HANAWA行政書士事務所のロゴ HANAWA行政書士事務所 建設・製造・産廃業向け 許認可 × 外国人雇用 × 補助金 × 福利厚生
090-3718-2803 9:00-23:00 年中無休(土日祝日・20時以降は事前予約)
第0-9回 業務記録・面談記録

業務記録・面談記録の作り方
終活業務における相談・説明・本人意思確認・
金銭授受・業務進行の記録化実務マニュアル

本人死亡後に「理解していなかった」と言われたとき、記録だけが本人意思を守る。面談当日中に書く、事実と所見を分ける、本人の言葉で残す——記録化の実務を解説します。

対象:新人行政書士読了目安:約25分ケーススタディ2例・確認テスト15問収録
前回(0-8)との接続 前回は報酬・実費・預り金・預託金を見積書・委任契約書・領収書・管理台帳で記録する必要性を学びました。今回は、終活業務全体の土台となる記録化の実務を扱います。
なぜ記録が最重要資料になるのか おひとりさま・おふたりさま終活では、本人死亡後に「本当に理解していたのか」「親族に黙って進めたのではないか」「費用説明を受けていない」と主張されることがあります。そのとき、本人はもう説明できません。だからこそ、行政書士の記録が、本人意思と適正な業務遂行を示す最重要資料になります。

1. この回の到達目標

  • 記録化の重要性を説明できる(終活業務では本人死亡後に本人が説明できないため記録が必要)
  • 面談記録・本人確認記録・意思能力確認記録・費用説明記録を作成できる
  • 事実と所見を分けて記録できる(主観的・感情的表現を避け、根拠のある評価を書く)
  • 親族同席時の記録・電話・メール・オンライン相談の記録を作成できる
  • 業務進行管理表・資料受領書・書類交付記録・金銭授受記録を作成できる
  • 医療・福祉機関連携時の記録(本人同意・共有範囲・緊急性・法的整理)を作成できる
  • 行政書士法上の帳簿保存期間(帳簿閉鎖時から2年間)を説明できる
  • 終活業務で法定最低期間だけでは不十分な理由を説明できる
  • 緊急時の情報共有の例外(個人情報保護法第27条第1項第2号)を理解できる

2. 業務が必要になる実務場面

実務場面 残すべき主な記録
初回相談 相談経緯・相談者・本人・同席者・主訴・希望・次回課題
本人確認 本人確認書類・確認方法・写し取得の有無・住所相違の有無
意思能力確認 本人の理解状況・本人発言・説明への反応・疑義の有無
遺言書作成支援 誰に何を残すか・理由・相続人関係・本人の自由意思
死後事務委任 葬儀・納骨・家財・連絡先・預託金・死亡後対応
親族同席 同席者の発言・本人単独面談・誘導の有無
費用説明 報酬・実費・預り金・預託金・追加費用・返金説明
医療・福祉連携 本人同意・共有範囲・緊急性・共有内容
金銭授受 領収書・預り証・支出明細・精算書・返金記録
受任保留・辞退 理由・説明内容・他士業案内・返却資料
トラブル発生時 発生日時・相手方主張・回答内容・以後の対応

3. 基本知識

3-1. 記録は「メモ」ではなく「説明責任を果たす資料」

実務上の基本 記録は、将来の自分、本人、親族、相続人、他士業、関係機関に対して、「なぜその判断をしたのか」を説明するために作る。
本人意思の証明本人が自分の言葉で希望を述べたことを示す
説明責任の証明制度・リスク・費用・業務範囲を説明したことを示す
金銭トラブルの予防報酬・実費・預り金・預託金の入出金を示す
非弁リスクの回避紛争性ある交渉・調整に踏み込んでいないことを示す
死後対応本人死亡後に、本人の希望と手続経緯を示す

3-2. 記録に残すべき5つの軸

図解1|記録の5つの軸
①誰が本人・相談者・同席者・支払者・受益者・関係機関担当者
②いつ日時・時間・面談時間・連絡時間・資料受領日
③どこで事務所・自宅・施設・病院・オンライン・電話
④何を相談内容・説明内容・本人発言・資料・金銭・連絡内容
⑤どう判断したか受任・保留・他士業連携・追加確認・業務停止

