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終活実務マニュアル|0-10(総論最終回)

他士業・関係機関連携の基本
弁護士・司法書士・税理士・福祉・医療・葬儀・不動産・行政機関

終活業務は行政書士だけで完結しません。いつ・誰に・何を・どの資料と共に・どの範囲で連携するかを判断できるようになる実務マニュアルです。

新人行政書士向け 連携マップ付き 複合ケーススタディ収録

 

📌 前回までの接続

0-1〜0-9で、業務範囲・初回相談・本人確認・意思能力確認・親族トラブル予防・利益相反・報酬・業務記録を学びました。今回は総論最終回として、それらを実務の現場でどう外部連携につなげるかを扱います。

1

この回の到達目標

到達目標 実務でできるようになること
他士業連携の必要性を説明できる 終活業務は行政書士単独で完結しないことを相談者へ説明できる
行政書士が主担当となれる範囲を判断できる 書類作成・手続支援・意思整理・進行管理の範囲で主担当となれる
弁護士へ連携すべき場面を判断できる 紛争性・交渉・代理・相続人対立・苦情返金請求を見抜ける
司法書士へ連携すべき場面を判断できる 相続登記・不動産名義変更・登記申請代理・法務局手続を見抜ける
税理士へ連携すべき場面を判断できる 相続税・贈与税・税務評価・税務特例・具体的税額計算を見抜ける
福祉・医療機関と適切に連携できる 生活支援・虐待疑い・判断能力低下・独居リスクをつなげられる
本人同意を得て情報共有できる 共有先・共有目的・共有資料・共有範囲を説明して同意を得られる
連携記録を残せる 紹介・同行・情報共有・回答・次回対応を記録できる
紹介料・キックバックの倫理リスクを回避できる 本人に無断の紹介料や他士業間の紹介料授受を避ける運用ができる
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業務が必要になる実務場面

実務場面 連携先 行政書士の役割
相続人間で意見が対立している 弁護士 調整・交渉せず事実資料を整理して引継ぎ
不動産の相続登記が必要 司法書士 遺産分割協議書作成支援と必要資料整理まで
相続税申告の可能性がある 税理士 財産資料・相続人関係を整理し税務判断は税理士
判断能力低下が疑われる 医師・地域包括支援センター・社会福祉士 意思能力確認・福祉相談への接続
死後の葬儀を決めたい 葬儀社 希望整理・見積取得・死後事務委任契約との整合
空き家処分が必要 不動産会社・司法書士・税理士 所有者確認・売却は宅建業者・登記は司法書士
公正証書を作成したい 公証役場 必要資料準備・本人意思確認・予約調整
3

基本知識

3-1. 他士業連携の5原則

原則 内容
本人意思優先 連携先選定も本人意思を確認する
業務範囲の明確化 行政書士が行う範囲と連携先が行う範囲を分ける
本人同意 情報共有・紹介・同行は本人同意を得る
記録化 連携理由・共有資料・相手方回答を記録する
抱え込まない 紛争・登記・税務・医療判断・不動産の媒介仲介は専門職へつなぐ
💡 不動産について

「不動産はすべて行政書士が関与できない」ではありません。不動産の媒介・仲介は宅建業者へつなぎますが、不動産に関する契約書作成・必要資料整理・所有者と相続人関係整理・本人意思確認は、行政書士の業務範囲として関与できる場合があります。

3-4. 関係機関連携マップ

行政書士を中心とした連携関係

本人・相談者 ↓ 行政書士(全体整理・書類作成・進行管理)
弁護士
紛争交渉・遺産分割対立・遺留分請求・契約解除・損害賠償・相続財産清算人等
司法書士
相続登記・不動産名義変更・商業登記・登記供託裁判関連書類・成年後見申立関連支援
税理士
相続税申告・贈与税・小規模宅地等の特例・不動産譲渡税・税務相談
社会福祉士・地域包括・ケアマネ
独居支援・介護保険・虐待経済的支配・施設入所・生活困窮・福祉制度
医療機関・介護施設
入院・施設入所・医療意思表示・緊急連絡先・退院・死亡時対応
公証役場
公正証書遺言・任意後見契約・死後事務委任・尊厳死宣言
市区町村役場・法務局
戸籍・住民票・改葬許可・固定資産関係・登記事項証明
葬儀社・霊園・寺院・石材店
葬儀・火葬・納骨・永代供養・墓じまい
不動産会社・家財整理業者
空き家売却・賃貸解約・家財処分・原状回復
金融機関・保険会社
預金確認・支払代行・死亡後手続・保険金請求

