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第0-6回 親族トラブル予防

家族・親族トラブルの予防
おひとりさま・おふたりさま終活における
親族反発・死後トラブル・非弁リスクを防ぐ実務マニュアル

本人意思を尊重しながらも、疎遠親族・内縁パートナー・友人受任・家財処分・相続放棄の各リスクを事前整理し、行政書士が交渉に踏み込まずに弁護士連携する実務を解説します。

対象:新人行政書士読了目安:約25分ケーススタディ5例・確認テスト16問収録
前回(0-5)との接続 前回は本人意思の確認と記録化が後日の無効主張・親族トラブルを防ぐうえで不可欠であることを学びました。今回は、本人意思が確認できている場合でも、その意思を実行する過程で生じる親族・相続人・パートナー・友人・施設等とのトラブルをどう予防するかという実務を扱います。
非弁リスクの確認 行政書士は、本人の意思整理・書類作成・手続支援・制度説明を行うことはできますが、紛争性のある案件において報酬を得る目的で当事者間の交渉・調整・代理的関与を行うことは、弁護士法第72条に抵触するおそれがあります。親族間で争いがある場合、行政書士が「親切心」で仲裁役になること自体が非弁リスクにつながります。

1. この回の到達目標

  • 親族トラブルが起きやすい場面を予測できる(疎遠親族・内縁パートナー・友人・支援者が関係する場面を把握)
  • 本人意思を優先する原則を説明できる(親族の希望を本人意思に置き換えてはいけない)
  • 疎遠な相続人の存在を確認できる(兄弟姉妹・甥姪・前婚の子・養子縁組・認知等を把握)
  • 内縁・同性パートナーへの財産・死後事務のリスクを説明できる(法定相続人ではないこと・自治体パートナーシップ制度は代替にならないことを説明)
  • 友人・支援者が受任者となる場合の注意点を判断できる(財産管理・死後事務・利益相反・報酬・責任範囲の明確化)
  • 家財処分の危険性を判断できる(相続財産に該当し得ること・写真記録・弁護士連携)
  • 相続放棄・相続財産清算人リスクを予測できる(手続が膠着する可能性・弁護士連携)
  • 紛争性を感じた時点で止まれる(弁護士へ連携できる)
  • 受任前にリスク説明できる(後から親族が反発する可能性・行政書士が交渉できないこと)

2. 業務が必要になる実務場面

相談内容 トラブル予防上の注意
「兄弟とは何十年も会っていない。友人に全財産を渡したい」 兄弟姉妹・甥姪が相続人になる可能性。遺言の必要性と死後の反発リスクを説明
「同性パートナーに家と預金を残したい」 法律上の相続人でない場合、遺言・契約・生命保険・不動産対応が必要
「自治体のパートナーシップ証明があるので相続できますよね」 パートナーシップ制度は民法上の相続権・親族関係を発生させないため遺言等が必要
「親族には一切知らせずに葬儀も納骨も済ませたい」 死亡後の火葬・相続・賃貸借終了・家財処分等で実務上連絡が必要または求められる可能性
「甥が同席して、叔母の遺言を作りたいと言っている」 甥が受益者になる可能性。本人意思・利益相反・誘導確認が必要
「相続人同士が揉めないように先生が説明してください」 紛争性がある案件で報酬を得る目的で交渉・調整・代理的関与を行うことは非弁リスク
「死後に部屋を片付けて親族に見られたくない」 家財の多くは相続財産に該当し得るため、相続人の権利・写真記録・弁護士連携が必要
「相続人になりそうな甥姪とは一切関わりたくない」 甥姪が相続放棄し、相続財産清算人選任が必要になる可能性を予測

3. 基本知識

3-1. 本人意思を優先する原則

実務上の注意 本人意思を尊重するためには、本人意思を丁寧に記録し、その意思を実現するための書類・契約・連絡方針を整理する必要がある。ただし、本人意思を理由に、行政書士が親族と交渉したり、相続人の権利を無視した説明をしたりしてはならない。

3-2. 親族トラブルが起きやすい6つの理由

①疎遠親族の介入生前は関与しないが、死後に相続人として現れる
②パートナー・友人への疑い親族から「財産目当て」と疑われやすい
③家財処分トラブル相続財産を勝手に処分したと疑われる
④葬儀・納骨の対立本人希望と親族感情が衝突しやすい
⑤契約を死後に初めて知る「聞いていない」と死後に反発する
⑥相続放棄による膠着相続人が誰も手続に関与しなくなる
家財処分に関する重要注意 家財の多くは相続財産に該当し得ます。民法では相続開始により被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続人に承継されることが定められており、家財処分は相続人の権利と衝突する可能性があります。相続人の承諾なしに処分を進めると、後から現れた疎遠な相続人から損害賠償請求・不当利得返還請求を受けるリスクがあります。換価価値がある物・貴重品・写真・手紙・位牌等が含まれる場合、行政書士単独で処分判断をしてはいけません。