3-3. 事実と評価を分ける

❌ 悪い記録
  • 長男を嫌っているようだった
  • 本人は分かっていると思う
  • 甥が怪しい
  • 認知症っぽい
  • 嘘をついている可能性
✅ 良い記録
  • 本人は「長男には財産を残したくない」と発言
  • 本人は遺言の意味について「死んだ後の財産の分け方を決める書類」と説明
  • 同席者が本人回答前に「甥に残すんでしょ」と発言。本人単独面談を実施した
  • 「〇〇の可能性があるため、追加確認が必要」と書く
所見を書くときの型 【事実】本人確認書類の住所は旧住所。本人は「施設に入った後、住所変更を忘れていた」と説明。
【所見】本人は転居時期・現住所・旧住所を具体的に説明できており、認知機能や記憶に起因する錯誤ではなく、単なる手続きの失念によるものと推測される。ただし、本人確認の客観的担保のため、補助資料確認を要すると評価。

3-4. 記録のタイミング

実務ルール 面談記録は、原則として面談当日中に作成する。遅くとも翌営業日までに作成する。記憶が曖昧になった後に「整った記録」を作ることは、かえって危険である。

3-5. 保存期間の考え方

記録 法定最低限 終活実務上の推奨
法定帳簿 帳簿閉鎖時から2年間(行政書士法第9条第2項) 法定最低期間を守ったうえで、終活案件では長期保存を検討
委任契約書 業務終了後も保存 長期契約・死後事務では死亡後対応完了まで保存
面談記録 受任判断・説明記録として保存 紛争リスクが残る期間は保存
意思能力確認記録 無効主張対策として保存 遺言・契約の有効性が争われ得る期間を考慮
金銭記録 会計・精算・説明用に保存 預託金・死後精算完了後も一定期間保存
医療・福祉連携記録 共有根拠・共有範囲を説明するため保存 緊急時共有の判断根拠も含めて保存
法定帳簿保存期間だけで廃棄してはいけない理由 遺言作成支援では本人死亡後に遺言無効主張が出る可能性、死後事務委任では「費用が高い」「預託金の使途不明」と主張される可能性、財産管理契約では数年後に使途不明金を疑われる可能性があります。事務所内で法定最低期間を超える保存方針を定めることが実務上望ましいです。

3-6. 記録と個人情報管理

  • 利用目的を特定して説明(受任判断・本人確認・意思確認・書類作成・業務遂行・紛争予防)
  • 写し取得は必要性を説明し同意を得る
  • マイナンバーカードは裏面の個人番号を取得・コピーしない。健康保険証の写しはマスキングを行う
  • 電子データはパスワード・アクセス権限・バックアップを設定
  • 緊急共有:生命・身体保護のため緊急性があり本人同意取得が困難な場合は、個人情報保護法上の第三者提供制限の例外に該当し得る(個人情報保護法第27条第1項第2号)

4. 実務の進め方(各記録の作り方)

4-1. 記録化の標準フロー

図解2|記録化の標準フロー
相談受付→受付記録 → 初回面談→本人確認・意思確認・利益相反確認を記録
→ 費用説明・業務範囲説明を記録 → 受任可否を判断し記録
→ 見積書・契約書・重要事項説明書を交付し記録
→ 資料受領・金銭授受を記録 → 業務進行管理表を作成
→ 電話・メール・関係機関連絡を都度記録
→ 医療・福祉連携があれば本人同意・共有範囲・緊急性を記録
→ 中間報告・追加説明を記録 → 完了報告・精算・資料返却を記録
→ 保存・廃棄方針に従い管理

4-2. 相談受付時の記録(受付記録例)