3-5. 連携の3類型

類型 内容 注意点
紹介 本人に専門職・機関を案内する 紹介先の選択理由・本人同意・紹介料の有無を明確にする
同行 本人の相談・手続に同行する 代わりに判断せず、本人説明の補助にとどめる
情報共有 本人同意を得て資料や経緯を共有する 本人同意・共有範囲・共有資料・記録化が必要

3-6. 本人同意を得る重要性

他士業・関係機関へ情報共有する場合は、本人同意が原則です。個人情報保護法では、個人データを第三者へ提供する場合、原則として本人同意が必要です。ただし、人の生命・身体・財産の保護のために必要があり本人同意を得ることが困難な場合など例外もあります(個人情報保護法第27条第1項第2号)。

⚠ 緊急時情報共有の注意

緊急時例外を行政書士の判断で広く解釈することは極めて危険です。あらかじめ契約書等に「緊急時情報共有条項」を盛り込み、医療・福祉機関が必要とする最小限の情報(身元確認情報・緊急連絡先・最低限の健康・生活状況)の提供にとどめます。財産額・遺言内容・受遺者・預託金残額は共有しません。

4

実務の進め方

他士業・関係機関連携の標準フロー

1
相談内容を確認し、行政書士単独で対応可能か判断
業務範囲外・専門判断・紛争性の有無を確認する
2
連携先を選定し、本人へ連携理由を説明
行政書士が対応できる部分→できない部分→なぜ他士業が必要か→費用が別途発生する可能性の順で説明する
3
本人同意を取得し、共有資料を整理
マイナンバー等の不要情報をマスキングする
4
紹介・同行・情報共有を実施し、連携記録を作成
連携先の回答を記録する
5
行政書士の受任範囲を再整理し、本人へ報告・業務進行管理表を更新
連携後も自分の受任範囲・進捗・資料・費用・本人説明を管理する
✅ 本人への連携説明例

「遺言内容の整理・死後事務委任契約書の作成支援は行政書士として対応できます。一方で、不動産の名義変更は司法書士、相続税の申告や税務上有利な分け方の判断は税理士、親族間で争いがある場合の交渉は弁護士の専門領域です。不動産の売却媒介・仲介は宅建業者の業務ですが、行政書士は契約書作成や必要資料整理の範囲で関与できます。行政書士が全体整理を行いながら必要な部分を各専門家へつなぐ形で進めるのが安全です。」

5

ヒアリング項目

項目 質問例 連携先判断
紛争性 「この内容に反対しそうな方はいますか」 弁護士
不動産・売却 「不動産はありますか。名義変更や売却を考えていますか」 司法書士・宅建業者
税金 「相続税や贈与税が心配ですか」 税理士
判断能力・介護 「最近、物忘れや判断に不安はありますか。介護サービスを利用していますか」 医師・地域包括・ケアマネ
独居リスク 「緊急時に連絡できる人はいますか」 地域包括
施設・医療 「入所中または入所予定の施設はありますか。かかりつけ医や入院予定はありますか」 施設・医療機関
葬儀・納骨・家財 「葬儀の希望はありますか。お墓・家財処分が必要ですか」 葬儀社・霊園・石材店・家財業者
空き家・金融 「自宅を将来どうしたいですか。預金や保険の手続が必要ですか」 不動産会社・金融機関

5-2. 本人同意取得のためのヒアリング

項目 質問例
連携希望 「この内容について、専門家に相談してもよろしいですか」
共有範囲 「どの資料を共有してよいですか。共有してほしくない情報はありますか」
費用理解 「別途費用が発生する可能性がありますがよろしいですか」
緊急時共有 「緊急時に医療・福祉機関へ必要最小限の情報を共有してよいですか」
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判断フロー