3-3. 親族トラブルの典型例と予防策

類型 具体例 予防策
疎遠親族の反発 「聞いていない」と死後に反発 本人意思記録・遺言・死後事務委任・連絡方針整理
内縁・同性パートナー排除 親族がパートナーを葬儀・住居から排除 遺言・死後事務委任・賃貸・不動産・家財対応整理
パートナーシップ制度の誤解 証明書があるから相続できると誤解 制度の限界説明・遺言・契約整備
友人受任者への疑い 親族から「財産目当て」と疑われる 契約書・報酬規定・費用原資・面談記録
家財処分トラブル 「形見を勝手に捨てた」と主張 写真記録・リスト化・相続人関与・弁護士連携
相続財産の使途不明 死後事務費用や生前支出を疑われる 預り金管理・領収書・支出記録・報告書
相続放棄による膠着 相続人全員が放棄し誰も手続しない 費用原資・相続財産清算人・弁護士連携を想定
行政書士への親族説得依頼 「先生が説得して」と依頼 弁護士連携。行政書士は交渉しない

3-4. 兄弟姉妹・甥姪が相続人となる場合

新人が注意すべきこと 「兄弟姉妹には遺留分がないから大丈夫」と安易に説明してはいけません。遺留分がない場合でも、遺言能力・本人意思・財産管理・死後事務費用・家財処分・葬儀・納骨の進め方をめぐって事実上の争いが生じることがあります。また、疎遠な兄弟姉妹や甥姪が全員相続放棄をすると、葬儀費用精算・賃貸借解約・家財処分が膠着するリスクがあります。相続財産清算人の問題が生じ得るため、弁護士・司法書士へ連携する準備が必要です。

3-5. 内縁・同性パートナーに財産を残す場合

図解1|内縁・同性パートナーへの財産承継で必要な対策
公正証書遺言パートナーへ財産を残す
死後事務委任契約葬儀・納骨・役所手続を任せる
任意後見契約判断能力低下後の支援者を定める
住居契約の確認同居継続・退去リスクを整理
生命保険受取人指定死後資金を確保
弁護士・司法書士・税理士連携紛争性・登記・税務確認
自治体パートナーシップ制度の限界 自治体のパートナーシップ制度等は、医療機関・住宅・民間サービス・自治体窓口などで一定の配慮の根拠になることがあります。しかし、民法上の法的効力(相続権・親族関係の発生)をもたらすものではありません。したがって、制度を利用していても、遺言・死後事務委任契約・任意後見契約・財産管理契約・生命保険・住居契約整理の代替にはなりません。

3-6. 友人・支援者が受任者となる場合のリスク

  • 財産目的と疑われる 親族から「財産を狙った」と言われる
  • 負担が過大 葬儀・納骨・家財処分・役所手続が重く、費用立替問題が起きる
  • 権限不明確 施設・葬儀社・金融機関・家主が対応を拒む
  • 受任者死亡・病気 実行できなくなる場合がある
  • 施設職員の個人受任 内部規程・倫理規定により禁止・制限される場合がある
  • 利益相反 受任者が受遺者にもなる場合、疑われやすい

4. 実務の進め方

4-1. 親族トラブル予防の標準フロー

図解2|親族トラブル予防の標準フロー
本人確認・意思能力確認 → 親族関係・支援者関係の聴取 → 推定相続人・関係者の把握
→ 本人の希望確認 → 親族との関係性・連絡可否を確認 → トラブルリスク分類
→ 必要書類・契約の方向性整理 → 説明記録・面談記録作成
紛争性があれば弁護士連携 → 受任可否判断

4-2. 最初に確認すべき関係者

区分 確認対象
法律上の親族 配偶者・子・親・兄弟姉妹・甥姪・養子・前婚の子
事実上の家族 内縁配偶者・同性パートナー・長年同居している人
支援者 友人・近隣住民・元同僚・民生委員・ケアマネ・施設職員
財産関係者 通帳管理者・家賃支払者・保証人・保険受取人
死後対応関係者 葬儀社・寺院・納骨先・家主・不動産管理会社
対立可能性のある人 疎遠親族・過去に金銭トラブルがあった人・相続期待者
放棄可能性のある人 相続人であっても関与を拒み、相続放棄しそうな人

