通知 死亡確認、場所、担当者、搬送状況 財産情報、親族不和の詳細 直ちに
受信2 見守りサービス・友人 異変発見時の通知 安否不明、救急搬送、死亡可能性 財産情報 直ちに
受信3 警察 本人所持カード等で受任者情報が確認された場合 死亡または身元確認に関する連絡 財産情報 連絡が来た場合
発信1 事務所内担当者 受任事務開始 死亡情報、契約確認 不要情報 直ちに
発信2 本人指定の友人・パートナー 第一報 死亡事実、今後の予定は追って連絡 財産、親族情報 当日中
発信3 葬儀社 搬送・安置相談 死亡場所、本人情報、契約有無 親族関係詳細 当日中
発信4 親族・推定相続人候補 事後報告 死亡事実、本人意思に基づく死後事務実施 葬儀場所、財産詳細、パートナー情報 葬儀後等

連絡区分確認書

A区分は死亡時第一報を入れる人、B区分は葬儀・火葬の日程を知らせる人、C区分は葬儀・火葬後または納骨後に事後報告する人、D区分は本人希望により連絡しない人です。D区分では、連絡しない理由、例外的に連絡してよい場合、親族から苦情が生じる可能性、法的・実務的に最低限の連絡が必要となる場合があることへの理解を残します。

個人情報共有同意書

本人氏名、生年月日、住所、受任者または受任候補者の氏名・事務所名・連絡先、共有先、共有情報、共有目的、共有時期、医療判断・身元保証・債務保証を引き受ける趣旨ではないこと、預託金または管理財産から未払債務を清算する権限を伝えるか、同意撤回、本人署名押印、行政書士確認欄を入れます。

共有する情報:本人氏名、住所、生年月日、受任者または受任候補者の氏名、事務所名、連絡先、死亡時連絡希望、契約の存在。共有しない情報:財産内容、遺言内容、親族関係の詳細、病歴、パートナー情報、その他本目的に不要な情報。

連絡先更新管理表と緊急連絡カード

更新管理表には、更新日、更新者、更新内容、確認方法、本人確認、備考を記録します。緊急連絡カードには、本人氏名、生年月日、住所、死後事務受任者または受任候補者、事務所名、電話、メール、夜間休日連絡先、医療判断・身元保証・債務保証を求めるものではない旨を記載します。緊急連絡カードは有効ですが、警察や医療機関が必ず行政書士へ連絡する保証ではありません。

文例・記載例

本人への説明

死後事務委任契約では、亡くなった後に私が手続を開始するため、まず私へ死亡の連絡が入る仕組みを作る必要があります。そのうえで、どなたへ死亡の事実を知らせるか、葬儀の予定を知らせるか、葬儀後の報告だけにするか、または知らせないかを分けて決めます。
親族だから必ず直ちに連絡する、友人だから連絡できない、というものではありません。ただし、推定相続人に該当する方については、死亡後に問い合わせや苦情が出ることがあります。そのため、連絡しない希望がある場合は、その理由と希望を記録しておきます。

連絡しない希望の記録

本人は、実兄○○氏について、過去の金銭トラブルにより長年交流がなく、死亡直後の連絡および葬儀日程の通知を希望しない旨を述べた。行政書士は、同氏が本人申告および血族順位上、第3順位の推定相続人に該当する可能性が高いこと、ただし戸籍等による裏付けは未了であること、死亡後に問い合わせまたは苦情が生じる可能性があることを説明した。本人はその説明を理解したうえで、葬儀・火葬後に死亡の事実のみを書面で報告することを希望した。

「一切知らせない」と短く書かず、理由、説明、本人の理解、代替案を残します。

友人を第一連絡先にする記録

本人は、死亡時第一報の連絡先として友人○○氏を指定した。○○氏は本人の日常生活を長年支援しており、本人の葬儀・納骨に関する希望を把握しているとの説明があった。本人は、親族より先に○○氏へ死亡の事実を伝えることを希望した。ただし、○○氏に費用負担、相続人対応、法的責任を負わせる趣旨ではないことを確認した。