受付記録例

受付日時:2026年5月23日 10:15 受付方法:電話
相談者:山田太郎 本人:山田花子 関係:甥
相談概要:叔母の遺言作成と死後事務について相談したい。
相談者発言:「叔母は私に財産を残したいと言っています。私が連れて行きます。」
費用支払予定:山田太郎が支払う意向
注意事項:相談者が受遺者予定者となる可能性あり。本人意思未確認。初回面談では本人単独面談が必要。

4-3. 意思能力確認記録(記録例)

意思能力確認 記録例

当職説明:公正証書遺言は死亡後の財産承継先を定める書類であること、遺言により甥Aへ預金を遺贈する内容であること、兄弟姉妹が財産を取得しない可能性があることを説明。

本人発言:「遺言は私が死んだ後の財産の行き先を決めるものです。」「預金は〇〇銀行に約800万円あります。」「弟とは20年以上会っていません。世話をしてくれた甥Aに残したいです。」「弟が不満を言うかもしれないことは分かっています。」

所見:本人は遺言の意味・主な財産・受遺者・不利益を受ける可能性のある親族を自分の言葉で説明。現時点で意思能力確認上の明確な疑義は認めず。ただし高齢のため、公正証書作成時にも再確認する。

4-4. 同席者がいる場合の記録(記録例)

同席者発言 記録例

同席者発言:甥Aが本人の回答前に「叔母さん、前に言っていたように全部私に残すんだよね」と発言。本人はその直後「そうね」と発言。

対応:同席者発言が本人回答に影響する可能性があるため、Aに退席を依頼。10:35から10:55まで本人単独面談を実施。本人単独面談では、本人は「Aに言われたからではなく、通院を手伝ってくれたので残したい」と発言。

4-5. 電話・メール・オンライン相談の記録(主要項目)

  • 電話記録:日時・発信着信・相手方・用件・回答内容・保留事項・次の対応・注意事項
  • メール記録:送受信日時・送受信者・件名・内容要旨・添付資料・重要承諾・保存場所
  • オンライン相談:使用ツール・参加者・本人確認方法・録音録画の同意・同席者(画面外確認)・次回対面確認の要否

4-6. 医療・福祉機関連携時の記録(緊急共有の記録例)

緊急共有 記録例

連携日時:2026年7月10日 9:20 連携先:〇〇地域包括支援センター
状況:本人が前日から連絡不能。近隣支援者から「自宅内で倒れている可能性がある」と連絡あり。

本人同意:本人から事前に、緊急時は地域包括支援センターおよび緊急連絡先へ連絡することについて同意あり。なお、仮に本人同意の確認が困難な場面であっても、生命・身体保護のため緊急の必要性がある場合は、個人情報保護法上の第三者提供制限の例外に該当し得ることを踏まえ、必要最小限の情報共有にとどめる。

共有内容:本人氏名、住所、連絡不能の経緯、持病の概要、緊急連絡先。財産情報・遺言内容・預託金情報は共有せず。

4-7. 業務進行管理表(例)

No タスク 担当 期限 状況
1 本人確認・本人単独面談 行政書士 5/23 完了
2 戸籍資料準備 本人 6/1 未了(次回持参)
3 見積書交付 行政書士 5/25 完了(メール送付)
4 公証役場事前相談 行政書士 6/5 未了(本人確認後)
5 税理士連携要否確認 行政書士 6/5 要確認(相続税可能性)

5. ヒアリング項目

5-1. 面談冒頭で確認する項目

  • 「今日は何について相談したいですか」(相談範囲の特定)
  • 「本日同席される方とのご関係を教えてください」(利益相反確認)
  • 「今回相談しようと思ったきっかけは何ですか」(主導者確認)
  • 「費用はどなたが負担されますか」(金銭記録・利益相反)
  • 「医療・介護・福祉関係者と連携が必要な場合、どこまで共有してよいですか」(個人情報管理)

5-2. 説明後の理解確認質問(本人の言葉で説明してもらう)

確認事項 質問例
遺言の理解 「遺言とはどのような書類だと理解していますか」
死後事務の理解 「死後事務委任では、誰が何をすることになりますか」
任意後見の理解 「任意後見はいつ始まるものですか」
費用の理解 「行政書士報酬と実費の違いをどのように理解しましたか」
預り金の理解 「預り金は誰のお金として管理されるものですか」
情報共有の理解 「医療・福祉機関へ共有してよい情報の範囲をどう理解していますか」