単独対応か連携かの判断フロー

書類作成・手続支援の範囲か確認
はいの場合:次へ。いいえの場合:業務範囲外と説明し適切な専門職・関係機関へ案内
紛争性・登記・税務・医療判断・不動産媒介仲介があるか
ない場合:行政書士主担当で進行。ある場合:該当専門職へ連携

専門職別連携が必要な典型例

連携先 典型例 行政書士の限界
弁護士 相続人が遺産分割に反対している 交渉・調整不可(非弁リスク)
遺留分請求・遺言無効主張がある 法的請求・紛争対応不可
虐待・経済的支配が疑われる 本人保護・法的対応不可
行政書士に「相手を説得して」と依頼 非弁リスク
司法書士 相続登記・遺贈登記・信託登記が必要 登記申請代理は行わない
抵当権抹消が必要 登記申請代理は行わない
成年後見申立の代理申立・裁判所対応が必要 申立代理は司法書士・弁護士領域
税理士 相続税申告の可能性がある 課税判断・税額計算は税理士
小規模宅地等の特例・配偶者税額軽減を検討 税務特例判断は税理士
生前贈与・不動産売却を検討 贈与税・譲渡所得税判断は税理士
遺産分割案・遺言案確定前 税務上不利益防止のため税理士確認が必要
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作成・確認する書類

書類 目的
連携判断メモ なぜ連携が必要か記録
本人同意書・情報共有同意書 共有先・共有資料・共有目的・紹介料の有無を明記
緊急時情報共有条項 本人が意識不明・連絡不能の場合の共有範囲を定める
紹介記録・同行記録 誰を・いつ・なぜ紹介したか。同行日時・場所・説明内容を記録
連携依頼書・資料送付状 他士業・関係機関へ依頼内容と共有資料一覧を伝える
マスキング確認記録 マイナンバー等の不要情報を除去したことを記録
連携先回答記録 他士業・機関からの回答を記録
業務範囲確認書 行政書士と連携先の担当範囲を整理
紹介料・提携関係確認記録 紹介料・業務提携の有無と本人説明を記録
完了報告書 連携後の結果を本人へ報告
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文例・記載例

連携依頼メール文例

〇〇先生、お世話になっております。行政書士〇〇事務所の〇〇です。
現在、当職で対応している終活相談案件につき、先生の専門領域に関する確認が必要となりましたため、ご相談させていただきたくご連絡いたしました。

【ご本人】氏名:〇〇〇〇様 / 年齢:〇歳 / 住所:〇〇市〇〇
【相談概要】公正証書遺言作成支援・死後事務委任契約作成支援・任意後見契約の検討・不動産および相続税に関する確認事項あり

【共有予定資料】相談概要メモ・親族関係図・財産目録案・不動産資料・本人同意書

ご本人から先生へ必要資料を共有することについて同意をいただいております。なお、共有資料にマイナンバー等の不要情報が含まれる場合は、当職にてマスキングのうえ共有いたします。
一度ご相談の日程を調整させていただけますでしょうか。

連携記録文例

連携日:2026年6月10日 / 連携先:〇〇税理士事務所 / 本人同意:2026年6月8日取得済み
連携理由:本人の財産に自宅不動産・預金・生命保険があり、相続税申告の要否および小規模宅地等の特例の可能性を確認する必要があるため。
共有資料:財産目録案・固定資産税納税通知書写し・預金残高資料・親族関係図・遺言案の概要
共有しなかった資料:本人の医療情報・死後事務預託金管理資料・マイナンバー記載資料
相手方回答:相続税申告の可能性があるため正式に税理士面談を行う必要あり。遺言案確定前に税務面から確認したいとの回答。
次回対応:本人へ税理士面談の必要性を説明。遺言案確定は税理士確認後とする。