病院・施設へ提出する受任者情報共有文例

私は、下記本人との間で、死亡後の事務に関する委任契約を締結している受任者です。本人の同意に基づき、本人死亡時または死亡が確認された場合には、下記連絡先へご連絡いただきますようお願いいたします。本通知は、医療行為に関する判断、身元保証、入院費支払保証その他本人の債務保証を引き受ける趣旨ではありません。
契約締結前の場合は、受任候補者であること、現時点で受任済みと表示するものではないこと、医療判断・身元保証・債務保証を引き受けないことを明記します。
預託金スキームがある場合:本人死亡時に発生している未払いの入院費、施設利用料その他本人債務については、生前に本人より預託された管理財産から、死後事務委任契約および関連契約に基づき、当職が弁済手続を行う権限を付与されています。これは保証人または連帯債務者となる趣旨ではありません。

管理会社へ提出する文例

本人は、死亡後の住居内残置物、鍵、賃貸借関係の連絡窓口として、下記受任者へ連絡することを希望しています。本人死亡時、長期不在、室内確認が必要となる事態が生じた場合には、本人の同意に基づき、下記連絡先へご連絡ください。なお、本通知は、賃貸借契約上の連帯保証、賃料支払保証、原状回復費用の個人負担を当然に承諾するものではありません。

親族への事後報告文例

○○様

突然のご連絡となり恐縮ですが、○○○○様は、令和○年○月○日にご逝去されました。

生前、○○○○様は、死亡後の事務について当職に委任する旨の死後事務委任契約を締結されており、当職において、同契約およびご本人の生前意思に従い、必要な手続を進めております。

葬儀・火葬等につきましては、ご本人の生前意思および当職との契約内容に基づき、必要な範囲で対応いたしました。祭祀、遺骨、納骨先その他法律上の権利義務に関するご主張がある場合には、当職が親族間の紛争について一方の代理人として交渉することはできませんので、弁護士等の専門職へご相談ください。

反発が予想される場合は電話より書面を基本にします。感情的なやり取りを避け、本人の生前意思、公正証書等の有無、契約上の権限、祭祀主宰者の指定の有無を丁寧に記録します。

連絡先更新ルールの契約条項

委任者は、親族、緊急連絡先、医療・介護関係者、住居管理者その他死亡時連絡に必要な情報に変更が生じたときは、速やかに受任者へ通知する。受任者は、原則として年1回、委任者に対し連絡先情報の確認を行う。ただし、委任者の入院、施設入所、転居、親族関係の変動その他死亡時連絡体制に影響を及ぼす事情が生じた場合には、臨時に確認を行うことができる。

新人行政書士が避けるべきミス

  • 親族一覧と推定相続人整理を混同する。
  • 「連絡する」を死亡事実、葬儀日程、財産情報まで一括で扱う。
  • 本人同意なしに病院、施設、管理会社、葬儀社へ情報提供する。
  • 警察、病院、施設から必ず連絡が来ると説明する。
  • 友人やパートナーに過大な役割や費用負担を期待する。
  • 親族の苦情や相続争いに行政書士が交渉対応する。
  • 連絡先の更新履歴を残さず、古い連絡先へ誤連絡する。

確認テスト

  1. 親族一覧と推定相続人確認は、何が違うか。
  2. 死亡時第一報について、受任者が受けるルートと受任者が発信するルートを分ける理由は何か。
  3. 本人が「兄には知らせたくない」と言った場合、最低限記録すべき事項は何か。
  4. 病院へ受任者情報を共有する場合、伝えるべき情報と伝えない情報は何か。
  5. 親族から財産や遺骨について争う発言が出た場合、行政書士はどこまで対応し、どこから弁護士へつなぐべきか。

まとめ

親族・緊急連絡先の確認は、死後事務委任契約を実際に動かすための基礎です。重要なのは、連絡先を集めることではなく、誰から死亡情報を受け、誰へ、何を、どの順番で、どこまで伝えるかを本人意思・守秘義務・実務上の必要性・親族感情のバランスで設計することです。

新人行政書士は、親族全員への連絡や完全な非通知を安易に約束せず、本人の希望、推定相続人該当性、戸籍等による要裏付け、情報共有同意、連絡順位、更新ルール、紛争時の弁護士連携を一体で記録してください。

この記事は、死後事務委任契約業務の実務整理を目的とした教育用コンテンツです。個別事件で紛争性がある場合は、弁護士等の適切な専門職へ連携してください。

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