6. 判断フロー

6-1. 記録の濃淡判断フロー

相談内容を確認 → 本人の権利義務・財産に影響するか
  ↓ 影響しない一般相談 → 簡潔な相談記録
  ↓ 影響する
  → 高齢・判断能力不安・親族関与・金銭授受があるか
    ↓ ない → 標準面談記録
    ↓ ある → 詳細記録(本人発言・説明内容・同席者発言・所見を記録。必要に応じ録音録画・他士業連携)

6-2. 医療・福祉機関へ緊急共有する場合の判断フロー

本人同意があるか
  ↓ ある → 同意範囲内で必要最小限を共有 → 共有日時・共有先・共有内容を記録
  ↓ ない・確認困難
  → 生命・身体・財産保護のため緊急性があるか
    ↓ ない → 原則として共有しない。本人同意取得を試みる
    ↓ ある → 本人同意取得が困難か
      ↓ いいえ → 同意取得を優先
      ↓ はい → 個人情報保護法上の例外に該当し得るか検討 → 必要最小限の情報のみ共有 → 判断根拠・共有内容を記録

6-3. 記録不足に気づいた場合のフロー

記憶が明確な範囲で、追記日を明記して追記する(「〇月〇日に記録漏れに気づき追記」と書く)。推測で埋めてはいけない。記憶が不明確な場合は依頼者へ確認し、確認結果を記録する。過去の日付で記録を作ったように見せてはいけない。

7. 作成・確認する書類と様式

主な記録書類一覧

  • 相談受付票 相談経緯・相談者・本人・概要を記録
  • 初回面談記録 本人発言・同席者発言・説明内容・受任判断・次回課題
  • 本人確認記録 書類種類・確認方法・住所相違・写し取得・マスキング
  • 意思能力確認記録 体調・説明内容・本人の再説明・疑義の有無・対応
  • 費用説明記録 報酬・実費・預り金・預託金・解約精算・本人の質問・見積書交付
  • 医療・福祉連携記録 本人同意・緊急性・共有内容・共有しなかった情報・判断根拠
  • 資料受領書 資料名・原本写し・部数・返却予定・提出者署名
  • 書類交付記録 交付日・書類名・交付方法・受領確認
  • 電話連絡記録 日時・相手方・用件・回答・保留事項
  • 業務進行管理表 タスク・担当・期限・完了日・未処理事項・リスク
  • 受任判断記録 受任・保留・辞退の理由
  • 完了報告書 業務完了内容・交付物・精算
  • 保存・廃棄記録 保存期間満了後の廃棄記録

面談記録の基本様式(主要項目)

面談日時・面談場所・面談方法・出席者・本人確認の状況・相談経緯・本日の相談目的・本人の主な発言・同席者の主な発言・行政書士から説明した内容・本人の理解と反応・意思能力確認の状況・利益相反確認の状況・費用説明の内容・医療・福祉連携の同意・希望・受領資料・交付書類・金銭授受・他士業連携の要否・受任判断・次回までの課題・次回予定・担当行政書士所見・記録作成日・記録作成者

8. 文例・記載例

面談記録の記載例(抜粋)

面談記録 記載例

案件名:山田花子 公正証書遺言作成支援
面談日時:2026年5月23日 14:00〜15:30 面談場所:当事務所面談室
出席者:本人 山田花子、同席者 山田太郎(甥)、担当行政書士 〇〇〇〇

本人単独面談(14:20〜14:50):太郎氏に退席を依頼し実施。
本人発言:「太郎に頼まれたのではありません。」「弟とは長年会っていません。」「太郎は買い物や病院に付き添ってくれました。」「預金の大半を太郎に残したいです。」

意思能力確認:本人発言:「私が死んだ後に、財産を誰に渡すか決めるものです。」主な財産(〇〇銀行預金・不動産なし・生命保険あり)を説明。不利益を受ける可能性のある親族(弟)の存在を認識。