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他士業・関係機関との連携詳細

9-1. 弁護士との連携

✓ 行政書士がしてよいこと

  • 相談経緯・親族関係・財産資料の事実整理
  • 本人同意を得て弁護士を紹介
  • 本人の説明補助として弁護士相談に同行
  • 弁護士の方針に従い行政書士業務範囲で書類支援

✗ 行政書士がしてはいけないこと

  • 相手方説得(非弁リスク)
  • 遺産分割条件の調整
  • 請求書・反論書の作成代行
  • 相手方代理人との交渉・和解条件の提示

9-2. 司法書士との連携

司法書士は、登記または供託に関する手続代理、裁判所・検察庁・法務局等に提出する書類作成などを業務としています。登記申請代理と一体評価されないよう、行政書士と司法書士の役割分担を連携記録に明確に残します。

📌 登記原因証明情報の注意

登記原因証明情報の作成は、権利義務または事実証明に関する書類として行政書士が依頼に基づき作成できる余地があります。ただし、登記申請代理と一体と評価されないよう、業務範囲・委任内容・報酬名目・連携先との役割分担を明確にします。

9-3. 税理士との連携

✓ 行政書士ができること

  • 税理士相談を勧める
  • 財産資料を整理する
  • 一般的な制度概要を説明する
  • 税理士へ資料共有する
  • 遺言案を税理士確認に回す

✗ 行政書士がしないこと

  • 具体的税額計算
  • 相続税申告書作成
  • 税務特例適用可否の判断
  • 税務署対応代理
  • 税務上最適と断定する

9-4. 社会福祉士・地域包括支援センター・ケアマネジャー

社会福祉士は名称独占資格であり終活実務では独居高齢者・判断能力低下・生活困窮・虐待疑い・施設入所の場面で重要な連携先になります。行政書士は本人希望の整理・緊急連絡先の整理・見守り契約と福祉支援の接続を担い、福祉サービスの専門判断・医療介護判断はしません。福祉機関に財産情報を過剰共有しません。

9-5. 医療機関・介護施設との連携

⚠ 医療同意に関する注意

行政書士が包括的に医療同意を代理できる制度はありません。医療機関の運用により緊急連絡先や説明同席者として扱われることはありますが、医療判断そのものを行政書士が行ってはいけません。

注意点 内容
保証人になるか 行政書士は原則として保証人・連帯保証人にはならない
身元引受 契約内容・責任範囲・費用負担を明確にする
医療同意 包括的代理権はない
退去・死亡時 死後事務委任契約と整合させる

9-9. 遺品整理業者・家財整理業者との連携

家財の多くは相続財産に該当する可能性があります。死後事務委任契約に記載があっても、相続人の権利との関係で処分が問題になることがあります。見積取得・貴重品確認・処分前後の写真記録・相続人同意の要否確認・紛争性がある場合は弁護士連携が必要です。

9-11. 金融機関・保険会社との連携

死亡後は預金が凍結され支払いが止まる可能性があります。生前の支払代行は委任状と本人確認が必要です。任意後見は任意後見監督人選任後に代理権が発生します。保険金の受取人が固有財産となる場合があるため、死後費用の原資を保険で設計する際は契約設計に注意します。税務は税理士へ連携します。

9-6. 公証役場との連携

業務 行政書士が準備すること
公正証書遺言 本人確認資料・意思確認・財産資料・親族関係・遺言案・証人の手配・公証役場手数料の説明
任意後見契約 本人意思整理・代理権内容・受任者候補者情報・公証役場調整
死後事務委任契約・尊厳死宣言 契約内容案・費用原資・手数料説明。病院・施設への出張可否を確認

9-7. 市区町村役場・法務局との連携

手続 内容 注意点
戸籍・住民票・戸籍附票 相続人調査・住所確認 職務上請求は正式受任後・業務上必要な範囲で行う
改葬許可 墓じまい・改葬に必要な市区町村手続 必要書類確認・寺院調整
固定資産関係 名寄帳・評価証明書 不動産資料として税理士・司法書士へ引継ぎ
登記事項証明書 不動産確認・相続手続資料 法務局で取得可。登記申請は司法書士
自筆証書遺言保管制度 法務局での遺言保管 公正証書遺言とは別制度。手続・費用を説明
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新人が間違えやすいポイント