4-3. 親族への説明をする場合・しない場合の判断

本人への説明文例 「親族に知らせたくないというお気持ちは記録します。ただし、法律上当然に親族への通知義務が生じるとは限らないものの、死亡後の手続では火葬・相続・賃貸借・家財処分などの場面で、親族への連絡が実務上必要または求められることがあります。『一切知らせない』と約束するのではなく、どの親族に、どの範囲で、誰が、いつ連絡するかを整理しましょう。」

4-4. 家財処分で止まるべき基準

状況 対応
現金・通帳・印鑑・貴金属・美術品・骨董品がある 処分せず保管・記録。弁護士等へ相談
写真・手紙・位牌・仏壇・思い出品がある 形見分け対象として扱い、処分保留
家電・家具に中古価値がある 換価価値がある可能性。処分前に記録・確認
相続人の所在が判明している 相続人への確認・関与を検討
親族が反対している 行政書士単独で進めず弁護士連携
死後事務委任契約に処分条項があるだけ それだけで安全とは判断しない
明らかな廃棄物のみ 写真記録・リスト化・処分理由を記録して慎重に実施

4-5. 紛争性を感じた場合・してはいけないこと

❌ 行政書士がしてはいけないこと
  • 相続人を説得する(交渉・調整リスク)
  • 分割案の妥協点を提示する
  • 一方の親族の代理人のように発言する
  • 親族に「あなたに権利はない」と断定する
  • 「私が間に入ります」と言う
  • 家財を「価値がなさそう」と独断で処分する
  • パートナーシップ証明があるから相続できると説明する
✅ 紛争性兆候があれば即弁護士連携
  • 親族間で財産分けに意見対立がある
  • 遺言内容が極端に偏っている
  • 親族が「訴える」と言っている
  • 財産管理に不正疑いがある
  • 家財処分に反対者がいる
  • 家財に換価価値がある
  • 相続人全員が放棄しそう

5. ヒアリング項目

5-1. 親族関係の基本ヒアリング(主要項目)

  • 配偶者・子(前婚の子含む)・親・兄弟姉妹・甥姪・養子縁組・認知・非嫡出子の有無
  • 長年疎遠な親族はいるか、反対しそうな人はいるか
  • 連絡してほしい人・連絡してほしくない人(理由も確認)
  • 相続が発生した場合に関与を拒みそうな親族はいるか(相続放棄見込み)

5-2. 内縁・同性パートナーに関するヒアリング(実務説明ポイント)

法律婚でないパートナーに財産や死後事務を任せたい場合、その方は法定相続人でない可能性があります。自治体のパートナーシップ制度等を利用していても、民法上の相続権や親族関係が発生するわけではなく、遺言や各種契約の代替にはなりません。遺言・死後事務委任契約・任意後見契約・財産管理契約・生命保険・住居に関する整理などを組み合わせて検討する必要があります。

確認項目:法律婚の有無、同居状況・住民票住所、自治体パートナーシップ制度等の利用有無(制度が相続権を生じさせないことの理解確認)、財産承継・住居・葬儀・納骨の希望、親族の認知・反対可能性

5-3. 友人・支援者に関するヒアリング(主要項目)

  • 関係性・付き合いの期間・依頼内容・報酬(無償か有償か)
  • 受任者の同意確認・代替者の有無
  • 施設職員か否か(内部規程・倫理規定による制限の有無)
  • 利益関係(財産も残す予定があるか)・親族の認知・反発可能性

5-4. 親族への連絡方針ヒアリング

  • 死亡直後・葬儀前・葬儀後に連絡してほしい人の区分
  • 連絡してほしくない人とその理由
  • 実務上必要な場合のみ連絡する方針でよいか
  • 例外(死亡・火葬・相続・住居などで必要または求められる場合があることの理解確認)

5-5. 家財・住居に関するヒアリング

  • 持ち家か賃貸か、管理会社・保証人の有無
  • 現金・通帳・印鑑・貴金属・骨董品・美術品の有無
  • 写真・手紙・位牌・仏壇・デジタル機器の処理希望
  • 形見分け希望品・パートナー・友人へ渡したい物
  • 相続人が家財処分に反対する可能性はあるか