受任判断:本人意思は現時点で確認できたが、太郎氏が受遺者予定者であり相談を主導しているため、次回も本人単独確認を行う。紛争性が高い場合は弁護士連携を検討。

記録作成日:2026年5月23日 17:30 記録作成者:行政書士〇〇〇〇

電話連絡記録の文例

電話連絡記録 文例

日時:2026年5月24日 10:05〜10:18 着信 相手方:山田太郎(本人の甥)
相手方発言:「叔母の通帳は私が持っています。次回、私が持参します。」「叔母は細かいことが分からないので、私が説明します。」
当職回答:通帳持参は可能だが、財産内容・遺言内容については本人から直接確認する必要があると説明。次回面談でも本人単独で確認する時間を設けると説明。
注意事項:太郎氏が通帳を管理している。利益相反に注意。財産管理状況・本人同意・使途記録の確認が必要。

受任保留記録の文例

受任保留記録 文例

案件名:佐藤一郎 死後事務委任契約相談
保留理由:本人は「次郎に任せている」と繰り返し、葬儀・納骨・家財処分・費用について自分の言葉で説明できなかった。同席者である次郎氏が本人の回答前に説明する場面が複数回あった。本人単独面談を申し出たが、次郎氏が「父は一人では話せない」と述べ、本人単独確認ができなかった。
説明内容:本人意思と契約内容の理解を十分確認できないため、直ちに契約締結はできないと説明。主治医や地域包括支援センターへの相談、再面談を案内。

9. 他士業・関係機関との連携

連携先 連携すべき主な場面・渡す記録
弁護士 親族が遺言内容に反対・無効主張・財産管理者に使途不明金・家財処分に反対する相続人・苦情・返金請求・虐待疑い。渡す記録:面談記録・意思能力確認・利益相反・金銭管理台帳・電話メール記録
司法書士 相続登記・不動産信託・成年後見申立に関する代理申立や裁判所対応・相続財産清算人関係。渡す記録:相続人関係・不動産資料・本人状況・財産資料
税理士 相続税申告・生前贈与・不動産承継・死後事務費用の税務確認。行政書士は税務判断を行わず、事実資料にとどめる
公証役場 高齢・判断能力不安・受遺者同席。渡す記録:意思能力確認記録・本人発言・診断書の有無・本人単独面談記録
地域包括支援センター・医療機関 判断能力に不安・虐待疑い・独居リスク・緊急安否確認。本人同意を基本とし必要最小限の共有にとどめる。生命・身体保護のため緊急性があり本人同意困難の場合は例外共有を検討

10. 新人が間違えやすいポイント

失敗パターン 問題点 正しい対応
記録を後回しにする 記録の信用性が下がる 面談当日中、遅くとも翌営業日までに記録する
「問題なし」とだけ書く なぜ問題なしと判断したのか分からない 本人が何を説明できたか、誰が同席したか、何を確認したかを書く
主観的・感情的に書く 後日開示された場合に問題になる 「長男が本人の回答前に発言したため本人単独面談を実施した」と書く
本人発言を要約しすぎる 本人がどの程度具体的に意思を述べたか分からない 本人の言葉を引用で記録する
同席者の発言を記録しない 誘導や代弁の有無が分からない 同席者の発言・本人単独面談の有無・退席対応を記録する
費用説明の記録を残さない 「説明を受けていない」と言われる可能性 報酬・実費・預り金・本人の質問・反応を記録する
資料を預かった記録を作らない 紛失・返却漏れ・原本写しの争いになる 資料受領書を作成し、原本写し・部数・返却予定を記録する
電話の内容を残さない 紛争性の発生時期が分からなくなる 電話連絡記録に日時・相手・発言・回答を残す
後から記録を作り替える 記録の信用性を失う 追記は追記日を明記する。過去記録を改ざんしない
法定保存期間だけで廃棄する 本人死亡後に争われたときに記録がない 帳簿閉鎖時から2年間を最低ラインとし、終活案件では長期保存を検討する
緊急時でも情報共有を過度に恐れる 生命・身体保護に反する 緊急性があり本人同意困難な場合は例外共有を検討し、判断根拠・共有内容を記録する