① 全体を抱え込みすぎる
失敗例
「遺言、登記、相続税、親族調整、葬儀、不動産売却まで全部できます」と説明した。
正しい対応
登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士、不動産の媒介仲介は宅建業者へ連携する。契約書作成や資料整理は行政書士の業務範囲として対応できる場合がある。
② 弁護士へつなぐタイミングが遅い
失敗例
相続人同士が対立しているのに、行政書士が中立として話し合いをまとめようとした。
正しい対応
対立が表面化した段階で、行政書士は利害に影響する調整を行わず、弁護士連携する。
③ 税務判断をしてしまう
失敗例
「この分け方なら相続税はかかりません」と説明した。
正しい対応
「税務上の判断は税理士に確認が必要です」と説明し、税理士連携する。
④ 登記までできると誤解する
失敗例
遺産分割協議書を作った流れで、相続登記申請まで行政書士が行った。
正しい対応
協議書作成支援と必要資料整理まで行政書士が行い、登記は司法書士へ引き継ぐ。登記原因証明情報の作成に関与する場合も、登記申請代理と一体化しないよう役割分担を明確にする。
⑤ 本人同意なしに資料共有する
失敗例
親族から頼まれたため、本人の財産目録を税理士や不動産会社へ送った。
正しい対応
本人同意を得て、共有目的・共有資料・共有先を記録する。
⑥ 紹介先の費用説明をしない
失敗例
税理士を紹介したが、別途費用が発生することを本人へ説明していなかった。
正しい対応
他士業・業者費用は行政書士報酬とは別であると説明し、記録する。
⑦ 連携後に進行管理を放棄する
失敗例
司法書士へ紹介した後、登記完了状況を確認せず、公正証書遺言の内容と整合しなくなった。
正しい対応
自分の受任範囲に関係する進捗は確認し、業務進行管理表を更新する。
⑧ 紹介料・キックバックのリスクを軽視する
失敗例
不動産会社や葬儀社へ依頼者を紹介し、本人に無断で紹介料を受け取った。弁護士・司法書士・税理士等との間で紹介料を授受した。
正しい対応
本人に無断の紹介料・キックバック受取および他士業との紹介料授受は行政書士倫理および各士業法違反となる可能性が極めて高い。実務上は「紹介料の授受は行わない」を事務所ルールとするのが最も安全。
⑨ マイナンバー付き資料をそのまま共有する
失敗例
住民票にマイナンバーが記載されていることに気づかず、税理士・司法書士・不動産会社へ送付した。
正しい対応
法令で定められた税・社会保障・災害対策等の手続に必要な場合を除き、マイナンバーは取得・共有しない。マイナンバー付き資料を共有する場合は必ず個人番号欄をマスキングする。
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トラブル予防策

11-1. 連携前に業務範囲確認書を作る

業務 行政書士 連携先
遺言内容整理・公正証書作成調整 公証役場、必要に応じ弁護士・税理士
相続登記 × 司法書士
相続税申告 × 税理士
親族交渉 × 弁護士
不動産売却媒介 × 不動産会社
不動産契約書作成・資料整理 必要に応じ不動産会社・司法書士
施設入所支援 書類支援 ケアマネ・施設
葬儀見積 希望整理 葬儀社

11-5. 個人情報共有は必要最小限にする

情報 共有判断
氏名・住所・連絡先 目的に応じて共有
戸籍・親族関係 相続・登記・税務に必要な範囲
財産目録 税理士・弁護士・司法書士に必要な範囲
医療情報 医療・福祉機関に必要な範囲
遺言内容・預託金残額 必要な専門職に限定
親族への感情的発言 原則共有しない
マイナンバー 原則として取得・共有は禁止。法令上必要な場合に限り、それ以外はマスキング必須

11-7. 紹介料・業務提携の事務所ルールを作る

推奨事務所ルール:
「当事務所は、依頼者の自由な選択と業務の公正性を確保するため、原則として他士業・事業者との間で紹介料・キックバック・成功報酬型の紹介対価を授受しない。業務提携等に基づき正当な対価が発生する場合は、依頼者に対し提携先・対価の有無・対価の内容・依頼者の選択自由を事前に書面で説明し、同意を得る。」