6. 判断フロー

6-1. 親族トラブルリスク判断フロー

本人希望と法定相続人の期待が一致するか
一致する → 通常の説明・記録で進行
一致しない → 理由確認・反発リスク説明・遺言等を検討
紛争性があるか
ない → 行政書士の範囲で書類作成支援
ある → 弁護士連携
内縁・同性パートナーが法定相続人か
法定相続人 → 遺言・契約の必要性を検討
法定相続人でない → 遺言・死後事務委任等が必要。パートナーシップ制度等は代替にならないと説明
家財に換価価値・貴重品・形見分け対象があるか
ない(明らかな廃棄物のみ) → 写真記録し慎重に進行
ある・不明 → 写真記録・相続人関与または弁護士連携。行政書士単独で処分しない
疎遠な相続人が全員相続放棄しそうか
低い → 通常の相続手続を想定
高い → 費用原資整理・相続財産清算人の可能性を説明・弁護士連携

6-2. 親族へ説明するかどうかの判断フロー

本人が親族説明を希望しているか
希望する → 説明範囲・同席者・記録方法を決める。行政書士は中立的な制度説明に留める
希望しない → 実務上の連絡必要性を説明し、死後に必要または求められる連絡範囲を整理
紛争性が高いか
低い → 連絡方針を記録して進行
高い → 弁護士相談を案内

7. 作成・確認する書類

  • 親族関係ヒアリングシート 親族・相続人・疎遠者・連絡希望を整理
  • 関係者一覧表 親族・パートナー・友人・支援者・専門職を一覧化
  • 本人意思確認記録 本人の希望と理由を本人の言葉で記録
  • 親族連絡方針書 誰に・いつ・どの範囲で連絡するか整理(法的通知義務の有無を確定する書類ではなく内部確認資料)
  • 説明記録・面談記録 同席者・発言・誘導の有無・本人単独面談・リスク説明内容を記録
  • 家財・形見分け希望リスト・写真記録 処分トラブル予防・処分前の状態記録
  • 貴重品発見・保管記録 現金・通帳・印鑑・貴金属等の保管記録
  • 家財処分リスク確認書 相続財産との関係・処分停止基準・弁護士連携要否
  • 相続放棄リスク整理メモ 死後に手続が膠着するリスクを整理
  • 弁護士連携記録 紛争性を理由に連携した経緯を記録

8. 文例・記載例

内縁・同性パートナーへ財産を残したい場合の説明文例

法律上の配偶者でない場合、パートナーの方は当然には法定相続人になりません。内縁・事実婚のパートナーであっても、法定相続権は認められないため、財産を残したい場合は遺言を作成することが重要です。また、自治体のパートナーシップ制度等を利用していても、それによって民法上の相続権や親族関係が発生するわけではありません。葬儀・納骨・役所手続・住居・家財については死後事務委任契約などで役割を整理しておく必要があります。

行政書士が親族間調整に入れないことの説明文例

私は行政書士として、書類作成や手続支援、制度説明はできます。しかし、紛争性のある案件において、報酬を得る目的で、ご親族間の交渉・調整・代理的な関与を行うことはできません。どちらかを説得したり間に入って条件調整をしたりする必要がある場合は、弁護士へご相談いただく必要があります。

家財処分リスクの説明文例

死後事務委任契約に家財処分の希望を書いておくことはできます。ただし、家財の多くは相続財産に該当する可能性があり、相続人の権利と関係します。後から相続人が現れた場合、「勝手に処分された」と言われるリスクがあります。現金・通帳・印鑑・貴金属・写真・手紙・仏壇・位牌・形見分けの対象になりそうな物は、処分せず写真記録とリスト化を行います。少しでも換価価値がある物がある場合や親族の反対が予想される場合は、行政書士単独で処分を進めず弁護士へ連携するか相続人の関与を前提に整理します。

相続放棄リスクの説明文例

疎遠なご親族が相続人になる場合、死亡後にその方々が相続放棄をする可能性があります。相続人が誰も手続に関与しなくなると、葬儀費用の精算・賃貸住宅の解約・家財処分・未払金の支払いが進まなくなることがあります。そのような場合には相続財産清算人の選任など家庭裁判所を通じた手続が必要になることもあります。行政書士だけで判断せず、弁護士や司法書士と連携して進める必要があります。

面談記録例:疎遠な兄弟がいる場合

記録例

面談日:2026年5月23日 本人:山田花子

本人発言:「兄とは30年以上会っていません。兄には世話になっておらず、死後に財産を渡したいとは思いません。友人Aは10年以上通院や買い物を手伝ってくれました。Aに全財産を残したいです。兄には葬儀前には知らせたくありません。ただし、必要な法律上・実務上の連絡があるなら、専門家から事務的に伝えてください。」