11. トラブル予防策

11-1. 本人発言は引用で残す

❌ 悪い例
本人は友人Aに残したいとのこと。
✅ 良い例
本人発言:「兄には財産を残したくありません。長年連絡がなく、世話をしてくれたのは友人Aです。」

11-2. 説明内容と本人の反応をセットで残す

❌ 悪い例
死後事務委任について説明済み。
✅ 良い例
死後事務委任契約は、死亡後に葬儀・納骨・役所手続を行う契約であると説明。本人は「私が亡くなった後に、葬儀社への連絡や納骨をお願いする契約ですね」と説明した。

11-3. 記録の命名規則を決める

命名例・フォルダ例

命名例:20260523_面談記録_山田花子_初回相談.pdf / 20260710_医療福祉連携記録_山田花子_地域包括.pdf

フォルダ例:山田花子_遺言死後事務 / 01_受付相談 / 02_本人確認意思確認 / 03_契約見積費用 / 04_資料受領 / 05_書類作成 / 06_関係機関連絡 / 07_金銭管理 / 08_医療福祉連携 / 09_完了報告

11-4. 保存期間を「法定最低期間」と「実務上必要な期間」に分けて考える

遺言作成支援・死後事務委任・任意後見・財産管理・見守り・高額預託金・医療福祉連携など、本人死亡後または長期経過後に争われる可能性がある記録は、帳簿閉鎖時から2年間を最低ラインとし、案件の性質に応じてより長期の保存を検討する。事務所内規程として保存方針を定めることが望ましい。

12. ケーススタディ(2事例)

ケース1 死後に親族から「本人は理解していなかった」と主張された場合

独居高齢者Aが公正証書遺言と死後事務委任契約を作成。A死亡後、弟Cが「姉は内容を理解していなかった」「友人Dに誘導されたのではないか」「死後事務費用も聞いていない」「預けたお金の使い道を説明してほしい」と主張した。

適切な記録がある場合に説明できること 記録の種類
A本人が相談目的を述べたこと 初回面談記録
Dの誘導を排除して確認したこと 本人単独面談記録
Aが遺言・死後事務の意味を説明できたこと 意思能力確認記録
報酬・実費・預託金を説明したこと 費用説明記録・重要事項説明書
入金・支出・残額を説明できること 預託金管理台帳・領収書
死後事務の実施内容と精算 完了報告書・精算書
このケースからの教訓 死後に本人は説明できない。行政書士が本人意思を守るためには、本人が生きている間に、本人の言葉・説明内容・理解状況・費用説明・金銭管理を記録しておくしかない。
ケース2 緊急時に本人同意なく医療・福祉機関へ情報共有した場合

見守り契約中の独居高齢者Eについて、定期電話に応答がなく、近隣住民から「室内で倒れているかもしれない」と連絡があった。本人は緊急時連絡先を記載していたが、情報共有同意書には署名していなかった。行政書士は地域包括支援センターへ、本人氏名・住所・連絡不能の経緯・持病の概要・緊急連絡先を共有した。

記録すべき事項 ①本人同意:事前包括的同意書は未取得。見守り契約書に緊急連絡先記載あり。②緊急性:生命・身体保護のため早急な安否確認が必要と判断。③法的整理:本人同意取得は現時点で困難。個人情報保護法第27条第1項第2号の例外に該当し得る場面と判断。④共有内容:氏名・住所・経緯・持病の概要・緊急連絡先に限定。財産情報・遺言内容・預託金情報は共有せず。
このケースからの教訓 本人同意が原則であることは変わらない。ただし、生命・身体保護のため緊急性があり本人同意を得ることが困難な場合は、個人情報保護法上の例外に該当し得る。その場合でも、共有は必要最小限にし、判断根拠を必ず記録する。今後の見守り契約更新時に、緊急時情報共有同意書を整備する。