12

ケーススタディ

CASE

遺言・任意後見・死後事務・相続税・不動産が絡む複合相談

事案

78歳女性A。配偶者・子なし。兄弟は2人いるが疎遠。友人Bに財産を一部残したい。自宅不動産・預金4,000万円・生命保険あり。将来判断能力低下した場合は友人Bに生活支援を頼みたい。死亡後は直葬・永代供養・家財処分を希望。自宅は死亡後に売却。相続税も不安。

論点 連携先 行政書士の役割
友人Bへ財産を残す遺言 行政書士・公証役場・必要に応じ弁護士 遺言案整理・資料収集・公証役場調整
兄弟姉妹との将来トラブル 弁護士 リスク説明・将来紛争時の相談先として案内
任意後見契約 行政書士・公証役場・必要に応じ福祉専門職 本人意思整理・代理権内容整理・公証役場調整
死後事務委任 行政書士・公証役場・葬儀社・霊園 契約内容整理・公正証書化支援
相続税申告可能性 税理士 財産資料整理して引継ぎ。税額計算・判断は税理士
自宅不動産の登記 司法書士 登記事項証明書確認・資料整理まで
死亡後の売却 不動産会社・司法書士・税理士 媒介仲介は宅建業者。登記は司法書士・税務は税理士
行政書士の最終的な役割
役割 内容
全体設計支援 本人希望を整理し、必要業務を組み立てる
書類作成支援 遺言案・死後事務委任契約案・任意後見契約案
資料整理・連携管理 戸籍・財産目録・親族関係整理。税理士・司法書士・弁護士・公証役場等との進行管理
本人説明・記録化 連携結果を本人へ分かりやすく説明。面談記録・連携記録・費用説明記録を作成
情報管理・倫理管理 マイナンバー等の不要情報を取得・共有しない。紹介料・キックバックを避け公正な紹介を行う
⛔ このケースでの行政書士がしてはいけないこと
  • 相続税がかからないと断定する、小規模宅地等の特例が使えると判断する
  • 兄弟姉妹を説得する、「兄弟には権利がないから無視してよい」と断定する
  • 登記申請代理をする、登記手続の代理人として関与する
  • マイナンバー付き資料をそのまま共有する
  • 弁護士・司法書士・税理士等との間で紹介料を授受する
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実務チェックリスト

他士業連携前の確認事項

  • 本人確認・本人意思・意思能力・利益相反を確認した
  • 連携が必要な理由・行政書士業務範囲・他士業業務範囲を整理した
  • 紛争性・税務判断・登記・不動産の媒介仲介の有無を確認した
  • 本人同意を取得した
  • 共有資料を限定し、共有しない資料を整理した
  • マイナンバー等の不要情報をマスキングした
  • 他士業費用が別途であることを説明した
  • 紹介料・提携関係の有無を確認した
  • 連携記録を作成した

連携記録チェックリスト

  • 連携日・連携先・連携理由を記録した
  • 本人同意を記録した
  • 共有資料・共有しない資料を記録した
  • マスキング確認を記録した
  • 費用説明を記録した
  • 紹介料・提携関係の有無を記録した
  • 相手方回答・次回対応を記録した
  • 業務進行管理表を更新した
  • 本人へ連携結果を報告した
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確認テスト

Q1終活業務で他士業・関係機関連携が必要となる理由を説明しなさい。
A

終活業務は、遺言・相続・登記・税務・医療・介護・福祉・葬儀・不動産・金融など複数分野にまたがるため、行政書士単独で完結しない。行政書士は本人意思の整理・書類作成・資料収集・進行管理を担うが、紛争は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士、医療・介護は各専門職へ連携する必要がある。

Q2弁護士へ連携すべき典型場面を5つ挙げなさい。
A

相続人間で争いがある場合・遺産分割協議で対立がある場合・遺留分請求が予想される場合・遺言無効を主張されている場合・死後事務費用や家財処分について親族が異議を述べている場合・行政書士に相手方説得や交渉を求められた場合など。