当職説明:兄弟姉妹が相続人となる可能性・遺言が必要であること・死後に兄から反発が出る可能性・兄弟姉妹に遺留分がない場合でも遺言能力・財産管理・家財処分について争われる可能性があることを説明。家財の多くは相続財産に該当し得るため、死後事務委任契約だけで無制限に処分できるわけではないことを説明。行政書士は親族間交渉を行えないことを説明。

判断:本人は希望と理由を具体的に説明。次回、相続人調査・財産整理・公正証書遺言・死後事務委任契約を検討。紛争化した場合は弁護士連携。

9. 他士業・関係機関との連携

連携先 主な場面
弁護士 親族間の意見対立・遺言内容への強い反発・財産管理に不正疑い・親族が本人に圧力・家財処分や葬儀で対立・相続人全員が放棄しそう・内縁パートナーと親族が対立・行政書士へ親族説得を求められた
司法書士 不動産の相続登記・生前贈与や信託で登記が関係・住居をパートナーへ残したい・成年後見申立書類の作成代理などが必要・相続財産清算人選任に関連する資料整理
税理士 相続税申告の可能性・内縁パートナーへ多額の遺贈・生命保険を活用・遺産分割案が税額に影響(行政書士は具体的な税額計算・税務特例の適用可否を判断してはいけない)
地域包括支援センター 親族から虐待・圧力を受けている疑い・財産管理を親族が一方的に行っている・判断能力低下が疑われる・施設職員へ個人的に依頼したい
葬儀社・寺院・不動産業者等 本人希望・費用・親族連絡・死亡時対応を整理。家財整理業者では処分範囲・貴重品・形見分け・写真記録を確認。換価価値がある物の処分は相続人・弁護士関与を検討

10. 新人が間違えやすいポイント

失敗パターン 問題点 正しい対応
「親族はいない」という本人発言をそのまま信じる 「付き合いのある親族はいない」という意味の可能性。法律上の相続人がいないとは限らない 「連絡を取っている親族」と「法律上の相続人候補」を分けて確認する
「兄弟姉妹には遺留分がないから安全」と説明する 遺言能力・本人意思・財産管理・死後事務費用・家財処分を争われる可能性がある 遺留分だけでなく無効主張・感情的反発・死後事務妨害のリスクを説明し記録を厚くする
内縁・同性パートナーを「配偶者と同じ」と扱う 内縁配偶者等に法定相続権は認められない。パートナーシップ制度利用でも当然に相続権・親族関係が発生するわけではない 遺言・死後事務委任・任意後見・住居対策・生命保険等を検討。個別の法的判断は弁護士へ連携
「親族に知らせなくて大丈夫」と約束する 死亡後の火葬・相続・住居・家財処分などで親族連絡が実務上必要または求められる可能性 連絡しない希望は記録するが、実務上必要な連絡があり得ることを説明し、連絡範囲・時期・担当者を整理
親族間の仲裁役になってしまう 紛争性がある案件で報酬を得る目的で当事者間の交渉・調整・代理的関与を行うことは弁護士法第72条に抵触するおそれ 制度説明と書類作成支援の範囲に留め、調整が必要な場合は弁護士へ連携
友人受任者の善意を過信する 死後事務は負担が重く、費用立替・親族反発・権限不足が起きやすい 受任者の役割・報酬・費用原資・報告義務・代替受任者・親族対応を契約書と記録で整理
「死後事務委任があれば家財を自由に処分できる」と説明する 家財の多くは相続財産に該当するため、相続人の権利との関係で問題となる可能性。損害賠償・不当利得返還請求のリスク 写真記録・形見分け・処分方針・弁護士連携または相続人の関与を必須とする
相続放棄後の手続膠着を想定しない 疎遠な相続人が全員相続放棄すると、賃貸借終了・家財処分・未払費用精算が進まなくなる 相続放棄の可能性をヒアリングし、預り金・保険・死後事務費用原資・弁護士連携・相続財産清算人の可能性を事前に説明

11. トラブル予防策

11-1. 本人意思と理由を必ず記録する

❌ 不十分な記録
「友人Aへ全財産を残したい。」
✅ 望ましい記録
「兄とは30年以上交流がなく生活の援助も受けていません。友人Aは10年以上通院や買い物を支えてくれました。感謝しているので、Aに財産を残したいです。」