13. 実務チェックリスト

各面談後に必ず残す記録

  • 面談日時・場所・方法を記録した
  • 出席者・同席者の関係を記録した
  • 本人確認の状況を記録した
  • 本人の主な発言を記録した
  • 同席者の主な発言を記録した
  • 本人単独面談の有無を記録した
  • 意思能力確認の内容を記録した
  • 利益相反確認を記録した
  • 費用説明・業務範囲説明を記録した
  • 医療・福祉連携の同意・希望を確認した
  • 受領資料・交付書類を記録した
  • 金銭授受を記録した
  • 受任判断・次回課題を記録した
  • 記録作成日を記録した

本人確認記録チェック

  • 確認書類の種類を記録した
  • 氏名・住所・生年月日・顔写真を確認した
  • 有効期限・現住所との相違を確認した
  • 写し取得の利用目的を説明した
  • マイナンバーカード裏面を取得していない
  • 健康保険証等のマスキングを行った
  • 住所相違等について事実と所見を分けて記録した

医療・福祉連携記録チェック

  • 連携日時・連携先・担当者名を記録した
  • 本人同意の有無を記録した
  • 同意取得が困難な理由を記録した
  • 生命・身体・財産保護の緊急性を記録した
  • 個人情報保護法上の例外該当性を検討した
  • 共有した情報を記録した
  • 共有しなかった情報を記録した
  • 必要最小限の共有にとどめた

保存期間・保存方法チェック

  • 行政書士法上の帳簿保存期間が2年間(帳簿閉鎖時から)であることを確認した
  • 法定最低期間と終活実務上の保存期間を分けて考えた
  • 遺言・死後事務・任意後見・財産管理案件は長期保存を検討した
  • 電子データのアクセス権限を設定した
  • 紙資料を施錠保管した
  • 録音・録画データの保存方針を定めた
  • 廃棄記録を作成する運用にした

14. 確認テスト(全15問)