Q3相続登記が必要な場合、行政書士はどこまで関与でき、どこから司法書士へ連携すべきか。
A

行政書士は、相続人調査・戸籍収集・財産資料整理・遺産分割協議書作成支援などを行える。ただし、不動産の相続登記申請代理は司法書士領域であるため、登記申請は司法書士へ連携する。登記原因証明情報の作成に関与する場合も、登記申請代理と一体と評価されないよう役割分担を明確にする。

Q4本人同意なしに他士業へ財産資料を送ってよいか。
A

原則として送ってはいけない。財産資料は個人情報・財産情報であり、共有目的・共有先・共有資料を本人へ説明し、同意を得たうえで必要最小限の範囲で共有する。

Q5行政書士が不動産会社と連携する場合の注意点を説明しなさい。
A

行政書士は所有者確認・相続人関係・必要書類整理・本人意思確認・契約書作成支援などを行えるが、不動産売買の媒介仲介や価格交渉は宅建業者の業務であるため行わない。登記は司法書士、譲渡所得税等は税理士へ連携する。

Q6紹介料・業務提携関係がある専門職や業者を紹介する場合の注意点を説明しなさい。
A

本人に無断の紹介料・キックバック受取および他士業との紹介料授受は、行政書士倫理および各士業法違反となる可能性が極めて高いため原則として行うべきではない。業務提携等に基づき正当な対価が発生する場合は本人へ完全開示し書面で同意を得る必要がある。実務上は「紹介料の授受は行わない」を事務所ルールとするのが安全である。

Q7マイナンバーを含む資料を他士業へ渡す場合の注意点を説明しなさい。
A

マイナンバーは原則として取得・共有禁止であり、行政書士業務で収集・保管・第三者提供できるのは法律で定められた税・社会保障・災害対策等の手続に必要な場合に限られる。通常の終活相談や他士業への引継ぎでマイナンバー付き資料を渡す場合は、必ず個人番号欄をマスキングする。

Q8成年後見申立に関して、行政書士が関与できる部分と他士業へ連携すべき部分を説明しなさい。
A

行政書士は、事実整理・本人状況の整理・添付資料収集・財産目録等の基礎資料整理・申立書類作成支援を行える場合がある。ただし、申立代理・裁判所対応・紛争性のある案件・法的判断を伴う代理的対応が必要な場合は、弁護士・司法書士へ連携する。

Q9連携後も行政書士が管理すべき事項を挙げなさい。
A

自分の受任範囲・他士業の担当範囲・本人への説明・資料の所在・費用区分・スケジュール・判断待ち事項・連携記録・業務進行管理表・業務完了条件を管理する。

Q10福祉機関へ連携すべき場面を挙げなさい。
A

独居で生活不安がある場合・介護サービスが必要な場合・判断能力低下が疑われる場合・虐待や経済的支配が疑われる場合・施設入所が必要な場合・生活保護や生活困窮支援が必要な場合など。

この回の要点

終活業務における行政書士の役割は、すべてを自分で抱え込むことではなく、本人意思を中心に据え、行政書士ができる書類作成・手続支援を行いながら、紛争は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士、福祉・医療・葬儀・不動産は各専門機関へ適切につなぐことである。

他士業・関係機関連携では、連携理由・本人同意・共有資料・共有しない資料・費用説明・役割分担・連携後の進行管理を必ず記録する。

不動産の媒介仲介は宅建業者、登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士へつなぎ、マイナンバー等の不要情報は取得・共有しない。紹介料・キックバックは原則として授受しない運用が最も安全である。

📖 次回(1)への接続:遺言書作成支援業務

今回で総論カテゴリ(0-1〜0-10)は終了です。次回からは個別カテゴリに入ります。次回1では遺言書作成支援業務を扱います。今回までの総論で学んだ内容——初回相談・本人確認・意思能力確認・親族トラブル予測・利益相反確認・報酬説明・面談記録・他士業連携——をすべて使います。

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。

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相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

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