11-2. 親族関係を「付き合い」と「法律関係」に分ける

本人の言い方 実務上の確認
「親族はいない」 法律上の相続人候補は本当にいないか
「兄とは縁を切った」 法律上の兄弟関係は残っているか
「内縁の妻が家族です」 法定相続人にはならないため、遺言が必要
「パートナーシップ証明があります」 相続権や親族関係は発生しないため、遺言・契約が必要
「相続人は皆いらないと言うはず」 相続放棄により手続が膠着しないか

11-3. 死後事務と相続の違いを整理する

図解3|死後事務委任契約と遺言の役割の違い
遺言
財産を誰に承継させるかを定める書類。財産承継に強い。
死後事務委任契約
死亡後の葬儀・納骨・役所手続・家財整理等の事務を依頼する契約。財産承継は決められない。家財の多くは相続財産に該当し得るため、相続人の権利を無視して処分できるわけではない。

11-4. 親族説明会で行ってよい範囲・してはいけない範囲

✅ 行ってよい範囲
  • 遺言・死後事務委任等の一般制度説明
  • 本人の同意がある範囲での説明
  • 書類の存在説明(本人同意に基づき)
  • 手続の流れの一般説明
  • 紛争性がない範囲での事実伝達
❌ してはいけない範囲
  • 親族を説得する(「納得してください」と迫る)
  • 分配案を調整する
  • 一方の主張を代弁する
  • 反対親族と条件交渉する
  • 「私がまとめます」と言う
  • 対立がある家財処分の同意を取りまとめる

12. ケーススタディ(5事例)

ケース1 長年疎遠な兄弟がいる高齢者が友人へ全財産を渡したい場合

80歳女性A。未婚・子なし・両親死亡。兄Bがいるが30年以上疎遠。友人Cに通院・買い物を手伝ってもらっており、「Cに全財産を渡したい。兄には知らせたくない」と相談。

本人への説明要点 B様が法律上の相続人となる可能性があります。兄弟姉妹に遺留分がない場合でも、遺言の有効性や家財処分について後から反発される可能性があります。家財の多くは相続財産に該当し得るため、死後事務委任契約だけで無制限に処分できるわけではありません。行政書士はB様を説得したりC様との間を調整したりすることはできません。争いになりそうな場合は弁護士へ連携します。
ケース別の受任判断 Cが同席し発言を誘導 → 本人単独面談まで保留 / Bがすでに反発・警告 → 弁護士連携 / 家財に換価価値がある → 写真記録・相続人関与・弁護士連携を検討 / Bが相続放棄しそう → 死後費用・清算人リスクを整理
ケース2 同性パートナーに住居を残したい場合

70歳男性D。同性パートナーEと20年同居。自宅はD名義。甥姪がいるが疎遠。「自分が亡くなった後もEに住み続けてほしい」と希望。自治体のパートナーシップ証明を取得済み。

  • Eが法定相続人でない → 遺言がないと自宅を承継できない
  • パートナーシップ証明制度は相続権や親族関係を発生させないと説明
  • 甥姪の有無を確認・遺言の必要性を説明・死後事務委任契約を検討
  • 税理士・司法書士へ連携(遺贈に伴う税負担確認・不動産登記)
  • 紛争可能性が高ければ弁護士へ連携
ケース3 親族に知らせず火葬してほしい場合

85歳女性F。子なし。甥姪がいるが疎遠。「死んでも親族には知らせず、直葬にして永代供養にしてほしい」と希望。

親族へ知らせたくないというお気持ちは記録します。ただし、法律上当然に親族への通知義務があるとは限らないものの、死亡後の手続では親族への連絡が実務上必要または求められる場合があります。直葬や永代供養の希望は死後事務委任契約や葬儀社との事前相談で整理できますが、相続や家財処分で親族が関与する可能性は残ります。
ケース4 甥が同席して叔母の遺言作成を進めたい場合

甥Gが叔母Hを連れて来所。「叔母は私に全財産を残したいと言っている。兄弟とは仲が悪いので、急いで遺言を作ってほしい」と発言。Hはほとんど話さない。

  • Gからは概要のみ聴取 → H本人と単独面談
  • Hが自分の言葉で財産承継希望を説明できるか確認
  • Gが受益者となるため利益相反に注意
  • 他親族との対立がある場合は弁護士連携 / 遺言作成を急がず記録を厚くする
ケース5 相続人全員が相続放棄しそうな場合