問1
終活業務で記録化が特に重要な理由を説明しなさい。
終活業務では、本人が高齢で判断能力が変動する可能性があり、本人死亡後には本人が説明できないため。本人意思・説明内容・費用・資料・金銭・関係者対応を記録しておかないと、後日「本人は理解していなかった」「説明を受けていない」「勝手に進めた」と主張されたときに説明できない。
問2
面談記録に必ず記載すべき基本項目を挙げなさい。
面談日時・場所・方法・出席者・本人確認・相談経緯・本人発言・同席者発言・説明内容・本人の理解と反応・意思能力確認・利益相反確認・費用説明・受領資料・交付書類・金銭授受・受任判断・次回課題・記録作成日・記録作成者。
問3
記録に主観を書きすぎてはいけない理由を説明しなさい。
主観的・感情的な記載は後日開示された場合に不適切であり、記録の信用性を下げるため。事実と所見を分け、「怪しい」などではなく、具体的な発言や行動を記録したうえで、「追加確認が必要」「補助資料確認を要する」など、根拠のある所見にとどめる。
問4
本人意思確認記録では、なぜ本人の言葉を残す必要があるか。
本人が自分の意思で内容を理解し、希望を述べたことを示すため。特に遺言や死後事務委任では、本人死亡後に本人が説明できないため、本人発言の記録が重要になる。
問5
親族同席時に記録すべき事項を挙げなさい。
同席者氏名・本人との関係・同席理由・受益関係・費用支払の有無・同席者発言・本人の代弁誘導の有無・本人単独面談の有無・退席依頼への対応・本人単独面談での発言。
問6
費用説明記録に残すべき事項を挙げなさい。
報酬・実費・預り金・預託金・立替金・追加費用・他士業費用・外部業者費用・解約時精算・死亡後精算・見積書・重要事項説明書の交付・本人の質問と反応・本人以外の支払者・返金先。
問7
資料受領書が必要な理由を説明しなさい。
戸籍・通帳・保険証券・登記書類など重要資料を預かった場合、何を・誰から・いつ・原本か写しか・何部受け取ったか・いつ返すかを明確にしないと、紛失・返却漏れ・原本の有無をめぐるトラブルになるため。
問8
電話連絡記録には何を残すべきか。
日時・発信着信・相手方氏名・本人との関係・用件・相手方発言・行政書士の回答・保留事項・次回対応・注意事項を記録する。
問9
記録不足に後から気づいた場合、どう対応すべきか。
記憶が明確な範囲で、追記日を明記して追記する。推測で埋めてはいけない。記憶が不明確な場合は依頼者等に確認し、確認結果を記録する。過去の日付で作成したように見せてはいけない。
問10
録音・録画を使う場合の注意点を説明しなさい。
目的を説明し、本人および同席者の同意を得る。保存場所・利用目的・保存期間を明確にし、編集しない。録音・録画だけに頼らず、書面の面談記録も作成する。
問11
業務進行管理表が必要な理由を説明しなさい。
終活業務では資料収集・本人確認・意思確認・費用説明・他士業連携・書類作成・金銭精算など複数のタスクが並行するため、進捗・期限・担当・未処理事項を管理しないと、漏れや遅延が発生するため。
問12
おひとりさま・おふたりさま終活で、本人死亡後に特に重要になる記録を挙げなさい。
本人意思確認記録・意思能力確認記録・死後事務希望の記録・費用説明記録・預託金管理台帳・資料受領・返却記録・関係機関連絡記録・完了報告書・精算書。
問13
行政書士法上、帳簿と関係書類はいつから何年間保存する必要があるか。
帳簿閉鎖の時から2年間保存する必要がある(行政書士法第9条第2項)。ただし、これは法定最低限の保存期間であり、終活業務では本人死亡後や長期経過後に争われる可能性があるため、案件の性質に応じてより長期の保存を検討する。
問14
医療・福祉機関へ本人同意なく情報共有できる場合があるのはどのような場面か。
本人の意識不明・連絡不能・生命身体への危険が疑われる場合など、人の生命、身体または財産の保護のために必要があり、本人同意を得ることが困難なときは、個人情報保護法第27条第1項第2号の例外に該当し、必要最小限の情報共有が認められる場合がある。その場合は、緊急性・同意困難性・共有先・共有内容を記録する。
問15
「所見」を書く場合に注意すべきことを説明しなさい。
所見は単なる感想・感情ではなく、事実に基づく専門職としての評価として書く。たとえば「本人確認書類の住所と現住所が相違したが、本人は転居時期と経緯を具体的に説明しており、認知機能や記憶に起因する錯誤ではなく、単なる手続きの失念によるものと推測される。ただし客観的担保のため補助資料確認を要する」といった形で、事実・評価・次の対応を分けて記録する。

15. 次回への接続

今回の要点 終活業務の記録は、行政書士のためだけのメモではなく、本人死亡後・判断能力低下後に、本人意思と適正な業務遂行を説明するための実務上の防波堤である。
実務上の最重要ポイント 面談記録では、日時・場所・出席者・本人発言・同席者発言・説明内容・本人の理解・費用説明・資料受領・金銭授受・受任判断・次回課題を必ず残す。事実と所見を分け、本人の重要発言は本人の言葉で記録する。行政書士法上の帳簿保存期間は帳簿閉鎖時から2年間であるが、終活業務では2年間だけで足りるとは限らない。記録は面談当日中・遅くとも翌営業日までに作成し、資料・金銭・電話・メール・関係機関連絡・医療福祉連携と一体で管理する。

次回「0-10 他士業・関係機関連携の基本」では、弁護士・司法書士・税理士・地域包括支援センター・医療機関・葬儀社等との役割分担、連携時に共有すべき記録、本人同意の取り方、緊急時情報共有の判断を扱います。

行政書士実務マニュアル|おひとりさま・おふたりさま終活業務シリーズ 第0-9回

本記事は教育・研修目的で作成されています。個別の案件については必ず最新の法令・ガイドライン・専門家の判断を確認してください。

あわせて確認したいこと

相続・遺言・終活の手続きを確認したい方へ

相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

前のページに戻る
フォーム 電話 LINE