90歳男性I。子なし・配偶者なし。甥姪が5人いるが全員疎遠。賃貸住宅で一人暮らし。死後事務委任契約を希望。「甥姪は誰も関わらないと思う」と話している。

リスク整理 相続人が全員相続放棄 → 相続財産の管理主体が不明確 / 賃貸借終了・家財処分が膠着 / 葬儀費用精算困難 / 相続財産清算人の選任申立てが必要になる可能性。対応:死後事務費用原資を確保・家財の写真記録・リスト化方針を作成・弁護士・司法書士へ連携を検討・行政書士単独で家財処分や財産清算を進めない。

13. 実務チェックリスト

親族トラブル予防チェック

  • 本人確認・意思能力確認が完了している
  • 法律上の親族と付き合いのある親族を分けて確認した
  • 配偶者・子・親・兄弟姉妹・甥姪を確認した
  • 前婚の子・養子縁組・認知等の可能性を確認した
  • 疎遠親族・反対しそうな人を確認した
  • 相続放棄しそうな相続人を確認した
  • 本人の希望理由を記録した
  • 行政書士が調整・交渉しないことを説明した
  • 面談記録を作成した

内縁・同性パートナー案件チェック

  • 内縁配偶者等に法定相続権がないと説明した
  • 自治体パートナーシップ制度等の利用有無を確認した
  • パートナーシップ制度等は相続権・親族関係を発生させないと説明した
  • 遺言の必要性を説明した
  • 死後事務委任契約の必要性を説明した
  • 住居名義を確認した
  • 親族の認知・反発可能性を確認した
  • 不動産がある場合、司法書士連携を検討した
  • 税務が関係する場合、税理士連携を検討した
  • 紛争性が高い場合、弁護士連携を検討した

家財処分リスクチェック

  • 家財の多くは相続財産に該当し得ると説明した
  • 死後事務委任契約だけで自由に処分できないと説明した
  • 現金・通帳・印鑑の有無を確認した
  • 貴金属・美術品・骨董品の有無を確認した
  • 写真・手紙・位牌・仏壇の有無を確認した
  • 形見分け希望品を確認した
  • 家財写真記録の方針を決めた
  • 換価価値がある物が見つかった場合は処分を止める方針を決めた
  • 相続人の関与・弁護士連携の要否を判断した

親族連絡方針・相続放棄チェック

  • 死亡直後・葬儀前・葬儀後に連絡する人を区分した
  • 連絡しない希望とその理由を記録した
  • 死後に実務上必要または求められる連絡があり得ることを説明した
  • 「一切知らせない」と安易に約束していない
  • 相続放棄しそうな相続人がいるか確認した
  • 相続人全員が放棄した場合のリスクを説明した
  • 相続財産清算人が必要になる可能性を説明した
  • 弁護士・司法書士連携を検討した

14. 確認テスト(全16問)

問1
おひとりさま・おふたりさま終活で親族トラブルが起きやすい理由を3つ挙げなさい。
疎遠な親族が死後に相続人として関与してくる、内縁・同性パートナーや友人が法定相続人でない場合がある、友人・支援者が財産目的と疑われやすい、葬儀・納骨・家財処分で親族感情と衝突しやすい、相続人が相続放棄して手続が膠着することがある、など。
問2
本人が「親族はいない」と言った場合、そのまま相続人なしと判断してよいか。
判断してはいけない。本人が「付き合いのある親族はいない」という意味で話している可能性がある。法律上の配偶者・子・親・兄弟姉妹・甥姪・前婚の子・養子縁組等を確認する必要がある。
問3
兄弟姉妹に遺留分がない場合、親族トラブルは起きないと説明してよいか。
説明してはいけない。兄弟姉妹に遺留分がない場合でも、遺言能力・本人意思・財産管理・死後事務費用・家財処分・葬儀・納骨をめぐり争われる可能性がある。
問4
内縁・同性パートナーへ財産を残したい場合、どのような対策を検討すべきか。
遺言・死後事務委任契約・任意後見契約・財産管理等委任契約・生命保険・住居契約・不動産登記の整理・親族連絡方針・税理士・司法書士・弁護士連携などを検討する。
問5
内縁・事実婚のパートナーに法定相続権はあるか。
法定相続権は認められない。したがって、財産を残したい場合は遺言や契約による事前設計が不可欠である。
問6
自治体のパートナーシップ制度を利用していれば、遺言は不要か。
不要ではない。自治体のパートナーシップ制度等は、民法上の相続権や親族関係を発生させるものではないため、遺言や死後事務委任契約等の代替にはならない。
問7
本人が「親族には一切知らせないでほしい」と希望した場合、行政書士はどう説明すべきか。
希望は記録するが「一切知らせない」と安易に約束してはいけない。法律上当然に親族への通知義務があるとは限らないものの、死亡後の火葬・相続手続・賃貸住宅の明渡し・家財処分などで実務上親族への連絡が必要または求められる場合があることを説明し、連絡範囲・時期・担当者を整理する。
問8
親族間で意見対立がある場合、行政書士が間に入って調整してよいか。
調整してはいけない。行政書士は書類作成・手続支援・制度説明はできるが、紛争性のある案件において報酬を得る目的で親族間の説得・交渉・仲裁・条件調整・代理的関与を行うことは弁護士法第72条に抵触するおそれがある。弁護士へ連携する。
問9
友人が死後事務受任者となる場合に確認すべき事項を挙げなさい。
本人との関係・依頼内容・受任者の承諾・報酬・実費・費用原資・責任範囲・代替受任者・親族反発リスク・受任者が受遺者にもなるか・利益相反の有無・紛争時の弁護士連携など。
問10
施設職員に個人的に死後事務や財産管理を依頼したい場合、何を確認すべきか。
施設の内部規程・倫理規定・雇用契約上の制限・施設職員本人の立場・利益相反の有無・報酬の有無・施設法人としての対応可否を確認する。禁止・制限されている場合は別の専門職や法人受任を検討する。
問11
同席親族がいる場合、なぜ本人単独面談が必要になることがあるか。
同席親族が本人の回答を誘導したり本人が本音を言えなかったり、同席者が受益者になる可能性があるため。本人意思を直接確認し、後日の無効主張や親族トラブルを防ぐために必要である。
問12
死後事務委任契約と遺言の違いを説明しなさい。
死後事務委任契約は、死亡後の葬儀・納骨・役所手続・家財処分などの事務を依頼する契約である。遺言は、財産を誰に承継させるかを定める書類である。死後事務委任契約だけでは財産承継を決めることはできない。
問13
死後事務委任契約に家財処分条項があれば、行政書士や受任者は家財を自由に処分できるか。
自由に処分できるわけではない。家財の多くは相続財産に該当し得るため、相続人の権利との関係で問題となる可能性がある。貴重品・形見分け対象・換価価値がある物がある場合は、写真記録・リスト化を行い行政書士単独で処分せず、相続人の関与または弁護士連携を検討する。
問14
家財処分で特に注意すべき物を挙げなさい。
現金・通帳・印鑑・貴金属・美術品・骨董品・写真・手紙・日記・位牌・仏壇・遺影・デジタル機器・形見分け対象物・換価価値がある家具・家電など。
問15
疎遠な兄弟姉妹や甥姪が相続人となる場合、相続放棄に関してどのようなリスクがあるか。
死後に相続人全員が相続放棄をすると、葬儀費用の精算・賃貸借の解約・家財処分・未払費用の処理が膠着する可能性がある。その場合、相続財産清算人の選任が必要になることもあるため、弁護士・司法書士連携を想定しておく必要がある。
問16
親族トラブル予防のため、面談記録に残すべき内容を挙げなさい。
本人の希望・理由・親族関係・疎遠親族の有無・反対しそうな人・内縁パートナーや友人との関係・自治体パートナーシップ制度の有無・親族連絡方針・家財処分方針・相続放棄リスク・行政書士が説明したリスク・紛争性の有無・弁護士連携判断・本人単独面談の内容など。

15. 次回への接続

今回の要点 親族トラブル予防とは、親族を説得することではなく、本人意思・親族関係・連絡方針・相続財産リスク・紛争リスクを事前に整理し、行政書士が交渉に踏み込まず、必要な場面で弁護士へ連携する実務である。
実務上の最重要ポイント 「親族がいない」という本人発言をそのまま受け取らず、「法律上の親族・相続人候補」と「本人が関わりたい人」を分けて確認する。本人が親族以外へ財産や死後事務を任せたい場合は、その理由を本人の言葉で記録し、遺言・死後事務委任契約・親族連絡方針・家財処分記録・他士業連携を組み合わせて予防する。

次回「0-7 利益相反の確認」では、同席親族・受任者・受遺者・財産管理者・死後事務受任者の立場が重なり、本人の利益と周辺者の利益が対立するケースへの対応を扱います。

行政書士実務マニュアル|おひとりさま・おふたりさま終活業務シリーズ 第0-6回

本記事は教育・研修目的で作成されています。個別の案件については必ず最新の法令・ガイドライン・専門家の判断を確認してください。

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